人気ブログランキング | 話題のタグを見る

UKシンフォのベテラン PALLASにシンガー Alan Reedが復帰して9年ぶりの新作をリリース!

UKシンフォのベテラン PALLASにシンガー Alan Reedが復帰して9年ぶりの新作をリリース!_c0072376_17324163.jpg
PALLAS 「The Messenger - Limited Mediabook Edition -」'23

英国スコットランド北東部の都市アバディーンで1974年にRAINBOWとして結成されたが1975年にPALLAS ATHENEへ改名し、1979年頃にPALLASに成った、MARILLIONに次いでIQ、TWELFTH NIGHT、PENDRAGON等と共に英国80年代ポンプロック・ムーヴメントを代表するバンドの一つが、前スタジオ・アルバム『Wearewhoweare』'14 より9年振りとなる待望の新譜を自主リリースしたのをちょい遅れてGET!

旧音源のリマスター&新録&コンピレーション・リイシュー作である『The Edge of Time』'20、『An Alternative Arrive Alive』'21、『Fragments of The Sun』'21 や『No Sleep 'til Rotherham』'23 などのLIVE音源も含めると定期的に音源がリリースされて来たのでそんなに間隔が空いている意識は無かったが、スタジオ作となると随分久方ぶりとなる通算8枚目のアルバムを36pブックレット付のメディアブック仕様限定盤で入手したのでご紹介。

PALLASは、MARILLIONとのジョイントLIVE活動で人気を博してEMIレコードと契約を交わしたメジャー・デヴュー前後の80年代初期、2ndアルバム『The Wedge』'86 リリース後にレコード会社の内部問題に巻き込まれメジャーからドロップし殆ど解散と同じ開店休業状態になった90年代中期、古株メンバーのベーシスト Graeme Murrayとドラマー Derek Formanを中心に旧譜音源やLIVE音源等をリリースしつつ存続を維持し、長い空白期間を経てメジャー時代のメンバーでリユニオン(ドラムだけ新メンバー)して1998年に13年ぶりとなるカムバック・アルバム『Beat the Drum』をリリースした90年代後半、途中フロントマンを Alan Reedから Paul Mackieへチェンジし順調に活動を続けた00年代、RAINBOW結成当時から唯一のオリジナル・メンバーである Graeme Murrayが突如として長い沈黙期間の訪れをFacebookアカウントから伝えバンド活動が暗雲に包まれ殆ど仮死状態になった2018年、さらに全世界をパンデミックが襲い追い打ちをかけた2020年以降、そして前作から9年振りとなる復活作と、音楽性やファンの人気とは全く関係ない所で彼等はその長い活動期間と裏腹に、しばらく姿を消し、後になって復活する常に断続的なインターバル期間を挟んで紆余曲折ありながら今日までバンドを存続させて来た特異な英国バンドであります。

本作最大のトピックはなんと言っても存続が危ぶまれた中での9年振りとなる復活作な事と、80年代から2010年の脱退まで長きに渡りバンドの顔としてリードシンガーを務めてきた Alan Reedが、スタジオ作としては『The Dreams Of Men』'05 以来18年振り(!)に復帰(過去に2度脱退、3度目の再々々加入)してのスタジオ作である事だろう。

その為か東西冷戦への懸念を投げかけたメジャー・デヴュー作の『The Sentinel』'84 を意識したかの様な作風となっており、これまでもプログレ定番の幻想世界へ現実逃避する事なくシリアスで示唆に富むテーマやコンセプトの作品を一環して披露してきた彼等らしく、環境問題から再び熱を帯びた冷戦までを織り交ぜ、炎に油を注ぐ事しか成さぬ無能な指導者達が形作る現在の政治が抱える問題点などなど、現代社会の様々な問題を取り上げ我々が置かれている歪み狂った世界に対する実存的な恐怖を訴えるコンセプチュアルな作品となっており、物悲しく暗澹たる気分にさせられ絶望的な未来ばかりを予感させるアルバムなのは間違いないが、世界に何らかの脅威が迫る時、人類の破滅を警告する使者や前触れの存在を示唆する、暗闇の中で光が全て失われた訳ではない、と僅かばかりの楽観主義と微かな希望を与える聖書的な終わり方をしており、特に歌詞と音楽の両方で『XXV』'11 を強く思い起させる一作となっている。

