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後にPRAYING MANTIS加入の Mark Thompson Smithが参加していた、幻のハードポップ・バンドFLIGHT 19の未発音源が初CD化で限定リイシュー!!

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FLIGHT 19 「Something We Did...(1985 - 1992)」'22

マニア御用達レーベル、イタリアのSTEELHEART Records『The”LOST UK JEWELS”Collectors Series』の第24弾は、英国Sheffieldで84年に結成されたキーボード入り5人組メロディアス・ハードポップ・バンドが1989年と1990年にデモ・レコーディングしていた音源12曲をオリジナルDATマスターテープから完全リマスタリング&初CD化で500枚限定リイシューしたので即GET!

NWOBHMマスターとして有名なロックDJ Neal Kay主宰のNWOBHMコンピ盤『METAL FOR MUTHUS 92』に時代を先取りするかのようなモダンでキャッチーな美旋律が素晴らしいブリティッシュ・ハードポップ曲『Liar』と『Flame』の2曲を提供していた事で未だにNWOBHMマニアやここ日本でその名を知られているFLIGHT 19は、1980年代初頭にMONZAの解散に伴い元メンバーの Nigel Ward (Bass)と Gary Flounders (Guitars、Keyboards)が中心になって英国Sheffieldで誕生する。

幸運な事にMONZA活動中に生まれたツテ(GEDDES AXEのドラマー)のお陰で、NWOBHMの中心人物であり世界中で人気者なロックDJ Neal Kayにデヴュー前からサポート、プロモーションされ活動を開始する事に。

ロンドンにプロユースなリハーサル・ルームとレコーディングスタジオを確保し、RIO、STRANGEWAYS、DARE、YAYA等といった当時の有望な新人バンド達を御手本にしつつ、メロディアスで高揚感のあるフック、分厚く爽快なハーモニー、そしてカラフルに鳴り響くキーボードが一体となってドライヴ感あるリフやスリリングなソロを伴って突き進む楽曲の上を、クリアーでストレートなヴォーカルがキャッチーに交差するNWOBHMの新スタイルを生み出そうと数多くの魅力的なデモ曲を創作するが、それはスリリングなインストゥルメンタル・パートを含んだ荒々しいメタリック・サウンドが身上だったNWOBHM期の他のバンド達とは一線を画す、総じて華やかなキーボードに導かれたメロディアスな美旋律とキャッチーで爽快な歌メロに焦点が合わされた、NWOBHというカテゴリーをはみ出した欺瞞的HMサウンド以外の何物でもない、NWOBHM~メロディアス・ロックに米国AORの甘いフレーバー等をタップリ加えた斬新なハイブリッド・サウンドと言うべきもので、それが結果的に他に類を見ない珠玉のUKハードポップ・サウンドとなるのでありました。

さらに幸運だったのは、80年代初頭に様々なアンダーグラウンドな英国バンドのフロントマンとして活躍し、90年代初頭には伝説のキーボーディスト Dave Rosenthal (ex:RAINBOW、ex:RED DAWN、ex:Billy Joel)と共に米国で活発な活動を続けていたがグランジ・ブームの煽りを受けて英国へ戻りPRAYING MANTISに短期間だけ在籍すると、00年代以降音楽ビジネスから引退していたがTHE SWEETへのゲスト参加やNEWMANのバッキング・ヴォーカル作業等を手始めに近年再び音楽活動を再開させた Mark Thompson Smith (ex:IDOL RICH、ex:PRAYING MANTIS、BIG LIFE、etc...)や、80年代初頭マンチェスターのローカル・シーンで数多くのインディ・バンドに参加し、その素晴らしい歌声をデモやシングルに残して来た Noel Fraser (ex:SARATOGA、ex:STRUTZ、ex:A.O.K.、etc...)といった、後に英国シーンで名を馳せる事になる優れたヴォーカリスト達を迎え入れ1980年代後半から1990年代前半にかけてデモテープを制作出来た事も、彼等の残した楽曲が未だに語り継がれている大きな要因の一つなのは間違いないだろう。

面白いのは Mark Thompson Smithが脱退したから Noel Fraserへヴォーカリストをチェンジした、という流れでなく、本デモ音源で2人が仲良くバッキング・ヴォーカルを担当していたりするのを見るに、上手いヴォーカリスト2人の在籍時期を重ねながら贅沢な体制でバンドは創作活動をしていた模様で、悪感情を持って2人のシンガーがバンドへの加入と脱退を繰り返したのではない、狭いローカルシーン故に相互援助のような創作体制でデモ録音が進行したのが分りなんとも微笑ましいですね。

ただ、時流や流行と言うものはどう転ぶか分からない先が読めぬ故に多くの人々が悩まされ、古来からショービジネスに携わる人達の人生を左右してしまうのですが、そんな素晴らしい楽曲を創作し、Neal Kayのバックアップもあったにも関わらず、順風満帆に思えたFLIGHT 19の活動はまるでボタンの掛け違えのように上手く運ぶ事は無く、ちょうど米国を中心に煌びやかでキャッチー、そして華やかでコマーシャリズムに偏重したヘア・メタルがメジャー音楽市場の趨勢を極めんとしていた80年代中期から90年代前半にかけて、荒々しいNWOBHMサウンドをベースに出発した彼等の音楽が市場に受け入れられるチャンスは訪れず『METAL FOR MUTHUS 92』に収録された2曲を除き正式に彼等の音源がリリースされる事はなく、いつしかFLIGHT 19の名は歴史の闇へ消えていくのでした…(´д⊂)

当人達は必死に70年代後半のアメリカンAORやウェストコースト・ロック、そしてコマーシャルなアメリカンHRをミックスしたサウンドを作り出そうとしたのだろうが、どうにも隠し切れぬユーロテイストなメロディとウェット感ある美旋律への意識の高さが、表面的には爽快でキャッチーなコーラスをフィーチャーしたアメリカン・テイストあるロック・サウンドに聴こえるけれども、その芯の部分にドッシリと英国特有のドライで能天気になりきれぬリリカルな雰囲気(分厚く爽快なコーラスだがHEEPにも通じる英国風味がタッツプリ!)が渦巻いているという、今で言う米英折衷なメロハー・サウンドを生み出したものの早過ぎたその新基軸サウンドが市場に受け入れられるチャンスに恵まれなかったのが不幸でしかなく、それを運命の悪戯と簡単に片付けるには余りにも理不尽で残酷な現実を突きつけられるようで胸が痛みます。

