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イタリアン・ゴスシンフォ・バンドPRESENCEが8年ぶりに再びダークでホラーチックな7thアルバムをリリース!

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PRESENCE 「Them」'24

近年はイタリアン・プログレの大御所OSANNAとのコラボレートや女性ミュージシャンのみで結成されたイタリアン・ダーク・シンフォ・ロックバンドSophya Baccini's ARADIAでの活躍、そしてソロ活動でも知られ、ユーロ圏で絶大な人気と知名度を誇るナポリの歌姫こと Sophya Baccini嬢を擁し、1988年に結成されナポリを拠点に活動する3人組イタリアン・ゴシック・シンフォ・バンドの8年振りとな7th (EP、LIVE含まず)アルバムを少々遅れてご紹介。

元々キーボード入り5人組でインディ活動を開始したが2nd時にジェノヴァのBlack Widow Recordsと契約した後、3rd『Black Opera』'96 時点でバンドメンツが3人になってしまい、本作でも固定メンツはヴォーカリスト兼ピアニストの Sophya Baccini、イタリアン・ミュージックシーンでも著名なセッション・ギタリストで本の執筆やギター講師、映画音楽や舞台音楽等々の数知れぬコラボレート活動中なマルチ・インストゥルメンタリストの名手 Sergio Casamassima、イタリア人ソロ・アーテイストのアルバム制作やサントラ制作等、多岐に渡るセッション活動で有名なマルチ・インストゥルメンタリストの Enrico Iglioの3名のみで、前作『Masters and Following』'16 ではリズム・セクションはゲスト奏者(オリジナル・ドラマー Sergio Quagliarellaが参加)で賄っていたが今回はゲスト奏者を迎えず全てバンド内でリズム・パートを補完している。

本作も前作と同じく8年のインターバルが空いた事からも本バンドは既に各メンバーにとってメインの音楽活動の場ではなく、銘々の活動と並行しつつ断続的活動を行なうサイド・プロジェクトへとプライオリティが低下した“著名ミュージシャンがかって在籍した名だけ知られるマイナーな古巣バンド”といったポジションでとっくに解散してもおかしくない状況なものの、それ故にユーロ圏シーンでの成功や売り上げ等諸々のプレッシャーから解放され、各自が課外活動で培った成果や経験を持ち寄って自由で気ままな趣味全開の創作の場だからこそ今も存続しているのではないのだろうか?

Sophya Baccini嬢はソロ活動やイタリア大物ミュージシャンやビッグネーム・バンドとのコラボ、そしてSophya Baccini's ARADIAを率いて2023年10月に10年ぶりとなる3rdアルバムをリリースしたばかりと一時も休む間もなく活動し、Sergio Casamassimaは各セッションのみならず、ANDJ(Associazione Napoletana Diffusione Jazz)のロック・フュージョン部門の講師に招かれたり、個人レッスンやギター・ワークショップを開催したり、2002年からは幼馴染の Alfredo Imparato(キーボーディスト兼プログラマー)と共に『AKASHA musical contaminations 360°』というプロジェクトを展開するだけでなく、2018年3月にはSIR JOE PROJECT名義で環境破壊を憂うコンセプトの初ソロ作『Letze Baum』をリリースと同じく絶え間なく創作活動をしてミュージックシーンを賑わしている。

2人に比べ Enrico Iglioは裏方作業がメインで余りその名がシーンでクローズアップされる事は無いが、キーボードをはじめドラムも巧みに操れ一人何役もこなせる事からバジェットを圧縮したい録音作業にうってつけの人材な事もあってか手広くポップシンガーのアルバム制作等に協力したりサントラ作業等にも参加し、恐らく2人よりも数多くのスタジオワークをこなしているものと思われる。

