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期待のUKメロハー&ヘア・メタル・バンドWHITE TYGERが待望の2ndアルバムをリリース!!

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WHITE TYGER 「Back Of The Class」'24

2012年頃に英国West Midlandsで結成され、クラブ・シーンでローカル・カヴァー・バンドとしての長きに渡る活動を経て遂に2022年にデヴュー・アルバム『This Is The Life』をCD-R&デジパック仕様で自主盤リリースしたツインギター4人組英国産バンドWHITE TYGERが2年振りの去年末にCD-Rプレス盤でリリースしていた2ndアルバムをちょい遅れてGETしたのでご紹介。

好評を博したデヴュー作は米国インディ・レーベル Eonian RecordsよりCDプレス盤で2024年10月18日にリイシューされたのも記憶に新しい彼等ですが、続く本作はまずファンに向けてのキックスターター支援を呼びかけてレコーディング費用を賄うという如何にも今時のバンドらしい資金調達方法で制作されている。

キックスターター盤の方は限定バンドTシャツ付きで収録曲が5曲でいち早く彼等を支援したファンの手元に届く仕様になっており、セカンドCD-Rプレス盤が今回紹介する7曲収録されたR盤となっている模様だ。

さて注目の新作サウンドの方はと言うと、皆さんが期待する通りなデヴュー作と同一路線の延長線上なサウンドで、SKID ROWの初期作のテンションと勢いを彷彿とさせるスリリングでキャッチーなヴォーカルとMOTLEY CRUEを思わすハードエッヂでフラッシーなL.A. Metal風の切れ味鋭いギター・サウンドを主軸に据えた80年代米国メジャー&アリーナロック・リスペクトな英国産メロハー&ヘア・メタル・サウンドとなっているので変に音楽性が成長して小難しい事に挑んだり妙にテクニカルな方向へズレたりしていないので安心して欲しい。

北欧グラム勢のHARDCORE SUPERSTARをはじめCRAZY LIXX、DYNAZTYっぽいスリージィなソリッド・サウンドや時折モダンなサウンド・アプローチもチラつくが、パワフルなコーラスとド派手なギターがワイルドに掻き鳴らされキャッチーに攻め立てまくる勢い重視のグルーヴィなGUNS N' ROSES直系の疾走ロックン・ロールが、30分ちょいの収録時間なEPに近いコンパクトなアルバムの最初っから最後まで息をつく間も無くド派手にガンガン炸裂し続ける如何にも新人バンドらしい小細工無しのフレッシュな快作だ。

彼等の音楽ベースは70~90年代初期のオールドスクール・ロックに現代的なヒネリとモダンな感覚を付け加え、ストレートなトラディショナル・ロック、スリージィ・ヘア・メタル、ティピカルなHM、00年代モダン・ロック等からの影響もミックスし、BON JOVIやWINGER、さらにDEF LEPPARD風サウンドやアレンジ等の断片を巧くまぶしたサウンドを、プレッシャーから解き放たれて己の信じる道を切り開け! とか、反抗心を失うな、諦めず夢を追い求めろ、等々と熱く訴えかけるティーンエイジャー向けな青臭い歌詞と共に小難しい事など一切考えず気持ち良くワイルドに鳴らしまくるのが実に爽快であります♪ (*´∀`*)

無論、ちゃんと変化している部分もあって、前作で聴けなかったブルーズ・テイストあるアーシーなギターの音色や、ちょっとRAINBOWっぽいミステリアスなギター・フレーズなんかも飛び出してきて単なる80年代焼き直しハリウッド・ロックン・ロールでない要素も垣間見せ、元W.A.S.P.のギタリスト Chris HolmesやLOVE/HATE、Vince Neil等のサポート・アクトを務めるなど新人らしくステージで腕を磨きつつ貪欲に帯同したバンドやミュージシャン達から新な音楽要素を血肉として取り込み急速にワイルドでクレイジーなサウンドを成長させているのが分かり、この後数枚アルバムをリリースする内に大化けするのでは!? と、想像させてくれる『何か』を秘めた期待の新人なのは間違いない。

まぁ、新人バンドなのに既に80年代に創作されたバブリーでゴージャスなUSロック・サウンドをなぞっているだけで新しいサウンドや斬新なアイディアは見当たら無い、と言うシビアな意見も当然だと思いますし同意しますが、オリジナリティも当然必要なものの何より重要なのは〝何時″〝誰が"〝どこで″その音楽を披露するか、がショ-ビジネスでは馬鹿に出来ぬ運要素も合わせて大きなポイントではないかと思っとりますので、彼等のフォロワー・サウンドが80年代バンドをリアルタイムで体験していない若いリスナーの心を捉えられるのなら独自性なんて後から着いてくるんじゃないでしょうか?

なーんてこんな鷹揚で緩い考え方は、激しい忠誠心と同時にパクリや真似に猛烈な拒否反応をしがちな若いリスナーには難しいかもしれませんけど…(汗

もしかしたら再びEonian Recordsがプレス盤をリイシューするかもしれませんが、必ずは無いのでフィジカル盤をお求めの方はお早目に本R盤を補完しておきましょう。

とまれ現時点ではまだまだB級バンドなのに違いは無いが、引き続き地道なLIVEサーキットで聴衆を味方につけ一皮剥ければアレよアレよという間にヒットチャートを駆け上げれるポテンシャルを秘めた非常に有望な新人バンドには違いないので、次作での更なる成長と更なる独自の音楽性の開拓を期待したいですね。

Track listing:
01. Almost Home
02. Drown
03. Vanilla Circus
04. Instafine
05. Dog House Blues
06. Starlight
07. Fire

WHITE TYGER Line-Up:
Nip“Tyger”Turner : Lead Vocals、Guitars
Chris Hingley : Lead Guitars、Backing Vocals
Ste Timmins : Bass、Backing Vocals
Jack Ryland Smith : Drums

Recorded、Mixed & Mastered by Nip Turner



# by malilion | 2025-03-15 02:25 | 音楽 | Trackback

期待のオクトジェニック・メロディアスHR&AORデュオ TIMSONがバンド名をTIMSON AORへ改めて改めて英国からデヴュー!

