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幻の80年代USAポップメタル・バンドROCK BOULEVARDの音源がボーナストラックを追加してリイシュー!


幻の80年代USAポップメタル・バンドROCK BOULEVARDの音源がボーナストラックを追加してリイシュー!_c0072376_08550641.jpgROCK BOULEVARD 「I Got What You Want」'20

USAネヴァダ州の都市リノを拠点に活動していた4人組アメリカン・メロディアスHMバンドROCK BOULEVARD(ロック・ボールバード)が1990年にリリースした唯一のEPアルバムが20年度オフィシャル再発盤されたのを、ちょい遅れてGET!

確か500枚限定で当初リリースだった本作、初回盤を私は惜しくも買い逃したんですが、こうして再び購入出来るようになった所を見るに500枚以降も新たにプレスした模様ですね…

まぁ、多くの人が欲しがっている売れると分かっている商品をわざわざ限定だからとリリースしないなんて商売人は居ませんからね。

追加プレスしてくれた事は、素直にMetallic Blue Recordsに感謝しかありません。初回盤を慌てて購入した忠実で熱心なメタル・ヘッドの諸兄は面白くないでしょうけど(汗

さて、本編7曲に未発表音源2曲をボーナストラックに追加収録し、アートワークをリニューアルしオリジナルジャケとのリバーシブル仕様、セルフタイトルだったアルバムタイトルを『I Got What You Want』へ変更して再発された本作、オリジナル・リリース時はCDプレスは250枚、カセットも250本のみ限定リリースという激レア・アイテムで、その80年代後期USメロディアス・ポップメタルなグラム風味あるキャッチー・サウンドが無名バンドらしからぬ出来の良さもあって、未だにオリジナル盤は高額(10万円以上の値が付くらしい…)で取引されているというメロディアス愛好家やコレクター泣かせな幻のアイテムの一つでありました。

無事公式リイシューが成ったお陰で、一時ブートレッグCDRもリリースされていた幻の音源を、これで心置きなく楽しむ事が出来ますね(´∀`)b

時代の末期に結成された事や、グランジーの闇が全米を覆い尽くした後の本格活動と、彼等の演るサウンドは当時のシーンに置いてほぼ需要が無かったのが不運でしたが、その80年代後期スタイルなUSポップ・メタルは今で言うヘア・メタルと言われる類の80年代定番なメインストリーム・サウンドで、分厚い爽快感あるコーラスとキャッチーでフックあるヴォーカル・メロディ、ツボを心得えた堅実なバックのプレイとラジオ・フレンドリーなコンパクトな楽曲を聴くに、幾つかの不運が重ならなければオーソドックスにメジャー契約を手にしていてもおかしくなかったインディ・バンドの一つだったのは確かでしょう。

リードヴォーカルの Marc Groverの歌声が、ちょっと濁ったザラついた声質ながら良く伸びるアメリカンHMバンドでよく聴けるヴォーカル・パフォーマンスなのと、グラム風味もある楽曲のせいでLAメタルっぽい感触もあるブライトなサウンドは、多少定番過ぎて突出した個性が無いと言えるかもしれませんが、フックあるリフやメロディがふんだんに飛び交う、キャッチーでブライトなメロディアスHRチューンの数々が素晴らしい仕上がりな隠れた名盤だった事もあって、もし当時国内盤がリリースされていたならそこそこ話題になって、売り上げも悪くなかったのじゃないと思えるレベルなだけに実に残念です(´д⊂)

では、ここで彼等の足取りを少し。

1985年の秋、Deland Vothと Robbie Woldridgeはネバダ大学のマーチングバンドでサックスとクラッシュシンバルを演奏していたがロックバンド結成を思い立ち、Deland Vothはギターを、Robbie Woldridgeはドラムを担当する事に。

お約束の楽器店でメンバー募集の張り紙をチェックし、WAZE GUYSを脱退したばかりのヴォーカリスト Jeff Kerrに連絡を取り、リズムギターに Kyle Eigenmann、ベースに Sai Williamsを迎え入れ初期の5人組ラインナップが完成する。

当初、彼等はROCK BLVD.と名乗っていた。

マーチングバンド経験者だったからなのか、バンドの首謀者二人のプレイはバンドの音楽性から考えるとテクニカル志向だった模様で、Deland Vothのギタープレイは、Eddie Van Halenや Randy Rhoadsに影響を受け、Robbie Woldridgeのドラミングは、Neil Peart、Tommy Lee、Alex Van Halenに影響を受けていたらしく、MEGADETH、QUIET RIOT、ICONなどのバンドにも影響を受けていたと言うから、テクニカル志向なピュアHMサウンドへ進まず、LAメタル風なポップ・メタルを演奏する方向性を選択したのは、クラブ聴衆へのアピールや他メンバー達からのインプットがあった結果なのかもしれない。

まぁ、90年代当時どっちを選択していたとしても、結果的に活動は行き詰まる事になったんでしょうけどね…(涙

1986年にリノで開催されたバンドコンテストで優勝し、その年の12月には東部オハイオ州のプロモーターとの契約が成立し、バンドは活動の場を西部ネヴァダ州から東部オハイオ州へ移す事に。