本作を耳にした方なら容易く理解してくれると思うが、彼等の楽曲の出来は少しも悪くなく、むしろデモと思えぬ極上の売れ筋メロディアス・ハードポップ・サウンドと言え、チャンスを得て時流に乗ってレコード会社がプロモーションに力を入れてくれさえすれば、アリーナを沸かしたメジャー・アクトやヒットチャートを席捲した産業ロック・バンド達を相手にアメリカでも大健闘をしただろうに、と。

けれどFLIGHT 19にチャンスは訪れず、コンピレーション盤“METAL FOR MUTHUS 92”の2曲に、POLYGRAM RecordやATLANTIC Recordなどが興味を示したが、残念ながらその後何も起こらず、それきりだったのです……

本作はデモテープ音源が元となっている為、幾らリマスターを施されていると言っても、ノイズや音割れ、音ヨレ、ヴォリュームのバランス問題やボトムサウンドの軽さ等の問題点が散見しますが、当時としては驚く程にモダンで先進的で、今で言う軽めなメロハー・サウンドに酷似した、甘口のセンチメンタルな美旋律が本当に堪らないド・キャッチーなハードポップ・サウンドを聴くにつけ、どうしてこんな素晴らしいヒットポテンシャルのある楽曲を提示したのにメジャー・レコード会社は彼等と契約を結ばなかったんだ、とその余りの見る目の無さに憤り、首を傾げる他ありません。

正直、今このウェットなメロディの80年代UKポップスにHM的ハードなギター・サウンドをフィーチャーし、80年代USポップスばりの華やかで爽快なハーモニーと産業ロック的キーボードをミックスした極上のハードポップ・サウンドを演る新人バンドがデヴューしたら、間違いなくAOR HEAVENかESCAPE MUSIC、そしてFRONTIERS Records辺りからアルバムがリリースされるインフォが世界中を駆け巡ってメロハー・ファンの心をガッチリと鷲掴みしていた事でしょうに…時代の巡り合わせとは言え、こんなに素晴らしいバンドが人知れず闇に消え、マイナーな知る人ぞ知る存在なままだと言うのがどうしょうもなく悔しいのです…(T~T)

しかも、そんな想いに輪をかけるのが Mark Thompson Smithの若々しく瑞々しい良く伸びる歌声が、どこまでもキャッチーにメロディアスなサウンドの上で水を得た魚の様に舞い踊っているのが…ホント、こんなに風なロマンティックで甘く屈託ない爽やかな歌声をPRAYING MANTISでも聴かせて欲しかったなぁ…バンドの方向性が違うから無理なのは分っているけど、今さらながらにPRAYING MANTISは宝の持ち腐れだったのが分ってしまってなんとも…orz

Noel Fraserのヴォーカルも、マンチェスターのローカル・シーンの中で数多くのインディHMバンドに引っ張りダコだったのも頷ける、マイルドで良く伸びる朗らかでメジャー向きな Mark Thompson Smithと同系統の歌声をしており、こんな良い声のヴォーカリストを2人も使ってデモを録音出来ただなんて、Neal Kayの助力もあっただろうけれど本当にFLIGHT 19はラッキー…いや、メジャー契約を結べなかったんだからラッキーではないけれど、こうして時代を超えて今再評価されているんだから当時メジャー契約を手にしていたけれど今では聴く事も誰も語る事もない当時流行っていたポップ・バンドやメジャー・アーティスト達に比べれば断然FLIGHT 19は恵まれているし、時の試練を耐える優れた作品を遺した奇跡の存在であったんだなぁ、と本作を聴くにつけシミジミ思ってしまいます。

『レコード契約を結べず消えたマイナー・UKバンドの発掘デモテープだなんて』と思って聴かないと絶対にメロディアス愛好家は後悔する、UKメロディック・ロックの歴史において絶対に見逃す事の許されない、そんな優れた80年代末期の幻のバンドが遺した極上のメロディアス・ハードポップ・サウンドを、是非一度チェックしてご自身の耳でその素晴らしさの程をお確かめください。

Track List:
01. Head Over Heels
02. Promised Land
03. Leonie
04. Flame
05. Nothing But A Loser
06. Liar
07. Don't Shine The Light
08. Strangers
09. F 19 (instrumental)
10. No Rest For The Wicked
11. Take Me Away
12. In This World

FLIGHT 19 Line-up:
Mark Thompson Smith   (Lead & Backing Vocals Track 1~7、12)
Noel Fraser         (Lead & Backing Vocals Track 8、10~11)
Nigel Ward        (Bass)
Gary Flounders      (Keyboards)
Mark Smith         (Guitars)
Andrew "Truck" Laurie   (Drums)



# by malilion | 2022-06-09 16:53 | 音楽 | Trackback

北欧スウェーデンから期待のニューカマー CAUGHT IN ACTIONがデヴュー・アルバムをリリース!!

北欧スウェーデンから期待のニューカマー CAUGHT IN ACTIONがデヴュー・アルバムをリリース!!_c0072376_02123999.jpg

CAUGHT IN ACTION 「Devil's Tango」'22

北欧スウェーデンとポルトガル出身の無名ながら実力派ミュージシャン達が2020年に始動したツイン・キーボード6人組バンドのデヴュー・アルバムがイタリアのSteelheart Recordsからリリースされたのをちょい遅れてGET!

無名ながらそれぞれ地元のローカルシーンで30年以上に亘って大小様々なバンドで別々のキャリアを積み、LIVEステージやスタジオでスター・プレイヤー達のバック・ミュージシャンとして長らく活動して来たベテラン・ミュージシャン達が集まって結成されたバンドで、ギタリスト兼メインコンポーザーの Richard Jonssonとキーボーディストの Ronnie Svardの2人のスウェーデン人がプロジェクトの創設者であり、彼等の高い要求に応えるスキルを持ち合わせたフロントマン、ポルトガル人 Marcello Vieiraを遂に見つけ出した時から本格的に始動する。