また Alan Reedの復帰は嬉しいものの00年代直前から断続的な休止期間を挟んで長らくバンドを支えて来たドラマーの Colin Fraserが本作には参加しておらず、ドラム・パートは全てギタリストの Niall Mathewsonとキーボーディスト Ronnie Brownの手による巧みで精緻なプログラムで賄われているものの、現在のPALLASはドラムレスの4人組バンドと言う事になっているのが少々残念であります。

シンガー Paul Mackie在籍期のナイーブな叙情性も受け継ぎつつも全体的に初期作に近しい感触な事もあってここ数作で顕著だったメタリックなサウンド・テイストは弱まり、YESやPINK FLOYDを彷彿とさせる古典的シンフォ・タッチとエッヂの効いたエネルギッシュなHRタッチを巧みに組み合わせ、翳りを帯びたエモーショナルな叙情性と、ダークでドラマチックな音使い、英国らしい優美なストリングスやアコギ、ピアノのアコースティカルな音色、パワフルなロック・サウンドと内省的でクラシカルな美旋律が融合し、様々な感情を包み込むかの様な深い陰影と驚嘆に満ちたシネマティックな幻想美が絶妙なバランスで配されたPALLAS流モダン・シンフォへ回帰しており、その分厚く重ねられたギターとデジタリーなエレクトロ・サウンドが奏でるソリッドなハード・シンフォ・サウンドには往年のファン程に喜ぶだろう会心の傑作へと仕上がっている。

テーマがテーマなので聴き易く気軽に聴けるアルバムでも無いし即効性のある作品でもなく万人にお薦め出来る作風でもないが、そのイマジネイティヴで印象的なアートワークから没入感が強く、ダークでありながら高揚感があり、ロックでありながら優しさと驚きの瞬間が途切れず、非常に思慮深く雰囲気がある印象的な音楽性と素晴らしく知的で真摯なソングライティングが抜群の表現力とエモーショナルで力強い Alan Reedのヴォーカルと相まって、ベテラン・メンバー一丸となった鉄壁のアンサンブルは勿論の事、その紡がれる一音一音に心を奪われるような豊かな表現力が非常に際立った音楽ドラマを作り上げており、まるで長編映画のサントラを思わせる充実ぶりだ。

もっと分かり易いキャッチーさやコンパクトさ、プログレ系定番の派手なインタープレイなどが有ればより〝売れる”一般層にも訴求するアルバムになっただろうに、解散に瀕した事や直近で遭遇したパンデミックの悲惨さ、そしてショービジネスの脆さ儚さ、更にメジャー・デヴュー当時より確実に世界情勢が悪化の一途を辿っているのが影響し、恐らく残り少ないのを自覚している活動時間を鑑みて商業的プレッシャーから解放されている自主制作環境も合わさって本当に自分達が伝えたかった題材と表現方法を選択した故の本作のダークで陰鬱なシリアス過ぎる内容なのだろう…

忠実に彼等を支え続けて来たファンは無論の事、00年代以降のモダン・UKシンフォ作がお好みの方や、ダークでミステリアスなUKハード・シンフォ作がお好みの方なんかにも是非一度チェックしてみて欲しい、エモーショナルで伸びやかなヴォーカル、重厚でシネマチックなキーボード、印象的でメロディアスなギター、絶妙なアンサンブルと打ち込みとは思えぬ多彩でソリッドなリズム・セクションが織り成すサウンド・タペストリーは見事の一言に尽き、バンドの長い歴史とその名に違わず聴く者の心を惹きつけざるを得ないモダン・シンフォ・ファンが求めるモノを全て備えた彼等のキャリアの中でも最高のアルバムなのは間違いない。

Tracks Listing:
01.Sign Of The Times
02.The Great Attractor
03.Fever Pitch
04.Heavy Air
05.The Nine
06.The Messenger

PALLAS Line-up:
Alan Reed     (Lead & Backing Vocals)
Graeme Murray   (Bass、Taurus Bass Pedals、12 String Guitar、Vocals)
Niall Mathewson  (Guitars、Programming、Vocals)
Ronnie Brown    (Keyboards、Programming、Vocals)




# by malilion | 2024-03-05 17:33 | 音楽 | Trackback

米プログレッシヴ・ロックバンド KANSASのドラマーでリーダーの Phil Ehartが重度の心臓発作でツアー離脱!


