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KANSASの弟分バンド 米国メロディアスHRバンドSHOOTING STARの8thアルバムがボーナストラック追加でリイシューされていたのを今頃ご紹介。

KANSASの弟分バンド 米国メロディアスHRバンドSHOOTING STARの8thアルバムがボーナストラック追加でリイシューされていたのを今頃ご紹介。_c0072376_22452447.jpg

SHOOTING STAR 「Circles + 6」'21

米国カンザス州カンザス・シティを拠点に70年代中期から活動しているギタリスト Van McLainが率いていたヴァイオリン入り6人組USメロディアスHRバンドSHOOTING STARが再々結成し、イタリアのメロハー・レーベル Frontiers Recordsと契約して06年にリリースした8thスタジオ・アルバムが各種ジャンルのクラッシック名作リイシューで有名なRenaissance Recordsからボーナストラックを6曲追加されて21年度リマスターを施されオフィシャル・リイシューされていたのを今頃ご紹介。

残念な事に長年バンドを引っ張ってきたリーダーの Van McLainが2018年に病死するアクシデントに見舞われ、存続が危ぶまれたが残されたメンバーでバンド活動を続行させる意向を示し、現在は新たなギタリスト Chet Gallowayを迎え地道にカンザスを中心に活動を展開中との事だ。

今まで二度の解散と再結成、そして幾度となくメンバー・チェンジを繰り返し(目出度くKANSASの三代目フロントマンに抜擢された Ronnie Plattも元はSHOOTING STARの四代目シンガーであった)てきた、長い長い活動歴を誇るバンドの歴史をまずは最初に。

1960年、Ron Verlin(Bass)と Van McLain(Guitar)はカンザスシティで隣同士に住んでおり、兄弟もバンドメンバーに加えて最初のローカル・カヴァー・バンドSTARSが結成される。

1974年、Van McLainは自作曲を創作し始め、それ以降カヴァーを演奏しなくなり、バンド名も改めTHE SHOOTING STARSとなった。

1978年、ドラマーの Steve Thomasがバンドに加わり、最後にヴァイオリン、キーボード、バッキング・ヴォーカルを担当する Charles Waltzをバンドに迎え、キーボード入り6人組のバンド編成が固まりバンド名をSHOOTING STARへと改め、英国のレコード会社 Virgin Recordsと契約を果たし2年後の80年1月にヴァイオリンをフィーチャーしたKANSAS風なメロディアスでドラマチックなサウンドをよりキャッチーでポップなアプローチで構成したセルフタイトルのデヴュー・アルバムをリリースする。

ラジオフレンドリーでキャッチーなサウンドを展開するバンドは、目論み通りに小規模なシングル・ヒットを繰り返し、『Hang On For Your Life』'81、『III Wishes』'82、『Burning』'83、『Silent Stream』'85 と途中何度かメンバー・チェンジを挟みながら徐々に洗練度とキャッチーさを増したアルバムをリリースし続け、シングルのチャートアクションは絶好調とは言い難かったが、REO Speedwagon、John Mellencamp、JEFFERSON STARSHIP、ZZ TOP、HEART、Bryan Adams、JOURNEY、CHEAP TRICK、KANSAS等のメジャー・アークト達のツアーに参加し徐々に知名度を上げていく。

SHOOTING STAR Line Up:
Van McLain   (Lead Vocals、Lead Guitars)
Ron Verlin    (Bass)
Steve Thomas  (Drums)
Charles Waltz  (Violin、Keyboards、Backing Vocals)
Gary West   (Lead Vocals、Guitars、Keyboards)

カンサス州のヴァイオリン入りバンド、という事でアメリカン・プログレ・ハードの雄 KANSASの弟分的な紹介をされデヴューした彼等ですが実際の所は音楽的な影響は殆ど感じられず、ベーシックな米国メロディアスHRバンドに鍵盤奏者がヴァイオリン奏者を兼任する形で在籍した為にKANSAS関連で語られていただけで、当初はサウンド・アクセント程度な扱いだったように思えるのですが、活動歴を重ねる毎にバンドサウンドの重要な要素としてヴァイオリン・サウンドが扱われていったのが面白く、けれど洗練さとキャッチーさを増していくにつれヴァイオリンの活躍する場が失われていったのは本家KANSASも同様なので、ナチュラルなサウンドよりもデジタリーなシンセ・サウンドの方が持て囃された80年代USメジャー・シーン故の悲劇ですね…

しかし、USバンドにお決まりなアクシデントが彼等を襲い、86年レコード会社内でのゴタゴタに巻き込まれラジオでも頻繁にオンエアされ好評を博した『Silent Stream』はプロモーションに失敗し、一連の出来事に失望したフロントマンの Gary Westはバンド活動の熱意を失いソロ活動を決意し、それが引き金になってバンドは86年12月27日にお別れLIVEを行った後、解散する事に。

CBSレコードが Gary Westのソロ活動に興味を持ちアプローチしてきたが、結局 Van McLainが協力したソロ作は放置されてしまい、失意の内に Gary Westは音楽業界から足を洗ってしまう…

89年、BEST盤をリリースする話が持ち上がりバンドは再結成を果たし、Enigma Recordsと契約して新曲を含むBEST盤の制作が行われる。

如何にもアメリカンHRシンガーという少し苦みのあるミドルレンジ主体な伸びやかでドライな声質でワイルドな歌唱を聴かせる Keith Mitchellを二代目フロントマンに迎え、当初は Charles Waltzも参加する予定だったが既に他のバンドで活動中であった為に合流出来ず、バンドの代名詞であったヴァイオリン奏者を含まず、新たな鍵盤奏者に Dennis Laffoonを迎えた5人組バンドとして活動を開始する。

が、直ぐにドラマーの Steve Thomasが脱退し、Rod Lincolnへチェンジと、解散前と同じオリジナル・メンバーはリーダーの Van McLainのみという、殆どメンツ総入れ替えな再結成(オリジナル・ベーシストの Ron Verlinは84年に一度脱退し、再結成で再合流)になってしまう。

SHOOTING STAR Line Up:
Van McLain    (Lead Vocals、Lead Guitars)
Ron Verlin    (Bass)
Rod Lincoln    (Drums)
Dennis Laffoon  (Keyboards、Backing Vocals)
Keith Mitchell   (Lead Vocals)

ただ、この再結成は上手く運び、89年リリースのBEST盤収録の新曲『Touch Me Tonight』がシングル・ヒットし、ビルボードホット100で67位まで上昇した。