注目すべき新星のサウンドは、一聴すれば即納得出来るその名とキャリアに恥じぬ『圧倒的』という表現がピッタリなソリッドでキャッチーな極上のメロハー作で、世界中のメロディック・ロックや欧米のAORからの影響を感じるハイブリッド・サウンドからは、EUROPE、ALIEN、TREAT、BAD HABIT、TNT、W.E.Tといった偉大な北欧の先駆者達が作り上げた翳りと煌びやかさを併せ持つ陰影色濃い美旋律を見事に継承するだけでなく、DEEP PURPLE、MAGNUM、FM、DEF LEPPADR、WHITESNAKE等のクラシカルな英国ビッグネームやSURVIVOR、JOURNEY、STYX、BOSTON、DANGER DANGER等の80~90年代を沸かせた米国アリーナ・バンド、そしてほんのりLOVERBOYや Aldo Nova等のカナダのアーティストっぽいウェットで繊細な感覚もあり、メロディアスHRとAORの重要で最高な要素だけを抽出してブレンドし現代的なモダン・ミックスを施したフック満載のアルバムは、パンデミックの影響で完成が遅れたが2年の歳月をかけて制作されただけある洗練されたプロダクションと破格の完成度を誇っており、80年代にルーツを持つキャッチーで華やかなメロディアスHRサウンド・ファンならば必ず満足する事請け合いな一枚だ!('(゚∀゚∩

突如これだけヒットポテンシャルが高く一瞬で興奮の雷が背筋を駆け抜けるような素晴らしい出来栄えのアルバムを引っ提げて華々しくデヴューを果たした新人バンド、きっと国内盤がボートラ入りでリリースされるでしょうけど我慢し切れずに購入してしまいましたが後悔は一切しておりませぬ(w

さて、そんな強力なバックを従えるポルトガル人フロントマン Marcello Vieiraですが、無名ながら実力者達が群雄割拠する北欧ローカルシーンの並み居るスウェーデン人シンガー達を押しのけ抜擢されただけあってその6オクターブの音域を自在に操る歌いっぷりは見事の一言で、様々なメロディアスHRバンドでその強靭でクリアーな歌声を披露してきた米国人シンガー Mark Free (ex:KING KOBRA、ex:SIGNAL、UNRULY CHILD、etc...)と、近年は北欧HMだけでなくプログレやJAZZ、コンテンポラリー寄りなソロなど様々なバンドやプロジェクトに常に引っ張りダコな、透明感あるハイトーンと深味あるディープヴォイスを駆使し多彩な感情をエモーショナルに表現する実力派スウェーデン人シンガー Goran Edman (ex:Yngwie Malmsteen Band、ex:TALISMAN、ex:BRAZEN ABBOT、KARMAKANIC、etc...)を足して二で割って少しマイルドにしたようなストレートにクリアーに良く伸びる強靭な喉は、デヴュー作故仕方がないが些か気負い過ぎでアルバムを聴き終える頃にはリスナーの耳を疲労させ過ぎるパワフル・ヴォイスの力みが現時点では隠せていないが、どんな楽曲の要求にも応えるフレキシビリティ高いヴォーカル・パフォーマンスはバンドに一切制約を設けず無限の創造性を与えており、この先プレイヤースキルのさらなる向上とソングライティングの一層の成長を加速させるだろう重要なキーパーソンである事は間違いなく、既に欧米のメジャーアクトのフロントマンに迫る素晴らしい歌唱を聴かせてくれる彼の今後の動向から目が離せません。

無論、フロントマンだけが注目を集めるワンマンバンドな訳もなく、バンマス Richard Jonssonの紡ぐ北欧ミュージシャンらしいウェットなメロディ、フックあるリフ、ソロを含むクリスプで非常にメロディアスなツボを抑えた流麗なギター・プレイと、Ronnie Svardと Menito Ramosコンビの織り成す素早く華麗なパッセージや華やかでセンスある弾き過ぎぬキーボード・プレイには確かな相互作用があり、洗練された音楽性と作曲技術はデヴュー作と思えぬくらい素晴らしく、多様な音楽性やサウンド・スタイルが再構築されてCAUGHT IN ACTION独自のサウンドへと昇華され、心地よくスムースなだけでなくロックらしい火花散るスリリングさと鮮明なモダンエッジが有りながら80年代風のメロディアス・ロックを思わせる華やかさやキャッチーさ、さらにコンテンポラリー・ロック的な普遍性とポップさを兼ね添えたユーロピアン・メロハー・サウンドを隙無く構築している様は、まるでもう何作もアルバムをリリースしている老舗バンドのようで驚かされっぱなしだ。

手数の多い渦巻くような Mauro Ramosが叩き出すドラムとがポルトガル人ベーシスト Ricardo Dikkが刻むタイトでソリッドなベースが構築するトライバルなリズムとソウルフルなフィールを伴うドライブ感満点のボトムは推進力として多用途に活躍し、楽曲が必要とする適時にアタックを与え、濃縮されたダイナミクスを生み出してサウンドをプッシュし、ムーディで甘口な歌メロや爽快なコーラス、そして洗練されたブリッジが与える惰弱になりがちな印象とメロディアス指向の楽曲を強烈にキックしている点や、本作のフレッシュな感触とパワフルな躍動感を生んでいる原動力なのは間違いなく、予想以上にドラムのオカズや金物、そしてベースラインがクッキリ聴こえるのはミックスとマスタリングを Ricardo Dikkが手掛けているからで、本作のボトムサウンドが一般的なメロハー・バンドよりも際立って聴こえる要因の一つだろう。

ただ、何もかも手放しで絶賛出来るかと言うとそうでもなく、重厚なドラムとハモンドの織り成すサイケデリックでリズミックなサウンドや、打ち込み風のヘヴィなリズムアプローチ、DEEP PURPLE風な疾走するクラッシック英国HRテイストなど、80年代初期から90年代初頭までのAORや産業ロック等の多様なジャンルの要素を再構築し、バラエティ豊かなソングライティングと適切な構成のアルバムは素晴らしい仕上がりなのは確かなのですが、総じて楽曲やプレイヤーの演奏も含めて『安定、安心』という文字が常にチラつき、新人バンドらしい斬新さや先進性、破天荒な勢いも感じられず、新人ならではの無謀とも思える奇想天外な実験精神なども皆無で、アレンジも職人芸的なツボを抑えているものの意外性は見当たらないし、結局のところ良く出来た作品ではあるものの挑戦する気概に欠けたバランスと完成度を重視したが故に『定番のメロハー・バンドらしい作風』に落ち着いてしまったのが些か残念な点と言わざるを得ません。

まぁ、あらかたパターンの出尽くした、しかも80年代風のキャッチーなサウンドという足枷のついたメロディアスHRサウンドを創作するとなると、どうしてもどこかで聴いた事のあるようなメロディや先の読めるアレンジ等になってしまう、新鮮味に欠けた焼き直し感を拭い難いのは致し方が無いのでソコを責めるのは酷な事だと重々承知はしていても、やはりフレッシュな新人ならではの新しい感性が活かされた未知のサウンドを身勝手とは分っていても期待してしまうんですよねぇ…(汗