アメリカン・プログレッシヴ・ロックの重鎮バンド KANSASのオリジナル・ドラマーでありリーダーでもある Phil Ehartが重度の心臓発作を起こした。

幸い命に別状はなく、現在は静養しているが当面の間はツアー活動から離脱する事に。

Phil Ehartはバンドのマネージャーでもありその役割は継続するという。

代役は以前ヘルプで叩いた事のある Eric Holmquistで、彼は20年以上に渡って Phil Ehartのドラム・テックを務めていた人物。

ここの所、色々と訃報が飛び込んで来ていただけに一瞬ドキッ、としましたが無事で何よりでありました。

とは言え、Phil Ehartはもうかなりの高齢なので、いつ何があってもおかしくないのは周囲も承知している事でしょうから、そろそろ一線を退く潮時なのかもしれませんね…悲しいな…

KANSAS 50th Anniversary Tourは、2024年3月1日のヴァージニア州リッチモンドから以前の告知通り開催される予定。


# by malilion | 2024-02-25 17:37 | 音楽 | Trackback

ネオクラHMバンドARTENSIONで知られるウクライナ人キーボーディスト Vitalij Kuprijが死去。


ARTENSION、RING OF FIRE、TRANS-SIBERIAN ORCHESTRA等やクラッシック音楽のソロ奏者としても活躍していたウクライナ出身のクラシックピアニストであり、ロックバンドのキーボーディストである Vitalij Kuprijが死去。

死因は明らかにされていないが、彼の長年の友人であるフィンランド人ギタリストでソングライター、プロデューサー、そしてLion Musicを運営する Lars Eric "Lasse" MattssonがSNSで訃報を伝えた。49歳だった。

まだ若かったのに…もう彼のダイナミックで華麗な鍵盤捌きを聴くことは叶わない…

RIP...Vitalij Kuprij...


# by malilion | 2024-02-22 21:40 | 音楽 | Trackback

幻のクリスチャンHMバンドCATALYSTが1990年に遺した唯一のフル・アルバムがオフィシャル・リイシュー!!

幻のクリスチャンHMバンドCATALYSTが1990年に遺した唯一のフル・アルバムがオフィシャル・リイシュー!!_c0072376_14285541.jpg
CATALYST 「Paradise」'90

サーファーご用達ブランドと同じ名前で混乱させられるが、彼等は1987年に米国中西部Ohio州Summit郡の都市 Cuyahoga Fallsでシンガーの Walt Wiseを中心に結成された4人組クリスチャン・メタル・バンドCATALYST (カタリスト)で、1990年に自主制作盤でリリースされたマイナー米国CCMバンドが遺した唯一のフル・アルバムが、以前ここでも紹介したスイスの幻のバンドOXIDOの唯一作をリイシューした事で注目を集めたイタリアのMinotauro レーベルからオリジナル通りの12曲入りスリップケース付き仕様でオフィシャル・リイシューされたのを即GET!

