![]() イタリアロック界屈指の実力派シンガー Michele Luppi(現WHITESNAKEのKey)を迎え、遂に同郷イタリアのシンフォニック&パワメタ系バンドLABYRINTHやRHAPSODY等と肩を並べる高みへ到達した5人組イタリアン・シンフォ・HMバンドの、前作から4年ぶりとなる通算10作目のオリジナル・スタジオアルバムがリリースされたのをちょい遅れてGET! 大変残念な事に彼等を新たな高みへ導いた実力派シンガー Michele Luppiが2020年はじめに脱退してしまった…(´д⊂) デヴュー以来、各パートのメンバーチェンジが激しい彼等ではあるが、二代目フロントマンの Michele Luppiだけは手放さないで欲しかったなぁ…orz まぁ、白蛇での活動やソロ、そして彼のリーダーバンドなんかもある訳で、いづれこの時が来るだろうとは予想してはいましたし、同郷故でしょうがイタリアのマイナー・HMバンドによくこれだけの期間留まってくれたとは思いますけどね… Michele Luppiの後任に注目が集まったが、バンドはオリジナル・メンバーであり、初代フロントマンの Roberto "Ramon" Messinaを復帰(!?)させ、本作は制作されている。 『えー!? Michele Luppi加入前のバンドサウンド最大のウィークポイントであった歌唱力の弱さ、あの Roberto "Ramon" Messinaが戻って来るの!?』と、いうのがそのアナウンスを聞いた時の偽らざる第一印象でした。 確かに Roberto "Ramon" Messinaのか細くパワー不足な歌声はマイナー調なメロスピ特有のB級感を醸し出していたから初期のクサクサなB級メロスピ・サウンドにマッチしていたけれど、前作で一気に楽曲の幅もポピュラリティも高まって、よりA級メジャーレベルへ接近していただけに、この交代劇は不安でしかありませんでしたが『もしかしたらこの脱退期間中に歌唱力が上がる鍛錬を積んでいたかも!?』と淡い期待を抱いたんですが、残念な事に現実はそう甘くなかった模様です…('A`) フロントマンの歌唱力というのは楽曲の出来栄え、特に歌メロの質にモロそれが現れるもので、本作は一気に初期を彷彿させるクサメロと大胆なシンフォニック・サウンド、疾走するメタリックなリフとテクニカルな早弾きソロがこれでもかと忙しない楽曲の至る所でフィーチャーされた、良く言えば本来の彼等らしさが表現された初期ファンが歓喜する楽曲がズラリと並ぶ、悪く言えば前作のメジャー路線からB級マイナー路線へ後退した個人的にネガティヴな印象が大きいアルバムで、幾分か前作で見せたメジャー路線の名残が楽曲展開やモダンなアレンジ等に顔を覗かせるものの、どうしたってフロントマンのB級マイナー臭を放つ歌唱力は無視し難く、疾走感ある楽曲の数々は、エッヂがありパワフルでエネルギッシュ、そして壮大でシンフォニックなプログレHM風のテクニカルな楽曲展開、そしてちょっと80年代ジャーマンHMっぽい朗らかキャッチーな歌メロのサビも飛び出す、本作のみを聴いたならば悪くない仕上がりの、これぞ極上のイタリアンB級シンフォニック・パワーHMというサウンドとなっている。 B級メロスピとは言え、一度は高みへ昇りつめた訳で、モダンなサウンド使いや細やかなアレンジ、そして高いプレイヤースキルとハイ・クオリティなプロダクション等を見るまでもなく、A級クラスなポテンシャルのバンドである事に疑いはないんですが、やっぱりフロントマンの歌唱力が…(汗 Roberto "Ramon" Messinaの歌えるレンジに引っ張られたのか、彼の考案する歌メロに即したからなのか、ここまで楽曲の方向性が初期風のマイナー臭い作風へ戻ってしまうとは…いえ、散々酷い事言っておいてなんですけど、彼の甘い声質のウェットな哀愁を漂わす歌声自体は嫌いじゃないんですよ、ええ…でも、抜群の歌唱力を誇るブライトな声質の Michele Luppiと比べると…ねぇ…丁度、月と太陽くらいイメージが違い…冷静になって聴き返してみると、バックのサウンドの質や奏でられる美旋律の数々は前作に負けず劣らずなんですが、どうにも向かう方向が違い過ぎなんだよなぁ… 初期からのファンからしたら、Michele Luppiが参加したアルバムだけがイレギュラーで、本来は本作のようなテクニカルでスピーディなプレイとドラマティックな美旋律が飛び出すイタリアン・メロスピこそが彼等の真の姿だ! と、考えているだろうから、本作の作風はSECRET SPHERE的にはなんら間違っていないのかもしれませんね。 