期待のオクトジェニック・メロディアスHR&AORデュオ TIMSONがバンド名をTIMSON AORへ改めて改めて英国からデヴュー!_c0072376_07235252.jpg
TIMSON AOR 「The Next Level」'25

去年、自主CD-R盤『Forever's Not Enough』でアルバム・デヴューを果たした英国人60代ロッカー Mark Timson率いる80年代リスペクトなUKメロディアスHR&AORデュオ TIMSONの2ndアルバムが自主制作盤でリリースされたのでGET!

同名バンドとの混同を避ける為か今回からバンド名がTIMSON AORへ改められているが、メンツは変わらず楽曲制作を主導するイギリス人ミュージシャン Mark Timson (Guitars、Bass、Keyboards、Drum Programming)とチリ人シンガー Lukky S (Vocals、Lead Guitars、Keyboards、Bass)によるデュオ・プロジェクトによる第2弾作がUK古参プログHMバンドTHRESHOLDのリーダーでギタリスト、そして今では数多くのプログHMバンドやHMバンド作のプロデュースを手掛けて来た事で有名な Karl Groomにミックスとマスタリング、そしてプロデュースを任せて無事に2025年2月28日に本国でリリースされた事を祝いたい。

前作が英国とチリの二国間でネットを介して音源をやり取りしながら長い時間をかけて徐々に楽曲が創作された事や、リーダーの Mark Timsonが決して若いと言える年齢でないプレイヤーなので下手をすると単発プロジェクト作で終る事を危惧していましたが、自主盤とは言えこうしてプレスCDでセカンド・アルバムが届けられてファンは一安心した事だろう。

とは言え、未だにメンツは2人のみなスタジオ・ワーク中心なプロジェクトですので、出来る事ならステージでの演奏披露を考えて少なくともリズム隊メンバーだけでも専任プレイヤーを迎え入れて本格バンド始動して欲しいものであります…

前作紹介時も指摘したが、リアルタイムで80年代を経験している Mark Timsonのペンによる楽曲故か、当時を知らぬ今の若いミュージシャン達が華やかなロック黄金期への憧憬を抱えて創作したサウンドと感触が明らかに違い、アルバム全体からノスタルジックな香りが隠しようもなく漂っているが今のバンド達が無意識に混入させてしまうモダンな感覚が希薄なのが逆に今の耳には妙に懐かしく、そして新鮮に感じられるオクトジェニックなHR、AOR、産業ロックまんまなトラディショナル・ロックサウンドという方向性に少しも変更は無いので、今流行りの刺激が強くキンキンに磨き抜かれたサウンドが詰め込まれたメロハー・サウンドやAOR作をお求めな方には古臭く刺激に乏しいアルバムに聴こえてしまうかもしれないのでご注意願いたい。

逆に80年代当時のメインストリーム・サウンドが好きな方なら歓喜する事間違い無しな夜明けのネオン街というイメージ通りの、エモーショナルでソフトなヴォーカル、グリッターなシンセとクリーン・トーンのギター、そしてリズムを溶け合わせ響き渡るシャレオツでクールな80年代風ロックが貴方に至福の喜びと笑みをもたらす事だろう。

圧倒的にHR風味よりAORタッチが強い、ハードエッヂより美旋律さ重視の甘くメロディックなリフ、印象的でコンパクトなギター・ソロ、気の利いたアレンジが活かされた小気味よいキーボード、さり気なく配された甘美なストリングス、控えめで華やかなシンセ、目立たないが堅実なリズム・ワーク、ミドルレンジ主体で爽快に歌い上げるエモーショナルなヴォーカル、そして耳馴染の良いフックの数々と、80年代メジャー・ポップロックと聞いて連想する通りなサウンドであります。

前作よりギター・サウンドがクローズアップされるバランスに幾分かサウンドのタッチが変わったのと、より Lukky Sの Robin McAuleyの歌声から灰汁を抜いてマイルドにした風の伸びやな濁り声と爽快でキャッチーなコーラス・ワークに焦点を当てたバランス重視の洗練された仕上がり具合になっている。

しかし Mark Timsonの弾くリード・ギターより若い Lukky Sの弾くリード・ギターの方が派手で音数多い、所謂80年代風ピロピロ・ギターなのには苦笑してしまった(w

なんと言うか強烈な個性の無い中道でベーシックなバランス重視のピュア・サウンドが、逆に今ではなかなか聴かれぬオクトジェニック・サウンドとなって彼等唯一の個性を際立たせている様に思え、若いミュージシャンなら地味でオマケに面倒なバランス重視の作風よりもスタンドプレイに走り勝ちなハイテク・プレイや勢い重視だったりパッション任せでド派手で強烈な印象を残す作風を好む、そして実際売り出し易くカテゴライズされたメロディアス系バンドが多い昨今のインディ・シーンのレーベル事情も関係しているのかもしれない。

まぁ〝特徴が無いのが特徴”なんて商品を売り易いとはレコード会社でなくとも音楽で商売しようとする者なら考えませんし、金儲け第一主義でない自主制作デュオ体勢だからこそ微妙なバランスで成り立っているTIMSON AORの音楽とも言えるだろう。

下手にインディ・レーベルに所属してしまうとデリケートでピュアな感性が際立った壊れ物の様に危うい音楽性が霧散して単なる80年代ポップ・ロック・エミュレートの懐メロ・コピーバンド化してしまいそうで、けれどもっと彼等のレトロなグルーヴ、ブライトなメロディと親しみやすい雰囲気、そして純粋で美しいポップロックが多くの人々の耳に届けば良いのにとも思ってしまう、なんとも難しい問題であります…

Karl Groomが裏方で作業したアルバムと思えないくらいシンプルで軽めなサウンドで、サウンドのクリアーさ加減とギター・サウンドの鳴りの良さくらいにしか彼の得意なスタジオワークが活かされなかったんじゃないかと心配したくなる、それくらい良く言えばストレート、悪く言えば密度の薄い、そんな何の変哲もない朴訥としたサウンドだ…(汗

後は少しシンセのサンプルが安っぽい響きなのと楽曲のフェードアウトが雑なのも些か気になりましたね、音楽性のお陰か全体の完成度を著しく低下させる要因にはなっていないのが幸いでしたが。