個人的にはもうちょっと Marcello Vieiraの声に深味が欲しいトコだけど、まだ渋みとか枯れた魅力が出せる年齢でもないでしょうし、溌剌とした朗かなハイトーン・ヴォーカルってのは華やかなメロハーにおいて強力な武器でありますから、コレはコレで現時点ではマイナスにはなってない単なる個人的な好みの問題ですね。ハイ。

最近デヴューのメロハー・バンド全般にも言える事だが、制作バジェットの関係もあってか総じて凝縮されたプロダクションに聴こえ、自然な音の響きや楽器の鳴りよりも高密度なサウンドでガッチリとスタジオ作業で造り込まれた硬い音のアルバムが多く、彼等もまたリリースまでに時間があったが故に80年代中期頃から顕著だったオーバー・プロデュース気味な広がりの少ない作りモノ臭い高密度サウンドになってしまったのかもしれないが、さすがにこの辺りはメジャー契約をしている訳でも無い新人バンドのデヴュー作に突きつける文句ではないので次作でその辺りの問題が解消される事を期待しておきましょう。

なんだかんだ文句を述べましたが、まだまだ新人バンドで幾らでも成長の余地があるCAUGHT IN ACTIONは強力なフロントマンという武器を持って上出来以上の素晴らしいスタートを切った将来有望な期待値大のニュー・カマーなのは間違いないので、是非とも次作では Marcello Vieiraの抜群の歌唱力を最大限に活かす工夫を作曲に凝らし、もう少しサウンドの押し引きをと楽曲構成のメリハリを意識したアルバムを届けて欲しいものであります(*´∀`*)

既述の一連のバンドのファンな方や、80年代リスペクトでキャッチーなメロディアスHRがお好みの方などにお薦めしたい、いつ国内盤がリリースされるインフォが届いてもおかしくないスウェーデンとポルトガル連合の強力新バンドのデヴュー作ですので、ご興味あるようでしたら是非一度ご自身の耳でCAUGHT IN ACTIONの鳴らす音の素晴らしさを確かめてみてください。

Track Listing:
01. New York City
02. Miracle
03. Devil’s Tango
04. Simple Man
05. Too Late For Love
06. It Was Always You
07. First Time
08. If Only
09. It Is What It Is
10. Gave You My Heart
11. I Will Wait
12. Closer To My Dreams

CAUGHT IN ACTION Line-up:
Richard Jonsson    (Lead Guitars、Backing Vocals、Music & Lyrics)
Ronnie "Spjut" Svard  (Additional Keyboards、Synthesizer)
Marcello Vieira     (Lead Vocals & Lyrics)
Ricardo Dikk      (Bass、Mixing & Mastering)
Mauro Ramos     (Drums)
Menito Ramos      (Keyboards)


# by malilion | 2022-06-08 02:14 | 音楽 | Trackback

幻の80年代末USメロディアスHMバンドMIRRORS IMAGEの未発音源が初CD化リリース!!

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MIRRORS IMAGE 「Run Through The Night」'22

85年に唯一作『Gonna Raise Hell』をリリースしたNYのHMバンドSINFULの元メンバーがSINFUL解散後に結成した5人組オブスキュアUSメロディアスHMバンドが、87年頃から89年頃にかけてそれぞれバンドメンツを変えて3回レコーディングしていた未発デモ音源をまとめたコンピレーション盤が、マニア御用達レーベル Heaven & Hell Recordsよりオフィシャル初CD化&リマスターで限定500枚リリースされたのをチョイ遅れてGETしたのでご紹介。

SINFUL解散後にギタリストの Jimmy Ambroseとベーシストの Nars Lopezが立ち上げたプロジェクトが元になった短命に終わり正式なアルバム制作には至らなかったバンドながら、SINFULとはまた異なる如何にも80年代というストレートなアメリカンHRから煌びやかなキーボードをフィーチャーしたキャッチーなメロディックHMまで多彩な方向性を示し、華やかさとUSメタルらしいパワー漲るドライサウンドで、初期KING KOBRA、初期ICON、LION、KEEL、LEATHERWOLF、HURRICANE、QUIET RIOT、そしてDOKKEN等を彷彿とさせる、当時メジャー・チャートを賑わしていた典型サウンドと楽曲が収められた本レコーディング・マテリアルは今の耳でも十分な聴き応えがあり、何故メジャー契約を果たせず何の音源も正式に残せなかったのか不思議でしかありません。

簡単な彼等の歴史を述べておくと、ギタリストの Jimmy Ambroseとベーシストの Nars Lopezは、Ambroseが書いた数曲をスタジオに持ち込んで Ambroseのヴォーカルでデモを録音し始めながら、正式なメンバー探しを始める。

最初に2人に合流したのは元SINFULのキーボーディスト Bill Myerだった。

オーデションを経て Micheal Paulなるリード・シンガーが加入するが長居せず、同じ頃に断続的にデモ制作に参加していた Bill Myerが完全に離脱。

ある夜、カヴァー・バンドのギグを訪れバンドのドラマー候補をチェックしていた Ambroseは、そのバンドのギタリストと彼のヴォーカルの才能に目を奪われる。

結局ドラマーは適任者が見つからず、けれど地元の新聞に掲載された広告に、あの夜に見たギタリストからのメンバー募集が載っていたのだ。

ドラマー探しを続けながら、Ambroseと Lopez、そしてリードシンガーとして加入した Andy Meyerの3人はスタジオに戻り、Meyerのヴォーカルで以前のデモを再レコーディングし直す。

友人の推薦でドラマー Harry Finneganが加入し、彼のスタイルとバッキング・ヴォーカルのスキルは、バンドに欠けていた素晴らしいアクセントを加える事に。

バンドはさらなる強化を目論み、地元でも評判のギタリストで Ambroseの友人だった元DILLINGERの Mike Mirandaをセカンド・ギタリストとして迎え入れる。

Mirandaが素晴らしいギタリストであるだけでなく、非常に強力なソングライターであった事も幸いし、バンドの創作はさらに加速していく。

前後してバンド創設者の片割れ、ベーシストの Nars Lopezが抜け、新たなベーシスト Rick Lehlandが迎え入れられる。

バンドは地元サーキットで数多くのギグを行い、経験を積んだ後にスタジオへ戻り、KISSのLIVEサウンド・エンジニアとして長年活躍しニューヨークの他のバンドとも仕事をこなしていた Eddie Solanの指導の下、さらに数曲をレコーディング。