尚、バンドのボスである Aldo Lonobile(Guitars)は、長年所属していた国内レーベルのマーキーの仕事ぶりにイマイチ満足出来ていなかった模様で、別レーベルのワーナーへ移籍して前作はリリースされていたが、通算10作目である本作でもまた別レーベルであるワードへ移籍してのリリースとなっている。 まぁ、本国でもデヴュー以来アルバム毎にレーベルをコロコロ移籍して作品をリリースして来た経緯を見るに、元々 Aldo Lonobileはそういう質なんでしょう(汗 散々、酷い事を述べておいてなんですが、初期の作風が好きだった方には本作は間違いなく傑作に聴こえるハズですので、是非一度ご自身の耳でチェックしてみて欲しいですね。 #
by malilion
| 2021-03-27 22:44
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![]() 『An Axe to Grind +3』'20が30周年記念でリイシューされた時ご紹介した、USAはジョージア州出身のCCM系ロック(現在はオンラインでヴォーカルレッスン講師も務める)シンガー Ken Tamplinのソロアルバムが多数リマスターされ再発されたので即GET! 最近良作をリイシューしまくってくれる注目クリスチャン・ロック系レーベルGIRDER RECORDSが、またまたやってくれました♪ いいぞ! もっと行け! どんどん行け! このまま過去の名作CCMアルバムを片っ端からリイシューしまくってチョーダイ!!('(゚∀゚∩ 本作は1998年リリースの4thソロ・アルバムで、当時は欧州のみで自主リリースだったレア盤が今回こうして2021年度リマスター&リイシューが成って欣喜雀躍なCCM系及び Ken Tamplinファンの諸兄も多い事でしょう( ^ω^ ) 内容の方はと言うと、R&B、AOR、サルサ、ニューエイジ、ファンク、ラテンポップ、カントリー、JAZZ、打ち込み等々の多種多様な要素を含んだ、ハードロックに拘らぬ自身の抜群の歌唱力を活かした幅広い形態の楽曲が収録されており、4.5オクターブのワイドな声域を遺憾なく発揮し、どんな楽曲でも歌いこなして見せる器用さと小手先の技術だけでないロック・ヴォーカリストとしてのパワフルさと迫力満点の強靭な喉を震わせる、彼のヴォーカリストとしての高いポテンシャルを証明する一作となっている。 彼のファンなら Ken Tamplinがとんでもなく歌が上手いのは重々承知ですから、後はどんな楽曲をどんなアプローチで表現するのか、ってトコに注目が集まると思うのですが、本作は妙に奇をてらったりする事無いスタンダードな構成の楽曲の数々を、彼お得意の爽快で巧なコーラスワークを基軸に、耳をつんざくハイトーンから渋く落ち着きあるディープヴォイスまで七変化の美声で情感タップリに歌い上げ、流石は数多の有名バンドのフロントマンに誘われるだけの事はある抜群のパフォーマンスを披露している。 そんな素晴らしいヴォーカルを際立たせるのに尽力しているのが、全面的に参加しているアメリカ人ギタリスト Howie Simon(NELSON、ex;ALCATRAZZ、ex:TALISMAN、ex:Rob Rock、etc..)で、その幅広いセッションワークやバンド活動で培われた抜群のテクニックを誇るギタリストながら、エッヂあるシャープなプレイからアコースティカルで軽やかなプレイまで、しっかり自身のポジションを弁えたソツなくツボを心得た巧なギタープレイで七色の音色を紡いでみせ、楽曲に華を添えているのも見逃せません。 収録曲の殆どがロック作と言うよりコンテンポラリー寄りな楽曲ばかりな一作ではありますが、そもそもCCM系ミュージシャンは伝えたい主張を一番聴衆が聴きやすい形で伝えられるのならば音楽ジャンルや形態に拘らぬ節(ここがCCM系アーティストの特殊な所で、外から見ると節操無く売れ筋へ路線を変えるように思える点であります)があるので、本作は Ken Tamplinにしてみれば幅広い音楽表現でクリスチャンの主張や教えを伝えているだけで、別段違和感を感じる事も驚かそうとも思っていない(実際、この後元のメロハー路線へ戻るし)のでしょうけれどね。 