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南米ボリビアで活動するネオクラHMバンドGLORIUSが自主制作デヴュー・アルバムをリリース!

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GLORIUS 「Same」'22

チリの右上、ブラジルの左下に位置する、中南米ボリビアで2019年に結成され、去年末にデヴュー・アルバムをリリースしたキーボード入り5人組ネオ・クラシカルHMバンドをご紹介。

紹介しておきながらなんですが、スペイン語圏バンドと言う事やまだデヴュー作リリースしたてと言う事や、明らかに今の流行りでない古式ゆかしいネオクラHM路線なマイナー・インディ・バンドだからかネットを余り活用していないからなのかイマイチ情報が少なく、彼等の詳細なバイオ等不明であります(´д⊂)

シンフォニックに盛り上げるクラシカルなキーボードサウンド、音数多目に弾きまくる速弾きギター、線が細く女性かと間違うハイトーン・ヴォイスで物悲しい哀愁漂うスペイン語の歌詞を歌い上げるヴォーカル、スピーディーにドコドコとツーバスを連打するボトム、とまるで80年代後期にここ日本のインディ・シーンで蠢いていたB級ネオクラ・バンドの作品を聴いているような錯覚に陥るそのマイナー調でウェットな美旋律と華麗で繊細なメロディ、御多分に漏れず私も大好物です(w

楽曲によってサウンドの質にバラつきがあったりノイズが聴こえたりとインディ作なのでお世辞にも高品質なプロダクションの作品と言えませんが、その目指す方向やどんな欧米のバンドに影響を受けて来たのかモロ分り(イングヴェイ大好きなんだなぁ~)なクラシカルなメロディの洪水、軽やかに乱舞するシンセ・ワークとバッキングの野郎コーラスが弥が上にもエピカルな雰囲気を盛り上げる等々、Mandrake Root Recordsから80年代末期にリリースされていたアルバムと言われても疑わない日本人受けするモロ80年代風ネオクラHMサウンドが2022年にもなって新人バンドと共に欧米シーン以外から飛び出してくるなんて本当に嬉しくて堪りません♪

オリジナリティに些か問題がある事や、まだまだパワー不足でフラつく箇所が散見されるヴォーカル、今となっては古臭い音楽性や、少々単調なきらいのあるリズム・パターン、そしてどうしてもフォロワー感が強くインギー丸パクに聴こえるネオクラシカルな速弾きギターのフレーズと音色、と問題的を指摘しだしたら止まらないんですが、それでも尚彼等の演る今や天然記念物ばりにレアなネオクラHMサウンド、借り物臭い所ばかりだけど憎めないし時代遅れと分かっていてもやっぱり嫌いになれないんだよなぁ~♪

大仰なオーケストレーションと流暢でクラシカルな速弾きギターが絡み合い、マイナー調の物悲しいダークなメロディを高速で奏でながら徐々に昇天するが如き上昇感ある疾走パートなんて、ホント堪りませんから(゚∀゚)

さらなるメジャーな展開を狙うならスペイン語歌詞を英語に変え朴訥で調子っぱずれになるヴォーカル・スキルを今以上に向上させる事や、音楽性にもっとモダンなタッチを加えるなど改善策は色々あるのだろうが、そうなってしまうと彼等の80年代北欧ネオクラ風な持ち味がスポイルされてしまう恐れがあるので、おいそれとサウンドをいじる事は出来ないんでしょうねぇ…

逆に言えば流行りに毒された欧米の音楽シーンから距離があったからこそ、彼等のようなピュアなネオクラHMサウンドを演るバンドがこうして今頃に生まれてくる土壌がボリビアには残っていたとも言えるし、メジャーな展開を目論むのはバンド的に自殺行為に等しいのかもしれません。

フォローする訳じゃありませんが、ネオクラ宗家のイングヴェイに無い要素も幾らか彼等のサウンドからは感じ取れ、土地柄故かアルバム・イントロの荘厳なオーケストレーションや悲壮なバラード曲等にそこはかと宗教色が感じられるなど、北欧HMとも典型的ラテン的なサウンドとも、欧米のサウンドとも毛色の違う、南米HMバンドならではの独特な持ち味も彼等は十分に内包している事が伺える。

後はナイーブでメロディアス、それでいて儚げな独特の節のある歌メロが特有な味わいを醸し出しており、この辺りも欧米のメジャーシーンで活躍するバンド群ではなかなか聴けないポイントなので、そういった独自性を武器に更なる活躍を目指して欲しいものです。

次作ではもう少しプロダクションの向上と音楽性の幅が多少広がる事を願って、是非このまま堅実に活動を続けて欲しいものであります。

メロディアスでテクニカルな80年代ジャパメタやイングヴェイ系のネオクラシカルHM、そして70年代から続く様式美ロックがお好きな方にお薦めな期待の新バンドだ。

Tracks Listing:
01. Preludio
02. Sueno Perdido
03. El dragon
04. Tu Adios
05. Amor Eterno
06. Ilusion
07. Recuerda
08. Glorius

GLORIUS Line-up:
Dhussan   (Bass)
Cristian    (Drums)
John Pavlo  (Guitars)
Mauricio    (Orchestrations、Piano)
Victor     (Vocals)



# by malilion | 2023-01-16 15:24 | 音楽 | Trackback

90年代末から活動を続けるベテラン・イタリアン・メロパワ・バンド新生HIGHLORDの第二弾作がリリース!!