昼は自動車販売店ディーラーで働き、夜はクラブで演奏活動をオ続けると、すぐにバンドは人気を集め始め、オハイオ州で最も人気のあるハード・ロック・アトラクションの一つとなる。

1987年、ROCK BLVD.はFraternity Recordsと契約し、ファースト・アルバムのレコーディングの為スタジオに入る。

当時録音されたアルバム『Stand And Fight』は、今回デヴューEP『I Got What You Want』と同様に初めてCD化され同時発売となっている。

アルバムに先駆け“One Time Lover”と“Y R U Lyin'”の2曲がシングル・リリースされ、知名度がさらに向上したものの結局アルバムはリリースされず、2020年まで未発表のままであった。

当時、何故リリースが見送られたのかは、時流を感じてレーベルが考えを変えたからなのかレーベルが想定していた程良い仕上がりでなかったからなのか真相は定かではありませんが、こうしてお蔵入りしていたアルバムが再び陽の目を見る事になったのはなによりだ(*´∀`*)

幻の80年代USAポップメタル・バンドROCK BOULEVARDの音源がボーナストラックを追加してリイシュー!_c0072376_08570138.jpgアルバムのレコーディングとオハイオでの数ヶ月間の演奏活動期間を経て、新たにバンド名をROCK BLVD.からROCK BOULEVARDへ変更するが、時を同じくして Sai Williamsと Kyle Eigenmannは、ネバダ州リノへ戻ることを決意しバンドを脱退してしまう。

バンドは活動続行を決意し、ハイオ出身者である David Lantz(ex:HAMMER LANE、ex:METAL TOYZ、ex:TRIP、ex:NEMESIS)を新たなベーシストに迎える。

David Lantzが加入して間もなく、手練れのギタリスト Michael Hillが加入してバンドラインナップが再び完成する。

だが、先に脱退した2人に触発されたのか、アルバムが一向にリリースされない事が影響したのか、バンド内で地元ネヴァダ州のリノへ戻る事がバンドにとって最善の選択との意見が出始め、昼の仕事で成功を収めオハイオ州で安定した生計を得ていたフロントマン Jeff Kerrは Michael Hillと同時にバンドを脱退してしまう。

残ったバンドメンバー、Deland Vothと Robbie Woldridge、そして David Lantzの3人はリノで活動を再開する事に。

Deland Vothがリード・ヴォーカルを担当し、新たにMANIKIN LAFFなるバンドにも在籍するギタリスト Dennis Feckoを迎え4人組でリノでの活動を再開する。

新しいラインナップで3トラックのデモを録音するが、Dennis FeckoがMANIKIN LAFFでの活動を取り脱退し、バンドは再び3人だけに。

メンバーを探しつつ、スリーピース・バンドとしてクラブで懸命に演奏しながら、リハーサル・スタジオで週6日リハーサルを繰り返し練度を上げていたのが功を奏したのか、解散したばかりだが高く評価されていたHRバンドRAWKONのフロントを務めていた、当時リノで既に有名なシンガーであった Marc Grover(ex:VICES、ex:AXENT、ex:CRASH STREET、ex:14NI、ex:NEVERSAY)の目にとまり、彼が加入して4人組バンドとしてのラインナップが完成する。

個人的には歌唱力とパワフルさでは Marc Groverの方が Jeff Kerrより数段勝り、声質では Jeff Kerrの方が Marc Groverより甘い声質(ちょっとデヴュー当時の Vince Neilっポイ)でポップな楽曲によりマッチしているように思えますが、楽曲の完成度という点で Marc Grover(ルックスも Marc Groverの方が上…)加入後の方が数段上の出来だと思っとります。

まぁ、この辺りは好みもあるので、一概になんとも言えませんけど。

ROCK BOULEVARDとRAWKONの結成やメンバーの相互関係は、80年代末期から90年代初頭のリノでのインディ・バンド達が無数に関わっているので、ご興味あるようならチェックしてみると色々と面白い発見やミュージシャンの名を見る事が出来ますよ。

4人組として再び本格的に始動したバンドは、Del Mar Station、The Grand Ball Room、The Lime Light、Easy Street、The Tumble Weed、The Ice House、The Quake、Sierra Stix、The Metamorphosis等の名の知れた多くのクラブで演奏し、BABYLON A.D.やSHARK ISLANDのオープニングアクトを務めたり、WRECKAGE、METAL MINDED、MIDNIGHT SKYなど、数多くのインディ・バンド達とステージを共にし、タイトでハイ・エナジーなショーでファンを魅了し人気を高めていく。

1990年にEasy Streetで開催されたコンテストでバンドは優勝し、報酬としてGranny's House Studioでの6時間のスタジオ・タイムを得ると、バンドは新たなアルバムをレコーディングするべく、さらに5,000ドルを集めてスタジオ入りし、同時にTri Recordsと契約を結ぶ。