本作がリリースされたのはアメリカにグランジーの魔の手が広まりつつあった頃ではありますが、まだメジャー・シーンでは従来のブライトで派手なアメリカン・ヘアメタルがギリギリ持て囃されていた時期ですから、本作の音楽的方向性が拡散へ向かっているのは所謂80年代後期メインストリームを彩ったメロディアス・ロックバンド達を襲ったグランジーの悲劇とは関係なく、それまでのロックサイドからのアプローチばかりだった活動からより幅広い聴衆に注目してもらう為に選択した変化であったように思えます。 運命の悪戯か、派手でゴージャスな80年代風メロディアス・ロック作をリリースする最後のチャンスを Ken Tamplinはこれで逃し、暗黒のグランジー時代へ以降突入してしまう訳ですから、この拡散指向アルバムを制作する前にもう一枚くらい従来のゴージャスなサウンドのメロディアス・ロック作をリリースして置いて欲しかったなぁ… 様々な嗜好の楽曲を強力で伸びやかな Ken Tamplinの絶品な歌声が見事に纏め上げている本作ではありますが、やはり楽曲ジャンルをボーダーレスにして一枚のアルバムに収めるのは少々キツかったようで、本作の17曲(多い!)を聴き終えた後に幾分か散漫な印象が残るのを避けられなかったのだけが残念な点ではあります。 もう少しメロディアスでキャッチーなポイントに焦点を当てた楽曲だけにして欲しかった所ですが、本作では多様性や拡散する音楽性を見せたいと Ken Tamplinが画策したのだとしたら、その目論みは成功したのは間違いありません。 ただ、問題点も無い訳ではなく『ポップスなんだからソレで良いじゃない』という意見もあるでしょうが、やはり打ち込みドラムの弊害かボトムの音が薄っぺらで硬く、軽いのには終始閉口させられます。 まぁ、コレはリマスターのお陰で音がクリアになってボトムの音も持ち上がった為に軽く硬い印象のドラムサウンドが余計に耳につくせいかもしれませんけど。 ドラマーの Stefan Svenssonもちゃんと叩いて(ホントに叩いてるのか疑問な音だし、単調なリズム運びが多くて…)いるハズなんですが…それでも凡百のメロディアス・ロック作よりも余程ポップでキャッチーなメロディが聴こえる良作に思え、偏にそれは Ken Tamplinの抜群な歌唱力のお陰なのは間違いありません。 同時リイシューの30周年記念盤『Soul Survivor』'91や Tamplin & Friends名義作の『Wake the Nations』'03も2021年度リマスタードされておりますので、今回同時リイシューされた Ken Tamplinの美麗で爽快なコーラスが楽しめるソロ作の数々を是非このチャンスに揃えて楽しんで欲しいですね。 CCM系アーティストのアルバムは昔からプレス数が少ないのが玉に瑕なのも相変わらずなので、お求めの方はお早目に! #
by malilion
| 2021-03-14 07:07
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![]() RADAR 「RPM」'00 女性ヴォーカリスト Pamela Moore Barlowと女性ギタリスト Debbie Michaelsを擁するKey入り5人組US産メロディアス・ポップロック・バンドRADARが2000年にリリースした唯一作を御紹介。 『なんで今頃、このアルバムを?』と、思われるかもしれませんが、先頃にGO WESTやWILD BLUEのギタリストとして知られる Gary Stevensonがキーボード奏者の David West(GO WEST、WILD BLUE、Robert Hart)とシンガーの Rod Jordanと81年に結成し1983年にWarner UKと契約し85年に録音されながらも未発表であった幻のブリティッシュ・シンセ・ポップ・バンドRADARのお蔵入りアルバム『Lost in the Atlantic』が限定1000枚で初CDリリースされ、そのバンド名を見て本作を思い出した訳なんですね。 ちょっと調べただけでも複数同名なバンドやプロジェクト等が存在しているので分りにくいですが、こっちはAOR HEAVENからのリリース作ですので、マニアックなメロハー諸兄ならその名を知っている方も多いのではないでしょうか? 