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HIGHLORD 「Freakin' Out Of Hell」'22

典型的80年代ジャーマン病を発症し臭メロを奏でシンフォニックで大仰なキーボードも高らかに激走するB級パワメタ群の1バンドとして1997年にイタリア北部の都市トリノで結成されたキーボード入り5人組バンド HIGHLORDの通算9枚目のアルバムが、前作『Hic Sunt Leones』'16 以来6年半ぶりにリリースされたのをちょい遅れてご紹介。

99年アルバム・デヴュー当時から国内レーベル SOUND HOLICからのリリースを重ね、6thアルバム『The Death Of The Artists』'09 も当初同レーベルからリリース予定ながら土壇場でレーベル消失(涙)、紆余曲折あってRUBICONレーベルから無事国内盤がリリースされるが続く7th『The Warning After』'13 は国内盤リリースは敢え無く見送られ、さらに8th『Hic Sunt Leones』'16 ではアルバム・デヴュー前の結成時から長らく唯一のオリジナル・メンバーであったギタリストでリーダーの Stefano Droettoが脱退(!?)してしまい、オリジナル・メンバーが誰一人として在籍せず(同郷のプログHMバンドDGMも同じ境遇ですね)鍵盤奏者も含まぬ4人組編成で作成され、当初のシンフォニックで大仰なキーボードをフィーチュアする臭メロ・イタリアン・パワメタから鍵盤サウンドが完全に添え物になった上にデス・ヴォイスやフィメール・ゲストヴォーカルもフィーチャーし、よりヘヴィでモダン、そしてタフでワイルドな音像へ進化した彼等にとって最大の問題作で勝負作は、それまでアニメ曲を幾度もカヴァーしたりと陽気なイタ公な上に無邪気なヲタクのイメージだったのが完全に払拭され大きくシリアスに傾いた音楽性の変化やメンバー・チェンジも影響したのか再び国内盤リリースを見送られてしまう。

思えば6th『The Death Of The Artists』制作時からキーボーディスト Alessandro Muscioが脱退し、鍵盤奏者を補充せず Stefano Droettoがキーボードとドラム・パートまでもプログラミングを用いてカヴァーするなど彼のソロ作色が強まった創作体制はファン的に少し心配だったが、続く7th『The Warning After』でもプログラミングを用いる創作体制ながらも専任鍵盤奏者 Lele Mr. Tritonが迎えられ定番の5人組編成に戻ったものの、前作『Hic Sunt Leones』では Stefano Droettoが抜け、新加入の Lele Mr. Tritonも抜け、デヴュー以来長らくベースを務めてきた Diego De Vitaまでも姿を消すという、長期安定だった編成が一気に崩壊する予兆は6thアルバムの時から既に現れていたのだと今なら分かり、マイナーな臭メロB級イタリアン・パワメタから出発して徐々にベーシックでオーセンティックな音像へシフトし成功を目指して懸命に頑張っていた Stefano Droettoの突然の脱退は、その心境に何らかの変化が訪れたのだと思う他ありませんね…

因みに Stefano DroettoはHIGHLORD脱退後にどこのバンドにも加入もせず、新バンドも立ち上げていない模様なので、もしかして懸命に創作しても一向に報われない音楽業界から足を洗ってしまったのかもしれませんし、四十代も半ばを過ぎて家庭生活に重きを置く事にしたのかもしれませんが詳細は一切不明です(´д⊂)

さて、結果的に二代目フロントマン Andrea Marchisioが率いる事となったHIGHLORDですが、バンド編成は前作『Hic Sunt Leones』と変化は無く、さらに新たに鍵盤奏者 Davide Cristofoliが迎え入れられ当初からのキーボード入り5人組編成へ戻っており、大仰なキーボードが高らかに鳴り響くイタリアン・シンフォ風なメロ・パワを愛する諸兄にとっては嬉しいメンバー補充と言えるだろう。

バンドコメントによると『全員でこれらの曲をベストな形に仕上げていく作業は喜びだった。全体的なテーマは、ネガティヴな思考が芽生え、雪だるま式に大きくなって行き、最後には死に繋がっていくというもの。『Freakin' Out Of Hell』ではヘヴィさと攻撃性の平均レヴェルを少し上げている。これはハッピー・メタルなアルバムではなく、ヘヴィ・メタルそのものの定義に則った作品だ』との事なので、やはり初期から彼等が有していた陽気でバカっポイ、ある意味B級マイナーだけど親しみが湧くFUNでアンダーグラウンドな感覚(元々、日本アニメ・ファンだったのは Stefano Droettoだしネ)は完全に切り捨てられた模様ですね。

長らくプロダクション等に問題を抱えていた彼等だが、前作に引き続き本作でもそういった負の要素は脚を引っ張る事はなく上々な環境で創作が行われた模様で、パンデミックの影響もあって完成に時間を要した模様だが、その時間的余裕が本作の完成度を引き上げる事にプラスに働いたと思しき素晴らしい切れ味と疾走具合の硬質でヘヴィなメロディック・パワー・メタル・サウンドが鳴り響いており、図太くアグレッシヴなメタリック・サウンドを聴くに以前のマイナーなB級の雰囲気は霧散し一気にメジャー感とモダンな感触が増した充実作だと実感します。