大剣を持ったマッチョ野郎がアルバム・ジャケにあしらわれており『暑苦しいエピック路線のパワー・メタル・バンド?』という予想に反し、清楚で爽快、キャッチーでフック満載なクリスチャン・メタル(笑)が飛び出してきて驚かされるが、90年代初頭リリースの自主制作盤な上にCCM系とUSオブスキュア・バンドの条件を見事に満たしており、そもそもプレス数が少ない為にカセット・テープ共々デヴュー作のオリジナルCDは現在なかなか手の出ぬ高値で取り引きされているカルトなレア盤をリイシューするとは、流石は目の付け所が鋭いイタリアのMinotauro レーベルと納得しきりだ。

因みにCATALYSTとは罪なる体を清める事を提唱する中世のキリスト教宗派に属する信者の事で『純粋』を意味するギリシャ語『katharos』に由来している。

本作リリース前の1987年に4曲入りカセットEP『Catalytic Conversion』を自主リリースしており、フルアルバム『Paradise』制作前にオリジナル・ドラマー Tony Rinellaが抜け、新たなドラマーとして Matt Stevensが加入。

80年代末期に活動していたCCM系バンド、OXIDOやFLORENCE 99という幻のメロディアス作の待望のリイシューを果たしたMinotauro レーベル・リリース、な情報で予想はつくと思いますが、80年代USバンドに相応しいフックある爽快なメロディアスHMチューン目白押しで、CCM系お得意のクリアーなハイトーン・リードヴォーカルと分厚く爽快なハーモニー・ヴォーカル、メンバー複数がSTYX張りにリード・ヴォーカルを執ったり、更にリーダー Walt Wiseが操るピアノとサックスもフィーチュアしたムーディーで美しいバラードも当然の様に収録と、要所でハードエッヂなギターもフィーチャーしつつ煌びやかなキーボードも薄っすらバックで聴こえ、ソリッドなリズムワークもしっかりとしたコンパクトでラジオフレンドリーなシングル志向の楽曲満載な80年代USメロディアスHMアルバムの教科書的構成作となっており、メロハー・ファンにもお薦め出来る掘り出し物的一品だ。

実際、彼等は本作リリースの後、即座にスプリング・アーバー・ディストリビューターズとワールドワイド・ディストリビューション契約を結び、Atlantic RecordsやOcean Recordsを含む複数のレーベルから興味を持たれる中で全米ツアーを敢行、『Paradise』完成直後にドラマーを1983年からアルバムをリリースし既に活動していたCCM系アメリカン・メロディアスHMバンドBRIDEの元オリジナル・ドラマー Stephan Rolandへ再びチェンジするなど、Contemporary Christian Music Magazine、White Throne Magazine、Heaven's Metal Magazine等から絶賛された事からも分る様に無名の新人インディ・バンドとしてはCCM界周囲から大きな期待を寄せられていたのが察せられるが、折り悪くメジャー・シーンの時流が変り全世界がグランジーの闇に呑み込まれてつつあった90年代初頭、特殊なカテゴリーとは言えやはり米国シーンの影響をCCMチャートも受けないハズもなく、素晴らしい音楽性とは無関係に80年代直系のブライトでハッピー、キャッチーで爽快なCATALYSTのサウンドが受け入れられぬままに、結局は1991年に解散してしまう。

この顛末に納得行かなかったのかバンドの中心人物でシンガーであった Walt Wiseは1994年に殆ど単独で楽器全てを演奏し、エンジニアリングやプロデュースも全てこなして完成させた実質的ソロ作な全メンツを新たにしたCATALYSTを再始動させ3曲入りカセットEP『The Mystery』をリリースするも、暗黒のグランジーに塗り潰された米国シーンで活動の場は無く、敢え無く再び解散する事に…

その後の各メンバーの行方は定かでないが、Walt Wiseはサックス・プレイヤーとしてレゲエ・ポップ・バンドのアルバム制作に参加したりプロデュース業を始めるなどプレイヤーから裏方へ回ったようだ。

まぁ、グランジー・ブームが勃発していなくとも他で聴けぬ強烈な個性的サウンドを演奏していた訳でもなく、HMと言うには軽めなサウンドでCCM系定番のキリスト賛歌を身上としている音楽を演り続けている限りメジャー・シーンでの大きな成功は望めなかったでしょうから、シンガー Walt Wiseが器用に様々な楽器を演奏できる点は特異なポイントではありますが遅かれ早かれな展開であったかもしれませんね…