このレコーディング・セッションから4曲入り2本目のデモテープが完成し、テープをメジャー・レコード会社にバラ撒いた。

レコード会社の反応を待つ内に、もっとシンプルな構成の楽曲がプレイしたいと Rick Lehlandが脱退し、新たなベーシストに元LUVSHYの Bob Shehが迎え入れられる。

Bob Shehはフィラデルフィアのバンド SCARLET FEVERへ加入した Rick Lehland以上の演奏と、彼が引き連れて来た数多くの女性ファンをバンドにもたらす素晴らしい効果を生む。

その後、3本目のデモの為に2曲を追加で録音し、やっとMIRRORS IMAGEのデモに幾つかのレコード会社が興味を持ち始めるが、結局契約は実現せず。

そんな中でメンバー間に音楽的な相違が生まれ始めてしまう。

メンバーの半分は当時チャートで人気を博していたGUNS N' ROSESの活動を横目に、より純粋なロックンロール・アプローチのラフでストレートなサウンドへ進むのを望み、もう半分は80年代的なアプローチを推し進めた、より進歩的でメロディアスな方向性を望んでいた。

ベーシスト Bob Shehの脱退を引き金に、必然的にバンドは分裂し、唯一のオリジナル・メンバーであった Jimmy Ambroseがバンドを脱退、残されたメンツはしばらく活動を続けるものの敢え無く解散してしまう……(´A`)

バンド脱退の後、髪を切った Bob Shehは銀行業でキャリアを築いて成功を収め、Harry FinneganはNYのHMバンドBLACKLACEの元メンバーが立ち上げたバンドや数多くのバンド達とプレイを続けた。

残念な事に Harry Finneganは交通事故に遭いその影響でドラムを再び演奏出来なくなってしまい、近年早世してしまった…R.I.P.

Andy Meyerは結婚して音楽業界から引退するまで Harry Finneganと幾つかの異なるバンドで演奏を続けていたが、結局は成功を収められなかった…

Jimmy Ambroseは二十年近く音楽業界から姿を消していたが、80年代に活躍したバンドTHE HITSに在籍し古い友人でもあるベーシストのT J Loughranこと Casper Rainesと元Alice Cooper Bandや Paul Gilbertでの仕事、及びENUFFZ'NUFFのドラマー Ricky ParentとTRNZPRNTを結成し音楽業界へ返り咲く。

残念な事に Ricky Parentはデヴュー・アルバムのドラムトラックを録り終えた直後の07年に癌で病死してしまったが、引退を撤回した Andy Meyerがセカンド・ギタリストとセカンド・ヴォーカリストとしてバンドに参加し、セカンド・アルバムをリリースしつつ現在もメンバーを変えながら地道に活動を継続している模様だ。

この手の80年代末期に活動をしていたメロディアスHMバンドは90年代を迎えてグランジーの闇に呑まれ解散してしまうのが典型的パターンですが、彼等はその前の90年代初頭のラフなストリート乗りのロックンロールの流行により、バブリーで毒々しいL.A.メタルの流れを汲むサウンドを出発点として次にどの方向へ進むかで分裂してしまったグランジー無関係なパターンではありますが、時代の節目と流行の変化に翻弄されたという点では同様な将来有望だったインディ・バンドの一つと言えるでしょう。

元がデモテープ音源なのでノイズや音ヨレをリマスター作業でも完全に修正する事は叶わなかった模様で所々で聞き苦しい箇所があるものの、総じて無名のUSバンドのデモ音源としては上々な出来と言え、短い活動期間にも関わらずベーシストが常に不安定な事を除けば甘い声質と伸びやかなハイトーンを聴かせるフロントマンも他のメンツも安定し、音楽的にも80年代アメリカンHMサウンドを引き継いだメジャー指向のバンドで、もう少し我慢強く同じ方向性で創作活動を続けていたならば、ワンチャン日本盤だけでもアルバムをリリース出来て居たのでは、と思える、A級に成り切れないけどB級として上質な楽曲を創作する惜しいバンドでありました。

やはりドラマーを正式に迎え、ツインギター編成になって程よい疾走感ある楽曲を分厚いコーラスとフックある歌メロ、そして派手でテクニカルなギターに導かれキャッチーに突き進んでいく音楽性の定まった二期の音源が大変心地よく、正式にこの編成でシングル音源だけでも先行リリース出来れいればバンドの契約状況も変わったのでは、と思える佳曲が収められており、やはり正式な音源をしっかりとした録音環境で残して欲しかったですね…(´д⊂)

また、今回のリマスターで意図したのか少しキーボードの音を引っ込めてギターのソリッドなサウンドを前に押し出したようなハードな感触が強まったイメージへ統一するような操作が成されているようも聴こえ、オリジナルのキーボードがもう少し聴こえていただろうヴァージョンもボーナスで追加収録して欲しかったなぁ。

この手のインディ・バンドあるあるのメンツ探しに苦心しメンバーが常に不安定なのが原因で活動がままならず音楽性も定まらずにバンドが崩壊してしまった悲惨なパターンでない有望な新人インディ・バンドであっただけに、優れたミュージシャンシップと流行の変化を敏感に察した先読みの才があったが故にバンドが解散してしまったのが本当に悔やまれます。

ただ、Andy Meyerの声質や歌唱スタイルはGUNS N' ROSES路線は絶対にマッチしなかったでしょうから、下手にバンドの結束が固いまま音楽性を変えたラフなロックンロール作をリリースしてもソレはソレで悲惨な仕上がりになっただろう事は想像に難くないし、ダーティでラフな歌声の新ヴォーカルを迎えて新たな方向性のデモを制作していたならばデモの出来以前にもうソレは全くの別バンドと言える音楽であったでしょうから、残念ですが分裂して姿を消した方が潔く、MIRRORS IMAGEの名を汚す醜態を晒す事にならず良かったのかもな、と今なら思えますが…

既述した一連のバンドのファンの方や80年代末期のマイナーながら華やかな音楽性のインディUSバンドもチェックするダイハードなメタル・ヘッドの諸兄ならきっと気に入るだろう幻のバンドの発掘音源ですので、ご興味あるようでしたら限定リリースとの事なので早めに入手しておきましょう。

ENUFFZ'NUFFのファンやMIRRORS IMAGEの元メンバーが在籍している事から本作が気に入った方はTRNZPRNTもチェックしてみるといいかもしれません。

Tracklist:
01. Where's The Show
02. Chains
03. Run In The Night
04. Straight Thru The Heart
05. Dreams Come True
06. Change Of Heart
07. Hold On
08. Dangerous Love
09. Burning Up