本作の主役は、USプログ・メタルバンドQUEENSRYCHEの超名作コンセプト・アルバム『Operation: Mindcrime』にSISTER MARY役として参加し、強靭な喉を誇る Geoff Tateと絶妙なデュエットを披露した事でその美声を知るHMファンも多いだろうUSシンガーソングライター Pamela Moore Barlow嬢で、彼女は80年代初頭から活動しており18年までにソロアルバムを5枚リリースし、他にもUS産AOR&産業ロック・プロジェクト FAKE I.D.の『Dreaming Ezekiel』なる97年リリースの唯一作に楽曲を提供する他、北欧メロハーの元祖的バンドであるスウェーデン産メロハー・バンドALIENの初期作にも楽曲を提供する等、幅広くプロジェクトやバンドに参加してきた経歴の持ち主で、そのハスキーながらパワフルで伸びやかな歌唱を聴くに、もっとメジャーな存在になってもおかしくない個性的なヴォーカリストだと、フィメール・ヴォーカル嫌いな私でさえそう思う才能の持ち主であります。 さて、本作についてですが、Pamela Moore Barlow嬢の伸びやかで力強い歌唱を基軸に、ギタリスト Debbie Michaels嬢のツボを心得た弾き過ぎないエッヂあるメロディアスなギター、そして Russ Salernoの操る煌びやかで派手な分厚いシンセワークが、ポップでキャッチーな80年代後期風のUSメインストリームなフックある楽曲をゴージャスで爽快な男女混声コーラスを伴って展開していく、典型的な80年代後期USポップ・メタル風サウンドのUS産メロハー・アルバムで、リリースが暗黒のグランジーにアメリカが覆われていた時期でなければ十分に大衆に訴求しただろうメジャー志向のポップでブライトなサウンドだったのが悔やまれます…(´д⊂) 本作より先の97年リリース FAKE I.D.作では Pamela Moore Barlow嬢と Janet Morrison Minto嬢が組んで、JOHN WAITE、BAD HABITなどに通じる哀愁が効いた叙情派メロディアス・ロックな楽曲(ALIENの1stに提供された楽曲も再収録)を提供する等、アメリカンSSWながら Pamela Moore Barlow嬢はどうやらかなり叙情的なユーロ系サウンドを好んでクリエイトしてくれたアーティストであった事が窺え、後15、6年遅れて活動をしていれば、今頃はユーロ圏を中心に活動する有名メロハー系バンドのフロントマンとしてその名を馳せていたかもしれませんね。 QUEENSRYCHEの成功を受け一時期ステージを共にするなど新人バンドとしては上々の出だしであったが、時流に逆らえず2001年に解散し、僅か1年程の活動期間だった本バンドはその活動期間の短さ故当然ですが、今の時点で本作や Pamela Moore Barlow嬢の知名度がマイナーな存在である事から窺えるように、もう一人の主役 Debbie Michaelsが弾くギターもソツなく巧い(頑張ってる!)ものの、本質的に本作はキーボード主導なアメリカン・ポップスと言え、USロック独特の渇いた叙情香るバラードやちょっとハード風味な正統派アメリカンHRやドラマティックでメロディアスなミッドテンポの楽曲等々、Pamela Moore Barlow嬢の際立つ歌唱と分厚くゴスペル風味もある Debbie Michaels嬢も交えた男女混声バッキングコーラスが活された非常にバランスの取れた構成と楽曲が収められたアルバムだが、シンセサウンドの比重が多いのと広がりの無いデジタリー・サウンドな感触が強い為に生っぽいロック・フイールが弱く、さらにインディ・レーベルからのリリースだから致し方がないのですがプロダクションやミックスに少々問題(ノイズが…)があったのかイマイチ軽くて密度の薄い平坦なサウンドで、せっかくの素晴らしい楽曲の足を引っ張ってマイナスイメージを与えてしまっている感が否めないのは残念だ。 後はバックの演奏もちょっと優等生過ぎると言うか小洒落た王道産業ロック風な教科書的パフォーマンスが没個性化を招いており、このバンドならではの音というか強烈な個性(時々、VIXENポク聴こえる)のようなものが聴こえてこず、終始 Pamela Moore Barlow嬢の卓越したヴォーカル・パフォーマンスしか耳に入ってこない、今一つな惜しい仕上がり具合だったのも宜しくなかったように思えます。 