毎度の事だがMinotauro レーベルからのリイシュー作はどこにもデジタル・リマスターの文言が見当たらないので、OXIDOやFLORENCE 99のリイシュー作と同じく音圧を上げただけのお手軽リマスター作なのかもしれません、現に音の抜けがイマイチだし、音の粒子の荒さが目立つ上に少々篭り気味で些かシャープさに欠けるデモ・テープよりちょい上くらいのサウンド(ちょこちょこノイズも聴こえる…)なのですが、それでもこうして幻の音源をオフィシャル・リイシューしてくれた事に感謝しかありません。

80年代メジャー・シーンやCCM系ロックの定義に倣ったサウンドなので滅茶苦茶に個性的という事はありませんが、キャッチーでブライトならCCM系ロックでもいける方や80年代ラジオフレンドリーなメジャー・サウンドがお好みな方なら間違いなく気に入るだろう一作でありますので、ご興味ある様でしたら一度自身の耳で確かめてみて下さい。

Tracks Listing:
01. Crackdown / Breakdown
02. Dropout Loser
03. I Wanna Live
04. Break My Heart Again
05. You Can't Please Everybody
06. Time
07. Fire In Her Eyes
08. Shelter Of Your Heart
09. Hold On To Love
10. Paradise
11. Burning In The Fire
12. Trash Before You Crash

CATALYST Line-up:
Walt Wise   (Lead Vocals、Lead & Rhythm & Acoustic Guitars、Piano、Keyboards、Alto & Soprano Saxophone)
Alan Newman (Lead Guitars、Backing & Lead Vocal on Track 10)
Paul Soos   (Bass、Backing & Lead Vocal on Tracks 03、12)
Matt Stevens  (Drums)

Produced by George Payne & CATALYST


# by malilion | 2024-02-20 14:29 | 音楽 | Trackback

新世代イタリアン・プログレ・シーンでも屈指の実力派バンド SYNDONEが30周年記念作を限定リリース!!

新世代イタリアン・プログレ・シーンでも屈指の実力派バンド SYNDONEが30周年記念作を限定リリース!!_c0072376_15325336.jpg
SYNDONE 「DirtyThirty 1992-2022 30 Years of Syndone Anniversary」'23

前作『Kama Sutra』'21 で70年代の古典プログレ・バンド群と肩を並べるレベルへ遂に到達し、現在のイタリアン・プログレッシヴ・シーンで堂々の存在感を示すイタリアはトリノを拠点に唯一のオリジナル・メンバーでリーダー、そして作曲とキーボードを担当する Nick Comoglio率いるSYNDONEの、復活後第7弾にして通算9枚目でこれがバンド最終作(!?)かもと何やら噂されるバンド結成30周年記念盤が、前作より2年ぶりに限定リリースされたのを少々遅れてGETしたのでご紹介。

完全新曲の『DirtyThirty』『Fight Club』『I Spit On My Virtue』に加え、過去曲のフレーズを引用しつつ新たに作曲された『The Angel』『I Only Ask For A Super glue』、90年代に発表された初期~中期曲にオーケストラ・セクションを導入しリアレンジや再解釈した新録曲『Valdrada's Screen』『Mary Ann』『God's Will』『Thousand Times I Cried』等の他、ボーナストラックとして2018年作『Mysoginia』収録曲『Evelyn』の日本語歌唱ヴァージョン (!?)も含む全11曲を収録した、彼等のこれまでの活動を総括するかの様な内容となっている。

残念な事に再びメンバーチェンジが有った模様で、前作でリズム隊が一新されたのに続き今回もドラムスだけ Eddy Francoに代わってローマ在住のセッション・ドラマーで Giancarlo Erra率いるサイケ&アンビエント風味でメランコリックなポストロックを演るイタリアン・バンドNOSOUNDの元メンバーだった Ciro Iavarone が新たに加わっている他は前作と変り無く、初期から拘って来たバンド・コンセプトであるギター・レス&ツイン・キーボードを主軸とする6人編成バンドで復活以降は本格的なクラシック要素を取り入れ続けて来たが、今回もブダペスト・シンフォニック・オーケストラをフィーチャーしつつパイプ・オルガンやクラシック・ギター等のゲスト奏者も多数交えた再結成以来の定番体勢でアルバムは制作されており、華麗かつ技巧的な70年代プログレ・リスペクトなの姿勢はそのままに更に芸術性を練り上げイタリア然とした重厚でドラマチックなシンフォニック・ロックというアニバーサリー・コンピレーション盤と思えぬ期待以上の仕上がり具合で、これにはイタリアン・プログレ・ファンならずともシンフォ・ファンもニッコリだろう。