こうしてレコーディングされリリースされた4人組として初めての音源であるEPは250枚という限定的な枚数にも関わらず多くの好意的な評価を受け、そんなEPが呼び水になったのか、レコーディングから数週間後、バンドはネバダ大学フットボール・チームの為の応戦ソングを依頼され『Let's Go Wolfin'』をレコーディングする為に再びスタジオへ。

フットボール・チームのメンバーを迎えてのイントロのギャング・バッキング・ヴォーカルとフットボールの実況音声が聴ける別ヴァージョンの『Let's Go Wolfin'』はアナログ・シングルでリリースはされたが、今回初めてCD音源として『I Got What You Want』にボーナストラックとして収録される事になった。

ネバダ大学のホーム・フットボールの試合で『Let's Go Wolfin'』は演奏され、バンド活動は順調に見えたが、既にグランジーの闇に覆われつつあったシーンの変化をメンバー達は敏感に感じ取っていたのか、メンバーが他プロジェクトへ移籍した為にバンドはアッサリと解散してしまう…(´д⊂)

David Lantzと Marc Groverは他のバンドに参加するべくカリフォルニアへ移住し、Deland Vothは Harry Crook(ex:RAWKONのギタリスト)と Jamie Lee(ex:RAZORDMAID、ex:WILD CHILD、ex:WHYTE WIDOWのヴォーカリスト)と組んでSLANG WARFAREというバンドを新たに結成する。

残念ながら、その後のメンバー達の詳しい足取りは分かっていない……

結成から僅か5年ほどの活動期間の間にメンツが変わりまくったのと、活動拠点を西部から東部、再び西部へ大きく移動を繰り返した事、そして時流がグランジーへ傾いたのもあって、優れた音楽を創作していたにも関わらずメジャー・シーンで活躍するチャンスを得られなかったのが実に惜しい、そんな90年代初頭のUSAメロディアス・ロックバンドの音源がこうしてオフィシャル・リイシューされ、同時にお蔵入り音源まで初リリースと、本当にありがたい事尽くしです(*´∀`*)

今回、80年代末から90年代にかけて活動をしていた知る人ぞ知るUSメロディアスHMバンドの関連作品3タイトルROCK BOULEVARD『I Got What You Want』『Stand And Fight』RAWKON『Street Eagles』がMetallic Blue Recordsから再発されたので、ご興味あるようでしたら是非一度チェックしてみて欲しいですね。

因みにRAWKONの音源は1987年テープアルバム『Street Eagles』で、ボーナストラックとして同年リリースのテープEP『Johny's Eyes』音源も追加収録しております。

ROCK BOULEVARD Line-up:

Deland Voth    (Lead & Rhythm Guitar、Piano、Backing Vocals)
Robbie Woldridge  (Drums & Backing Vocals)
David Lantz    (Bass & Backing Vocals)
Marc Grover    (Lead & Backing Vocals、Rhythm & Lead Guitar)


# by malilion | 2021-03-06 08:57 | 音楽 | Trackback

80年代シンセポップ・トリオが4人組バンドになって本格始動! 新生SILVERNITEがギリシアからデビュー・フルアルバムをリリース!!

80年代シンセポップ・トリオが4人組バンドになって本格始動! 新生SILVERNITEがギリシアからデビュー・フルアルバムをリリース!!_c0072376_19552870.jpgSILVERNITE 「Silvernite」'20

以前ここでもデヴューEPを紹介したギリシア北部テッサロニキ出身で、紅一点女性シンガー Tanja Harkonen嬢を擁するレトロ・メロディアス・ポップロック・バンドが、遂に記念すべきフル・デヴューアルバムを完成させリリースしたので即GET!

アルバムジャケにはEPと同じくトリオ編成なのを伺わせるキャラクターが三人(チープなイラストなのがまたマイナーなインディ臭くてイイ♪)しか描かれておりませんが、アルバム内のクレジットを見るに、どうやらアルバム完成後にドラマー Minas Chatziminasが加入し、これで晴れて普通の4人組バンド編成となった模様だ。イヤー、目出度い!('(゚∀゚∩

なにせギリシアにはHMシーンがほぼ存在していないに等しいと聞き及んでいただけに、なんとかバンド活動出来る人員が得られて本当に良かった。

後の不安材料は一人だけフィンランド出身で恐らく未だに北欧在住な Tanja Harkonen嬢が、バンド活動を他のメンバー達と行えるのかとうか、という点なのですが、今現在一緒にギリシアで活動しているのか未確認ではあるものの、公開されている新曲のPVではメンバー4人で演奏している姿を披露している所を見るに、EPリリース時とは違って、一応一度は直に顔を合わせて演奏をした事はあるようですね。

相変わらず Thanos G.(Guitars)と Strutter(Synths、Programming、Bass&Backing Vocals)の二人が作詞作曲のほぼ全てを手掛けているのですが、それでも本作には1曲のみとはいえTanja Harkonen嬢が作詞で参加している楽曲も含まれており、EP時よりは幾分かバンドらしい環境が整ってきた模様でなによりです( ^ω^ )