メンツ総入れ替えな再結成であったが、皮肉な事にバンド・キャリアの中で最も高いチャートを記録したシングルとなる。

その勢いのまま、1991年2月にバンドは6枚目のアルバム『It's Not Over』をリリース。

だが『It's Not Over』は難産なアルバムで、制作中にEnigma Recordsが倒産し、自主制作盤として自身のレーベル V & Rからリリースする事態に。

再びベーシストを Ron Verlinから Eric Johnsonへチェンジし、BAD ENGLISH、Bryan Adams、38 SPECIALとツアーを行う。

個人的にはヴァイオリンを欠いていた時期のシンセを大々的にフィーチャーしたハードポップ・バンド的サウンドを鳴らしていた当時のコンパクトでキャッチーなサウンドも嫌いじゃありません、只それがSHOOTING STARに相応しいサウンドなのかと問われれば否、としか言えませんけどね…(汗

『It's Not Over』は自主盤ながら好評で、約1万枚売った後に米国のマイナー・レーベル JRS Records(親会社はSCS Music)から連絡を受け、『It's Not Over』のディストリビューションを任せる事に。

しかし、JRS Recordsはまともなプロモーション活動を殆ど行わず、怒ったバンドが訴えて裁判沙汰(実際、大量の『It's Not Over』の廃盤が生み出された…)へ発展する。

1993年、Enigma Recordsの倒産、JRSの背信行為、グランジー旋風でクラシック・ロックの人気が壊滅的に低下した事等々が重なり、失望したバンドは活動を停滞させ半ば解散状態に。

この間にベースが再び Ron Verlinへチェンジ、断続的にLIVE活動を行う。

1997年、ヴァイオリニストの Terry Brockが加入し、再びヴァイオリンをフィーチャーした6人編成バンドとなり初期のドラマチックなサウンドが戻ってくる。

7枚目のスタジオ・アルバム『Leap of Faith』のレコーディングが1999年12月から2000年2月までテネシー州ナッシュビルのサウンドステージスタジオで行われる。

レコーディング前にヴァイオリニストを Terry Brockから Christian Howesへチェンジ。

00年リリースの『Leap of Faith』フォローアップ・ツアーの後の00年5月、Christian Howesから Shane Michaelsへチェンジ。

2003年末、オリジナル・ドラマーの Steve Thomasが復帰し、シンガーの Keith Mitchellが喉の問題を抱え2005年夏に脱退。

三代目フロントマンに、80年代初期から活動するベテラン実力派米国人シンガー Kevin Chalfant (ex:707、ex:THE STORM、ex:STEEL BREEZE、ex:JOURNEY、etc...)を迎え入れる事に。

SHOOTING STAR Line Up:
Van McLain    (Lead Vocals、Lead Guitars)
Ron Verlin     (Bass)
Steve Thomas   (Drums)
Dennis Laffoon  (Keyboards、Backing Vocals)
Shane Michaels  (Violin)
Kevin Chalfant   (Lead Vocals)

前作『Leap Of Faith』'00 から6年振りにリリースされた本作『Circles』'06 は、Keith Mitchellと似た声質ながらよりクリアーで伸びやかなハイトーン・ヴォイスとエモーショナルな情感表現に優れた Kevin ChalfantのJOURNEYの Steve Perryの代役を依頼される程の抜群の歌唱力が活かされた、これまで培ってきたSHOOTING STARの音楽性の集大成的アルバムとなっており、初期からの持ち味であるヴァイオリンをフィーチャーしたメロディアスでドラマチックな楽曲展開、アメリカンHRバンドらしい爽快感とスピード感あるストレートなサウンド、コンパクトでキャッチーな楽曲と耳を惹く素晴らしい歌メロ、そしてメロディアス・ロック・ファンのツボを知り尽くしたフックある美旋律と程良くポップなコーラス、ベテランらしく楽曲はバラエティに富みながらもアルバムとしての統一感もあり、だからといってセルフ・リメイクに陥る事なく新要素であるLED ZEPPELINっぽいタッチやブギー風味なども貪欲に取り入れる挑戦心も忘れない、正に彼等の最高傑作と言っても過言ではない素晴らしい出来栄えの一枚と言えましょう。

出しゃばり過ぎないヴァイオリンの艶やかな音色や軽すぎないシンセの気の利いたアレンジやジャージィでグルーヴィなオルガン、そしてピリリと全体のサウンドを引き締めるハードエッジでスリリングなギター・プレイと、抜群なヴォーカリストの歌声に負けじとバックのサウンドも今までで一番頑張っている感が強く、本作制作時かなりバンドメンツの創作意欲が高かった事が伺えます。

当時、日本盤も久しぶりにリリースされた事もあり本作を手元にお持ちに方も多いでしょうが、今回のリイシュー盤は日本盤ボーナストラックであった『George`s Song (Remix)』は残念ながら収録されておりませんが、代わって6曲のボーナストラックが収録されており内5曲は『It's Not Over』の収録曲で、バンドの唯一のオリジナル・メンバーでボスのギタリスト Van McLain主導であるV & Rレーベルからのオシシャル・リイシュー盤はマスター・テープを紛失した為か板起こしの酷い状態なリマスター盤であったが、本作はリイシューで有名なRenaissance Recordsリリースな事もあり実にクリアーで今の耳で聴いても十分に耐えるサウンドへブラッシュアップされておりますし、何より91年リリースの『It's Not Over』オリジナル盤をお持ちの方にとっては古い音源がリマスターされクリアなサウンドで楽しめ、お持ちでない方には嬉しいボーナス曲なのは間違いありません(*´∀`*)

残り一曲は Van McLainのリードヴォーカルがフィーチャーされた未発曲で、恐らく『Circles』制作時のアウトトラックではないかと思われます。

又、今回のリイシュー盤は曲順が入れ替えられており、06年リリース時と構成を変えるとこうも違って聴こえるのかと新鮮な驚きでありました。

素晴らしいアルバムをリリースしたにも関わらず、どこまでも運に恵まれないバンドは Kevin Chalfantがツアーへ参加出来なくなり、2007年に四代目フロントマンに Ronnie Plattを迎え入れる事に…orz

ヴァイオリニストの Shane Michaelsは別プロジェクトに専念する為2008年6月にバンドを脱退し、後任ヴァイオリニストに Janet Jameson嬢を迎える。