そんな3人が久しぶりに届けてくれた本作は、Igor Stravinskyや Alban Berg、さらには Chopinといった古典から近代クラシックまで広くインスピレーションを得て作曲されたという20分を超す複雑に入り組むロック・オペラ的シンフォニック組曲となった表題曲『Them』をはじめ、カンタベリー流のプログレやJAZZ要素に加え、BLACK WIDOWやVAN DER GRAAF GENERATOR風なダークでミステリアスな謎めいた曲調や、前作でも聴かれたサスペンスかホラー映画のサントラの様な物憂げなストリングス、不穏な乱れ踊るピアノや不気味なSE、不安を煽る環境音等が散りばめられ、GENTLE GIANTを彷彿とさせる目まぐるしいリズムチェンジやテクニカルな変拍子、予測不可能なフックを多用した難解な楽曲構成や精緻なアンサンブルとブレイクを交えて緩急を織り成し、重厚で華麗なキーボードが活躍する壮大なEL&P風オーケストレーションも顔を出しつつスリリングに展開していく、大雑把に言って前作『Masters and Following』の延長戦上なサウンド(前作ジャケは不気味な館、そして本作はモノトーンのカラス、だもんなぁ…)の作品と言えるだろう。

呪術めいた密やかな囁きや啜り泣き、時に天使のように穏やかに、また時に悪魔のような邪な狂気を孕んで、正に変幻自在に七変化する妖艶な Sophya Baccini嬢の幅広い表現力と美声で楽曲を完全に支配するエモーショナルなヴォーカルを主軸に据え展開するダークなゴシック・ロック調のシンフォニックな音楽性の楽曲は、70年代プログレ調の重く歪んだオルガンの音色がヴィンテージ色を強調し、幾分HMタッチが残るギターをはじめアタック感の強いロック・サウンドだけでなくピアノやストリングス、フルート等でクラシカルな優雅さを演出するドラマチックな美旋律も交え、陰影色濃く落差の激しいシアトリカルな叙情性とメランコリックな耽美サウンドが中世音楽色やオペラ、ホラー映画のサントラ臭と渾然一体となって聴く者を魅了する、芸術の本場イタリアン人ミュージシャンにしか成し得ぬ味わい深く癖の強い取摩訶不思議なアルバムだ。

正直、心地良さと対局にあるダークで難解な聴き難い作品で万人向けとはとても言えないが、そもそも70年代ホラー風なんてハナから商業的な売り上げを見込めぬマニアックな方向性だし、ベテラン・ミュージシャンのアイデアとインスピレーションの赴くままに奏でられた、それ故に古の巨人達が遺したプログレッシヴ・サウンドの伝統や模範から大きく逸脱する、イタリアン・プログレの過去と未来を繋ぐだけでなくアヴァンギャルドでシアトリカルな稀に見る独創性がシンフォ&ゴシック・ロックの地平を押し進める事になった一作と、後になって語られる事になるかもしれないそんな冒険作でもあります。

Tracks Listing:
01. The Undead
02. Aftermath
03. Dance Macabre
04. To Each Other
05. Them
06. Drawbridge
07. Stige
08. If You Dare

PRESENCE Line-up:
Sophya Baccini    (Lead & Backing Vocals)
Sergio Casamassima (Guitars & Bass)
Enrico Iglio      (Keyboards、Synthesizer、Percussions)



# by malilion | 2024-09-04 17:33 | 音楽 | Trackback

英国シンフォ・バンドMAGENTAを率いる Robert Reedのデヴュー・バンドCYANの2ndリメイク収録時に漏れた音源がリリース!!


英国シンフォ・バンドMAGENTAを率いる Robert Reedのデヴュー・バンドCYANの2ndリメイク収録時に漏れた音源がリリース!!_c0072376_11575982.jpgCYAN 「The Guardians」'24

00年代以降の英国シンフォ・シーンを代表するメロディアス・シンフォニックのトップ・アクトMAGENTAを率いる英国人マルチ・プレイヤー Robert ReedがMAGENTA結成前の90年代初頭に活動していたポンプ・バンドCYANの2ndアルバム『Pictures From The Other Side』'94 を2021年のデヴュー作リメイク・アルバム同様に一部の楽曲を書き直し、アレンジも新たに最新のテクノロジーを用いて再構築を行い、さらに全てバンド編成にて新録した殆ど完全新作と言えるリメイク・アルバム『Pictures From The Other Side』'23 制作時に録音されながらも収録時間の関係で惜しくもオミットされたオリジナル盤2nd収録曲他計3曲が収録された『Pictures From The Other Side』'23 補完作が自主盤リリースされたのを少々遅れてご紹介。