そもそもSILVERNITEは、自身のリーダーバンドでパワメタのFIREWINDで活動する他、ギリシア産メロデスのNIGHTRAGEや北欧HMバンドのDREAM EVIL、ドイツのスピードメタルMYSTIC PROPHECYで活動をしていたが現在は脱退し、FIREWINDの活動に専念したはずだが、何故か北欧メロデスARCH ENEMYにヘルプ参加し6thアルバムアも制作し、Ozzy Osbourneのツアーにも参加したり、ソロ活動も活発に続けたりしている同郷ギリシア人でギタリストの Gus G.の17年日本ソロ・ツアーにベーシストとして同行した Strutterが立ち上げた80年代風なレトロ・サウンドを全面に押し出したメロディアス・ポップロック・プロジェクトであった。

StrutterはギリシアのメロディアスHRバンドやプログレッシヴ・パワメタ・バンド等でプレイしていた経験があり、Gus G.やUli Jon Rothの2014年欧州ツアーにも参加したギリシア以外のシーンも知る実力派ミュージシャンだが、相棒のギタリスト Thanos G.と80年代リスペクトなレトロ風味のシンセサウンドがキー・サウンドなプロジェクトを始動させ、フロントマンに北欧フィンランドのメロデス・バンドEVERSLAVEの一員として3作のデモ音源を発表した事がある Tanja Harkonen嬢を迎え、前述のEPアルバムを19年にカセットオンリー(!)でリリースと、ここでもこだわりと80年代への憧憬を隠さぬ行動に出る訳ですが、このご時世にカセットオンリーという暴挙が逆に注目を集め、後にボーナストラックを2曲追加して無事CD盤としてリリースされるに至り、ここでご紹介した訳ですね。

さて、国内外から注目を集める事に成功した彼等が、満を持して制作したフルアルバムのその内容はと言うと、前作から引き続きエイ リアンに侵略された地球を奪還すべく、人類が立ち上がる様を描いたSFコンセプト作となっており、EP同様にレトロ風味の利いたシンセサウンドと Tanja Harkonen嬢の滑らかで美しいポップス的なヴォーカルがキャッチーに楽曲を進めていく路線に変更は無く、Tanja Harkonen嬢のヴォーカル・パフォーマンスのレベルも楽曲の完成度も上がり、 EP当時より精進した成果が見事に結実した、ダークでスペイシーな美旋律とAOR風のシャレオツなメロディが軽やかに交差し80年代リスペクトな楽曲を彩る、どこか懐かしいのに今風のモダン・サウンドにブラッシュアップされた一癖あるポップ・ロック・アルバムとなっている。

楽曲制作にも参加した事で前作よりSILVERNITEへの理解が深まったのか、Tanja Harkonen嬢のヴォーカル・パフォーマンスが様々な表情を楽曲に与えており、少しコケティッシュで甘ったるいポップス風な歌唱から、透明感あるクリアーでストレートな歌声、ユーロビート風なデジタル処理されたメカニカルなヴォイス、メロデスで培ったダーティでパワフルなガナリ声もチラリと聴かせたりと、EP時より明らかに歌唱法の幅が広がっており、よりSFコンセプト作の情景やキャラクター達の心情を表現出来るようになったのか『フル・アルバムではギリシア出身のフィメール・ヴォーカリストにどうせメンバーチェンジするんだろうなぁ』というEP時の勝手な私の予想を覆し、実に良くバンドに馴染んでいて、よりスケールアップしたキャッチーな楽曲との相乗効果を著しく生んでいるように思えます(*´∀`*)

80年代のロックやポップスにインスパイアされた楽曲に、ノスタルジーを取り入れ新たな息吹を吹き込んだそのサウンドには、オールドスクールなシンセ、メロディアスなリードギター、ポップフィーリングたっぷりなヴォーカル、SFコミック、ウォークマン、カセットテープ、ローラースケート、アーケードゲーム、時代がかった大きなサングラス、バブルガム、セクシーな紅いルージュ等々、過ぎ去った青春のグラフティや忘れかけていた情熱が渦巻いており、80年代当時を知るリスナーにある種共通な追憶を引き起こさせる独特な味わいとセンチメンタルな香りが強烈に漂っていて、本作は聴くリスナーの年齢によって評価が著しく変わる一作かもしれない。

個人的に彼等のサウンドは大好物な部類なのですが、ボスである Strutterが操るシンセがサウンドの基軸になっているし、サウンドの方向性が80年代レトロ・ポップロックだから仕方がないのだが、少しキーボードサウンドの比重が多すぎるきらいがあり、総じてハードエッヂなギターサウンドが少な目なので、産業ロックや切れ味鋭いハードポップ、そして最近の高品質なメロハー・サウンドが好きなリスナーには少々かったるく古臭いサウンドに聴こえてしまうかもしれないのがちょっと不安ではあります。

とまれ、まだ結成して日も浅い彼等が予想以上に見事なサウンドを引っさげて、こうして遠くギリシアからフルアルバムを届けてくれたのをまずは祝いたいですね。

ギリシアでの活動はなかなかに厄介でしょうが、出来るだけ長く活動しコンスタントに作品を届けてくれる事を祈っております。

尚、本作は限定のデジパック仕様が初回リリース盤なので、お求めの方はお早目に。

さらに、本作と連動した短編コミックスもアルバムと同日リリースする予定との事なので、本作が気に入った方はそちらの方もチェックしてみるといいかもしれない。


SILVERNITE Line-up:

Tanja Harkonen  (Lead Vocals)
Strutter (Synths、Programming、Bass&Backing Vocals)
Thanos G.      (Guitars)
Minas Chatziminas (Drums)



# by malilion | 2021-03-04 19:55 | 音楽 | Trackback

80年代後期から90年代初期を意識した作風なAOR&HRを聴かせる Jeff Scott Sotoのハイクオリティな新ソロ作をご紹介!