ベーシストの Ron Verlinは、1984年と1991年に2度脱退し、1994年に復帰して以来一時的に休養していたが2009年に永久に脱退。

以来、現在に至るまでベーシストは不在で、キーボーディストの Dennis Laffoonがベースパートをカバーし続けている・・・(汗

2011年、に Ronnie PlattがシカゴのバンドARRAで活動するためバンドを脱退し、2011年から2012年にかけてバンド史上初めて Van McLainのみがリード・ヴォーカリストとなって(ヴァイオリニスト Janet Jameson嬢がバッキング・ハーモニー・ヴォーカルでかなりヘルプをした)LIVE活動を行う。

SHOOTING STAR Line Up:
Van McLain     (Lead Vocals、Lead Guitars)
Steve Thomas   (Drums)
Dennis Laffoon   (Keyboards、Bass、Backing Vocals)
Janet Jameson   (Violin、Backing Vocals)

Keith Mitchellは喉の問題が癒え、2012年に2005年以来バンドへリード・ヴォーカリストとして復帰したが、2013年に健康上の問題から再び脱退、Janet Jameson嬢も同時期にバンドを脱退。

カンサス州トピカ出身でバンドVANDELYN KROSSの Todd Pettygroveが新リードシンガーとして2013年6月にバンドへ加入。

SHOOTING STAR Line Up:
Van McLain     (Lead Vocals、Lead Guitars)
Steve Thomas   (Drums)
Dennis Laffoon    (Keyboards、Bass、Backing Vocals)
Todd Pettygrove  (Lead Vocals)

2014年7月、KANSASを脱退し音楽活動から引退したヴォーカリストのSteve Walshの後任として、元SHOOTING STARのシンガー Ronnie PlattがKANSASに加入。

デヴュー・アルバムから35年を迎えるSHOOTING STARは、2015年7月に9thアルバム『Into The Night』をリリースし、LIVE会場限定発売の他、当初はバンドのウェブサイトにて無料ダウンロードが可能だった。

折角無料でDLさせてくれたのに何でずが、前作が出色の出来栄えだったのと、ヴォーカリストの歌唱力の低下は如何ともし難く、悪くはないものの結果的に凡庸なアメリカンHR作に聴こえてしまう出来だったのが残念ではあります…

Todd Pettygroveの歌声は Keith Mitchellと同系統な声質ながらよりクリアーな印象で、意図的にか少し Keith Mitchellっぽい歌い方をしているので Kevin Chalfantの加入と脱退を知らずに本作を耳にしたならば、Keith Mitchellの脱退に気が付かない方がいるかもしれない。

ワイルド一辺倒でなくブルージーで感傷的な歌唱もこなすなかなか器用なシンガーだが、比較対象が抜群の歌唱力を誇る Kevin Chalfantだったのが不運でした…

2015年9月、Van McLainは西ナイル熱にかかり入院、2017年9月24日に入院が長引く Van McLainを支援する為、カンザスシティで数多くのミュージシャンやバンドが参加したSHOOTING STAR救済基金特別コンサートが開催されたものの、2018年3月2日、西ナイルウイルス感染症の合併症により Van McLainは62歳で死去してしまう…

SHOOTING STARは2015年に Van McLainが入院して以来活動を停止したままだったが、2018年末に元ヴァイオリニスト Janet Jameson嬢と新ギタリスト&ヴォーカリストの Chet Gallowayを含む新編成でバンドは再始動し、2019年1月19日にカンザスシティで復活コンサートを行う。

SHOOTING STAR Line Up:
Chet Galloway   (Lead Guitars、Lead Vocals)
Steve Thomas   (Drums)
Dennis Laffoon   (Keyboards、Bass、Backing Vocals)
Todd Pettygrove  (Lead Vocals)
Janet Jameson   (Violin、Backing Vocals)

出入りが激し過ぎるバンド体勢には些か不安がありますが、なんだかんだあったけれどバンドの売りであるヴァイオリン・サウンドも戻って来た事だし、SHOOTING STARは今後も活動を継続していく予定だと公式サイトで発表しているので、近い将来リリースされるであろう新作を期待して待ちましょう。

しかし、出来る事ならオリジナル・マスター・テープを発掘して、どうにかV & Rレーベルからの劣悪なリイシュー盤でない綺麗にリマスターされたサウンドのリイシュー盤をRenaissance Recordsがリリースしてくれないものでしょうかねぇ・・・どこかにマスターのバックアップは無いものか・・・orz

Track List:
01.Everybody's Crazy
02.Temptation
03.I'm A Survivor
04.George`s Song
05.Borrowed Time
06.Runaway
07.Without Love
08.What Love Is
09.Trouble In Paradise
10.We're Not Alone
11.Don't Waste My Time
12. It's Not Over
13. If You've Got Love
14. Believe In Me
15. We Can't Wait Forever
16. Blame It On The Night

SHOOTING STAR Line Up:
Kevin Chalfant     (Lead Vocals)
Van McLain      (Lead Vocals、Lead Guitars)
Ron Verlin       (Bass)
Dennis Laffoon    (Keyboards、Backing Vocals)
Shane Michaels    (Violin)
Steve Thomas     (Drums)


# by malilion | 2023-03-16 22:53 | 音楽 | Trackback

AOR寄りな完成度の高いサウンドを聴かせる北欧メロハー・バンドCREYEが待望の3rdアルバムをリリース!

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CREYE 「III Weightless」'23

北欧スウェーデンのメロハー・バンドGRAND SLAMの元ギタリスト Andreas Gullstrand率いるキーボード入りツインギター6人組北欧モダン・メロハー・バンドCREYEが前作『II』'20 から3年ぶりとなる3rdアルバムをリリースしたのでご紹介。

GRAND SLAMはデヴュー作『A New Dawn』を16年にリリースするが、自身で自由に音楽性やコンセプトをコントロールできる活動がしたいと早々にバンドを脱退したギタリスト Andreas Gullstrandが新たに立ち上げたCREYEはGRAND SLAM在籍時の15年から画策していたプロジェクトで、まずフロントマンに同郷欧スウェーデンのメロハー・バンドART NATIONのシンガー Alexander Strandellを迎え、メンツも補充しつつ北欧メロハー・プロジェクト作として見事な出来栄えのデヴューEP『Straight To The Top』を17年にデジタル先行でリリース(国内盤未発売)する。