MIRRORS IMAGE Line Up:
MK I: Tracks 1-3)
Recorded at Waterfront Studios, Hoboken, NJ 1986
Produced by J. Ambrose

Jimmy Ambrose   (Guitars、Vocals)
Nars Lopez      (Bass)
Andy Meyer     (Lead Vocals)
Bill Myer        (Keyboards)
Guest Drummer   Blaster

MK II: Tracks 4-7)
Recorded at Northlake Studios White Plains, NY 1987
Produced by Eddie Solan

Jimmy Ambrose   (Guitars、Vocals)
Andy Meyer     (Lead Vocals)
Harry Finnegan    (Drums、Vocals)
Rick Lehland     (Bass)
Mike Miranda    (Guitar、Vocals)

MK III: Tracks 8 & 9)
Recorded at RPM Studios, Long Island, NY 1989
Produced by Mike Miranda

Jimmy Ambrose   (Guitars、Vocals)
Andy Meyer     (Lead Vocals)
Harry Finnegan   (Drums、Vocals)
Bob Sheh      (Bass)
Mike Miranda    (Guitar、Vocals)

P.S.
タイトルの『夜を駆け抜けろ』やサブタイトルの『お前の夢の中にオレが居る』と、ニューヨークで成功を夢見ながら果たせず短命に終った華やかな80年代末期バンドらしさを感じさせる文言にノスタルジックな切なさビジバシ感じまくりであります(w


# by malilion | 2022-06-07 00:02 | 音楽 | Trackback

L.A産ハードポップ・バンドFIRE TIGERが2年ぶりに4thアルバムをリリース!


L.A産ハードポップ・バンドFIRE TIGERが2年ぶりに4thアルバムをリリース!_c0072376_11460860.jpgFIRE TIGER 「Covers」'22

ロサンゼルスを拠点とする紅一点フロントウーマンの美女 Tiffany Alkouri嬢率いるキーボード入り5人組ハードポップ・バンドによる4thアルバムが前作から2年ぶりに毎度恒例の自主盤でリリースされたのでご紹介。

14年にデヴュー作『Energy』をリリースした当時から80年代指向のキャッチーなハードポップ・サウンドに乗せ Tiffany Alkouri嬢の滑らかで艶やか、そして如何にも80年代風のキュートで派手なルックスに似合わぬパワフルな歌声を主軸に据えた楽曲が詰まった秀作を自主盤でコツコツとリリースし続けて来た彼等ですが、デヴュー時からリズム隊がイマイチ安定しなかったもののここ数作でやっとメンツが安定しさらなる飛躍が期待出来るかと思いきや再びベーシストがチェンジしており、常にメロディアスでキャッチーなそのサウンドはマイナーなメロハー作も追いかけるマニアックなリスナーのみならずメジャー志向なロック・ファンにも十分訴求するレベルながら、どうにも今一つメジャーに成り切れぬのはその辺りのメンバーが不安定な状況も関係しているのかもしれませんね。

Tiffany Alkouri嬢の声質や歌唱スタイルから、Pat Benatar、Patty Smyth、Laura Branigan、Cher、Cyndi Lauper、Bonnie Tylerといった偉大な女性シンガー達やSTARSHIP、QUARTERFLASH等のフィメール・シンガーがフロントマンなバンドの影響が伺え、80年代を賑わした歌姫のキャッチーでメロディアスなアルバムが好みな方ならきっと気に入るのが本バンドと言えましょう。

さて、2年振りとなる本作はタイトル通りのカヴァー・アルバムで、これまで彼等が披露してきた80年代指向な楽曲の元ネタ的な80年代にヒットチャートを賑わした有名曲の数々を取り上げており、基本的に原曲に忠実なアレンジのカヴァー集となっておりますが、それぞれの楽曲にFIRE TIGERならではのテイストやタッチが付け加えられているのは言うまでもありません。

最初に飛び出して来るのは80年代ヘア・メタルの代名詞的楽曲のみならず、北欧スウェーデンのHMバンド EUROPEを一躍メインストリームに押し上げた超有名曲『The Final Countdown』で、Tiffany Alkouri嬢の相棒でありバンドの頭脳的存在でもあるキーボーディスト James Ramseyが高らかに“アノ”有名キーボード・フレーズを奏でているのが微笑ましい(w

オリジナルに比べるとより柔和でポップス風の伸びやかな歌唱を Tiff Alkouri嬢が披露し、ワミーバーやキーボードの新たなエフェクトがいくつか加えられ微アレンジが成されたハードポップ風に仕上げられている。

続いては、現在続編が公開中で80年代ハリウッド映画の代表作『TOP GUN』の挿入歌で Kenny Logginsが歌う『Danger Zone』。

オリジナルよりエッジの増したワイルドなギターが目立つミックスと、オリジナルに無いグリッターなキーボード・フレーズが付け加えられた興味深いアレンジが成されていて、なんともグッドタイミングなチョイス(映画公開の話題にあやかろうと画策した?)であります。

次も80年代映画挿入歌で『FLASHDANCE』のサウンドトラック収録の Michael Sembelloが歌う『Maniac』で、オリジナルをかなりリスペクトしながらも独自のアレンジを加え、よりギターサウンドが前に出たミックスと如何にも80年代風のフラッシーなギターソロが楽しめるが、ちょっとリズムパターンが打ち込み風で安っポイのが頂けない。

続いても80年代を代表する映画曲で『NEVER ENDING STORY』の主題歌でLimahlが歌った『Never Ending Story』を取り上げており、逆に本曲は打ち込み風なデジタリーでリズミックなエレクトロニック・ベースにクリーンでダンサブルなギターが乗っているのが楽曲にマッチしているだけでなくTiff Alkouri嬢の甘く力強い歌声を際立たせる効果を生み出しており、カヴァー・アレンジが上手くいった好例だろう。

次はちょっと毛色を変え、イタリアを拠点として活動したBALTIMORAが84年のデヴュー・シングル『Tarzan Boy』で、単調なリズムパターンやサビの余りにも安っぽいシンガロングに苦笑させられるが、93年に『Teenage Mutant Ninja Turtles III』のサウンドトラックに用いられて再び注目され、以降は様々なアーティスト達によってカヴァーされている有名曲という事から映画挿入歌と捉えて彼等も取り上げたものと思われる。

80年代の陽気で楽しいアメリカを象徴するようなお馴染みの米国TVドラマ『ビバリーヒルズ高校白書』のテーマソング『Theme From Beverly Hills 90210』が続いて登場し、デジタリーなリズムとリリカルなピアノの響きの対比が美しいインスト曲に仕上げられており、箸休め的な小曲だ。