まぁ、リリースされた当時の状況や時流もありますしこのプロダクションも仕方がないのですが、出来る事ならば今のメロハー市場向けにリミックスを施して、もう少しハードでヘヴィなサウンドを強調し、ボトムサウンドに厚みを増したロック指向のダイナミックなミックスでお色直しした本作をリイシューして欲しい、そう思わずにおれない暗黒のグランジー時代にリリースされた悪くないメロディアスな一作なのでした。 現在もソロ活動を活発にこなす Pamela Moore Barlo嬢ですが、最近はヴォーカルとパフォーマンスのコーチングビジネスで大成功を収めている模様なので、もしかしたら彼女が再びブレイクして注目を集めるか、自身で本作の権利を買い取る(バックカタログに未練なさそうだけど…)などして再販してくれるチャンスが訪れるかもしれませんね。 RADAR Line-up: Pamela Moore Barlo (Vocals) Debbie Michaels (Guitars、Backing Vocals) Scott Novello (Bass、Backing Vocals) Steve Salerno (Drums) Russ Salerno (Keyboards、Backing Vocals) #
by malilion
| 2021-03-13 11:51
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![]() 中南米メキシコで1978年に結成され未だに活動を続ける、今やメキシカン・プログレ界のみならず南米グレ界の盟主にして重鎮 Luis Alfonso Vidales(keyboards)が率いるヴァイオリン入り7人組バンドの通算21枚目(BESTやLIVE含むと25作?)となるアルバムが4年ぶりにリリースされたので即GET! アルバムのタイトルが『20番目』という意味である事から、バンド的には本作は20枚目のフル・アルバムという認識の模様だ。 まぁ、今までに散々やらかして来た大雑把で杜撰な彼等の事なので、アルバム枚数の数え間違いしていても今さら驚かないけど(w で、久しぶりの新作は前作と同じままな7人のメンツで制作され、安定した制作体制がさらなる創作の高まりを呼んだのか前作路線をさらに推し進めた作風で、その出来栄えや仕上がり具合は総じて前作を凌駕しており、ベテラン・バンドらしい味わい深い押し引きを心得たテクニカルで緻密な演奏、70年代イタリアン・プログレを彷彿させる濃密で構築美あるドラマチック・サウンド、中南米ならではのリズミックな展開と壮大なスケール感、そしてヴァイオリンが優雅にスリリングに紡ぐ叙情美とバンド一丸となった圧倒的な熱量がミックスされ怒涛の展開を見せつける、息つく暇も与えず一気に駆け抜ける超弩級の傑作アルバムです!('(゚∀゚∩ 以前からスペイン語だったり英語だったりとヴォ-カルアプローチがイマイチ定まらない彼等だが、本作は前作と同様に英語で歌われているので『イタリア語ならまだしも、ポルトガル語とかスペイン語の巻き舌ヴォーカルなマイナープログレはちょっと』と敬遠しているラテン・プログレ食わず嫌いな諸兄にこそ是非に本作をお薦めしたい。 90年代末期から近年作まで、どこかマッタリした今一つピリッとしない70年代プログレの面影が漂う散漫で凡庸なアルバムばかりをリリースし続けていた彼等だが、11年リリースの『Art』からプログレHM的なメタリックサウンドを取り入れつつモダン化とシンフォニック度を加速させ、前作から加入の Roberto Izzo(violin:NET TROLLS、GNU QUARTET)が紡ぎ出す流麗な天才的ヴァイオリン・プレイが決定的な起爆剤となったのか、リーダーの Luis Alfonso Vidalesが操る鍵盤捌きやアレンジ、そしてストリングス・アンサンブルを活かしたクラシカルで初期GENESISを強く想わせる叙情感ある哀愁のテクニカル・プレイにも以前と段違いな凄みと切れ味が増し、水を得た魚の如く縦横無尽に Claudio Corderoがハードにメロディアスにソリッドでエッヂあるギターを弾きまくる、そんな三枚看板が目まぐるしくリリカルなメロディと複雑な音階を展開させ豊富なアイディアが活かされた精緻なインストゥルメンタル・パートをドラマチックにスリリングに構築していく様は、とても結成してキャリア40年以上のベテランバンドと思えぬ目を見張るアグレッシヴさとフレッシュなパワフルさで、迸らんばかりのダイナミックなエネルギーは正に圧巻の一言。 