とまれ80年代UKメロディアス・ロック・ファンな方、イタリア Frontiers Recordsリリース作や英国ESCAPE MUSICリリース作がお好みの方なんかにもお薦め出来る、派手な刺激や強烈な個性、そしてオリジナリティに乏しいが味わい深いキャッチーなメロディを長く楽しめるオクトジェニック・メロディアスHR&AOR作ですので、ご興味あるようでしたら是非とも自身の耳でチェックしてみて下さい。

Track List:
01. The Wind Whispers (Your Name)
02. One Step Ahead
03. Nevermore
04. Starlight
05. Be True To Yourself
06. From The Ashes
07. Wake the Night
08. The Last Ride
09. Where The Sun Meets The Sea
10. Midnight Radio
11. Farewell

TIMSON AOR Line-up:
Mark Timson : Guitars、Bass、Keyboards、Drum Programming
Lukky S : Vocals、Lead Guitar、Keyboards、Bass

Mixing & Mastering By Karl Groom
Produced by Karl Groom、Mark Timson & Lukky S

P.S.
HPサイトによると国内盤がAvalonからリリースされ、特にオリジナル盤に強い拘りがある訳で無いならしっかりした装丁の国内盤を購入する方が宜しいだろう。

自主盤もそうだが最近の低コスト盤の流行りなのかブックレットの紙質由来なのかカラープリンターで印刷したみたいなんですよね(汗 しかも価格面でも国内盤の方がお安いっていう…

あー、やっぱりボートラ1曲追加されてるわー買い直しかぁ…orz

買い直して比較して見たらオリオジナル自主盤の方が若干ジャケット等の色味が明るいですね。それ以外は差はないです。

# by malilion | 2025-03-14 07:24 | 音楽 | Trackback

ドイツのシンフォ・バンドEVERONが前作から16年振りとなる待望の8thアルバムをリリース!!

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EVERON 「Shells」'25

ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州西端の都市 クレーフェルトで1988年に結成されたキーボード入り4人組シンフォ・バンドEVERONが前作『North』'08 から16年振りとなる待望の8thアルバムをリリースしたのを即GET!!

オランダのポンプ総本山レーベル SIミュージックから1993年にデヴュー作『Paradoxes』をリリースし、最初HR風味も加味した軽やかなキーボードと伸びやかなヴォーカル主導の、RUSH、SAGA、PALLAS等からの影響を感じさせるポンプ風サウンドだったが、次第にプログレッシヴな複雑さが楽曲に増して壮大なシンフォ形態へアルバムの枚数を重ねる毎にサウンドが進化、したまでは良かったが、90年代中頃よりシーンに蔓延するダークなエクストリーム・サウンドやダルでラフなグランジーブームを鑑みた故か、2008年リリースのモノトーンなジャケの7thアルバム『North』ではクラシカルで優美なストリングスを随所でフィーチャーしつつもダーク・テイストを漂わす大仰なキーボードの鳴りを抑えクランチーなギター・サウンドの割合を増した00年代対応鈍色サウンド作へ挑み、けれどそれを最後にバンド活動は止まり、他の大勢の90年代初頭デヴューのシンフォ系バンド達と同じく時流の変化に迎合出来ず解散したものばかりと思っていたが、フロントマンでキーボーディストの Oliver Philipps曰く『EVERONは一度も解散した事は無いし、そんな話をした事も無い』との事で、どうやら単なる長い休止期間だった模様だ。

因みにデヴュー作以来、彼等のアートワークには『水』や『海』といったテーマが一貫して描かれて来たが、途中紆余曲折を経て16年振りに届けられた本作のジャケットアートに『海底都市』らしきものが描かれているのを見て安心しニンマリしたファンは多いのではないだろうか?

長らくシーンからその姿を消していた為に当時のファン・ベースも殆んど既に残っては居ないだろうが、逆にデヴュー以来積み上げて来た音楽性を無理に歪めて00年代以降のシーンで持て囃された荒々しく陰鬱な鈍色サウンドへ阿る事を良しとせず、敢えて中途半端な路線変更作やメンバー・チェンジ等でメインストリームへ迎合したアルバムを発表しなかったその矜持に拍手を送りたいし、16年の時を経る事にはなったが本来の音楽性のかなりを保ったまま90年代初頭に多くのポンプ&プログレ・ファン達を虜にした、美しく壮大で劇的な構成と凝った楽曲展開のある叙情的且つ爽快感ある美旋律サウンドの詰まった新作をこうして再び届けてくれた事を祝いたい。

と言ってもまんま以前のサウンドを再現している訳も無く、しっかりと休止期間の間に00年代以降のギター・オリエンテッド・サウンドを自らの血肉へ昇華せしめたのと、各メンバーが課外事業で培った経験を活かしたのがその哀愁を帯びたメロディアスでコンパクトに纏め上げられたサウンドの端々から伺える、2025年復活に相応しいヘヴィでハードエッヂなギター・サウンドの活躍する場面が増えた、以前のポンプ臭い軟弱さは完全に払拭したモダンでエネルギッシュでドラマチックなユーロ・ハードシンフォを重厚なスケール感と共に堂々と披露しており、さらに経年の影響か歌唱スキルを磨き続けたからなのか以前より Oliver Philippsの歌声が太く力強くなり、更に深みと表現力が増していて、けれど初期より確実にトーンが下って高音域のハイトーン・ヴォーカルが聴けるパートは減ったものの、そこは抜かりなくフィメール・ヴォーカリストを複数ゲストに招いて補完(そもそもLIVEではこれまでもセカンド・キーボーディストやバッキング・シンガーを帯同し活動して来た)済みで、爽快感ある伸びやかなリード・ヴォーカルやキャッチーなコーラス・パートを含めてアルバムの仕上がり具合に些かも悪影響を与えていないので安心して欲しい。

この長いインターバルの間に各メンバーのスキル向上や音楽性の変化の表れか、従来の様なHR風のビートが効いたボトムや勢い任せなヴォーカルとコーラスで畳みかける楽曲構成からゆったりとミッドテンポでじっくりと叙情とメロディを重ね、ハードな展開から静寂パートへと緩急を効かせた陰影色濃いメロディラインや気の利いたアレンジが施された楽曲を主軸にアルバムは落ち着いて進行し、その為か全体のスケール感がアップして音の迫力が大きく増したのと奏でられる美旋律の華やかな音色の煌めきの変化や細やかな音使いの差異が楽しめる、一言でいってベテランの風格を感じさせる大人向けシンフォ・サウンドを鳴らしている。