Alexander Strandellのブライトな声質や伸びやかなハイトーンもあって若干ART NATION風であったデヴューEPのキャッチーな北欧メロハー・サウンドだが、続くフル・デヴュー・アルバム制作前にイタリアのメロハー・レーベル Frontiers Recordsと契約を結び、メンツも盤石な6人体勢に整え、さらにフロントマンに80年代北欧スウェーデンの代表的なメロディアスHMバンドALIENの初代シンガー Jim Jidhedの実子(!!) Robin Jidhedをヴォーカリストとして迎え一躍話題となった17年リリースのセンセーショナルなセルフ・タイトルのデヴュ-作『Creye』は、Robin Jidhedの父親譲りの甘い声質と伸びやかな美声をフィーチャーしたフックあるキャッチーな歌メロと甘く美しいコーラス・ハーモニーを随所に散りばめ、煌びやかなキーボードを多用したメロディアスな楽曲には80年代から脈々と受け継がれる北欧バンド特有のクリアーな爽快感と仄かな哀愁に満ちた美旋律に古き良きスウェディッシュHRテイストが色濃く、特に奇異なアプローチや新基軸は見当たらぬベーシックで正攻法な造りなれど、リスナーの期待を裏切らぬメリハリの効いた曲展開と上品でハイ・センスな洗練された都会的エッセンスを加えた叙情的メロディ、そして新鮮な感触と高品質でキャッチーなAORテイストが満載な、新人バンドの放つ第一弾フル・アルバムとしては完成度の高すぎる一作であった。

ただ、どちらかと言えばAOR寄りなそのサウンドは完成度優先で、キャッチーで造り込まれたギンギンにブライトなメロハー作と言う訳でなかった為か、同時期にデヴューした新人メロハー・バンド達が放つ華やかな処女作と比べて派手さは少々劣る地味めな作風であったのも事実で、ここ国内では大ウケとはならなかったもののAOR系の完成度の高い作品を好むリスナーには絶大な支持を受けたのも本当であります。

そんないきなり破格の出来栄えのデヴュー作に続く2ndにも俄然注目が集まったCREYEですが、1stをリリースして直ぐに Robin Jidhedが脱退(こんなトコまで父親を真似せんでもイイのに…)してしまい、急遽 Andreas Gullstrandの友人であったシンガー August Rauerを迎え、事なきを得て活動を続行し、19年にはMelodicrock Fest、Frontiers Rock Sweden、Rockingham Festivalへの出演を含むスウェーデン国内及びドイツ、ベルギー、スイス等の国外のフェスティバルにも参加するヨーロッパ・ツアーを敢行してバンド練度と腕前の更なる向上を果たすと、August Rauerの如何にも北欧シンガーという滑らかで伸びやかなハイトーン・ヴォーカルをフィーチャーした、1st路線を継承した楽曲とアプローチに更なる磨きをかけたAOR寄りのバランスを重視した2ndアルバム『II』を20年にリリースし、1stを歓迎したAOR系リスナーの望む通りに前作を凌ぐ完成度と美旋律の品質向上を示して、AOR系リスナーだけでなく北欧メロハー・ファンにもやっと認知されたのでありました。

その勢いに乗ってさらなる活動の範囲を広げようとした矢先に全世界がパンデミックに襲われ、世界中のエンターティナメント関連者達と同じように彼等も思うように活動が出来ぬ状況に陥るものの、デジタルのみのリリースではありますが初公式LIVE作品『Alive And Well』を21年にリリースしてバンドの健在ぶりをアピールすると、ロックダウン状態の渦中にも着実に次作への準備を進めていたバンドは23年初頭に満を持して3rdアルバム『III Weightless』を完成させる。

さて、待望の新作の内容ですが、前作と同じく別段特筆するような目新しさはないが、気品あるモダン・ロックが失われつつある今、そのサウンドには数々の素晴らしいエッセンスとエレガンスさが満ちており、モダンなメロディアス・ロック&AORに強烈なポップ・フレーバーをまぶしたより成熟したコンパクト・サウンドからはCREYEの進化は加速しているのが確かに実感出来き、メロハー・ファンが待ち望んでいる新鮮な喜びと満たされる安心感を正に提供していると言えよう。

北欧バンド作らしいキャッチーでクリアーなメロディーが紡がれ、2nd時よりハイトーンは抑えめながら滑らかでエモーショナルなミドルレンジ主体のヴォーカルや、細部までアレンジの練られた楽曲があり、全てが煌びやかキーボードとパワフルなギターの演奏に包まれ、何一つ欠ける事無い洗練された楽曲はダイヤモンドのように爽快な輝きを放っており、奏でられる透明感と哀愁に満ちた美旋律の数々には耳を惹くメロディやフックがきめ細かく配置された、メロハー・ファンならば笑顔が絶える心配は無用の、全てが完璧に近い形で構成され、モダンなサウンドの演奏で、細部まで注意深くプロデュースされた、北欧メロディアス・ロック・ファンの新たなるお気に入りの一枚となる事間違い無しな一枚だ。

無論、一切の不満点や問題が無い訳ではなく、殆どの楽曲のテンポや構成が似たり寄ったりな事や、全編に渡ってシンセサイザーとプログラムされたフリックやトリックで埋め尽くしたかのような無機質さも感じられ、ロック作らしい生っぽいフィーリングや揺らぎといったものが殆ど感じられず、その為かバンドメンバーのプレイの機微やニュアンスも欠けて聴こえ、完成度優先の弊害か些か“造られた感”が鼻につく瞬間が多く感じられてしまう事だろう。

その点で言えば前作『II』の方が全体の完成度は劣るかもしれないが、自然でキャッチーなフィールに満ちたブライトな美旋律には突き上げるような喜びが満ち満ちていて実に心地よかったように思える。

やっぱりギタリストがボスのバンドなのに少々キーボードがフィーチャーされ過ぎですかねぇ? でも絶妙なキーボードアレンジがまた実に楽曲の質を向上させていて堪らないんですよねぇ♪ 楽曲のエッジとギター・プレイのハードさは前作より増しているイメージなんですけど…ウーン(汗

後は少々、歌詞がパターン化してる気が…北欧バンドお約束と言えばお約束かもしれないけど…

そうそう、完成度的には当然最新作に及ばないにしても個人的には Alexander Strandellの声質や歌いっぷり的にクリアーな北欧メロハーっぽさが一番ストレートに感じられるデヴューEPはかなり気に入ってるので、いつの日にか是非とも国内盤リリースして欲しいものであります。

とまれ三作目でこれだけ完成度の高い素晴らしい北欧モダン・メロハー作を提示出来た事は素直に賞賛すべきで、LIVEで実戦経験をもっと積み、より自然なフィーリングを楽曲で再現できるようになればCREYEは正に鬼に金棒状態になれる訳だから、まだまだ若いバンドの彼等の今後の成長を楽しみに待つとしましょう(*´ω`*)

Track List:
01.Glorious
02.Air
03.One Step Away
04.The Game
05.Spreading Fire
06.Weightless
07.How Far
08.In The Shadows
09.Stay
10.Dangerous
11.Pieces
12.Air (Acoustic Verasion)

CREYE Line-up:
August Rauer     (Lead Vocals)
Andreas Gullstrand  (Lead Guitars)
Fredrik Joakimsson  (Rhythm Guitar)
Joel Selsfors      (Keyboards)
Gustaf Orsta      (Bass)
Arvid Filipsson     (Drums)



# by malilion | 2023-03-13 14:52 | 音楽 | Trackback

懐かしの90年代ジャパメタ・バンドGUARDIAN'S NAILのデモ音源集がリマスターでCD化!!