続いても本アルバムの指向から言うと少々毛色が違うUSパンク・バンドTHE RAMONESが76年にリリースした『Blitzkrieg Pop』で、一連の80年代楽曲のチョイスともズレてはいるが、83年の米国ロード・コメディ映画『National Lampoons Vacation』のサウンドトラックに使用された事からFIRE TIGER的には80年代映画の挿入歌と捉えて取り上げたものと思われる。

オリジナルがパンク曲なので彼等からすると少々異質なチョイスではあるが、頑張ってオリジナルの持つシンセポップ風のパンクっポイ感覚やエッジをサウンドで表現しようと挑んでいるのが分る、が余り良い仕上がりにはならなかったように思え…まぁ、こればっかりはミス・チョイスとしか言えませんね。

次もパンク繋がりでか“NYのSEX PISTOLS”の異名を取りカルト的な人気を誇ったが77年に解散したTHE DEAD BOYSの『Ain't It Fun』を取り上げている。

90年代はじめにGUNS N' ROSESがTHE DEAD BOYSの楽曲をカヴァーして再び注目を集めた事はあったが、どうして彼等が80年代曲でもないこの楽曲を選んだのかちょっと理由が分からない(汗

FIRE TIGERのヴァージョンではオリジナルの雰囲気を残しつつ、よりポジティブな活気と独特の雰囲気あるサウンドに仕上げているように思う…が、彼等の良さをスポイルしているように思えるのが残念だ。

続いては元ティーンアイドルにして女優、SSW、現在はカントリー系シンガーとなっている超メジャー・アーティスト Miley Cyrusの『Slide Away』を取り上げており、パンクよりもさすがにカントリー系の方がまだバンド的にこなせる音楽だったのだろう、オリジナルより幾分カントリーに近いアプローチで歌われ、伸びやかで繊細な Tiffany Alkouri嬢の歌声が見事に映えるアレンジが成されている。

アルバムの最後を飾るのは、言わずとしれた英国メジャー・ロックバンド COLDPLAYの『Yellow』を取り上げており、90年代末期の楽曲を一連の流れを無視してどうして最後にチョイスしたのかは謎だが、まぁ超有名曲だから、という理由でかもしれないし、良いアレンジが浮かんだので試してみたかった、という事かもしれない。

FIRE TIGERはオリジナルのお涙頂戴な楽曲を80年代風の雰囲気にリアレンシし、よりポップでエネルギッシュイな作風に仕上げている。

FIRE TIGERのアルバムを聴くといつも80年代を思い起こさせられるのだが、今回のカヴァー・アルバムは特にノスタルジックな想いが強くなる作品で、FIRE TIGERファンは勿論、黄金の80年代を懐かしみたい方や80年代のビルボード・チャートを賑わした珠玉の名曲を楽しみたい方、そして勿論オリジナル曲のアーティストのファンな方にもお薦めな一作なのは間違いありませんのでご興味あるようでしたら一度チェックしてみてください。

Tracklist:
01. The Final Countdown (EUROPE)
02. Danger Zone (Kenny Loggins)
03. Maniac (Michael Sembello)
04. Never Ending Story (Limahl)
05. Tarzan Boy (BALTIMORA)
06. Theme From Beverly Hills 90210
07. Blitzkrieg Bop (THE RAMONES)
08. Ain't It Fun (THE DEAD BOYS)
09. Slide Away (Miley Cyrus)
10. Yellow (COLDPLAY)

FIRE TIGER
Tiffany Alkouri    (Lead Vocals、Tambourine)
James Ramsey   (keyboards、Guitars)
Jordan Lucas    (Lead Guitars)
Tyler Renga     (Bass)
Lorenzo Meynardi  (Drums)



# by malilion | 2022-06-06 11:51 | 音楽 | Trackback

CCM系米国シンフォ・バンドTIME HORIZONが7年ぶりに新譜をリリース!

CCM系米国シンフォ・バンドTIME HORIZONが7年ぶりに新譜をリリース!_c0072376_17080234.jpgTIME HORIZON 「Power Of Three」'22

CCM系プログ・バンドONE-EIGHTYの元キーボーディスト Ralph Otteson率いる米産シンフォニック・ロックバンドの7年ぶりとなる3rdアルバムをちょっと遅れてご紹介。

ONE-EIGHTY脱退後に西部へ移住し結成したCCM系バンドIRON CLAY POETSのバンドメイト Dave Dickerdon (Lead Guitars、Rhythm Guitars)と同じくIRON CLAY POETSの4枚目のアルバム制作にヘルプで参加した Bruce Gaetke (Drums、Lead Vocals)が、結局メンバーが脱退してIRON CLAY POETSは解散しアルバムはリリースに至らなかったのを残念に思った3人が中心になりカリフォルニアで本バンドは結成された、IRON CLAY POETSの発展バンドでありました。

CCM系コミュニティに属しセッションミュージシャンとして腕をふるう3人が結成した上にスタジオ・エンジニアリングを本業とする Ralph Ottesonによるプロデュースと各メンツの演奏は過不足(ドラムの音だけ異様に軽い問題はあったが…)なく、11年リリースのデヴュー・アルバム『Living Water』のリードトラックはUSシンフォ・バンドAJALONの Randy Georgeと元SPOCK'S BEARDの Neal Morseのプロデュースを受けるなど、その80年代風のキャッチーなプログレハード・サウンドはCCM系プログ&シンフォ系ファンのみならず一般のUS産ロック・ファンにも訴求する話題性十分であった彼等ですが、続く15年リリースの2nd『Transitions』で Ralph Ottesonだけを残してメンツが一新、音楽性もデヴュー作よりさらにレイドバックして70年代風なプログレ・サウンドへ接近した上にゲスト・ヴォーカリストを3人も招くセッション体制で制作され、急激なサウンド変化が当初のファンを戸惑わせたのが影響したのか次第に彼等の名を聞く事も無くなっていった中、久しぶりに届けられた新作は、2ndからバンドに参加した Allen White (Bass)と Dave Miller (Guitars)にさらに2人新しいメンバーを加え、キーボード入りツインギター6人組の新編成となって制作されている。