自身が率いる事になったからなのか、このインターバルで新たに血肉となる糧を得たのか、Andrea Marchisioのヴォーカル・アプローチや歌メロにも大きな変化が伺え、無理に力む事ないリラックスした普通のロックを歌い上げる風な歌唱スタイルや、如何にもHMらしいアグレッシヴでパワフルな怒号、それに加えて突き抜けるハイトーン・ヴォイス等々、以前のような勢い任せでない歌心を感じさせるパートが多く感じられ、これまでにも増して多彩で伸びやかな歌声を披露しヴァラエティに富んだイメージとエモーショナルな表情を楽曲に与える事に成功しているのは嬉しい驚きでした。

ただ、一気にヴォーカルアプローチの幅が広まった為なのか、所々でちょっと歌メロがバックのサウンドに乗り切れていない不安定な箇所やチグハグ感が拭えぬパートなども散見するが、これは新しい試みに挑んだが為の作用で次作ではきっとそんな否定的な印象がキレイサッポリと消え失せている事でしょう…多分…

Stefano Droettoの後任ギタリスト Marco Malacarneは若いだけあってこれまでのHIGHLORDで聴けなかったテクニカルでモダンな感性のギター・サウンドを伸び伸びと聴かせ、どちらかと言うとバランス重視で楽曲を盛り上げるフレースやメロディを紡ぎ、新キーボーディストの Davide Cristofoliもシンフォニックな音色を弾くものの、以前よりB級マイナー臭さを助長していた大仰さは控えめで、モダンな感性のシンセ・サウンドやピアノでエピカルな雰囲気を増すのを重視したような、楽曲の魅力をトータルに上げる事に力を注いでいるように思えるプレイに終始し、その為もあってか以前のアルバムより断然楽曲やサウンドの完成度が上がって聴こえ、ベテラン・バンドらしい上品さや艶やなか音色も聴かせるアルバムの質を上げるのに一役買っているのは間違いない。

加えてイタリアン・シンフォニックHMバンドSOUND STORMにも在籍するベーシストの Massimiliano Flakが本作のレコーディング、ミキシング、マスタリング、プロデュースを担当した事も、今まで Stefano Droetto中心で完成されてきたバンド・サウンドから大きく飛躍し、プロダクションの向上とモダンなサウンドへと大幅に進歩した要因なのは本作のサウンドが証明している。

初期のマイナーB級パワメロ特有の臭い臭いメロディの洪水やキラキラしたキーボード・サウンドに包まれた身を捩る(笑)ような官能的な美旋律、そして愚直でがむしゃらな疾走感を愛していたメタル・ヘッドな諸兄にとってはすっかり別バンドになったように思えるかもしれないが、ファンタージー映画のサントラの如き勇壮で荘厳な野郎合唱からヘヴィでソリッドなボトムが強調された怒涛の疾走パートへ雪崩れ込むイントロを耳にすれば、イタリアン・バンドらしい胸焼けしそうに濃厚な美旋律、スケール感増し増しの大仰なシンフォニック・テイストが未だ健在なのがお分かり戴けるだろう。

デジタリーでメカニカルなタッチのモダンな音像を使う現代的なアプローチや、硬質でソリッドなリズムワークでグイグイと正攻法に攻め続けるオーセンティックなHM的手法、そしてお約束のツーバス・ドコドコの疾走パートも織り交ぜ、以前よりさらに緩急を活かした立体的な楽曲構成が楽しめ、殆どメンバーが違っているのだから当然なのだが今まで聴いた事のない音使いやアレンジ、プログHMっぽいリズムチェンジや複雑な楽曲展開の妙が楽しめる好盤に仕上がっているので、彼等に見切りをつけてしまった従来のファンにこそ是非もう一度本作をチェックして欲しいものであります。

イタリア産バンドらしい濃厚な美旋律とウェットな音使いが素晴らしい、かなり良い出来なパワー・メタル・アルバムなのですが今の所国内盤リリースの情報は無い模様で、残念ながら前作と同様に国内盤リリースは見送りっポイのが悲しいですね…(´A`)

Tracks Listing:
01. Prelude To Hell
02. Soul Sucker
03. Freakin' Out Of Hell
04. Sweet Unknown
05. Off The Beaten Path
06. Hollow Space
07. If You Say Yes
08. Eyes Open Wide
09. The Devil's Doorbell
10. Fallen From Grace
11. One Eyed Jack

HIGHLORD Line-up:
Andrea Marchisio     (Vocals)
Massimiliano Flak     (Bass)
Marco Malacarne      (Guitars)
Davide Cristofoli      (Keyboards)
Luca 'T-1000' Pellegrino   (Drums)


# by malilion | 2023-01-11 19:06 | 音楽 | Trackback

DREAM THEATER系英国プログHMバンドLOST IN THOUGHTの2ndアルバムを今頃にご紹介。

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LOST IN THOUGHT 「Renascence」'18

18年に7年振りとなる再結成第一弾作である2ndアルバム『Renascence』を自主制作盤でリリースして以降とんと音沙汰の無かった彼等ですが、再び解散したのかと思っていたらちゃんと活動を継続していた模様で、なんと年末の12月26日に新シングルを前シングルから2年振りにリリースしたので慌てて本作をご紹介。