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GUARDIAN'S NAIL 「Early Works Collection 1992-1994」'23

ここ日本の90年代初頭、LIVEハウスでまだ見ぬ成功を夢見て蠢いていたインディ・バンド達の中でも頭一つ抜けた本格正統派HMサウンドを聴かせていたGUARDIAN'S NAILがこれまでに残したデモテープ3本の音源がひとまとめにされ、さらに今は無き大阪のLIVEハウスであるヤンタ鹿鳴館(現、西九条 BRAND NEW)での演奏を収録した未発表LIVE音源も追加したマニア歓喜の音源集がリリースされたのでご紹介。

89年当時、国内メジャー・シーンはYOSHIKI率いるXの成功によって“次に続け”とばかりに華やかな出で立ちのキャッチーなサウンドを聴かせるヴィジュアル系ジャパメタ・バンドが次々にメジャー・レーベルから登場し、マイナーで日陰者であったが故にコミュティの団結も固かったHMという音楽ジャンルが一般大衆に受け入れられるまさかの現象に驚かされたものですが、アンダーグラウンドなシーンでは東京を中心に着実な活動を続けていたGUARDIAN'S NAILの他にも、名古屋の実力派HIDDENや東京のZENITH、テクニカルなツインギターが格好良かった沖縄のSAPPHIRE、JUDAS PRIEST フォロワー系のGADFLY、そのGADFLYのフロントマン AKIRAが新たに結成したメロスピの走りみたいなサウンドを聴かせた KAIZER、CONCERTO MOON結成前に島 紀史が率いていたCRYSTAL CLEAR等々、今はもうその名を聞くことも無い日本全国に存在した短命なインディ・バンド達がメジャー・シーンで持て囃されるヴィジュアル系バンドの嘘臭いサウンドに唾を吐くように背を向け、対バンやDEMOテープ配布等でしのぎを削るように盛んに活動していたもので、私もLIVEハウスに足を運びそのアンダーグラウンド・シーン特有の熱狂と轟音を汗だくになり喉を枯らしながら大変楽しませてもらっていたものです…

当時、個人的に一押しだった木下昭仁率いる北海道の3ピース・バンドSABER TIGERに続くメジャー有望株なんじゃないかと思っていたのが本作をリリースしたGUARDIAN'S NAILで、オリジナルのDEMOテープ『Guardian's Nail』『Second Wind』(ギター・ピック入りw)も劣化が激しいし既にテープデッキの方の磁気ヘッドも危険なレベル(汗)なので、今回の幻の100本限定1stDEMOテープ音源を含む全DEMOテープ・コンピレーション集はCD化な上デジタル・リマスターされてクリアーでパワフルなサウンドに生まれ変わっており、彼等のファンにとっては有難い事この上ない朗報でしょう。

この後、GUARDIAN'S NAILはデヴューEP『Believe』を96年に自主リリースし、インディ・バンドあるあるのメンバー・チェンジや次なる方向性を巡ってひと悶着あり、結果的に国内メジャー・シーンでのヴィジュアル系HMバンド群を中心とした空前の盛り上がりをよそに敢え無く解散してしまうのですが、冷静になってそのサウンドを今聴き返してみると、楽曲のまとまりも今一つで鼻に掛かったようなパワー不足の歌声を聴かせるヴォーカリストの歌唱力も今一つなB級正統派HMバンドであった彼等は潔くあの時点で惜しまれながらも解散したからこそ、今でも良い想い出として自分の中に残っているのだな、と気が付かされた次第でして…(汗

まぁ、想い出補正を取り払って彼等の残した音源を評価すると、敢えて国内メジャー・シーンで持て囃されている半ば歌謡曲じみたヴィジュアル系バンド達が披露していた大衆受けするキャッチーなポップ・サウンドと違う路線を選択した事や、海外風のビッグスケールなサウンドを狙ったのが徒となったのかキャッチーさやコンパクトさに欠け、さらに一世代前のメチャクチャにメロディアスな80年代のジャパメタ・バンド達と違って90年代のモダン・ヘヴィネスが流行っていた欧米シーンのHMバンドに幾分か倣った事でか、良く言えば甘味の少ない本格派サウンド、悪く言えば中途半端にメロディアスさの残るフックがイマイチなサウンドになってしまったのだと今なら思えますが、コレは完全に後からの視線なので遠い想い出になってしまった27年後の今に何を言っても仕方がありませんネ…

元メンバーが結成したSEVENTH SONは現在までに3枚のアルバムをリリースしている事はGUARDIAN'S NAILのファンなら当然ご存じの事を思うが、もしまだ彼等の音源を未チェックな方や本作でGUARDIAN'S NAILの音に初めて触れ興味を持たれた方がいらっしゃるならそちらの方も是非チェックしてみて欲しい。

Track List:
01. Second Wind
02. Face To Facr
03. Dream In Chains
04. Booby Traps
05. Call Of Nightingale
06. Try In Many Ways
07. Endless Loneliness
08. Second Wind
09. Labyrinth
10. Booby Traps (Live)
11. Call of Nightingale (Live)
12. Face to Face (Live)
13. Endless Loneliness (Live)

GUARDIAN'S NAIL Line-up:
Noriyuki Shinagawa  (Vocals)
Yasumoto Otani    (Guitars)
Toru Miyanohara    (Guitars)
Kiyoshi "Kyo" Seki   (Bass)
Kiyoshi Aso       (Drums:1992-1993)
Manabu "Toi" Aoki   (Drums:1994-1996)


# by malilion | 2023-03-10 09:32 | 音楽 | Trackback

80年代中期から90年代初頭にかけ米国東海岸で活動していたUSメロハー・バンド LAST TEMPTATIONの幻の音源が最新音源を加えデジタル・リマスターでリイシュー!