2ndリメイク作から漏れた"The Guardians (リメイクに際し『The Guardians Of Your Destiny』へ改題)"、"All Around The World"の2曲のリメイク・ヴァージョンに加え、1999年発売のベスト・コンピSI盤『Echoes』にアルバム未発表曲として収録されていたインスト・ナンバー"Cyan"の再録リメイク・ヴァージョンから成る計3曲を収録と楽曲数を見るだけなら『EP扱いじゃないの?』という疑問を抱くが、改題された『The Guardians Of Your Destiny』は原曲に更なる拡張が行われ、2倍以上の長さに再構築された25分超えの大曲(オリジナルは12分)へ生まれ変わっており、他の2曲も6分超えなのでEPと捉えるには些か長尺作に仕上がった為かフル・アルバム扱いになった模様だ。

同時期に録音された音源だけあって、そのサウンドや感触は既にここでもご紹介した『Pictures From The Other Side』'23 と同一方向性で、GENESIS、YES等の70年代プログレの影響下にあるチープな鳴りのポンプ・サウンドが今や懐かしさと味わいまで感じさえするオリジナル曲に対し、新たな解釈で楽曲を書き直し、最新の録音機材でサウンドを構築し直し、細かなアレンジも全て新ため、そしてこれまでの活動で築いた人脈をフル活用し、培った経験と持てるスキルを存分に注ぎ込んだ、Peter Jones、Dan Nelson、Luke Machinという数多くのシンフォ系バンドやシンフォ・プロジェクトにて活躍中の腕利きベテラン・ミュージシャン達を迎えた事によって Robert Reedが当時思い描きつつも果たせなかった理想のサウンドが初めて完成したと言える、オリジナル・ヴァージョンの良さを引き継ぎながら更に表現力豊かな演奏と一級品のヴォーカル・パートがプラスされ、格段にレベルアップしたドラマティックなシンフォニック・サウンドを堪能出来る聴き応え抜群の力作となっている。

オリジナル盤で歌っていた Nigel Voyleには悪いが、自身のソロ・シンフォ・プロジェクトTIGER MOTH TALESやCAMELのキーボード奏者としても活躍する英国出身の盲目の天才マルチ・ミュージシャン Peter Jonesのエモーショナルで伸びやか、情感タップリに力強く歌い上げる抜群のヴォーカルと、英国シンフォ・バンドTHE TANGENTや自身が率いるプログ・バンドMASCHINEでの活躍が知られ、近年 Francis Dunneryが再結成した Francis Dunnery's IT BITESでもギタリストを務める Luke Machinの咽び泣き言葉を発するかの様な絶品なテクニックとトーンコントロールが響き渡るリード・ギタ-を聴くだけでも、もう何も文句なんて無い全て許せる程に大満足しちゃえるのです♪ (*´∀`*)

『Pictures From The Other Side』'23 でもそうでしたが、艶やかな美声のフィメール・バックヴォーカルが要所でフィーチャーされ、オリジナルに無かった優美さや清らかさ、そして軽快さの加えられた楽曲は実に素晴らしく、ヴォーカル・パートや派手なインタープレイ・パート等全てのトーラル・バランスを考慮して細部まで考え抜かれた絶妙のアレンジ、ゆったりと展開していく多彩で鮮やかなアンサンブル、モダンでありながら優雅さ際立つロマンチックな音色、ノスタルジアに縁どられた英国叙情が広がるドラマチックな美旋律、それら全てが心に残るメロディアスな雰囲気と創造性に満ちてまるで輝きを放っているかの様だ。

80年代英国ポンプ・ファンな方や Robert Reed個人のファン、そしてMAGENTAのファンにも当然お薦めな素晴らしい出来栄えのモダン・シンフォロック作でありますが、その美しくプロフェッショナルな仕上がり具合とは裏腹に自主制作盤となっておりますのでお求めの方は早目に入手しておきましょう、ニッチなジャンルのプログレ系はなかなか再発されませんからネ(涙

Tracks Listing:
01. The Guardians Of Your Destiny
02. All Around The World
03. Cyan

CYAN Musicians:
Robert Reed   (Keyboards、Guitars、Backing Vocals)
Luke Machin   (Lead Guitars)
Peter Jones    (Lead Vocals、Saxophone)
Dan Nelson    (Bass)
Tim Robinson   (Drums)

with:
Angharad Brinn  (Vocals)


# by malilion | 2024-09-02 11:59 | 音楽 | Trackback

ギリシア産80年代風シンセポップ・バンドSILVERNITEがシンガーをチェンジして2ndアルバムをリリース!!