80年代後期から90年代初期を意識した作風なAOR&HRを聴かせる Jeff Scott Sotoのハイクオリティな新ソロ作をご紹介!_c0072376_16003784.jpgJEFF SCOTT SOTO 「Wide Awake (In My Dreamland)」'20

Yngwie Malmsteenに見いだされ、以降長きに渡って様々な世界中のプロジェクトやバンドに参加してきたUSロック界きっての多忙ヴォーカリスト Jeff Scott Soto(現SONS OF APOLLO、ex:Yngwie Malmsteen Band、ex:TALISMAN、ex:JOURNEY、ex:Axel Rudi Pell、etc…)が、ソロ名義としては7作目となるアルバムを去年末にリリースしたのを、少々遅れてGET!

最近、活発な活動を見せている自身のリーダーバンドSOTOが所謂ゴリッゴリのダークネスな現代的モダン・ヘヴィネス・サウンドを基軸にするのに対し、ソロ作は彼の活動を80年代から追い続けているファン達が待ち望む通りな甘いメロディが主体なユーロ系メロディアス・ロック作なのは恒例なのだが、本作もその例に漏れずキャッチーなAORやフックあるヴォーカル・メロディが耳を惹くハードロック風味が強い作風となっている。

商業的な成功を最近やっと得て経済的な心配事が無くなった模様の彼ですが、それまでHMからプログレ、ポップスにAOR、ファンク、果ては子供向けアニメのサントラ参加に至るまで、様々な音楽スタイルを器用に歌いこなす抜群の歌唱力を活かし、数え切れぬほどのバンドやプロジェクト、世界中の有名無名ミュージシャン達のセッション等に参加して生活の糧を得て来た結果、36年の音楽キャリアで85枚以上(!?)のアルバムにその歌声を残す事になってしまったのだった。

正直、彼のファンでも彼の参加したアルバムの音源を全て所有する人は僅かなのではないかと思うくらい、有名無名問わず、国籍問わず、多岐に渡る音楽スタイルの創作活動(アニメのサントラまでとは…)に参加しているので、ホントに追いきれません(汗

で、そんな彼の最近のメインとなっているのはUSスーパーバンドのSONS OF APOLLOとSOTOと思われ、当然のように他アーティストのアルバムへの参加やソロ活動は控え気味なのかなぁ、と思っていた所で本作のリリース情報を知って『やっぱりJEFFはキャッチーでメロディアスな音楽で歌ってくれなきゃネ!』と、嬉しくなってしまいました(*´ω`*)

ただ、多忙な彼の現状を反映するように、本作の楽曲は、作曲からプロデュース、ベースやキーボードまで手掛けているのがイタリアのメロハー・レーベルFrontiers Recordsお抱えミュージシャン Alessandro Del Vecchio(EDGE OF FOREVER、HARDLINE、SUNSTORM、Jorn、REVOLUTION SAINTS、FIND ME、FIRST SIGNAL、HAREM SCAREM、HOUSE OF LORDS、VIANA、LIONVILLE、LANESLIDE、etc…)となっており、Frontiers Records好みな Alessandro Del Vecchioの80年代後期~90年代初期を意識した曲に Jeff Scott Sotoがお仕事で作詞でだけ参加し歌も乗せているだけ、とも捉えられかねないソロらしくないソロな制作状況なのが、ちょっといただけないんだよなぁ…

無論、Alessandro Del Vecchioの仕事ぶりに落ち度は無く、キャッチーでメロディアス、そして程ほどにハードで勢いのある完成度の高い楽曲と、Jeff Scott Sotoの歌唱を活かすプロフェッショナルなプレイを他のバックのイタリア人ミュージシャン達と同様に提供し、高品質なプロデュースを行ってくれているので、本作の出来栄え自体になんら問題は無いんですけどね。

パワフルなハードロックからミッドテンポのAOR、そして美しいバラードまで、Jeff Scott Sotoの幅広い抜群の歌唱を存分に楽しめる仕上がりな楽曲は、人生、愛、ほろ苦い感情、日常生活における闘争、人の感情について奨励的な視点について語られ、情熱的に歌い上げられているのだが、なんというか彼がメジャーな成功を得ようと悪戦苦闘を繰り広げていた80年代から90年代にかけて数多のバンドやアーティスト達のアルバムで聴ける魂揺さぶる迫真の熱唱や試行錯誤の跡が伺える入魂の楽曲のように心に響かない、お行儀よく創られたそこそこ良い出来のソツなく纏まった売れ筋曲のように聴こえてどうにも釈然としないのは、単に私が懐古主義なだけではないと思うのですが…ウーム(=_=;)