本作は4つの小曲で構成された10分の楽曲や、3つのインストゥルメンタル曲、それらを短・中・長の尺で構成した手の込んだ作品で、それだけ聞くとアルバムを丸ごと聴くにはエネルギーと根気が必要のように思えるが、流れるように展開する構成美ある楽曲や、あの手この手で飽きさせぬインストゥルメンタル・パートから飛び出す魅惑的な音色の数々、そしてHM張りな怒涛の勢いと切れ味鋭い切り返し、タイトでリズミックなボトムがエレガントに場面を展開させていくので、実際はアッという間にアルバムを聴き終えてしまい、その内容の充実ぶりや美しいメロディ、そしてテクニカルなパートが紡ぐサウンドの絶妙さしか印象に残らぬ実に爽快なシンフォニック・アルバムだ。 前作で感じさせた中南米バンドらしい優美でエキゾチックなメロディが濃厚過ぎて胸焼けしそうな劇的展開を伴って忙しなく爆走する楽曲に、GENEISIをはじめBANCOやPFMといった70年代プログレの巨人達が遺した古典的サウンドをベースにしつつPENDORAGON、ARENA、SHADOWLAND等の80年代ポンプ勢の影響も伺わせながら、完全にオリジナリル・サウンドへ昇華したクラシカル且つ叙情を帯びた気品漂う美旋律と、Bobby Vidalesと Lupita Acuna嬢による剛柔対比が色鮮やかな男女ツイン・ヴォーカルが美麗なハーモニーやコーラスで様々な表情を与えており、約80分という長さを感じさせぬ勢いと緻密な構成力、そして一段と磨きがかかった展開の妙が光る充実ぶりは、まるで画家がキャンバスに絵を描くように瑞々しい感性と燃え上がる情熱のまま自由自在にドラマチックでファンタジックなサウンドを紡いだような奔放さも感じさせ、近年の中南米プログレモノでは屈指の完成度ではないだろうか? 本作のユーロ・プログレHMとイタリアン・シンフォのハイヴリッド・サウンドじみた、独特の叙情感と美意識が色濃い、オリジナリティー溢れるリズミカルで艶やかな音色が美しいメキシカン・シンフォを、是非プログレHMファンやユーロ・シンフォ・ファンな方々に一度聴いてみて欲しいですね(*´∀`*) CAST Line-up: Luis Alfonso Vidales (Keyboards) Bobby Vidales (Lead & Backing Vocals) Lupita Acuna (Vocals & Backing Vocals) Claudio Cordero (Guitars) Roberto Izzo (Violin) Carlos Humaran (Bass & Backing Vocals) Jose Antonio Bringas (Drums & Percussion) #
by malilion
| 2021-03-09 14:59
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![]() 去年の春先に本作リリース前にネット公開されていたサンプルを聴いて何かピン、と来なかったので後回しにしていたらこんなに購入が遅れに遅れてしまったが、とりあえず北欧スウェーデン産ツインギター5人組中堅HMバンドの『AFM』移籍後2作目となる通算7作目のアルバムを今頃に購入したのでご紹介。 サンプル曲がイマイチ自分好みでなかっただけでアルバムはまた違う印象を持つかもしれない、と思い切って今回購入してみたが、その心配はやはり杞憂で終わらなかった模様だ…… 17年からAMARANTHEにフロントマンの Nils Molinが加入した影響か前作では新風が持ち込まれ、それまでの“北欧のSKID ROW”風なサウンドをベースにモダン化を進め少しづつ音楽性の幅を広めて着実に進化して来たバンドサウンドが、前作ではほんのり北欧HM風味が混じったウェットな叙情感とキャッチーさ漂うユーロピアン・メロディアスHMサウンドへ再び進化し、サウンドの毛色が七割がた変わったのだが、今回はさらにその変化を推し進めた結果か、初期の80年代USAバッドボーイズ・バンド達への憧憬を隠さぬUSロックンロール・サウンドから完全に決別し、前作の北欧メロディアスHMサウンドからも距離のある新サウンドへと変わってしまっている。 