ギリシア産80年代風シンセポップ・バンドSILVERNITEがシンガーをチェンジして2ndアルバムをリリース!!_c0072376_17191198.jpg
SILVERNITE 「Lost City」'24

2019年夏にギリシア北部テッサロニキで結成され、紅一点女性シンガー Tanja Harkonen嬢を擁するレトロ・メロディアス・ポップロック・バンドが、シンガーをギリシア人歌姫 Mariangela Arapoglidou嬢へチェンジした新編成でデンマークのメロハー専科レーベル Lions Pride Music移籍第一弾となる2ndアルバムを4年振りにリリースしたので即GET!

Tanja Harkonen嬢は北欧フィンランド出身でEVERSLAVEなるメロデス・バンドの一員として3作のデモ音源をリリースしていたシンガーでしたが、やはりと言うか当然と言うべきか2019年にEP『So It Began』でデヴューした当時から不安視していた顔を見合わせてのジャムセッション等が難しい地理的問題が予想通りに勃発し歌姫をチェンジした模様です。

残念ながらギリシア・シーンについて殆んど情報を持ち合わせていないので Mariangela Arapoglidou嬢がバンド参加以前にどのような活動をしていたか詳細不明ながら、公開されている画像やその風貌等を見るに、ギリシアのインディ・ロックバンドかソロ活動を数年経たシンガーと思しき人物のようだ。

さて、本作の内容についてだが、自主制作環境からインディとは言え Lions Pride Musicと契約を結んだ効果が直ぐにそのサウンドクオリティの向上から察せられ、特にシンセ類を多用するサウンド形態の本バンドに置いてはスタジオワークにかかるバジェットを得られた恩恵は大きく、アルバムの至る所にその効果を感じ取る事が出来るのがまずは嬉しいですね♪ (゚∀゚)

バンドコンセプトであるオクトジェニックなメロディアス・ロックと最新デジタル・ムーヴメントであるシンセウェイヴをシームレスに融合し、シンセウェイヴのノスタルジックなヴァイヴとメロディアス・ロックのエモーショナルなパワーを響かせるエキサイティングなレトロ・フューチャー風味のデジタル・ポップで、SF、コミック、アニメ、映画、ネオンまみれの美学への愛を描き出し、リスナーを現実と空想の境界線が曖昧な黄金の80年代の記憶を呼び起こすドリーム・ワールドへと誘う、と言うデヴュー作以来の80年代タイムスリップ・ミュージック路線を継承しつつ全ての面で大幅なアップデートを果たした、実に聴き応えのある作品を届けてくれている。

注目の新フロントマンで歌姫の Mariangela(マリアンジェラ)嬢の歌声ですが、ノルウェーのメロディックロック・クイーン Issa Oversveen嬢と 80年代に活躍したイタリアン・ポップシンガー Valerie Door嬢をミックスしたような印象の、所謂フィメール・シンガーらしい如何にもハードポップ向きな穏やかで艶やかなヴォーカルを聴かせ、時に舌っ足らずなキュート・ヴォイス、時に神秘的で厳かなソプラノ・ヴォイス、時にセクシーなウィスパー・ヴォイスを駆使する女性的な特徴を活かした滑らかでフレッシュなその歌唱と、前任者と方向性は違うものの多彩な表現やアプローチで楽曲に幅や様々な表情を生み出し、特に叙情感あるユーロ・ハードポップ・スタイルな楽曲にはこの上なくジャストフィットしており新作の仕上がり具合に多大な貢献を果たしていると言っていいだろう。

リーダー Strutterの操る煌びやかなシンセワークはバッキングにソロにと前作以上に冴え渡り、相棒 Nash G.の弾くギターワークも非常に印象的で、派手なリード・プレイをやり過ぎる事なく楽曲第一なソロやメロディを余裕を持って奏でており、さらにキーボードとギター互いのサウンドが双方を引き立て、生っぽくロックなフィーリングと冷ややかで無機質な感覚が交差しサウンドの奥行と立体感を際立たせ、ノスタルジアとフューチャリズムのユニークなブレンドを音楽にさり気なく吹き込み響かせる手法はベテランAORミュージシャン顔負けの見事さだ。