典型的な楽曲展開にお約束のヴォーカルメロディ、そしてこれまたお約束の分厚いバックの爽快コーラス、ちょっとハードな風味を加えるメタリックでテクニカルななギター、とこれまで Jeff Scott Sotoのソロ作や彼が参加してきたバンド等のアルバムを聴いて来たダイハードなファンにとって些かマンネリ気味、そして予想通りで単調な要素が多く耳につく凡庸なアルバムに思えてしまうのですが、それ故に総じて楽曲の完成度もパフォーマンスも高いレベルで結実している期待を裏切らぬ出来とも言えるので、Jeff Scott Sotoのファンにとっては決して駄作ではない、これまでの Jeff Scott Sotoのキャリアを凝縮したような一作とも言えるのではないでしょうか?

折角のソロ作なので、目新しい音楽要素に挑戦とか他ジャンルの有名ゲスト等を招いての絡みなんかがあればまた楽曲の毛色も変わって面白味も出たんでしょうけどねぇ、どうにも予定調和な、もう一捻りが欲しいアルバムなのが個人的には少々残念ではあります。

尚、ボーナス・ディスクには、2019年に行われたFrontiers Rock FestivalにおけるLIVEの模様が収録されているので、動く Jeff Scott Sotoのパフォーマンスを楽しみたい方は是非本作をチェックしてみて下さい。




# by malilion | 2021-03-03 16:00 | 音楽 | Trackback

80年アルバム・デヴューな北欧ノルウェーの古豪シンフォ・バンドKERRS PINKが7thアルバムをリリース!!

80年アルバム・デヴューな北欧ノルウェーの古豪シンフォ・バンドKERRS PINKが7thアルバムをリリース!!_c0072376_16091864.jpgKERRS PINK 「Presence Of Life」'21

72年に結成され、80年にアルバム・デビューした当時、北欧トラッドとCAMELをMIXしたような北欧独特な透明感のある洗練されたインスト曲オンリーなシンフォ&プログレッシヴ・ロックを奏でるスタイルだったが、徐々に音楽性を変化させてゲスト・ヴォーカリストを招いたりメンバーが歌うヴォーカル入り曲も演りはじめ、活動停止前のアルバム『Tidings』'02 では初めて専任ヴォーカリストを擁するツイン・キーボード編成の6人組バンドになったが、その後の11年間彼等は新譜をリリースする事はなかった…

当初からメンバーは流動的ながら活動休止前の数作は比較的メンツも安定していたが、この長い長い休止期間で元居たメンバー達の姿は消え、11年ぶりとなる前作は唯一のオリジナル・メンバーである Harald Lytomt(Guitar、Flute)以外のメンツを一新したキーボード入り5人組というオーソドックスな編成で“70年代プログレッシヴ・ロックへの回帰”をコンセプトに挙げる通り、ハモンド、ムーグ、メロトロン、生ピアノ、タウラスなど本物の音色にこだわり抜いたヴィンテージ色を大々的に導入した、 Harald Lytomtの弾く Andrew Latimerを彷彿させる太くマイルドなトーンのギターが切なく伸びやかに咽び泣きまくる、定番の北欧トラッドやロマンチックで幻想的な叙情感が優雅に滲む、CAMEL張りな歌心溢れるシンフォニック・パートと、北欧フレーヴァー香る切れ味鋭いプログレ・ハード・パートとの鮮やかな対比が見事な復活作を届けてくれる。

8年ぶりとなる本作では、さらにメンツを補充し、前作からフロントマンに迎えられた同郷のシンフォ・バンドMAGIC PIEの Eirikur Hauksson(Vocal)の他、Glenn Fosser(Keyboards)、Per Langsholt(Bass)、Magne Johansen(Drums)の4名も引き続き参加し、さらに Lasse Johansen(Piano、Mini Moog、Mellotron、Keyboards)と Hans Jorgen Kvisler(Guitars)の2名が新たに加わった、ツイン・キーボード&ツイン・ギター(!!)の大所帯7人編成バンドとなって、ベテランとは思えぬフレッシュなエネルギーとドラマチックな北欧ノルウェー・バンドらしい哀愁と繊細な叙情感が響き渡る美旋律シンフォ・アルバムを再び届けてくれました!('(゚∀゚∩

久しぶりな本作の内容はと言うと、Harald Lytomt入魂の Andrew Latimer直系のマイルド・トーンな泣きのギターが楽曲のメインカラーを決定付けているのは変わりないものの、一聴してすぐ気づくのは前作のシットリした北欧由来のセンチメンタルな叙情感は幾分か後退し、よりパワフルでアグレッシヴな所謂定番のユーロ圏シンフォ・ロック的サウンドの感触が強まって感じられ、それは前作ではMAGIC PIE風のヴォーカル・パフォーマンスを控えてシットリと歌い上げつつ、HEEP風なコーラスも聴かせシンフォ系サウンドにアジャストさせていた Eirikur Haukssonが彼本来のMAGIC PIE風のパワフルでダーティなヴォーカル・パフォーマンスをKERRS PINKに持ち込んで来たのと、大所帯のバッキング奏者達が奏でるサウンドの厚みが増し、さらにこの8年でシッカリと馴染んだ新メンバー達がバンドへの貢献として本作から披露し始めた、より今風のシンフォ・ロックへ接近したモダンで重厚な音楽性とダークなメロディの影響が色濃く感じられる作風になっている。