無論、これまで通りにここぞの場面で劇的な盛り上がりを見せるエモーショナルでセンチメンタルなギターと高らかに鳴り響く華麗なキーボードをフィーチャーしたプログレ・ストラクチャーがメインなのに変わりなく、お得意のオーケストレーションや優美なストリングス、軽やかでリリカルなピアノの音色が美しいクラシカル・アレンジが効いた楽曲もしっかり収められているし、定番のシットリと歌を聴かせるハートフルなヴォーカル・パートもあり、アレンジ、歌詞、キーボード、エレキ&アコースティックギター、ピアノ、ヴォーカル等のテクスチャーが幾重にも交差し聴く者を魅了する、この16年間の空白がまるで何事も無かったかのようにさえ思えてしまえるファンタジックで魔法の様なシンフォニックな音色の数々はきっと貴方の心を喜びで満たす事だろう。

待たされて久しい新譜の中で一番耳を惹いたのはやはりフロントマン Oliver Philippsのヴォーカルで、今まで聴く事が無かったデスヴォイス風の濁り声やエクストリーム・ミュージック風のアグレッシヴな唸り声、そしてメランコリックでミステリアスな旋律にマッチしたくぐもった物憂げなディープ・ヴォイスに挑んでみたりと、様々にヴォーカル・アプローチを変えて表現の幅を広げ楽曲の完成度を上げつつ生来のメロディー・センスを活かしバラエティ豊かな変化を与えているのは見事の一言だ。

2000年以降、Oliver PhilippsはEVERON以外にノルウェー産シンフォニックHMバンドANGELやオランダのDREAMSIDEとドイツのDANCE MACABREが合体して生まれた女性ヴォーカル2人と男性ヴォーカル1人によるトリプル・ヴォーカルスタイルなゴシックHMバンドSATYRIAN、英国人、カナダ人、ノルウェー人、そしてオランダ人等と国際色豊かな混成メンバーで構成されるプログHMバンドTHE ALL、オランダ人、オーストリア人、ドイツ人混成のシンフォニック・プログレハード・プロジェクトPHANTASMA、その他にも数多くのプロジェクトやセッション等に参加し、主に鍵盤奏者としてその手腕を奮い、ワールドワイドな数多くの交流を深めた経験も間違いなく活かされているに違いない。

ソロにバッキングにと Oliver Philippsのヴォーカル・パートに彩りと厚みを生み出すフィメール・ヴォーカリスト達の艶やかな美声が穏やかな影の様に寄り添い綴られる物語のイマジネーションを掻き立てるだけでなく、彼女達の美声の影響かこれまで余り彼等の楽曲で聴く事のなかったケルティックな音使いやフレーズが楽曲のそこここに現れ、クリアーなギター・トーンと透明感あるヴォーカルも相まって少し英国シンフォ・バンドJADISを思わせる瞬間があったりして新鮮な驚きを与えてくれたのが嬉しい。

ユーロ圏での80年代を思わすレトロ・ロックの人気復調や80年代サウンドに映画音楽要素をMIXしてデジタライズしたシンセウェイヴ等の台頭も有り、粗く荒んだ陰鬱なエクストリーム・ミュージックの人気に翳りが見え始めたのを好機と捉えたのか、準備万端で遂に長い眠りから覚め再び活動を開始した彼等、途中でドラマー Christian〝Moschus”Moosと共にバンド立ち上げメンバーだったオリジナル・ギタリスト Ralf Janssenが脱退し Ulli Hoeverへと交代したが、それ以降一度もメンバー・チェンジをせず安定した活動を続けて来たが、今回予期せぬアクシデントに見舞われてしまった。

レコーディングを開始し、12曲中8曲まで作業を進めた所で、なんと共同創設者である Christian〝Moschus”Moosが急逝し、残り4曲のドラムパートを米国人でNYのJAZZ系セッション・ドラマー Jason Gianniが叩きなんとか本作を完成へ漕ぎつけた模様で、バンドの土台を支えるドラマーであっただけでなく長らくアルバムのミキシングやプロデュースにも尽力してきた言わば『バンドの心臓部』とも言える彼を不慮の死で失った事で、期せずして次作で彼等のサウンドやタッチが大きく変化する事が予見されファンならずとも要注目作となるだろう。

本作のプロデュースは Oliver Philippsが務めているが、半ばまで Christian〝Moschus”Moosと作業を進めていた訳なので、彼等のサウンドの変化がハッキリと表面化するのは次作からなのは間違いない。

Jason Gianniはドラム講師をはじめ、数え切れぬ程のTVやラジオのCMソングや有名ミュージカル作、STEELY DANのトリビュート・バンドやアニメの主題歌等でも叩いており、更にNeal Morse BANMDのドラマーで近年DREAM THEATERへ復帰した Mike PortnoyがNeal Morse BANMDへ参加出来ぬ時の代役をステージで務める折り紙付きの実力者なので、プログレッシヴな複雑さ、エモーショナルなメロディ、パワフルなサウンドを兼ね備えた本作の楽曲のレコーディングで披露されたそのプレイやテクニックに些かの不備も無い事はお伝えして置きたい。

現時点では後任は未定な模様で、ツアー要員を臨時で迎えるのか新ドラマーを迎えてツアーを開始するのか続報を待ちたいですね。

今回ゲストに招かれたフィメール・ヴォーカリスト達は既にキャリアを重ねた実力者となっており、ノルウェー人シンガー Helena Iren Michaelsen嬢は北欧シンフォニックHMバンド IMPERIAとソロ・プロジェクト ANGELのフロントマンを務める人気女性ヴォーカリストで、今回彼女がゲストに招かれ数多くの楽曲でその美声を披露しているのはANGELやTHE ALLで Oliver Philippsと活動を共にしている事が理由だろう。

通称 LEAHことカナダ人シンガー Leah McHenry嬢はソロ活動及びUSシンフォニック・ブラックメタル DRAGONLORDにも参加しており、シンフォニックHMやケルト・メタルにフォークやワールド・ミュージックをMIXした音楽作をソロ・リリースしている事から〝HM界のEnya”と呼ばれる事もあるそうだ。