前作紹介時にもお伝えした通り Eddy Francoは今流行りのオンライン・ミュージシャンでインターネット上のミュージシャン派遣会社に所属し、世界中から依頼を受けてドラムの音入れをする、という元々パートタイマー的な扱いだった模様なのでこのメンバーチェンジはある程度は予定調和だったかも?

再結成してからはリズム隊は常にゲストを迎える形態でアルバム制作を行っていた期間の方が長いのでもうファンにはお馴染みのメンバーチェンジかもしれないが、やはりバンド・アンサンブルの完成度等を考えると出来る事ならばリズム隊は安定して欲しい所ですよね…(汗

さて、Nik Comoglioを中心に1989年に結成され、若さから来る情熱で勢い余って楽曲を統制不能に破綻させつつもピアノ、アナログ・シンセサイザー、ハモンド・オルガンの鍵盤楽器を2人のキーボーディストが『コレでもか!』とばかりに縦横無尽に操り、無駄にスピーディーでHMを凌ぐ程にエネルギッシュなイタリアン風味増し増しの畳み掛ける暑苦しいハイ・テンション変拍子キーボード・プレイが終始スリリングに強引に駆け巡る、JAZZありフュージョンありのテクニカルでエモーショナルな、疾走感ばかり耳に残る高速EL&P風の完成度イマサン、勢いは超A級なイタリアン・シンフォ・ロック作であった『Spleen』'92 『Inca』'93 の2作品をイタリア Vinyl Magic レーベルに残しその後活動を休止するも Riccardo Ruggeriを含む新体制にて2010年代に復活した彼等の結成30周年を記念する本作は、前作と同じく歌詞が英語で歌われており、これは新曲は当然の事として過去曲のリメイクも含めてより広い聴衆へ向けて自身の作品を届けたいという想いからの選択だろう。

彼等の濃密過ぎるイタリアン・プログレ風味を愛しているリスナーからすると英詞への変更は些か残念かもしれないが、多少スタイリッシュさが増しただけで相変わらず胸焼けしそ…いや、胸を締め付けるエモーショナルな Riccardo RuggeriのHMバンド張りに圧倒するワイルドな歌声や、前作で魅せた様々な歌唱アプローチに負けず劣らず千変万化に表情を変えお得意のオペラチックな歌唱も堂々と披露し、自己主張が強すぎてカリスマ性が炸裂するエキセントリックでジェットコースターの様に上下乱舞するヴァイオレンスな歌メロと何もかも少しも変わった様に聴こえない(汗)ので、その点を危惧している方はご安心を。

寧ろ過去曲をリメイクして取り入れている為か、完成度がダンチで上がった再結成以降作より先祖返りしたかの様に初期の灰汁が強い作風を思い出させ、この好き嫌いを極端に分ける他に無い独創性と癖の強さこそがイタリアン・プログレの美味なる味わいと言えばそうなのだが、だったら英詞にしてよりポピュラリティーを高めた意味はどこに、とは個人的に疑問を感じてしまいますけど…(汗

高い芸術性に加え、無意味なルールに縛られず、音楽カテゴリーの境界を越え、繊細なピアノやアコギを織り込んだメランコリックでオーケストレーションされたメロディとダイナミックに炸裂するかの如き暴力的でエネルギッシュなロック・パッションを交差させ、安っぽいコマーシャリズムに背を向けたコンセプトや難解な構成は欧米の商業主義音楽に反旗を翻すかのようで、良く言えば過去作で提示した90年代イタリアン・シンフォ作の勢い有り過ぎなパワフルさと癖の強過ぎる独創性、そして再結成して以来の楽曲で魅せる思慮深く洗練された整合性とクラシカルな叙情感あるダークな美旋律を高めた作風を過不足なくMIXし、本記念盤で新たに提示した、とも言えるかもしれません。