北欧バンドの専売特許であるヴィンテージ臭漂う叙情感とアコーディオンが奏でる鄙びた北欧ドラッド風味を随所に散りばめつつ今風へアップデイトされた強力なシンフォ・サウンドを、前作の70年代プログレ・リスペクトな音を鳴らしていたKERRS PINKが披露するとは正直予想外で、鍵盤奏者達の奏でる透明感と躍動感ある艶やかな美旋律と、不意に紡がれるツインギターの甘くセンチメンタルなフレーズ、軟弱になりがちなシンフォ・サウンドを引き締めるハードなリフと泣きのギター・トーン、それらが鮮やかに交差する優雅なアンサンブルと構築美あるリリカルな楽曲を、テクニカルな変拍子を交えながらボトムを固め支えるリズム隊の小気味よく堅実な仕事ぶりは、流石はベテラン・バンドと唸らされるソツなく見事な出来栄えであります(*´∀`*)

持ち味であるメロディアスな楽曲展開をメインにしつつ、北欧トラッドを取り入れたノスタルジックな美旋律がうっすら70年代プログレ風味を感じさせながらも、よりモダンでパワフル、そしてダークな感触も漂わす20年代シンフォニック・ロックとの音色が見事に融合した、新生KERRS PINKを記念する素晴らしい一作と言えましょう。

THE FLOWER KINGSをはじめ欧米のミュージシャンとの交流があってメジャーな北欧シンフォ・バンド達と比べると、そもそもがインスト・バンドだったし、長い休止期間もありましたし、元来がバンド的に地味なイメージなのは否めませんが、それでも本作は自主制作盤の北欧シンフォ・アルバムとしてはA級クラスの出来栄えで、長らく待たされた甲斐があったと言うものです。

と、諸手を挙げて絶賛しておいてなんですが、前作で聴けたユーロ・シンフォらしいシットリしたヴォーカルアプローチやHEEPっぽい妖しいファルセット・コーラスが減ったのが個人的にはちょっと残念ではありますし、本バンドにパワフルでモダンなサウンド路線への進化を余り望んでいなかったと言うのもあったりで、実に素晴らしいアルバム内容なのに、ちょっと残念な想いが残ってしまう、そんな身勝手な感想が無きにしも非ずだったりして…

とまれ北欧トラッドとCAMELやPINK FLOYDのような70年代英国プログレッシヴ・ロック・バンド達からの影響を巧妙かつ繊細にMIXし、肝であるメロディアスなインストゥルメンタル・パートの美しさと、エモーショナルなギターとキーボードが奏でる繊細で優美なノスタルジック・サウンドとモダン・サウンドの対比が生み出すコントラスは実に鮮やかでパワフルなので、最近デヴューした北欧シンフォ・バンド達に一歩も引けを取っていないどころか数段上をいっているのは間違いなく、彼等のアルバムを聴いた事のないシンフォ・ファンだけでなく、北欧メロディアス・ロック好きな方にも是非一度チェックしてみて欲しいですね。


KERRS PINK Line-up:

Harald Lytomt    (Guitars)
Eirikur Hauksson   (Lead Vocals)
Glenn Fosser (Keyboards、Hammond C3、Piano、Mini Moog、Mellotron、Accordion)
Per Langsholt    (Bass、Moog Taurys Basspedals)
Magne Johansen   (Drums、Percussion)
Lasse Johansen    (Piano、Mini Moog、Mellotron、Keyboards)
Hans Jorgen Kvisler (Guitars)



# by malilion | 2021-02-27 16:09 | 音楽 | Trackback

ロシアの暴走バカテク野郎 LOST WORLD BANDがデビュー前のカセット音源を再録リリース!('(゚∀゚∩

ロシアの暴走バカテク野郎 LOST WORLD BANDがデビュー前のカセット音源を再録リリース!(\'(゚∀゚∩_c0072376_19580105.jpgLOST WORLD BAND 「Lost World 1992」'21

天才的ヴァイオリン奏者にしてマルチ・プレイヤー Andy Didorenko率いるロシアン・シンフォニックの最高峰バンドLOST WORLD BANDが、去年再録&リマスターされリイシューされた彼等の02年デヴュー・アルバム『Trajectories』以前に制作されていたカセットテープ作品2本を新録にてリメイクしたアルバムがリリースされたので即GET!