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LAST TEMPTATION 「Love Wins」'23

以前ここでキャリア30年超えとなるアメリカNY出身のHRシンガー Frank Vestryがこれまで参加したバンド等がリリースしてきた楽曲から選曲したコンピレーションBEST盤『My Collection』'20 を紹介しましたが、そのBEST盤に2曲だけ収録されていた幻のUSメロディアス・バンド LAST TEMPTATIONの唯一作に、新たに22年録音最新音源(!?)を3曲追加し、タイトルとジャケを新たにした新装盤がMelodic Rock Classicよりリリースされたのを即GET!

そもそもLAST TEMPTATIONはギタリスト兼ソングライターの Arnie Miotによって1987年に結成され、New YorkとNew Jerseyを拠点に活動し、数多くのビッグアーティスト達の全米ツアーをサポートするなど当時のメジャー・レーベルとの契約を目論む人気インディ・バンドと同じプロモーションを展開してクラブシーンで好評を博していたが、幾度かのメンバーチェンジを経て80年代末期に一度解散し、再びヴォーカリストに Frank Vestry、ベーシストに Steve Hervatic、キーボーディストに Allan Gabayという布陣で再結成して89年に記念すべきデヴュー作をレコーディンクして91年にセリフタイトル作を自主リリースしたが時既に遅く、グランジー旋風が吹き荒れる90年代初頭には80年代風のキャッチーで華やかなメロディアスHRサウンドを演っていたバンド達に活躍の場は無く、LAST TEMPTATIONは再び消滅してしまう…

と、ここまでなら90年代に陽の目を見なかったUSインディ・メロディアスバンドあるあるなお話なのですが、08年リリースのMARCELLO-VESTRYのアルバムが好評で Frank Vestryの過去参加バンド作に話題が集まったのを契機に業界関係者から長らく廃盤でレア盤としてマニアに知られるLAST TEMPTATIONの唯一作のリイシューを薦められ、09年CD化の際にタイトルも改めボナストラックも追加して『Better Late Than Never』'09 としてリリースし即完売した改定盤が、今回再びジャケとボーナストラックを加えた新装盤となって二度目のリイシューが成された訳であります。

80年代中期から90年代初頭にかけ米国東海岸で活動していたUSメロハー・バンド LAST TEMPTATIONの幻の音源が最新音源を加えデジタル・リマスターでリイシュー!_c0072376_18542707.jpg
09年盤は真っ黒なジャケにバンドロゴがあしらわれているだけのシンプルな装いでしたが、新装盤では80年代風のゴージャスでキャッチーなサウンドを想わす“如何にも”なデザインに改められており、曲順を再構築し、22年新音源と合わせて Jk Northrup氏の手による23年度リマスターが施され、今の耳で聴いても十分耐える音圧とシャープさ、そしてボトムサウンドの迫力が増した磨き抜かれた素晴らしいアップグレード具合で少しも古臭さを感じさせぬ仕上がりになっておりますので、自主盤が完売になって今や入手不可となりレプレミア価格で取引されるレア・アイテムとなった09年盤をお持ちの方もお見逃しなく。

ベテラン・米国人シンガー Frank Vestryは、元々は元VIRGIN STEELEの Jack Starr (Guitar)率いるマイナーUS産HMバンドJack Starr's BURNING STARRの1985年デヴュー作『Rock The American Way』時のフロントマンで、DANGER DANGER結成前の Bruno Ravel (Bass)やWHITE LIONの Greg D'Angelo (Drums)と活動していた時期もあり、その次には現DOKKENの Jon Levin (Guitar)と組んでこれまた幻の短命バンド DEVIASをやっていたりと80年代米国東海岸HRシーンで俄然注目を集め多方面の人脈が入り乱れる幅広いバンド活動をしていた人気シンガーの一人で、伸びやかな歌声や高い歌唱力にも関わらず巡り合わせが悪いのか運が無かったのかその実力と裏腹に華やかな80年代に今一つメジャーな存在になれず、グランジーの嵐が吹き荒れる90年代~00年代はすっかりその名が聴かれなくなっていたものの、現DANGER DANGERの Rob Marcello (Guitar)との08年のコラボ・プロジェクトMARCELLO-VESTRYや、13年にはイタリアが本拠地のメロハー復興旗印的レーベル Frontiers Recordsを中心に活躍する今やイタリア人名プロデューサー Alessandro Del Vecchio (Keyboard)、元BONFIREの Dominik Hulshorst (Drums)、イタリアン・ワンマンメロハー・バンドBRUNOROCKの Bruno Kraler (Guitar)等と組んだメロハー・バンドLANESLIDEなど、英米地域問わずメジャー、インディ関係なく近年になっても数多くのプロジェクトやバンドに招かれその素晴らしい歌声を披露し続けている苦労人であります。

80年代メジャー志向な華やかでキャッチー、ブライトでメロディアスなサウンドが売りのインディ・バンドが80年代末期、もしくは90年代初頭に音源をリリースしたものの、グランジーの勃興の為にメジャー・シーンの流行が激変しリリースした音源は見向きもされずに今になって希少なレア盤に高値が付く、という定番の流れのLAST TEMPTATIONの唯一作は、希少な為だけでなくオリジナル盤が高値で取引されるのも頷ける内容となっており、ハードでフックに富んだギター・プレイとダイナミックでタイトなリズム、カラッと爽快でドライな歌声をメインにキャッチーな歌メロとポップでブライトなコーラスが華やかに楽曲を盛り上げる、当時一世を風靡した産業ロックやBON JOVI、FIREHOUSE、DANGER DANGER等でもお馴染みのバブリーでゴージャスな80年代アリーナ・ロックの流れを汲むラジオフレンドリーなアメリカンHRサウンド(所々にWHITESNAKE『Sarpenth Albus』の影響が露骨なのはご愛敬)で、90年代USメロディアス・ハードの隠れた名盤と言う評価も決して大げさではありません。

取り立てて超個性的なサウンドだとか滅茶苦茶技巧派なプレイだとかそんな事は一切無い、L.A.メタルのようなナスティで如何わしい感触は少ない非常にベーシックで80年代当時チャートを賑わしていたメジャー・バンドに倣った華やかでメロディアスな王道サウンドのアルバムですが、やはり Frank Vestryの抜群の歌唱力とクリアーで伸びやか、そして華やかでパワフルな歌声がその他のインディ・バンド達よりワンランク上の好印象を与え、さらにバランスの非常に良く取れた楽曲としっかり纏まったバンド・サウンドはインディ離れした完成度で、ほんの少しグランジー旋風が吹き荒れるのが遅ければ間違いなくメジャー・レコード会社と契約しワールドワイドに本作がリリースされチャートでも好アクションを記録したでしょうに、本当に惜しい、確実に平均点以上の良い出来な一作でありました。