特にそれは複数収録されているシンセとエレクトリック・ギターのドラマティックなハイブリッド・インストゥルメンタル曲で証明されているので、シンセウェイヴ・ファンの方々は是非堪能して欲しい。

そしてなんと言っても本作を前作以上の聴き応えあるアルバムにするのに大いに貢献しているのは、ゲスト・サックス奏者の Artem Zhulyevのムーディーでエモーショナルな演奏の数々で、安っぽいシンセ・サンプルで代用せずに本物のサックス・サウンドの艶やかで華やかな響きを用いる事で、前作以上の音の厚みと音楽性の広がり、そして新鮮な味わいを増させる事に成功している点は見逃せないだろう。

只、諸手を上げて全てを絶賛出来るかと言うと難しく、前任者の Tanja Harkonen嬢は地元フィンランドでメロデス・バンドに参加していただけあって少しハスキーでラフな感触もあるパワフルで伸びやかな歌唱を聴かせ、シンセナイズされた幾分ハードエッヂの弱いオクトジェニック・ポップロックなデジタリー・サウンドと上手い具合に差異が生まれ互いを引き立て合う効果を感じさせていたのだが、残念ながら新シンガーの Mariangela嬢の歌声は明らかに前任者より力強さで劣り、良く言えばバックのサウンドとシンガーの歌声が同一方向へ纏まったイメージなのだが、悪く言えば Tanja Harkonen嬢がもたらしていたロック・フィールあるラフでパワフルな歌唱と柔和でメロディアスなバックサウンドとのコントラストが生んでいた興味深い独自性が消えてしまい、近年数多くデヴューしている凡百のメロディアス&シンセウェイヴ・ポップ・バンド化してデヴュー以来の彼等固有のオリジナル・サウンドが消失してしまったように思え非常に残念だ…

その他にも80年代メインストリームを騒がせた BON JOVI、DOKKEN、TOTO等のメジャー・バンドや、当時のギター・ヒーロー達を彷彿とさせるオクトジェニックな歯切れ良くスリリングなギター・リフが随所でフィーチャーされてはいるがティピカルなロック・バンド程にギター・サウンドは支配的ではなく、ロックと呼ぶに十分な手応えなもののやはりサウンドの多くを彩るシンセに埋没し勝ちな瞬間は多く、そして本作からベース・パートがシンセで代用された弊害でかベースラインは非常に主張が弱くて聴き取り難く、ドラム・パートも意図的にか楽曲にアジャストさせる為なのか専任ドラマーがプレイしているにも関わらず無機質なドラム・マシーンやメリハリの欠けた打ち込みの様に感じられる時が多々あり、この辺りの問題はリーダーでプロデュースも手掛けて総指揮を執る Strutterが全体的なサウンドの統一を図ったが為に起きた問題なのかもしれず一概に悪い点とも言い切れないのですが、出来る事なら次作は有名プロデューサーか各プレイヤーの良さを引き出すプロデューサーを迎えて、よりバンドサウンドとして一体感の向上したトータルバランスと演奏レベルを引き上げたアルバムを届けて欲しいものであります。

オクトジェニックなメロディアス・ロックとシンセウェイヴを融合させた80年代を思わせる華やかなユーロ・ハートポップ・サウンドやフィメール・シンガーの活躍するほんのりレトロ風味なメロディアス・ハードポップがお好みな方なら是非一度ご自身の耳でチェックしてメロハー・ジャンル不毛の地 ギリシアで果敢に頑張っている彼等を応援して上げて欲しい。

Tracks Listing:
01. The Dawn
02. Angels Eyes
03. Show Me The Way
04. Lost City
05. Last Stand
06. Come N' Love Me
07. Boarding
08. Tafusam's Rage
09. Yellow River
10. Road To Eternity
11. Free Now

SILVERNITE Line-up:
MariAngela      (Lead Vocals)
Strutter       (Synthesizer & Backing Vocals)
Nash G.       (Guitars)
Minas Chatziminas (Drums)

Additional Musicians:
Artem Zhulyev   (Saxophone)
Tomislav Krevzel  (Voice Over)

Produced by Strutter


# by malilion | 2024-09-01 17:21 | 音楽 | Trackback

80年代中期にLAで活躍したUSインディ・メロディアスHMバンドXERONの唯一作が初CD化&限定リイシュー!!