因みに10曲目のアグレッシヴなインスト・トラックのタイトル『OCD』は『Obsessive、Compulsive、Disorder Indeed = 強迫観念』の意味らしく、タイトル通りスリリングで緊張感あるテクニカルなプレイが繰り広げられている。

待ち続けたEVERONファンは無論の事、非常にメロディアスでエネルギッシュな、そして優美で透明感もあるキャッチーなユーロ・プログレッシヴ・ロック作をお好みの方なら本作をチェックしても決して損する事ない、そんなベテランの実力と風格を余すことなく味わえる久方ぶりの彼等の新作を是非お薦めしたい。

Tracklist:
01. No Embrace
02. Broken Angels
03. Travels
04. Pinocchio's Nose
05. Monster
06. Shells
07. Grace
08. Guilty As Charged
09. Children Of The Earth
10. OCD
11. Until We Meet Again
12. Flesh

EVERON Line-up:
Oliver Philipps : Vocals、Piano、Keyboards、Guitars、Orchestrations
Ulli Hoever : Guitars
Schymy : Bass
Christian〝Moschus”Moos : Drums、Percussion

With:
Jason Gianni : Drums on Tracks 02、08、10、11
Helena Iren Michaelsen : Vocals on Tracks 02、06、07、08、09
Leah McHenry : Vocals on Track 04

Produced by Oliver Philipps


# by malilion | 2025-03-13 17:52 | 音楽 | Trackback

RHAPSODYやANGRAでHMシーンにその名を轟かす Fabio Lioneが過去在籍したプログHMバンドATHENAが名を改め23年ぶりに再結成作4thをリリース!

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ATHENA XIX 「Everflow Part 1: Frames Of Humanity」'24

半年遅れのDGM新譜購入と合わせて、同じく90年代同期デヴューのキーボード入り5人組イタリアン・プログHMバンドATHENAの23年振りとなる再結成作をかなぁ~り遅れてご紹介(汗

オリジナル・メンバーが誰も居なくなったが現在も鋭意活動中なDGM、バンドを率いるリーダー Olaf Thorsenが突如脱退し、活動休止を挟んでアッサリ Olaf Thorsenが復帰し活動中なLABYRINTH、そして2001年に3rdアルバム『Twilight Of Days』をリリースするも翌2002年に解散していたが2019年にオリジナル・メンバーを中心に再結成し、バンド名を改め本作をリリースしたATHENA XIXと、DREAM THEATERの2ndアルバム『Images And Words』'92 大ブレイクに触発され全世界で雨後の筍の如く出現したプログHMバンド達の中でも元々イタリアでは70年代からプログレが盛んであった事もあってか数(当時、私も沼ってまだ見ぬ次なるビッグシングを探してアホな散財繰り返してたなぁ…)とレベルの高さは群を抜いており、その90年代イタリアン・プログHMムーヴメント時にほぼ同じタイミングでデヴューした有望バンドがDGM、LABYRINTH、そしてATHENAで、そんな彼等が再び時を同じくして新譜をリリースしたのには何か運命的なものを感じますね。

1991年にATHENAが結成された当時のフロントマンは Fabio Lioneで、デモ制作は行なうが1995年のデヴュー作『Inside, The Moon』リリース前に既に脱退しており、その後に前記のLABYRINTH、イタリアン・エピックHMバンドRHAPSODY OF FIREやイタリアン・パワメタ・バンドVISION DIVINE、そして南米ブラジルの至宝 ブラジリアンHMバンドANGRAのフロントマンとして世界を股にかけ大活躍してきたのはHMファンの皆様ならば良くご存じな事と思う。

元々ギタリストだったが Fabio Lione脱退に伴いシンガーも兼任していた Alessio Mostiがデヴュー作リリースの後ほどなくして脱退(個人的には嫌いでない歌声だし歌唱力も兼任とすれば十分なレベルだったが…半ばクビに)し、続く2nd『A New Religion ?』でRHAPSODYに在籍しながら Fabio Lioneがバンドに復帰し再びヴォーカルを担うと1998年にアルバムがリリースされ、その多彩でパワフルな圧巻のヴォーカル・パフォーマンスとプログHMからよりメロディアスでスピーディなHMサウンドへの進化を魅せた『A New Religion ?』はATHENAの傑作であり90年代イタリアン・パワメタの名盤とされているが、残念な事にやはりワールドワイドで活躍するバンドとの兼任は難しく再び Fabio Lioneは脱退してしまう…

Fabio Lioneの後任と言うプレッシャーを背負う新シンガー Francesco Nerettiを迎えダークなファンタジー・テイストとスラッシーな疾走感を強めたジャーマンHMへ接近した、その影響でか些かマイナーB級HM臭くなった(パタパタ鳴るバスドラが…)新サウンドを提示した3rdアルバム『Twilight Of Days』をドイツの大手インディ・レーベル Noise Recordsから2001年にリリースするが惜しくも2002年に解散を迎え長らく彼等の名はシーンで忘れられていたが、2019年にATHENAはオリジナルメンツを中心に新たなシンガーを迎えて活動を再開し、2022年には Fabio Lioneが再びバンドへ復帰、バンド名を改め本コンセプト作の制作を着々と進めて来たのは2025年夏以降ANGRAが活動を休止する事と決して無関係ではないだろう。

こうして見るとLABYRINTHもATHENAも中心人物、又はバンドの顔とも言えるフロントマンの出たり入ったりにバンド活動が否応なしに引っ張られてゴタついている風に思え、オリジナル・メンバーが誰一人として居なくなったDGMの方が解散も休止も迎えず、コンスタンスにアルバムをリリースし長年活動を続けてきたのだからなんとも皮肉ではあります。

さて、待望の新譜の内容についてですが、一聴してまず驚かされるのがその圧倒するかの様な音の密度の異様な濃さと一度聴いただけでは全ての楽器の音色を判断するのが難しい暴力的とも言える音数の多さだろう。