イマイチ現在バンドがどのような状態になっているのか判然としないのですが、ロングアイランドとフロリダで録音されたばかりの22年新録音源を制作した事や、バンドコメントでさらに活動を続ける旨が語られている所を見るとバンドはオリジナル・メンバーで十数年ぶりに再々結成し、今後も活動を続行させる模様なのですが、公式HP等が無くて正確な事はまだ分かりません…

どうにもMelodic Rockレーベル主導による過去作リイシューに合わせての再々結成っぽいのが少々不安ではありますが、本格始動して新作アルバムを届けてくれるのならばメンバーの力量的に些かの不安も無いのは既に証明済みですから、是非ともパーマネントな活動をお願いしたいものであります。

尚、91年のオリジナル・アルバムリリース時にはパーマネントなドラマーが不在で、Steve Murphyと Jeff Cropperなるドラマーがヘルプで数曲ずつプレイしていたが、今回の再々結成に際して Steve Murphyが正式にバンドメンバーとして迎え入れられた模様で、本作のバンドフォトにはしっかりとその姿が収まっている。

とまれ若かりし頃の Frank Vestryの抜群の歌唱が堪能できるBON JOVI、FIREHOUSE、DANGER DANGER等を筆頭とした80年代風のキャッチーでフックあるUSメロディアスHRがお好きな方は手を出しても決して損はしない一枚ですのでご興味あるようでしたら一度チェックしてみて下さい。

Track List:
01. Love Wins In The End (New Track)
02. Break It
03. Last Temptation
04. Emotions
05. You'll Never Walk Alone (New Track)
06. Oh So Easy
07. Catch Me Now I'm Falling
08. Next To You
09. Without Love
10. You're Trouble (New Track)
11. Sailing Away
12. Save Me
13. Queen Of Ice

LAST TEMPTATION Line-up:
Frank Vestry  (Lead Vocals ex:LANESLIDE、ex:DEVIAS、ex:Jack Starr's BURNING STARR、etc...)
Arnie Miot   (Guitars ex:GOLDEN AXE ATTACK、ex:Jr HOUSE MOB、ex:IMMUNE、ex:COPY DOGS、etc...)
Steve Hervatic (Bass ex:Alice Cooper、ex:RED DAWN、ex:RAINBOW、ex:Joe Lynn Turner、ex:TOKYO MOTOR FIST、ex:Ted Nugent、ex:Billy Joel、etc...)
Allan Gabay  (Keyboards ex:BEACH DAY、etc...)
Steve Murphy (Drums & Backing Vocals ex:Alan Parsons、ex:Eric Burdon & THE ANIMALS、ex:Jack Bruce、ex:Todd Rundgren、ex:TRANS-SIBERIAN ORCHESTRA、ex:SteveLukather、ex:Andy Timmons、etc...)

with:
Jeff Cropper  (Drums)


# by malilion | 2023-03-07 18:50 | 音楽 | Trackback

“北欧のDEF LEPPARD”みたいなエストニアのAORバンドFIRST NIGHTが2ndをリリース!!

“北欧のDEF LEPPARD”みたいなエストニアのAORバンドFIRST NIGHTが2ndをリリース!!_c0072376_20152799.jpg

FIRST NIGHT 「Deep Connection」'23

北欧スウェーデンの右下、フィンランドの真下に位置するバルト三国の中で一番北に位置する小国エストニアの、フィンランド海を挟む北欧に程近い北部都市タリンを拠点に活動するAORバンドが前作『First Night』'19 以来4年振りとなる2ndを今年初めにデジタル先行でリリースされていたのですが現物が2月に自主盤でリリースされたのでご紹介。

本バンドを率いるフロントマン Reneck Sweetは元々07年結成のRISING SUNなるローカル・エストニアバンドで活動しており、本バンドでもギターを弾いている Mikk Tivasやドラマーの Kristjan Aasamaeも在籍していたが、Reneck Sweetが英国移住に伴いバンドを脱退し、RISING SUNのシンガーは Mikk Tivasが引き継ぐ事になったらしい。

10年程英国で生活をしていた Reneck Sweetはショービジネスの盛んな英国で世界中の様々な音楽に触れ、数多くのAOR&HRバンド達を目にし、自分も正にそれをやりたいと思い立つと、7年に及ぶ英国人女性との結婚生活が破綻したのを契機に16年には故国エストニアへ戻り、英国在住中に温めていたAORバンド構想を実現するべく行動を起す。

元バンドメイトの Mikk Tivasと Kristjan Aasamaeにアコースティック・ギターで創作した自作曲を聴かせ、2人が乗り気になった事で3ピースのAORバンドFIRST NIGHTが16年に結成され、Mikk TivasがRISING SUNの時のようにアレンジや様々なアイディアを加え、Mikk Tivas自身の手でミックスとプロデュースを施され、記念すべきデヴュー・アルバムが19年にデジタル先行でDLリリースされた後、自主制作盤でCDもリリースされる。

Skypeを産んだ事でも良く知られ、IT分野においてエストニアは今や世界の最先端を走るデジタル大国なのですが、反面メロディアスな北欧HMやハードポップが盛んな北欧三国に近しくミュージック・シーンのレベルの差が大きく開けられている事や、ソヴィエト連邦に支配された過去がある為かエストニア国内の音楽市場の発展が遅れ規模も小さい事、そして欧米のポピュラー・ミュージックのシェアの方が大きい事などからエストニア国内のバンドでメロディアス・ロックをプレイするAORやメロハー系バンドは殆ど存在していないらしく、けれど Reneck Sweetとしては自身の大好きなAORバンドで活動して是非故郷のシーンを盛り上げたい、と一念発起してバンド活動を続行中なのだそうだ。

さて、そんな彼等のサウンドですが、Reneck Sweetの声質や歌い方がモロにDEF LEPPARDのシンガー Joe Elliottを彷彿とさせ、ちょっと Joe Elliottより音程が低くく Joe Elliottの様なシャウトや喉を搾った甲高いハイトーンでなどは聴かせず、穏やかにミドルレンジ主体で歌い上げる歌唱スタイルなのと、バンドのミキサー、プロデューサーも兼ねるギタリストの Mikk Tivasのお気に入りのプロデューサーがDEF LEPPARDでお馴染みな John“Mutt" Lungeで、バッキングトラックのアイデアやミキシングのアイデアは全て彼から影響を受けているらしく、その為かアルバム全編から隠しようもなく80年代DEF LEPPARDの影響やサウンドが感じられるが、Reneck Sweetはフェバリットバンドにオランダの貴公子こと Robby Valentineも初期に在籍していた事で知られるオランダのメロハー・バンド 1st AVENUEを上げていたり、AEROSMITH、BON JOVI、DEF LEPPARD、Bryan Adams等々の80年代を賑わした“良いメロディを奏でる”メジャー・アーティスト全般から影響を受けていると公言しており、FIRST NIGHTが世界中にゴマンと居るDEF LEPPARDのフォロワー・バンドではない事はそのサウンドの端々に独特な哀愁のメロディが漂っている事からも良く分かる。