80年代中期にLAで活躍したUSインディ・メロディアスHMバンドXERONの唯一作が初CD化&限定リイシュー!!_c0072376_17281303.jpg
XERON 「Does Anybody Hear....+ 4」'24

人知れずその姿を消したマイナー・メロディアス・バンドの発掘再販でマニアに有名なイタリアのSTEELHEART Records『The”LOST U.S. JEWELS”Collectors Series』の第19弾は、1978年に結成され80年代初期に米国California州LA近郊を拠点に活躍したツインギター5人組メロディアスHRバンドXERONが1985年に残した唯一作EP『Does Anybody Hear...』にEPリリース前の1984年Costa Mesa公演からアルバム未収録曲を含むレアなLIVE音源を4曲追加した全10曲を収録し、デジタルリマスター&オフィシャル初CD化で500枚限定リイシューしたのを少々遅れてGET!

インディ・バンドの常でメンバー・チェンジは数えきれず、80年代を迎える頃にはオリジナル・メンバーはギタリスト Trevor Jayのみとなったが、シンガーの Larry Leon が加入するとバンドサウンドがやっと固まり、地元を中心に果敢に活動を続けて知名度と腕を上げ、遂に1985年に本作EPをOronsay Recordsからリリースしたのでした。

後にUS産業ロック・プロジェクト・バンドFAKE I.D.に参加していたギタリスト Basil Fungや1980年代に5年間に渡りアノ Cheap Trickの裏方キーボーディストを務めていた Phil Cristian とバンドを結成し1998年に唯一作『Hands Of Time』を残しているUSメロディアスHMバンドBIG MOUTHでほんのりハスキーながら良く伸びるエモーショナルなハイトーン・ヴォーカルを披露する事になる Larry Leonの若かりし頃の溌剌としたクリア-・ヴォイスが実に心地よく、METAL FORCES誌には『QUEENSRYCHE meets JOURNEY』と評され、ROCK CANDY誌にはPROPHETやWHITE SISTER、WRABIT等が引き合いに出され比較されたのも頷ける良作で、本作リリース後に活動が急速に停滞し同年に呆気なく解散してしまったのが惜しまれます…

メジャー・シーンにストレートに倣った80年代USメロディアス・ロックをベースにしつつ、鍵盤奏者がメンバーに居ないものの大々的にキーボードをフィーチャーして楽曲を煌びやかにし、随所で素晴らしいアレンジの妙を魅せる事で、ティピカルなベイエリア・スタイルのHM要素と爽快なヴォーカル・ハーモニーも随所でフィーチャーしたコンパクトでキャッチーなAOR要素を巧みに融合させた、大活躍するシンセがヴィンテージ・プログレ風味も感じさせるのが一癖あって実に面白く、本リイシュー音源は残念ながら一部にノイズ(涙)が認められるが、インディ作にしては元々質の高いレコーディングが行われたのも本作の印象を良くしている要因の一つなのは間違いない。

素晴らしいソングライティングとタイトな音楽性がフィーチャーされたポップでフック満載な完成度高いゴージャスなサウンドのアルバムではあるが、本作を当時のその他大勢のインディ・クラブバンド作と差別化している最大要因であるキーボード・サウンドを操るのがバンドメンバーでなかった事が、好評だったEPの次、バンドの進むべき方向性について妨げになり、もしかして早々に解散してしまった可能性が無きにしも非ずと今なら思えてしまいます…EPリリース前のLIVE音源を聴くとツイン・ギターのサウンド以上にキーボード・サウンドをステージで大々的にフィーチャーしているし、誰だってバンドメンバーだと思っちゃうよなぁ…サポートメンバーにしては活躍し過ぎ(汗)だし、その辺りがギタリスト2人と音楽性でも衝突を引き起こしたのかも?