英国Wales出身のミュージシャン5人によってSwanseaで2007年後半にギタリスト David Greyとベーシスト Simon Pikeを中心に結成され、08年にセルフタイトルのEP『Lost In Thought』を自主盤でリリース、その後11年に満を持してスウェーデンのInnerWound Recordsからデヴュー・アルバム『Opus Arise』をリリースし、そのDREAM THEATERから影響を受けたと思われるテクニカルでハードながら叙情感ある美旋律とキャッチーな歌メロのアルバムは、新人バンドのデヴュー作と思えぬクリーンでモダンなメロディアス・サウンド満載な、フロントマン Nate Loosemoreの何処までもストレートに突き抜ける強靭な喉と広いレンジを無理なく堂々と歌い切るパワフルなハイトーン・ヴォイスが聴く者を虜にする素晴らしさもあって“英国からのDREAM THEATERへの返答”とも言われた期待の新世代プログHMバンドだったのですが、続く2ndアルバムの方向性を巡ってバンド内が紛糾し、最終的にアルバム制作を断念、バンドは分裂、呆気なく解散してしまったのです…orz

DREAM THEATERがヘヴィでダークな美旋律の失せた如何にもアメリカンな無駄なテクとドライで音圧ばかり過剰なサウンドのゲンナリする糞みたいな作品をリリースし続けて辟易していた私のような者にとって、2nd時のDREAM THEATERを彷彿とさせるテクニカルさとメロディアスさを両立したプログHMサウンドを奏でる彼等の存在は大変嬉しく『これでもう糞みたいに成り果てた夢劇場なんて要らないぜ!』と喜んでいただけに、期待していた彼等の解散は非常に非常に残念でした…

飛び切り独創性のあるサウンドではない典型的なプログHMサウンドの範疇なのは間違いないけれど、テクニックとメロディの配分でやはり評価は大きく変るものですし、最終的にはやはりヴォーカルの歌唱力と奏でる旋律の美しさ如何でオリジナリティあるサウンドかどうかの問題もかなり払拭出来ますからね。

その点についてはさすがプログレの本家本元、誇り高き大英帝国産バンドだけあってリリカルでウェットな美旋律が満載な若き次世代バンドらしいモダン・サウンドを披露してくれニンマリだったのに…(´A`)ドウシテ…

無論、フォロワー丸出しなサウンドは如何にテクニックや歌唱力が優れていようとも単なる劣化コピー・バンドでしかありませんから90年代にイタリアを中心に雨後の竹の子みたいに湧いて出た一連の夢劇場フォロワー・バンドは言うに及ばずで低評価なのは世界共通でしょうけど。

16年1月にシンガー Nate Loosemoreとギタリスト David Greyを中心に新なメンツを補充して再結成し、途中で再びオリジナル・ドラマーの Chris Billinghamも戻り(11年に交通事故に遭いバンドを脱退せねばならず、回復して再結成に馳せ参じた)、果たせなかった2ndアルバムの制作に取り掛かった、という情報を目にした時は嬉しかったなぁ~

けれど、その後すぐ16年11月、看板ヴォーカリストだった Nate Loosemoreがバンドを脱退し、暗澹たる想いに囚われてしまったのは私だけじゃなかったと思うのですが、初期にバンド・ラインナップがまだまだ未完成だった頃に一度フロントマンを務めていた Deane Lazenbyが再びバンドに出戻りで戻って来て被害を最小限に止め、不安定であった鍵盤奏者の席も17年6月に Diego Zapateroが加入してやっとバンドラインナップが完成し、待望の2nd『Renascence』制作へ突入したという情報を目にした時は胸を撫で下ろしたものでした。

看板シンガーの脱退や、2ndを出すまでに幾度もバンドラインナップでゴタつきがあり、かなりの時間が掛かってしまったのが悔やまれますが、結果的にギタリスト David Greyが率いる新生5人組編成の英国プログHMバンドとして生まれ変わった彼等は、デヴュー作の音楽的要素を受け継ぎつつも現在の音楽シーンを考慮してかよりモダンでヘヴィ、ダークでアグレッシヴに成った、デジタル・サウンド的なモダンなアレンジも貪欲に取り込んだ技巧派サウンドな2ndアルバムを披露したのがつい先日のように思い起こされます。

Nate Loosemoreの脱退は確かに痛手でしたが、後任の Deane Lazenbyも伸びやかで太く力強いヴォーカルを聴かせ、1stよりダークさの増した2ndアルバムのサウンドに良くマッチしているように思えましたし、低音域の歌声の味わいや艶やかさ、そして優し気で涼やかな歌声は Deane Lazenbyの方が勝っていると思え(Nate Loosemoreの歌声は少々耳に痛かったのも事実)て彼等の将来は明るい、と勝手に納得し喜んでいたんですけどね…

やはり自主制作盤でのリリースという事でプロモーションが脆弱だったのかイマイチ彼等の復帰作は話題にならかったように思えますし、時間的にかなりの間隔が空いてデヴュー作の時に構築したファンベースもとっくに消え失せていたのか、既に時代がシンフォ系だったりDREAM THEATERフォロワー達も違う方向性へ進化していった頃合いだったからなのか、どうにも彼等の活動は芳しくなかった模様なのが折角復帰してくれたのに切ないですな…(´д⊂)