というか、ぶっちゃけAMARANTHEのフォロワー・サウンドへ大接近してしまった感(ジャケが全てを物語ってるよなぁ…)が強く、そりゃあAMARANTHEの方がスケール感が有る、キレある劇的で重厚な恰好良いメタル・サウンドでメジャーな成功を収めているれども、確かにフロントマンがAMARANTHEに参加しているし、だから参考にするのもサウンド要素を持ち込むのも有りだけれども、それで元々所属していたホームバンドのサウンドの個性が失われてしまっては元も子もないじゃないか、と思うのです…(ツд`) 本作のサウンドだけを聴けば、AMARANTHE風の重厚で劇的な、パワフルでスケール感満点のメジャー路線な正統派ユーロHMサウンドで、ほんのり北欧HM風なマイナーな叙情感とデジタリーなアレンジやシンセサウンドも活かされた、演奏技術も歌唱もプロダクションも全てが高品質で結実したバンド史上最も完成度が高く商業的な成功が見込めるアルバムなのは間違いなく、文句をつけるのは殆んどイチャモンに近いのは分かってはいるんですよ、いるんだけど、ねぇ…コレならAMARANTHE聴けばええやん、ってなってしまうんだよなぁ… Nils MolinがAMARANTHEで色々と学んだのか歌メロはかなり充実しており、これまでで一番のヴォーカル・パフォーマンスなのは確かだし、個人的にはフィメール・ヴォーカルもグロウルも嫌いなので、その二つの要素が無い今回の新作は有りか無しかで言えば間違いなく“有り”なんですが、オリジナリティの薄れたフォロワーサウンドに成る前の、『USモダン・ヘヴィネス』だったり『北欧HM』だったり『メロハー』だったりと多彩な音楽要素とメロディで楽しませてくれた、元気溌剌なUSロックンロール風の北欧ブライトサウンドを知っているだけに余計に悲しいのです…(´д⊂)ドウシテ まぁ、80年代USロックンロール風味や初期の弾けるようなハイエナジー・サウンドは前作の時点で既にかなり弱くなっていたのですが、代わりにメロディアスな北欧風味が増していたので個人的に大満足だったし、今後はポピュラリティが高い普遍的ロックサウンドへ接近路線を強めていくのかと予想していたんですが…ウーン…さらにメジャー化する為に大幅なAMARANTHE化を選択したって事なんですかねぇ。 ただ、前作で増した叙情感あるサウンドの影響でか後退して感じられたパワフルさとアグレッシヴな感触が戻って来ており、さらに前作同様なキャッチーさや叙情感あるメロディも維持しつつ、デジタリー・サウンドやアコースティック風味、そして優美で壮大なストリングスパートや分厚いシンガロング等のゴス系な要素を聴かせ、より幅広い音楽要素とバランスの取れた完成度の高いスケール感ある高品質サウンドに仕上がっているので、その点は素直に彼等がさらに一段大きく成長したんだな、と実感出来て嬉しいんですが… 後は、彼等の初期がラフなグラム風ロックンロール・サウンドを身上にしていた事から意図的でなく自然とそうなっていただけなのでしょうが、本作のサウンドはちょっと造り込み過ぎなきらいがあるのか、スケール感はあるものの音の密度が高く硬いデジタル・サウンドばかりが耳について、広がりのあるナチュラルなサウンドの響き等が余り聴こえ来ない点にも少々息苦しさのようなものを感じてしまうのです。 なんだかんだで同時期にデビューした同じ新人バンド達とは一味違う、バッドボーイズ系でも80年代アメリカンHMリバイバラーでもない独自の道を模索し、唯一無二のサウンドを確立しつつあるように思えていた彼等が、まさか新作でAMARANTHE化してしまうとはねぇ… 皮肉な事にチャート的にもAMARANTHE化したのは正解であったようなので、今後彼等はこの路線を推し進めるのかもしれませんね。 個人的には技術的に未熟でも楽曲の完成度が低くても、プロダクションが劣ろうとも、多少フォロワー感があっても懸命にオリジナリティを生み出そうともがき苦しんでいる、そんな挑戦的でアーティステックなピュア・サウンドが好きなので、彼等の今回の計算づくめな感アリアリなアルバムは余り好きになれません。残念です。 #
by malilion
| 2021-03-07 17:48
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