若しくはレコーディングではリードにリズムにと大いに創作面で貢献したギタリスト John WoloszynがEPリリース前に脱退した為、音楽的にも少なくない影響を持ち込んでいたメンバーが抜けてサウンドに迷いが生まれたんでしょうか? まぁ、今となっては全て歴史の闇の中ですね…

その点を考慮しなければ煌びやかなキーボードが大活躍する、パワフルでキャッチーなLIVEトラックは録音状況もまずまずで楽しめ、EPでなく未収録音源も正式レコーディングしてフルアルバムを是非とも残して置いて欲しかったですね。

PROPHETやWHITE SISTER、WRABIT等のみならず、80年代初期のSTARZにインスパイアされたと思しきフラッシーでスリリングなツイン・ギターと華やかで煌びやかなキーボードが楽しめる、歯切れ良くメロディアスでキャッチーな黄金の80年代USゴージャス・メロディアスHMサウンドがお好きな方に是非お薦めしたい一作であります。

Tracks Listing:
01. Visions
02. Changes Calling
03. Breathless
04. Does Anybody Hear…
05. Would You Belong To Me ?
06. Lonely Street

Bouns Live at the "Concert Factory", Costa Mesa, CA, May 6th, 1984
07. Shadow Of Your Heart (Live)
08. Change The Future (Live)
09. Lonely Street (Live)
10. Fast As I Can Go (Live)

XERON Line-Up:
Larry Leon    (Lead Vocals)
Trevor Jay     (Lead Guitars)
Paul McPhee   (Rhythm Guitar on Track 02、Backing Vocals)
Geoffrey Bowlick (Bass)
Jeff Wolfe     (Drums、Percussion、Backing Vocals)

with
Mike Tavera    (Keyboards、Synthesizer)
John Woloszyn  (Lead & Rhythm Guitars)


# by malilion | 2024-08-31 17:21 | 音楽 | Trackback

英国シンフォ・シーンを代表するベテラン・バンドの一つ JADISが8年振りに復活し10thアルバムをリリース!!

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JADIS 「More Questions Than Answers」'24

1982年に結成され、MARILLION、IQ、PALLAS、TWELFTH NIGHT等と共に80年代ポンプ・ムーヴメント勃発時にUKアンダーグラウンド・シーンを盛り上げたJADISが、唯一のオリジナル・メンバーでリーダーの Gary Chandler (Vocals、Guitars)に率いられ前作『No Fear Of Looking Down』'16 から約8年振り通算10作目となる新譜でシーンに帰還したのを些か遅れてGETしたので今頃にご紹介。

バンドの長い歴史を振り返ると、常にベーシストの John Jowitt (ex:IQ、ex:ARENA、ex:FROST*、DRIFTING SUN、etc...)と二代目キーボーディトの Martin Orford (ex:IQ、x:THE LENS、ex:John Wetton Band、etc...)が脱退、再加入を同時期に繰り返し(2008年 Martin Orfordは音楽業界から引退、ファンの要望に応え直ぐ復帰…)て来たのだが、本作は前作から Martin Orfordのみが復帰した John Jowittの居ない前作と同じ新4人編成となっての二作目となる作品となっている。

イヤー、これだけインターバルが空いたのでまたぞろメンツが変わっているんだろうなぁ、などと悲しい予想をしていただけにメンバー・チェンジの類いが無くて何よりであります♪ ヽ(´ヮ`)ノ

アルバムリリース間隔が常に4、5年あった上に、近作の作詞作曲は無論の事、プロデュースやミックスに至るスタジオワークまで殆んど全て Gary Chandlerが手掛けるワンマン体勢な、それ故に纏まりがあり独自色豊かな Gary Chandlerの弾くクリアーなギターを主軸にしたフュージョン・サイドからポンプ&シンフォ系へアプローチして変異したかの様なモダン・メロディアス・シンフォロックであるJADISサウンドを保ち続けられた反面、他のメンバーは待機期間に他の収入が無い場合は継続してバンドに在籍し続け辛い等のワンマン・バンド共通な問題を常に孕んでいた訳で、今回初めて長いインターバル (Gary Chandlerが音楽の創作から完全に離れてしまっていた…)を経ても在籍し続けてくれたベーシスト Andy Marlowは他にもプロデュース業等で生計を立てられていたのが大きかったんでしょうねぇ…(汗