英国プログレッシヴ・ミュージックの伝統を継承しつつ現代的にメタリックにパワフルにサウンドを進化させた如何にも現在進行形な英国産プログレ・バンドのデヴュー作といった感触のあった音楽から、ググッとモダンさとデジタリーさが増して、ヘヴィさメタリックさの増加で叙情感が薄れ、以前聴けたキャッチーさも少し後退した風に聴こえるのがマズかったのか…いや、メロディのフックや一糸乱れぬアンサンブル、華麗なキーボード・ワークとテクニカルなギター・ワークが絡み合いリリカルな美旋律を巧みに奏でる様や剛柔細やかで小技の効いた絶妙なアレンジ、そして緩急ある劇的な楽曲展開などデヴュー作にも勝るとも劣らずな待った甲斐のある素晴らしい仕上がり具合だったと個人的には思っているのですが、ウーン…

20年にも『Coming Home』なる速弾きギターばかりな何やら試行錯誤しているのが伺える完成度はイマイチなアルバム未収録曲をシングルでリリースしていたものの、その後パタリと音沙汰なくなってしまい、てっきりまた解散しのか…と思っていた所に久しぶりとなるシングル音源『We Are The One』リリースなのですが、折角固まったと思っていたバンドメンツにこのインターバル期間で再び変化が訪れた模様で、キーボーディストが Diego Zapateroから Niall Templeへ17年にチェンジし、折角復帰したオリジナル・ドラマー Chris Billinghamも抜けて現在は Sam Sandersなる新ドラマーが迎え入れられている模様だ。

なんと言うか技量的に問題は欠片も無いのですが、どうにもバンドメンツが不安定でイマイチ活動が軌道に乗り切れない典型的なインディ・バンドあるあるな症状のように思え、彼等の秘めたるポテンシャルが人的影響で十分に発揮出来ていない状況がなんとも歯がゆくありますね…

シングル音源を聴く限りは2ndの音楽性を継承しつつ、ちょっと1stの時の叙情感が戻ってきた感のある流麗なキーボードプレイが楽しめるモダン・テクニカル・サウンドでしたが、果たして来るべき3rdアルバムでは何か新しい変化があるのか? 今から楽しみであります(*´∀`*)

70年代英国プログレの伝統を受け継ぎリリカルな美旋律を織り成しながら、モダンなテイストやデジタリーな音像も臆する事無く取り入れ、HMらしい技巧と楽曲展開に富んだ演奏をガッチリとパワフルにテクニカルに一糸乱れずプレイする彼等はインディで人知れず燻っていて良いレベルのバンドではないのは明白ですから、どうか最新シングルが少しでも話題になり、まだ見ぬ3rdアルバムをどこかのレーベルと早急に契約を交わしてリリースし、今以上に聴衆の耳へ届くよう環境を改善してより知名度を上げて欲しいのを願って本作を今さらながらご紹介してみました。

Tracks Listing:
01. A New Life
02. Ascendance
03. The Promise
04. Save Me
05. Don't Fear Me
06. Open Your Eyes
07. Delirium
08. Legacy
09. Absolution

LOST IN THOUGHT Line-up:
Deane Lazenby  (Vocals)
David Grey    (Guitars)
Diego Zapatero  (Keyboards)
Josh Heard    (Bass)
Chris Billingham  (Drums)


# by malilion | 2022-12-27 19:32 | 音楽 | Trackback

90年代ポーランドを代表したネオ・プログレ・バンドCOLLAGEが再結成して待望の新譜リリース!!

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COLLAGE 「Over And Out」'22

90年代当時、ポーランドのみならず東欧ネオ・プログレ・シーンを代表していたバンドCOLLAGEが前作『Safe』'95 から27年振り(!!)となる再結成第一弾作をリリースしたのを即GET!

東欧ポーランドのワルシャワでドラマーの Wojtek Szadkowskiとギタリスト Mirek Gilを中心に1984年に結成されたネオ・プログレ・バンドCOLLAGE (元々はBLUE ISLANDなるプロジェクトだった)ではあるが、近年も活発に活動を続けその動向が常にポーランド・シーンにおいて注目されているギタリスト Mirek Gilも当初は新シンガー Karol Wroblewskiを迎えての2013年末の再結成に参加していたものの、さすがに自身のソロ活動 Mr.Gilと自身がリーダーを務めるシンフォ・バンドBELIEVEとの創作活動を三つも平行させるのは難しいと悟ったのか2015年にはバンドを脱退してしまい残念なれど、傑作2nd『Moonshine』'94 リリース後のワールドワイドな本格活動開始以降に中核メンバーであったキーボーディスト Krzysztof Palczewski、オリジナル・メンバーあでるドラマーの Wojtek Szadkowski、そしてベーシストの Piotr Mintek Witkowskiの3名に加え、同郷ポーランドのシンフォ・バンドQUIDAMの二代目ヴォーカリストで後期作でシンガーを務めた Bartosz Kossowiczと新たなギタリストにドラマー、パーカッショニストとしての経歴もあるマルチ・ミュージシャン Michal Kirmucを迎えた新編成5人組での再結成始動作となっている。

90年代末期のCOLLAGE解散後、Mirek GilはBELIEVE結成へ走り、残されたメンバーは初期COLLAGEのメンバーも加えてSATELLITE結成へと流れ、その後各メンバーが狭いポーランド・シーンで複雑に関わるTRAVELLERS、STRAWBERRY FIELDS、PETER PAN等の数多くのポーランド・シンフォ・バンド達が00年代以降に生まれてくる訳だから、COLLAGEは80年代英国で唸りを上げて勃興したポンプ・ムーブメントの流れを汲んだ90年代ポーランドに置けるネオ・プログレ・ムーブメントの文字通り中心に存在した象徴的な元祖シンフォ・バンドだったのは間違いなく、こうして長い年月を経て今や懐かしのスタイルになりつつあるネオ・プログレを彼等が果たして再現するのか、それとも22年に相応しいモダン・サウンドへと大きく進化したサウンドを提示するのかファンならずとも注目な本作だが、結論から言います! 大昔からのファンだった方々は欣喜雀躍して喜ぶ事だろう! 