ソ連崩壊(今や懐かしい出来事ですね…)直後の1992年3月から6月頃にかけて録音された本作は、1990年代初頭から Andy Didorenko(Violin、Vocals、Bass、Guitar、Keyboards、etc...)と Vassili Soloviev(Flute、Vocals )が最初期からLOST WORLD BANDのコアを形成し、90年代初頭の世界的な音楽の流行やメジャー・ミュージック・シーンとは一切無関係な、真に芸術的で冒険的な、若き音楽家がピュアな創作活動を行っていた記録と言えるアート・ロック作だ。

冒頭の1曲目はイントロダクションの様なものでオリジナルのカセット音源をそのまま再収録しているが、それ以外のオリジナル音源はもはや今日の品質基準を満たしていない低音質であった事から、カセット作はデモ音源と考えて新たに2018年~2020年に一からレコーディングし直し、アルバムのイメージを完全に再構築しつつ、さらにドラマーによるドラムムパートの初のレコーディング(デヴュー時の彼等はドラマー不在)音源と歌詞の書き下ろし等を含む新録音源集となっている。

2020年に再録&リマスター&ボートラ入りでリイシューされた『Trajectories』が、惜しくも早逝した Vassili Solovievの残した最後の音源かと思っておりましたが、2014年に本作の音源全体を再構築しなければならぬ事をメンバーが認識し、Vassili Solovievはフルートとヴォーカル・パートを『Spheres Aligned』'19 のレコーディングから間もない2018年6月某日に2日間にかけて録音しており、2018年5月から Andy Didorenkoが残りの全ての楽器パートを録音し直す(一部、オリジナルの演奏パートも収録している)作業を開始したと言う事から、本作のリレコーディング、そしてオリジナル演奏パートが Vassili Solovievの残した最後の音源と言う事になるのでしょう。

長年の相棒である Vassili Solovievの早逝だけでも大きなアクシデントだが、2020年は全世界的なパンデミックによって世界中のミュージシャンがその活動を停滞させる中、同じように Andy Didorenkoもアパートに閉じ込められてしまったらしい。

だが、めげることなく Andy Didorenkoは本作の作業を続け、オンラインで若く多才なフリーランサー・ドラマー Matt Brownを見つけると、ロンドンの彼のスタジオでのドラムトラック録音を依頼し、11月から12月にかけてミックス&マスタリングを行い、約30年ぶりに本作を完成させ、こうして無事リリースへ漕ぎつけた訳だ。

諸々のアクシデントを思うと、下手をすると本作は完成しなかった可能性が高かった訳で、これは偏に相棒 Vassili Solovievが遺した音源を無駄に出来ないと Andy Didorenkoが必死に作業をしてくれたお陰なんでしょうね……麗しき友情、ってヤツですな(*´ω`*)

さて、本作の内容の方はと言うと、一聴して驚かされるのはデヴュー作で聴けた暴走列車の如き怒涛の勢いと迸るスピード感は見当たらず、ヒステリックなまでにハイテンションでスリリングな咽び泣くヴァイオリンが聴こえてこない点だろう。

寧ろ正反対な、柔らかく繊細なアコースティック・タッチなギターや、クラシカルで艶やかなストリングス、軽やかなフルートの音色が香る70年代初期のアートロック風サウンドで、デヴュー作『Trajectories』でも感じられた初期KING CRIM風な翳りのある密やかなタッチや、フルートの使われ方やアレンジにJETHRO TULLの影響を感じさせ、如何にもモスクワ音楽院出身らしいインテリジェンス漂うクラシカル・アンサンブルも織り交ぜたサウンドには叙情感が色濃く、そして隠しようもなくロシア然とした陰が見え隠れするメロディは儚く、孤独な郷愁を美しく響かせている。

ただ、完成度という点で見ると些か本作の印象は散漫と言わざるを得ず、公式デヴュー前のデモ的カセット作なのだから当然と言えば当然だが、まだまだ多岐にわたる音楽要素が整理されきっておらず、サイケデリック、カンタベリー、クラシック、ジャズ、フュージョン、プログレ、ポップス等のアイデアを貪欲に取り入れようとした弊害か、各音楽要素が異質過ぎた為か、インストゥルメンタル・テクスチャーがそれぞれ遊離したように聴こえる音楽的なまとまりに欠けた作品なのは残念な点と言えよう。

それでも再録されたサウンドは高品質だし、Andy Didorenkoが英語で歌う朴訥としたヴォーカル・パートもアートロック然とした本作には良くマッチしており、ヴァイオリン、フルート、ギター、ハープシコード、オルガン、ピアノをクラシカルに配した楽曲のリリカルな響きは後の他で聴く事が出来ぬ独特の魅力が既に見え隠れしており、暴走バカテク野郎のバックボーンが窺い知る事が出来る貴重な一作なのは変わりない。

尚、本作は限定自主制作デジパック盤なので、お求めの方はお早目に入手される事をお薦めします。

どうやら国内盤もリリースされる模様なので、オリジナル盤やデジパック盤にこだわらない方なら国内盤リリースを待ってもなんの問題もありませんけどね( ^ω^ )


LOST WORLD BAND Line-up:

Andy Didorenko  (Violin、Vocals、Bass、Guitar、Keyboards、etc...)
Vassili Soloviev   (Flute、Vocals )
Matt Brown    (Drums)






# by malilion | 2021-02-25 19:54 | 音楽 | Trackback