80年代中期から今も活動中なUSプログHMの元祖バンド FATES WARNING、同じく80年代から活躍するUSプログHMバンドQUEENSRYCHE、ネオクラ風味もあるUSプログHMバンドSYMPHONY X、そしてATHENAの音楽ベースであるDREAM THEATER、それらのバンド達のサウンドから影響を受けつつ、DREAM THEATERの2ndアルバム時を思わすメロディアスでテクニカルな音楽性、PLANET Xを彷彿とさせるメタリックなJAZZハーモニー、英国プログHMバンドTHRESHOLDを想起させる複雑でモダンな鈍色プログレ・ストラクチャー、ANGRA風の切れ味鋭いフックあるリフ、スラッシーでリズミックなギター・チューン、初期CONCEPTIONやイタリアン・プログレッシヴ・パワメタ・バンドELDRITCHを喚起する複雑で屈折した楽曲展開、更にエレクトロニック・ミュージック、JAZZ、そして壮大な映画音楽要素までを絶妙のバランスで過不足なく融合させ、爽快感あるソフトなクリーン・ヴォーカルとKAMELOTスタイルの熱くエピックなパワフル・ヴォーカルを自在に操る Fabio Lioneのエモーショナルで伸びやかな抜群の歌唱力を主軸にダークなディストピアのSFコンセプト・ストーリーを描き、恐らく意図的にだろう欧米の90~00年代プログHMタッチを随所で感じさせる渾身のモダン・プログHMサウンドを聴かせてくれている。

ガチガチに造り込まれた緻密で隙の無い硬質なプロダクションと80年代後半に流行ったオーバープロデュース気味なアルバム群を彷彿とさせる、今で言う期待の新人メロハー・バンドのデヴュー作にレーベルの入れ知恵が働いて人工的な音のレンジは狭く、けれどメリハリ強いキンキンのブライト・サウンドが塊となって耳に雪崩れ込む作風に近い、イタリアン・バンド特有な息苦しささえ覚える怒涛の勢いとやり過ぎな情熱が炸裂したサウンドで、まるで2ndアルバム『A New Religion ?』'98 の次に続くアルバムは本来こうだった、と言わんばかりに当時の音楽性の延長線上にある、さらに演奏技術を向上させ、十分な資金も投入してスタジオ作業に時間も費やし、Fabio Lioneの七変化の歌声と圧倒的な表現力、そして幅広く多彩な音楽性を反映させより洗練させた、20数年以上に渡って研鑽を重ねたベテラン・ミュージシャン達の入れ込み具合が痛いほどヒシヒシと伝わってくる入魂の復帰第一作目だ。

まぁ、再結成第一作だし必要以上に気負ってしまうのは分るし、もうちょっと力を抜いたベテランらしい余裕なんかも魅せて欲しかったが、情熱と芸術のイタリア人な血が騒ぐのか、どこまでも上を追い求めた異様な上昇志向が働いたが故に、スラッシュ・メタル、プログレッシヴ・メタル、シンフォニック・メタル、JAZZ、エレクトロニック・ミュージック、映画音楽を高次元で有機的にMIXしたハイブリッド・サウンドを生み出そうと画策した弊害でか、新人バンドも舌を巻く鮮血を撒き散らさんばかりのド迫力とチャンネルトラッキング全てを埋め尽くすかの如き怒涛のサウンドが炸裂し続け…結果、ここまで聴いてて耳が滅茶苦茶疲れるアルバムも珍しい、という少々残念な顛末に…ウーン(汗

そんな感想に追い打ちをかけるのがコンセプト・アルバムの一大絵巻を描ききる意図にも引っ張られたのか、ほぼ4分台のコンパクトな楽曲ばかりなのにも関わらず無駄にサウンドスケールが壮大な楽曲が連なっている為に各曲毎のメリハリが弱まり、更に絶え間なく叩き出されるボトムの轟音やSE等数え切れぬメタリック・サウンドと音色に塗り潰された印象が続く事もあって叙情感や繊細で優美なタッチの音使いも垣間見えるものの最終的に何もかも単色に濁って聴こえる、一言でいえばキーボーディストでリーダーの Gabriele Guidiが『やり過ぎた』仕上がり具合が総合的な完成度の足を引っ張った感が拭えぬアルバムとなってしまった様に思えます。

色々詰め込み過ぎて Gabriele Guidi自身が操る鍵盤サウンドが凄まじい音圧に押しツブされ良く聴き取れぬ上に、四六時中シンセは鳴ってはいるもののアグレッシヴに地響きを立てるボトム、ザクザク粒の粗い音色を刻むギター、そして存在感抜群なド迫力のヴォーカルに押しやられ、華麗に奏でられる美旋律を轟音が濁らせていく…(´A`)

無論、パワフルで歪んだクランチーなギターと巧みに様々な雰囲気を生むキーボード・ワーク、ダークで邪悪なミステリアス・サウンド、陰鬱でメランコリックな叙情的音使い、そしてシアトリカルでアグレッシヴなヴォーカルと、人気作2ndアルバム『A New Religion ?』で聴けた要素を保ちつつ、SOUNDGARDENっぽい賑やかなリズムワークやフュージョン風味あるシャープなサウンド、ジャジーなハーモニーやモダンで不協和音的なJAZZっぽいパート、そしてエクストリーム・ミュージックのインストゥルメンタル・セクションを彷彿とさせる超スピーディーな疾走感あるセクションとスムースでグルーヴィなシンガロング・パート等々、些か混ぜ過ぎて混沌としているが同時に他で中々聴けぬ複雑に絡み合う音楽要素の新鮮な驚きとエキサイティングな興奮を覚える瞬間も多々あり、彼等なりの創意工夫と〝新たなるプログHMサウンド”を構築しようと懸命に模索している様が見て取れ、なんとも痛し痒しな状態なのが勿体無い…

また、本作の大きなトピックが Fabio Lioneのバンド復帰の他にもう一つ有り、ノルウェー人メタル・シンガー Roy Khan (ex:KAMELOT、CONCEPTION)が1曲で客演しその見事な歌声を披露している事で、2011年に Roy KhanがKAMELOTから脱退した際、彼の抜けた穴を埋める為にKAMELOTのツアーに参加し急遽シンガーを務めたのが、当時RHAPSODY OF FIREに在籍していた Fabio Lioneだったという過去があり、そんな関係からか今回 Roy Khanがゲスト参加したのだろう。