あの傑作『Moonshine』で示した懐かしの90年代ネオ・プログレの面影を残した哀愁色濃い艶やかな美旋律と東欧らしい冷ややかな透明感と憂いあるエキゾチックな魅力を湛えたドラマチックな目くるめくシンフォニック・ロック・サウンドが目白押しであります!!('(゚∀゚∩

復活第一弾である本作が、世界を魅了した華麗で艶やかな音色とミステリアスでエキゾチックな音使いの90年代東欧ネオ・プログレを想わせるシンフォ・サウンドな作風へ寄せられているのは、長い年月を経ても待ち続けたファンが今や大きな尊敬と一種の伝説を築いているCOLLAGEに何を待ち望んでいるのかを旧メンバー達が十分に察していたのと、新たに迎え入れられたメンバーが外から見て『COLLAGEサウンドとはこうあるべき』というイメージを持ち込んだのも大きな原因だろう。

意外に〝今”のミュージシャンである事を誇示したくて旧来のスタイルから離れた今風なサウンドのアルバムを芸術性も盛り込んで意気込み激しく創作するものの、折角のカムバック作が派手な醜態を晒して待望の再結成が悲惨な結末を迎える事も多い、特に進化する事を第一とするプログレ系バンドで良く耳にする大物バンドのトホホな再結成失敗談ではありますが、手堅い選択と言えばそうだけれどCOLLAGEはそんな愚かな選択はしなかったのが嬉しいですね。

時間が経過して今の最先端のシンフォ・バンドを追いかけるようになった以前COLLAGEファンであった方々にとって、27年の歳月を経て明らかにレトロでクラシックなネオ・プログレ・サウンドを彼等が再び提示した事に失望する諸兄も居られるだろうし『常に新しい芸術作に目を向ける、プログレスするサウンドが好きな自分こそ真のプログレ・ファンだ!』との考えや後ろ向きな作風と言う非難も十分理解出来ますが、既にCOLLAGE解散後にポーランドの新世代シンフォ・バンドに在籍して現在活躍中なメンバー達がCOLLAGEとわざわざ名乗って再結成作をリリースする訳だし、なのに最先端のモダン・シンフォ作を創作するのは少々筋違いと申しましょうか、久々の復活作である意味をもっと重く捉えて欲しいとは個人的に思うのです。

まぁ、最先端のサウンドを追い求める人にとってCOLLAGEというバンド名は全く訴求しないとっくに忘却の彼方へ消えた古臭いバンド名でしょうから、本作に手を出した挙句にそんな屁理屈を捏ねてわざわざ文句を垂れる無粋な輩は居ないとは思いますけどね(w

御託はさておき本作の内容ですが、一聴してかってのCOLLAGEの思い出が蘇り、興奮と歓喜に包まれる、あのミステリアスでセンチメンタルな矢継ぎ早に複雑に展開しまくる美旋律の数々が煌めきながら流れ出して目の前でエキゾチックに乱舞するような様には本当に感無量、欣喜雀躍であります♪

シアトリカルで感情の揺れ幅が非常に大きい Peter Gabrielスタイルの歌唱を駆使するエキセントリックなヴォーカル、高らかに鳴り響く煌びやかなシンセサイザーと壮麗で重厚なシンフォニック・オーケストレーション、技量や音数より如何に感情を描き出すのみに注力した魅力的なメロディを紡ぎ出すギター、立体的なリズムセクションを構築するメロディアスなベースライン、そしてCOLLAGEサウンドの要でもある Wojtek Szadkowskiが叩き出すテクニカルでソリッドなドラミングと、本当にあの当時に『Safe』に続くアルバムが制作されていたなら、きっとこんな風な素晴らしいシンフォニックで官能的な美旋律が満載な作風になっていただろうと思わせる、時の隔たりを忘れさせてくれる見事な一作だ。

勿論、時代が変ってプロダクションが大幅に向上したのと、メンバー個々の技量や熟練度も増し、そして幾分かモダンなタッチも感じられるが、瞑想的で幻想的なキーボード・サウンドと美麗なメロディをゆったりと雰囲気満点に爪弾く繊細なギター・サウンドが音のカーテンを織り成し、シンフォニックな抒情詩を描くように巨大なキーボードの波と手数が多くパーカッシブでリズムチェンジの多いグルーヴィなボトムが絡み合ってクリスタルのように眩く輝き、立体的で技巧的な音の宝石が紡がれゆく様は、正に90年代にプログレ・ファンやポンプ・ファンを魅了して止まなかった、あの流麗で荘厳な哀愁漂うCOLLAGEサウンド以外の何物でもない!(゚∀゚)

前任シンガーの Robert Amirianも同じ様に Peter Gabrielスタイルの歌唱を披露していましたが、個人的には声質や安定感、歌唱スキルやレンジの広さ、そしてパワフルさ等を考えると Bartosz Kossowiczにフロントマンをチェンジしたのは良い選択だし成功だと思うのだけれど、芝居がかった情熱的な歌唱が冴えわたる程に Fish在籍時の初期MARILLIONっぽさも強まりますから、古参ファンは以前のメンバーでリユニオンして欲しかったと思ってしまうかもしれません。