いつになくインターバルが空いた影響なのか、音楽から離れていた短くない期間に何か思う所があったのか、常通り Gary Chandlerの爽快感あふれるクリアーでキラキラとした美旋律を紡ぐギターと持ち味であるシンプルでストレートでありながら他の80年代UKポンプ勢とは一線を画すキャッチーでブリリアントなポップサウンドや英国叙情香るセンチメンタルでドラマティックなシンフォニック・ロック、そしてフュージョンチックなモダン・サウンドに乗った軽快でスタイリッシュなセンスをタップリ堪能出来るティピカルなJADISサウンドが詰まった一枚なれど、本作には Martin Orfordが独力で創作し持ち込んだ楽曲を4曲も収録している点や、プロデュース、ミックス、エンジニアリング等今まで Gary Chandlerが仕切っていた裏方作業を Andy Marlowに初めて任せた事、アレンジやアイディア等を含めてメンバー全員が作曲し創作に貢献している点も大きな特色と言え、これまで40年以上かけ築いてきた音楽要素を包括的に含みつつも他メンバーの持ち込んだ新たな感覚も活かされたJADISらしい爽快なメロディック・シンフォ・ロックが堪能できる会心の一作となっている。

プロデュースを Andy Marlowが手掛けている為か、いつになくテクニカルで鮮明なリズム・ワークとダイナミックでタイトなドライヴ感がアルバム中に満ち溢れており、いつもと変わらぬ Gary Chandlerが弾くギターが奏でるキャッチーでエモーショナルなメロディとフックある伸びやかなヴォーカルに導かれ、Martin Orfordが巧みに操るオルガンやメロトロン、シンセ等をフィーチャーしつつ繊細なアコギや涼やかなフルートも交えたフォーク調でアコースティカル(ちょっとSPOCK'S BEARDっポイ)な楽曲、ドラマ性を帯びた叙情的な展開や80年代ネオ・プログレと初期GENESISやYESを彷彿とさせるレトロ・プログレを高いレベルでミックスしたプログレッシヴ性、英国ならではの気品ある美旋律とシンフォニックで壮大なソロを織り交ぜながら、それら全てが複雑に絡み合い深みあるハーモニーを響かせ聴き応え満点の高いパフォーマンスで練り上げられ研ぎ澄まされていく様は本当に美しく爽快だ。

入り組んだ巧みなアンサンブルと多彩な音色の変化、テクニックと美旋律の絶妙なバランス、ポップなスタイリッシュさと英国を感じさせる優美さ、それら全てがハイセンスに溶け合うだけでなく、70~80年代プログレ、ポンプに根差したヴィンテージな薫りが立ち込める瞬間が随所に秘められており、そんなセンチメンタルな想いを突き抜けるようにクリアーで鮮明なギター・サウンドが全てモダン・シンフォ・ロックな彼方へ連れて行く痛快な展開は、彼等にしか成し得ぬお家芸だろう。

実際の所、とても8年振りの新作と思えないくらい何時も通りにJADISなサウンドに思え、これまでも頑固一徹、時代が移ろうとも決してサウンドがブレぬのが彼等の持ち味でもあり個性でもあった訳で、他メンバーの持ち込んだアイディアを活かした新風を感じさせる本作でもソレは変わらず特に目新しいモノは何も見当たらないのだが、この変化の少なさを否とするか安定と捉え是と捉えるかで久しぶりに届けられた、長らくこのバンドに期待されて来た通りの内容である本作の評価も大きく変わるように思えます。

一時感じたハードエッヂな感触は薄れ、より円熟味を増したポピュラリティー高いシャープなシンフォニック・ロックへ再びサウンドのタッチが傾いている風に感じるが、それはプロデュースした Andy Marlowの好みな音の方向性なんでしょう、きっと。

彼等のファンは無論の事、80年代ポンプの残り香も漂う英国風味たっぷりの抒情性ある爽快でモダンなメロディアス・シンフォニックUKロックがお好きな方は是非本作をチェックしてみて下さい。

Tracks Listing:
01. Said And Done
02. Wood Between The Worlds
03. Everything We See
04. Do You Know
05. Questions Without Answers
06. From All Sides
07. Fading Truth

JADIS Line-Up:
Gary Chandler   (Lead Vocals、Guitars)
Steve Christey   (Drums & Percussion)
Andy Marlow     (Bass、Programming、Loops & FX)
Martin Orford    (Keyboards、Backing Vocals、Flute & Cittern)

Produced、Engineered、Mixed by Andy Marlow


# by malilion | 2024-08-30 19:46 | 音楽 | Trackback