2ndで半ば Ralph Ottesonのソロ・プロジェクトへと変質した時は不安しかありませんでしたが、なんだかんだ言って裏方メインで長らく活動して来ただけあって Ralph Ottesonはプレイヤーとしてのエゴを優先するよりもトータルで作品の完成度やコンポーズや楽曲の仕上がり具合を優先する自己抑制出来る優れたミュージシャン(敬虔なクリスチャンだから?)であったのが幸いしたのか、しっかりと新たな専任フロントマンを招いてバンド作らしいスタイルの新作をこうしてバンド・メンツを安定させ届けてくれた事をまずは祝いたい。

さて注目の新シンガー David Bradley Mauですが、ちょっと元ASIAの John Payneっポイ歌い方をするウェットン系のディープ&ミドル・レンジ主体のブルージーな歌唱スタイルで伸びやかな歌声をパワフルに轟かす、TV系や映画のサントラに数多く参加し好評価を得ているのも頷けるカリフォルニアを基盤にソロ活動を続ける実力派シンガーで、CCM系繋がりで本作のフロントマンとしてバンドに加入したのだろう。

願わくば長く本バンドに在籍して、そのメロゥでノスタルジックな叙情感漂う素晴らしい歌声を披露し続けて欲しいものです。

また、前作では数曲のみにしか参加しかしていなかった Bruce Gaetkeが本作ではしっかりとドラムスを務めており、元々ヘルプの立場で Ralph Otteson主導のバンド活動へ参加した事や自身のセッション活動を優先して前作でのゲスト的な参加とは思いますが、今もしっかりとオリジナル・メンバーとしてバンドに在籍し相変わらず良い歌声を披露するのみならず長きに渡って Ralph Ottesonの脇を支えてくれているのが大変喜ばしいですね。

テクニカルなインストゥルメンタル・パートの組み込まれた楽曲や派手で壮大なキーボード・ソロパートを聴くまでもなく中心人物の Ralph OttesonがYES、GENESIS、KING CRIMSON、EL&P、KANSAS、PINK FLOYD等の欧米のプログレッシヴ・ロックの影響大なのは明らかながら、新フロントマンの David Bradley Mauが持ち込むブルージーなテイストある米国人ミュージシャンらしいキャッチーな歌メロが他のシンフォ系バンドと一線を画す要素となって本バンドの新たな独創性を生み出しているのと、英国人ミュージシャン Alan Parsons風な要素やカナダのSAGAっポイ鍵盤使いやRUSH的なデジタリーな音色、UKダンス・ポップのTEARS FOR FEARSを想い出させるリズミックさ、USシンフォのSPOCK'S BEARDを思わすハモンドの畳みかけや産業ロックの代名詞TOTO風な要素など、古典的プログレだけに拘らず80年代のポンプやARENA等のネオプログレのタッチ、そしてより現代的サウンドや新メンバー達が持ち込んだであろう多種多様な音楽要素も巧みに取り込んで再構築し、既述したバンド群に無いCCM系特有な宗教的音楽要素を加え、独自性あるバンドサウンドを構築しているのは見事の一言だろう。

Ralph Ottesonは今回もスペイシーなシンセにリリカルなピアノ、そして歪むハモンドを刻んでと、ソロにバッキングに所狭しと怒涛の鍵盤プレイを披露しているが、当然バランスを踏まえて楽曲の中で耳を惹くセンスあるプレイに努めており、穏やかで伸びやかなヴォーカルを主軸に据え、ハードエッジを産むギター・リフやツインギターの甘美な絡みもフィーチャーしつつ、コンパクトに纏まったキャッチーでメロディアスな楽曲の数々は、リードトラックからエンディングに至るまでゲスト奏者のプレイも活かしつつ聴き手を飽きさせぬ細かな工夫や構成の妙がアルバムの随所に施されており、洗練されたメロディアスUSシンフォニック・ロック・サウンドが目一杯詰まった前作の不振が嘘のような快作に仕上がっている。

デヴュー作で80年代USプログレ・ハード路線、2ndで70年代風プログレ路線ときて、続く本作ではジーザス一辺倒でない普遍的なソングライティング、豊かなオーケストレーション、音の深みや音楽性の幅の広さという多様性、そして力強いフックあるヴォーカルとCCM系らしい爽快でキャッチーなハーモニーと言う1stと2ndの要素をMIXさせながら、レトロな感触も取り入れつつモダンなアプローチとバランスを考慮したコンパクトな楽曲、そしてシンフォニックで壮大なスケール感あるメロディアスなロックサウンドへと進化しており、USシンフォ・ロック・ファンなら一発で気に入るだろうし、より普遍的なメロディアス・USロック・ファンにも十分訴求するクロスオーバーな作風と言え、ノスタルジックな味わいと現代的なシャープさも兼ね添えたハイブリッドなメロディアス・ロック作と言えるだろう。

前作でも Jake Livgren(KANSASの頭脳にして黄金期を支えたソングライターでギタリスト Kerry Livgrenの息子)がヴォーカルで、さらに Tony Kaye(初期YESの鍵盤奏者)等の著名なミュージシャンもゲストに迎えていたが、本作でも先頃惜しくもバンド活動の終了を告げたカナダのプログ・ポップバンドSAGAのフロントマン Michael Sadlerがヴォーカル(!)で参加しており、その他にも世界を代表するフレットレス・ベーシストの鬼才 Michael Manring(!!)が参加と、今回も『殆ど無名なインディ・バンドにどうしてそんなビッグネームガ!?』と驚かされるゲスト奏者(コレがCCM系コミュニティのパワーなのか?)が招かれていて、各ミュージシャンのファンにとって本作は見逃せぬ一枚なのは間違いない。

シンフォ系と言うだけで既にマイナーなのに、さらにCCM系と聴く人を選ぶバンドではありますが、そんな前情報で本作の思いの他にキャッチーでメロディアスなUSシンフォ・サウンドを聴き逃すには惜しい一作でありますので、もしご興味を持たれた方がおられましたら是非一度本作のサウンドをご自身の耳でチェックしてみて下さい。

Track List:
01. Living For A Better Day
02. I Hear I See
03. Prelude
04. The Razor's Edge
05. Steve's Song
06. Time To Wonder Why
07. The Great Divide
08. Digital Us

TIME HORIZON Line-up:
Ralph Otteson     (Keyboards、Piano、Hammond Organ、Backing Vocals)
Bruce Gaetke      (Drums、Backing Vocals、Lead Vocals on Track 04)
Allen White       (Electric Fretted & Fretless Basses)
Dave Miller       (Electric & Acoustic Guitars)
Michael Gregory    (Electric & Acoustic Guitars)
David Bradley Mau   (Lead Vocals、Support Keyboards)




# by malilion | 2022-06-03 17:08 | 音楽 | Trackback