解散前のセンチメンタルでデリケートなヴォーカル・パートは Robert Amirianのちょっとヴィブラートがかった線の細い歌声や密やかな囁きなんかも良くマッチしていたので、そう思うのも無理ないけど…ちょっと野暮ったいヴォーカルだったのが個人的にはCOLLAGEをマイナーなイメージにしていたようにも思えて…(汗

無論、解散からこれだけ時間が経過している訳で Robert Amirianの歌唱力も相当上がっているだろうし、なんなら経年で渋味を増したより良い歌声を披露してくれたかもしれませんが、現実問題として彼はリユニオンに参加しなかった(誘われなかった…?)のでソコはどうしょうもない問題であります(´A`)

てか、そもそも双頭の片方 Mirek Gilが不参加なので今さらオリジナル・メンツでのリユニオンに拘っても仕方がないのですけど…

散々、褒めちぎっておいて何ですが、何もかも手放しで絶賛出来るかと言うとそうでもなく、やはり新ギタリストである Michal Kirmucのプレイに物足りなさを些か感じてしまうのは正直な感想だ。

かってのCOLLAGEのアルバムで聴けたギター・サウンドを忠実にエミュレートする事に重きを置いたプレイのように思え、もう少し独自色を出しても良かったように思うのですが、余りに Mirek Gilがバンドに残したギター・プレイのイメージが強過ぎた為か再結成作という事を考慮したのか、旧来のイメージを崩すような事はせぬ風な音使いやメロディ、トレードマークのYESの Steve Howeっぽいロングトーンの深いリヴァーブのかかったギター・サウンドばかり耳につき、彼ならではのギター・サウンドやプレイは分かりずらかったのが少々残念ではあります。

少しアッサリ小奇麗なプレイで Mirek Gilのようにネットリじっくりとエモーショナルな感情をメロディに切々と刻みつけるような不器用で愚直なプレイではないように感じてしまい、ギターの演奏技術やスマートなフィーリングでは前任者より勝っているのかもしれないがCOLLAGEサウンドにとっては欠けているプレイに思えるんだよなぁ…

後は双頭の片割れ Mirek Gilが居ない事が Wojtek Szadkowskiをいつになく発奮させたのか、それまでシンガーの Robert Amirianとの連名やその歌詞の多くを任せていたのですが、本作収録曲の歌詞は全て Wojtek Szadkowskiが単独で書き上げており、楽曲の方も全曲にその名がクレジットされているのを見るにかなりの気合の入様だった事が伺えます。

出来ればもうちょっと幻想的だったり楽天的な歌詞なら良かったんですが、陰鬱で暗いイメージな歌詞ばかりなのをもう少しどうにかしてもよかったんじゃないかなぁ…まぁ、シンフォ系っぽいと言えばぽいかもしれませんが…

期待されての再結成で唯一のオリジナル・メンバーでリーダー的な立場なので大きなプレッシャーも感じていたのか、その弊害なのかちょっと全体的にドラムを忙しく叩きすぎなきらいがある気がして、以前のゆったりとした靄のかかったような淡いイメージのCOLLAGEサウンドを打ち消すハードなリズム・ワークが随所で耳につきました、がコレは個人的な感じ方故かもしれませんし、今風のサウンドタッチを意識して敢えて変化させたものかもしれませんのでなんとも言えませんけど…

スペシャル・ゲストで英国ポンプ及びシンフォ界の盟主 MARILLIONのギタリスト Steve Rotheryが参加し、アルバム最終曲で一聴して即彼と分るセンチメンタルで切ない絶品のエモーショナルなギター・ソロで切々と入魂のプレイをしているのでMARILLIONファンも本作のチェックを怠らぬよう注意されたい。

ともかく以前からのCOLLAGEファンは問答無用で購入確定な一枚でありますし、90年代東欧ネオ・プログレ&シンフォ作がお好きな方も当然見逃せぬ一作で、メランコリックでノスタルジック、そしてドラマチックに高揚する哀愁漂う華麗な美旋律に目の無いメロディアス・ロック好きな方にも是非チェックしてみて欲しいそんなアルバムであります(*´ω`*)

Tracklist:
01. Over And Out
02. What About The Pain
03. One Empty Hand
04. A Moment A Feeling
05. Man In The Middle (feat. Steve Rothery)

COLLAGE Line-up:
Bartosz Kossowicz    (Vocals:QUIDAM)
Michal Kirmu       (Guitars、Guitar Synthesizer)
Krzysztof Palczewski   (Synthesizers、Keyboards)
Piotr Mintay Witkowski   (Bass)
Wojtek Szadkowski    (Drums & Percussion)

With Special Guests:
Steve Rothery (Guitar Solo:MARILLION)


# by malilion | 2022-12-26 22:20 | 音楽 | Trackback

メタル系ファンにその名を知られるネオクラシカル・ギタリスト兼キーボーディストの Bob Katsionisが新プログHMプロジェクト作をリリース!!