所でなんで急に日本語で歌った曲を収録しようと思ったのかは謎ですよね、歌詞が何故か昭和演歌みたいなテイストなのも驚きですけど(w

まぁ、なんだかんだと小難しく考えずとも、表に裏に華麗に舞い踊り煌めくシンセ、ワイルドに歪んで唸りを上げるオルガン、小気味よく響くクラシカルで洗練されたピアノ、幽玄さを演出するメロトロンと、ファンが求める通りなメランコリックでエネルギッシュな鍵盤サウンドの数々と艶やかな美旋律が終始織り成され、心震わす芸術性とHM張りの畳みかける勢いも相まって、ただひたすらに美しい音色の洪水と圧巻のパワーに身を任せて幸福感に満たされているとアッという間にアルバムを聴き終えてしまえるので、香る様にロマンチックでどこまでもドラマチック、そして艶やかなオーケストラ・サウンドが輝くかの様なイタリアン・シンフォニック・ロックをお求めの方には是非一度チェックしてみて欲しい、最近珍しいアーティスティックで完成度の高い作品の一つだ。

新曲も素晴らしい出来栄えだし、リメイクされた楽曲もオリジナル・アルバムと遜色ない聴き応えで楽しませてくれる本作、こんなに素晴らしいアルバムを創作しているのに『本当にこれで終りなの?』という噂に疑問しか浮かびません。

確かに Nik Comoglioはもう随分な高齢の様だけど、単なる噂であって欲しいというのが全イタリアン・シンフォ・ファンの想いでしょうし、ひょっこり新作が数年後にリリースされるのを祈って…

Tracks Listing:
01. Dirty Thirty (The End Of My Love)
02. Fight Club
03. The Angel
04. Valdrada's Screen
  Restyling The Track "Spleen" from The Album "Spleen" 1992
05. I Spit On My Virtue
06. I Only Ask For A Super Glue
07. Mary Ann
  Restyling The Track "Marianne" from The Album "Spleen" 1992
08. Rene
  Restyling The Track "Magritte" from The Album "Melapesante" 2010
09. God's Will
  Restyling The Track "Inca" from The Album "Inca" 1993
10. Thousand Times I cried
  Restyling The Track "Proverbi" from The Album "Inca" 1993
11. So Long Everybody - The Time Has Come & I Must Leave You
  Restyling The Track "Penelope" for full Orchestra from The Album "Odysseas" 2014
12. Evelyn [Japanese Version:Bonus Track]

SYNDONE Line-up:
Nick Comoglio    (Hammond、Moog、Juno dist、Mellotron、Composition、Orchestration、Keyboards)
Riccardo Ruggeri   (Lead Vocals、Composition、Lyrics)
Marta Caldara    (Vibraphone、Marimba、Keyboards)
Gigi Rivetti      (Hammond、Acoustic Grand Piano、Electric Piano、Clavinet、Moog、Accordion)
Simone Rubinato   (Bass、Fretless Bass、Electric Baritone Guitar)
Ciro Iavarone    (Drums、Percussion)

Guest:
Tony De Gruttola    (Electric & Acoustic Guitars on Track 01)
Andrea Carbone     (Electric Guitars on Track 07)
Pino Russo       (Classic Guitars on Track 08)
Gianluca Cagnani    (Pipe Organ on Track 04)
Rebecca Onyeji     (Backing Vocals)
Charlie Poma      (Backing Vocals)
Kaori Tsutsui       (Clarinet in Bb on Track 12)
String Trio
Valerio Iaccio       (Violin on Track 05)
Roberto D'Auria      (Violin on Track 05)
Michelangiolo Mafucci  (Cello on Track 05)

Budapest Scoring Symphonic Orchestra Conducted by Francesco Zago on Track 11)

Produced by Nick Comoglio


# by malilion | 2024-02-19 15:37 | 音楽 | Trackback