彼等のサウンドにお手本バンドに無い独特な哀愁のメロディが漂っている理由を Reneck Sweetが語る所によると、

『“Deep Connection” は、ファースト・アルバムと同じく人間関係がテーマで、ファンタジー・アルバムではなく、僕の以前の恋愛についての実話が中心となっている』

『僕は7年間結婚していたんだけど、あの結婚が上手く行かなくなってから、1stとこのアルバムの為に多くの曲を書き始めたんだ』

『最初の曲が出来た時、それをアルバムにしようとは思っていなかった。そう思えたのはもう少し後の事だ。だから、今回のアルバムも前作も、曲も歌詞も全て、とてもパーソナルなアルバムになっているんだ』

『20歳くらいの頃は、大抵は他人の影響を受けて、他人のやっている事をそのままやってしまう。人生について多を知らないからね…』

『だからとにかくその関係は長続きしなかった。当時、妻は“もっと深いつながりが欲しい”と言っていたから、このアルバムタイトルになったんだ』

と言う事らしく、2ndアルバムのジャケにはその別れた奥さんの顔写真(!)もあしらわれていて、良く言えば非常にナイーヴなセンス、悪いく言えば女々しい感傷的な想いがアルバム全般に強く渦巻いている事で、お手本バンド達のメロディアスなサウンドとの差別化が図れていると言うのが実にユニークと言えましょう。

ただ、別れた奥さんへの想いがサウンドのベースにはなっていても本作は Reneck Sweetのソロ作ではなく、ちゃんとバンドメンバーからのインプットもあるバンド作で、北欧的なキラキラしたキーボードやモダンなタッチのシンセが奏でる透明感や、80年代ドイツ風な分厚く勢いあるシンガロング・パートの影響、カナダ風なタッチのリリカルで透明感ある流麗なギター・サウンドに、80年代から90年代にかけての英国ポップスや英国AORサウンドからのエッセンス、そしてバンドサウンドの7、8割りを占める80年代を賑わしたバブリーでゴージャスな米国メジャー・アーティスト達が奏でた華やかなアリーナ・ロック風のビッグ・サウンド等を巧みに取り入れ消化して自らの血肉にした、単なるDEF LEPPARDフォロワー・バンドではない一捻り効いたキャッチーでメロディアスな独特のテイストを持ったオリジナリティある80年代風AORサウンドへ昇華されているので、ウジウジと未練タラタラな男の劣情が告白された暗く後ろ向きな楽曲なのかと危惧された方は、ちゃんとコンパクトにまとめれたフックあるポップでブライトなメロディ満載なサウンドなので安心して欲しい(汗

デヴュー作の方が幾分メロハーっぽい感触が強く感じられ、本作の方がよりメロディの質や楽曲の完成度が上がってAOR度が増したイメージながら、好意的に捉えればUSアリーナ・ロックバンドや米国産業ロック・バンドのサウンドを叙情的な北欧風に仕上げ、ハイ・センスな都会的エッセンスを加えたような高品質でキャッチーな独特なタッチのあるユーロ・メロディアス・サウンドと言え、悪く言えば未だにSTAGE DOLLSのフロントマンに Joe Elliottが加入して、BON JOVIとDEF LEPPARD風なタッチの残るAOR曲を穏やかに演奏しているみたいなメロディアスなサウンド、という大雑把なイメージから大きくは外れておらず、その辺りのネガティヴなイメージを覆す新基軸サウンドなり方向性の変化なりがあればFIRST NIGHTがフォロワー的な捉え方をされる事から解放されるように思え、次なる3rdアルバムの仕上がり具合に注目したい所であります。

ウーン、DEF LEPPARDっポイけれど仄かな哀愁の漂うアンニュイな雰囲気を想わすギター・フレーズが、実は本バンドとお手本バンドとの差を大きく感じさせる要因に思え、そのユーロ圏アーティスト特有なマイナー調の美旋律が実に独特でセンチメンタルなイメージを強めていて個人的に大好物です♪(*´∀`*)

DEF LEPPARDでは余りフィーチャーされる事のない柔和なキーボードの音色や透明感ある爽快なシンセサンドも、彼等のサウンドの独自色とオサレ感を強めているのは間違いない。

残念な事に前作では一応3ピースバンドのはずだったが、デヴュー作に続き本作でも裏ジャケには Reneck Sweetと Mikk Tivasの2人しか写っておらず、1stはミドルテンポの楽曲が殆どでリズムアプローチの幅が狭く展開のメリハリがイマイチだった事から察するにやはりドラマー Kristjan Aasamaeの貢献度は低いセッション的な参加だった模様で、現在のFIRST NIGHTは Reneck Sweetと Mikk Tivasのデュオ・ユニットとなってしまった模様だ。

もっとアルバムが売れてバジェットが稼げればワンチャン本格的なバンド編成を組めるかもしれませんが、今の所ちょっと望み薄なのが悲しいなぁ…

とまれ北欧メロハー作と言うには刺激が少ないけれど、マイルドな北欧メロディアス系ロックがお好きな方や、穏やかでメロディアスなユーロAOR作がお好みの方、そしてBON JOVI、DEF LEPPARD、Bryan Adamの作品のメロディアスな要素だけ抽出して濃縮したような穏やかな美旋律作というキーワードにご興味ある方は一度本バンドをチェックしてみても損はしないと思いますよ?

Track List:
01. These Hearts
02. Little Love
03. Beginning Of The End
04. Savage Heart
05. It's Only Feeling
06. Love Me
07. Don't Ever Say Goodbye
08. Someone
09. Is Your Love Alive
10. Talk To Me
11. Suddenly
12. Can't Forget
13. In the Name Of Our Love

FIRST NIGHT Line-up:
Reneck Sweet   (Lead Vocals)
Mikk Tivas     (Lead Guitars、Backing Vocals、Music、Mixing)



# by malilion | 2023-03-02 20:19 | 音楽 | Trackback