メタル系ファンにその名を知られるネオクラシカル・ギタリスト兼キーボーディストの Bob Katsionisが新プログHMプロジェクト作をリリース!!_c0072376_18512271.jpg

VASS/KATSIONIS 「Ethical Dilemma」'22

ソロ活動、FIREWIND、OUTLOUD、REVOLUTION RENAISSANCE、NIGHTFAL等のプロジェクトやバンドに多数関わってきたネオクラシカル・ギタリスト兼キーボーディストであるギリシャ人ミュージシャン Bob KatsionisとギリシャのメロディアスHMバンド TERRA INCOGNITAのシンガー Billy Vassとのコラボレーション・プロジェクトによるデヴュー作のプレスCDがやっとリリースされたのでご紹介。

TERRA INCOGNITAが2017年以降活動を休止し、ワールドワイドで忙しく活動していた Bob KatsionisがFIREWINDを2020年に脱退、そして全世界をパンデミックが蔓延したタイミングが重なった為に本作を制作する時間的チャンスが訪れ本デュオ・プロジェクトが発足した模様だ。

90年代のプログレ&シンフォ系サウンドとFATES WARNINGやQUEENSRYCHE等の80年代USプログHM要素をMIXし、2人がこれまで培ってきた音楽要素を加味したのが本プロジェクトの音楽的方向性と言う事だが、00年代モダン・プログHM風な仕上がりの楽曲な為か Billy VassのヴォーカルにDREAM THEATERの James LaBrieっポイ感触が意識的なのか幾らか感じられ、バックのサウンドを一手に引き受ける Bob Katsionisがギターとキーボードの両方を相変わらず音数が多く華麗でスピーディー、そして壮絶なテクニックで巧みに演奏するだけでなくソリッドでパワフルなリズム・セクションまでも完璧に構築しており、セッションプレイヤーをリズム隊に招いているとは言え楽曲の全てを Bob Katsionisが1人で全て書き上げたと思えぬユーロ圏ミュージシャン作らしい仄かな叙情感香るダークでモダンなプログレッシヴ・メタル・サウンドが高い完成度で披露されている。

“Ethical Dilemma=倫理的ジレンマ”という抽象的なテーマのコンセプト作となる本アルバムだが、そこは Billy Vassがバックの演奏で八面六臂の活躍を魅せる Bob Katsionisに負けじと、直接的でシンプルでありながら誰もが共感出来る詩的で抽象的な表現も駆使して、抽象と直接とブレンドした歌詞でリスナーを飽きさせる事なく魅了し、如何にもプログHMという示唆に富んだ物語を書き歌い上げているのは見事だろう。

ザクザクしたハードエッヂや滑らかで官能的なメロディを紡ぐ剛柔巧みなギタ・ワークー、パワー・メタルの要素も感じる正確無比で手数の多いソリッドでタイトなリズム・ワーク、けれど決して無機質でない熱いグルーヴと耳を惹く美旋律の数々、それら全てをプログレッシヴ・ロックなテイストとシンフォニック・ロックの影響を受けた奔放に舞いまくる華麗で煌びやかなキーボード・ワークと巧みなアレンジで際立たせ、Billy Vassのエモーショナルな伸びやかで太く力強い魅力的な歌声で楽曲を纏め上げているのを聴くに、これ一枚で終らすのは実に惜しいデュオ・プロジェクトなのは明白だ。

と、言うか時間があればここまでの事がプロデュースも含めて全て自身の手だけで出来てしまえる Bob Katsionisの破格の才能と相変わらずの演奏技術には、本当に驚かされっぱなしであります。

デヴュー作でありながらキャリア十分な2人が共通の音楽的背景の元に結束し、ダークで硬質なサウンドには独自の芸術的ビジョンと親しみ易くも新鮮な感覚が確かに息づいており、シンフォ系に良くあるテクニックに偏るばかりに複雑怪奇に成り過ぎる事もなくメロディを第一に考えられた楽曲は比較的シンプルな構成で、アグレッシヴなパワー・メタルの勢いと感触もあり、プログHMと聴いて小難しい印象を抱いているリスナーにこそ本作は聴いてみて欲しい、そんなコンパクトで聴き易い一作なのでご興味ある方は是非チェックしてみて下さい。

引く手数多な Bob Katsionisが多忙なのは重々承知ですが、出来る事ならメンツを集めて正式なバンドを結成して是非に次作を届けて欲しいなぁ~

因みにCD現物は限定300枚リリースとの事なので、DL先行リリースされもう半年経過しているのを見るに恐らく国内盤はリリースされないでしょうからお求めの方はお早目にね。

円安のご時世ですが、ギリシア・プレスな関係か送料入れても2千円行かないお値段なのでDL嫌いな方は是非お試しあれ。

Tracklist:
01.Message To The Masses
02.Mark The Moment
03.Web Weaver
04.Dreamscreen
05.Echoes In Paradise
06.Purify
07.Faceless Encounter
08.I Walk Alone

Musicians:
Billy Vass    (Vocals)
Bob Katsionis  (Guitars、Keyboards)

with:
Telis Kafkas   (Bass)
Bill DiBenedetto (Drums)

P.S.
しかし、デジタル・リリースが本編みたいな扱いな為なのかCDが記念アイテムな扱いな為なのかリリースデイ等のデータが明記されていない簡素すぎるデジパック盤なのがちょっと味気ないですな…
自主制作盤だからお金かけたくなかったのかもだけど、この手の技巧派ミュージシャンってその手の所にこだわる風に思ってただけに、ちょっと意外でありました。

# by malilion | 2022-12-25 18:54 | 音楽 | Trackback