とまれ90年代初頭のDREAM THEATERを出発点に、よりシンフォニックでパワフルなメロスピ・サウンドへ進化していったLABYRINTH、最新作で研鑽を重ねて来たモダン・プログHMからの脱却を図り、古典プログレ・テイストを取り入れより知性と叙情を感じさせるメロディアスHMへの高みへ辿り着いたDGM、そしてプログHMから疾走するスラッシュ・テイストあるパワーメタルへ進化し、23年振りの新作で再びプログHMへ回帰するだけでなく、更にモダンによりテクニカルに、シネマティックなタッチとスケール感を大きく増した新基軸サウンドを披露と、スタート地点では非常に近似したサウンドだったのに三者三様に独自の変化を重ねてきたのが分かって実に興味深いですね。

復帰第一弾作だし少々気負っただけで技術的には文句無く素晴らしいレベルにあるバンドですし、是非とも次作ではもう少し音楽性を整理して〝押しと引き”のメリハリを留意したり、持ち前の優美で繊細な音使いなんかが際立った美旋律が堪能できる、幾分か肩の力を抜いた作品を届けてもらいたいものであります。

って、タイトルから察するに次はパート2が届けられそうなんですが、同一方向性な轟音サウンドのギチギチ詰め合わせアルバムだけは勘弁して欲しいなぁ…そもそも Fabio Lioneが引き続きバンドに在籍してくれるかどうも疑わしいのがなんとも…(汗

Tracklist:
01. Frames Of Humanity
02. Legacy Of The World
03. The Day We Obscured The Sun
04. The Seed
05. I Wish [feat. Roy Khan]
06. The Calm Before The Storm
07. What You Most Desire
08. The Conscience Of Everything
09. Where Innocence Disappears
10. Idle Mind
11. Synchrolife
12. Inception
13. The Departure

ATHENA XIX Line-up:
Fabio Lione : Vocals & Backing Vocals
Simone Pellegrini : Guitars
Gabriele Guidi : Keyboards
Alessio Sabella : Bass
Matteo Amoroso : Drums

Produced、Recorded & Mixed By Gabriele Guidi、Simone Pellegrini、Fabio Lione


# by malilion | 2025-03-10 18:08 | 音楽 | Trackback

イタリアン・プログHMの雄 DGMが自信作であるコンセプト・アルバム 12thアルバムをリリースしたのを今頃ご紹介。

イタリアン・プログHMの雄 DGMが自信作であるコンセプト・アルバム 12thアルバムをリリースしたのを今頃ご紹介。_c0072376_16273343.jpg
DGM 「Endless」'24

今やイタリアを代表するプログレッシヴHMバンドと言っても過言ではない、活動歴30年を超えるキーボード入り5人組ベテラン・バンド DGMの前作『Life』'23 から1年を開けずして続く新作が去年夏頃、Frontiers Music Srl 移籍後4作目となる通算12枚目(EP、LIVE含まず)のフルアルバムを半年以上遅れ(汗)てGETしたのでご紹介。

ベテランの彼等なら駄作をリリースするはずもない、と購入を後回しにし続けていたらこんなにも遅れてしまった…orz

前作『Life』リリース時点で既に当初二枚組にしてリリースする予定だったメロディアスな楽曲を集めたもう一枚分のマテリアルは出来上がっている、とDGMの中心人物でギタリストのみならず今やプロデューサーやエンジニアとして同郷バンドのアルバム制作への協力をはじめ多方面で活躍する奇才 Simone Mularoniが語っていただけに、同時に完全に路線変更になると事前に新たな方向性が仄めかされていた訳ですが確かにその言葉に偽りは無かった模様だ。

アルバムを重ねる毎によりパワフルに、更にアグレッシヴに、そしてドラマティック且つ洗練された叙情派モダン・プログHMを創作し磨き抜いて来た猛者達である彼等、短い間隔で届けられた本作が雑な仕上りであろうハズも無く、前作時点からタップリと時間をかけて練り上げられた本コンセプト・アルバムは、ある男が人生の旅路を振り返り『もし違う道を歩んでいたら己はどう変わったか、何があり得たか、何を見逃していたか』を想像する、あらゆる人にとって普遍的なテーマと問いかけを鮮やかなストーリー・テリングを通じて描ききった力作だ。

匠集団である彼等が満を持して放つアルバムに今更テクニック的な問題やプロダクション等に不備がある訳もなく、そうなると公言されている本作に置いての音楽性やサウンド等の変化にファンならずとも皆が注目していた事だろうが、一聴してハッキリとそれが聴こえて来て思わず笑みが零れてしまった。

メンバーチェンジを繰り返しバンド主導権が Simone Mularoniへ移るにつれ疾走するモダンHMサウンド要素ばかり強められて来た感があったが、ここに来て初期DGMが標榜していただろうDREAM THEATER等をはじめ90年代プログHMバンド作に顕著だったスリリングでテクニカルな技巧派要素と如何にもイタリアン・バンド作である事を強く思わせる濃密な叙情感と特有の優雅なロマンチックさを湛えたメランコリックな美旋律、そして持ち前のメロディセンスを存分に活かしつつ静寂と情熱のコンビネーションが絶妙な陰影色濃い凝った楽曲展開が続く、まるでプログレッシヴ・ロックの王道へ回帰したような、00年代以降のプログHM的アプローチと古典的プログレの影響をMIXした、モダン且つ非常に洗練されたユーロ・メロディアス・プログHMを聴かせてくれている。

これまで通りにスピードとテクニックを兼ね備えたクランチーで音数多いギター・サウンドとパワフルなハーモニー・ヴォーカルに重点を置きつつ、ヴァイオリンやフルートといった如何にもプログレ作に相応しい艶やかな楽器の音色も取り入れて楽曲に深みと美しさを加え、近年のDGM作で聴かれなかったヴィンテージなキーボード等の音使いや楽曲アプローチを垣間見せる事で〝定番のDGMらしさ”からの脱却を強く意識させる、今やユーロ圏のみならず世界的にも屈指のメロハー・インディ・レーベルへと成長したFrontiers Records所属バンドに求められる暗黙のルールから逸脱し、思うままに楽器を掻き鳴らす楽し気な雰囲気とフレッシュな爽快感がアルバム全体から感じられる点も本作が好印象を与える大きなポイントなのは間違いない。

途中キャッチーでフック満載の所謂ストレートなメロハー・サウンドが飛び出して来たのは正直予想外でしたが、意外にマッチしているミステリアスでメロディアスなサウンドを楽し気に奏でる彼等の姿は本当に新鮮で驚かされます (´∀`)

プログレ的な視点から見ると、音圧強めのメタリックな轟音から解放されたセンチメンタルな想いを突き破るような衝動がドラマチックに展開する楽曲に秘められており、決して遡る事は叶わぬ悔恨と感情の旅は退廃的な文学を背景にしたような深遠な幻想世界が渦巻くかの様で、今までとは違う事をしたかったという彼等が到達した新境地なのだろうし、意識的にボトム・サウンドを少し引っ込めた抑え目なHR的MIXに仕上げた事も決して無関係ではないだろう。

以前にも増して鍵盤奏者である Emanuele Casaliの作曲関与が強まった(サックスとフルートまで演奏と多才ぶりを発揮!)為に、テクニカルなバンド・アンサンブルに70年代プログレに根差したヴィンテージな残り香が漂う様になったのは間違いなく、変化を求めた Simone Mularoniの思惑とも合致した結果が本作でのサウンドの変遷なのでしょうから、心地よいメロディ・ラインとセンス良いアレンジに各メンバーのスキルの高さを感じさせるこの方向性を次作でも是非引き継いで欲しいですね (*´∀`*)

考えてみたらオリジナルのDGMメンバー達がDREAM THEATERに影響を受けてスタートしたDGM初期サウンドには Simone Mularoniは一切関わっていなかった訳だから、彼にしてみれば本作で提示したのは新基軸サウンドで、けれど初期からのファンからすれはデヴュー当時へ回帰したかのような作風が大変好ましく、よくあるベテラン・バンドの初期作風を蔑ろにした挙句に無理して最新モダン・サウンドを標榜する歪な進化では無い、バンドとファン双方にとってWin-Winな変化だったのがラッキーでした♪

やはり今までどちらかと言うとパワー押しなサウンドばかりが耳につき、今作で新たに示した引きの優美な叙情感が際立つヴィンテージ風味増しでアコースティカルなサウンドを聴くにつけ、その点が弱かったと今なら思えるそれくらい柔剛幅広く奥行ある魅力的な新規サウンドを構築し、一段も二段もサウンドスケールとレベルをアップさせた彼等には脱帽であります。

主要メンバーが抜ける大幅なメンバーチェンジを数多く繰り返したのに更にバンドが発展しサウンドのクオリティも活動も保たれ続けているなんて、DGMは実に稀有な例とも言えますよね。

別バンドと比較するのは何ですが、今年初めに前作から4年振りの新譜『In The Vanishing Echoes Of Goodbye』をリリースしたイタリアン・シンフォHMバンド LABYRINTHは彼等と同期バンドながら、新作で示したサウンドはDGMが前作までで捨て去ったスピーディでメロディアスなモダンHMといったイメージで、今まで両者似通った音楽性でしたが本作をもって大きく互いの進む道が隔たった気がします。

『プログHMは好きだけど古典プログレはちょっと…』という若いメタル・ファンの皆さんは安心して欲しい、相変わらず攻撃的でヘヴィなシュレッド・リフが唸りを上げ、雄々しくメロディアスなコーラスと耳を惹く高速ユニゾン・パートを繰り広げるキーボードとギターもシッカリとフィーチャーし、リズム・セクションは怒涛の勢いで変拍子を多用したソリッドなビートを叩き出す、それでいて少しも鼻につく強引さや粗野さは無く、美しく溶け合うフルートとクラシカルなストリングス、フックある歌メロと爽快ささえ覚えるヴォーカル・ハーモニーが渾然一体となって洗練され知的な印象を与える辺りが如何にもベテラン・ミュージシャン達が練り上げたユーロ・プログHM作といった所で、総じて全てがパワーアップしている点は見事の一言だろう。

尚、専任ヴァイオリン奏者を擁するイタリアン・シンフォニック・パワーメタル・バンドWINTERAGEのヴァイオリニスト Gabriele BoschiとDELAIN、NIGHTLAND、MODERN AGE SLAVERY、SUN OF THE SUNS等で活躍するイタリア人マルチ・ミュージシャンである Ludovico Cioffiがオーケストラ・アレンジで客演しているので2人のファンも要チェックなアルバムだ。

そうそう、日本盤ボートラのアコースティック・ヴァージョンはアコギとピアノ、そしてヴォーカルだけで切々と歌い上げられる正に今回の古典プログレ・テイストを感じさせる新作に相応しい優美で艶やか、爽快で煌びやかなドリーミィ・サウンドで、この一曲の為にもちょっとお高いけど国内盤を購入せざる負えない、それくらい買い逃すと後悔する素晴らしい出来栄えな曲ですので、本作をお求めの方は是非に日本盤のご購入を!

去年末に8年ぶりとなる待望の来日公演を果たしその雄姿を直に目にした諸兄も多いだろう彼等、既に同時期にデヴューしたプログHMバンド達の多くがその姿を消した今、是非ともこのまま更なる音楽性の発展と前進を刻んだ名作を届け続けて欲しいものであります。

Tracklist:
01. Promises
02. The Great Unknown
03. The Wake
04. Solitude
05. From Ashes
06. Final Call
07. Blank Pages
08. ...Of Endless Echoes
09. Blank Pages (Acoustic Version)

DGM Line-up:
Mark Basile : Vocals
Simone Mularoni : Guitars
Andrea Arcangeli : Bass
Fabio Costantino : Drums
Emanuele Casali : Keyboards、Flute、Sax

Guest Musicians:
Gabriele Boschi : Violin on Tracks 02 & 08
Ludovico Cioffi : Orchestral Arrangements & Programming on Track 08

Produced by Simone Mularoni
Recorded、Mixed 、Mastered by Simone Mularoni

P.S. 本作からシンガー Marco Basileのクレジットが英語風に改まっていますが当然、同一人物であります。

# by malilion | 2025-03-04 16:27 | 音楽 | Trackback