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遂にLEPSコピーから脱却! 一段上のステージへ飛躍した北欧メロハー・バンド期待の新作!

c0072376_20350728.jpgGRAND DESIGN 「Viva La Paradise」'18

スカンジナヴィアンHMシーンの重鎮であり、元ZEELIONのヴォーカリスト&プロデューサーであった Pelle Saetherを中心に06年に結成されたスウェーデン産ツインG5人組メロハー・バンドの、レーベルを本国スウェーデンのレーベルに移して初となる前作から4年振りとなる4thアルバムが前回に引き続き今回も無事国内盤がリリースされたのを、ちょい遅れてGET!

前作からモロLEPSのコピー路線から外れつつあった訳ですが、この新作では遂にLEPSサウンドはバンドサウンドの一要素(いや、半分くらいまだか…)にまで落ち着き、変わってスリージー&グラム要素やAOR的整合感、そして本家DEF LEPPARDが捨て去ってしまった人工甘味料たっぷりな造り込まれたゴージャス・ポップロックに北欧フレーバーをタップリまぶしてキャッチーさに磨きをかけた北欧メロハー要素がググッと全面に押し出された新機軸路線へサウンドが進化し、その楽曲完成度も前作より明らかに高く、これには少々驚かされました('(゚∀゚∩

まぁ、冷静になって彼等のアルバムに耳を傾けていたファンは既にご存じだったでしょうが、周囲が言うようなDEF LEPPARDの影響って、このバンドの場合サウンドのゴージャスな人工的処理だったり、確信犯的なフレーズやコーラスの盗用(汗)だったり以外では、実はバンドの音楽的な共通点(Pelle Saetherがこのバンド以前に活動していたZELLOやZEELIONのサウンドを聞けば簡単に憶測可能)は殆どなく、ベースは脈々と70年代より連なる、透明感と哀愁を湛えたキラキラしたサウンドが日本人受けする北欧叙情HMの典型的サウンドフォームだったんですよね。

ですので、オリジナリティが増す=自然と北欧HM的ウェット感だったりが表面化、と薄々感づいておりましたが、新譜のここまでの楽曲の完成度までは正直予想出来ませんでした(アッパレ!

また、この変化は北欧バンドの定番とも言えるメンバーチェンジが強く影響し、それが良い方へサウンドの発展を促した原因とも考えられます。

以前はヴォーカリスト&プロデューサーであった Pelle Saetherが殆どの楽曲を手がけていたが、本作から前作から引き続き参加している80年代前半から活動を続けている北欧HMの元祖的バンドOVERDRIVEやCONSTANCIAで活動中の Janne Stark(G)とDennis Vestman(G)も楽曲制作に関わり、さらに本作より同郷HRバンドROCKETT LOVEのギタリストでリーダーである Stefan Westerlundがベーシストとして加入し、モロに80年代に影響を受けたキャッチーでハイクオリティな、CRAZY LIXX、RECKLESS LOVE等を彷彿させるLAメタル的サウンドを聴かせた彼の持ち込んだ音楽的要素でか、相変わらずのオーバー・プロデュース気味な人工的サウンドと、過剰な分厚さと大仰なコーラスが鼻につく所もあるものの、今まであまり強く感じられなかったスリージー&グラム要素が大きく全面に押し出され、妖艶さや下品さ等のバッドボーイズ・サウンド要素も合わさり、小綺麗で人工的な作り物臭いばかりだった借り物サウンドに絶妙な化学反応を引き起こしたのではないでしょうか?

しかし、この新作の出来が良ければ良い程に心配なのが、このメンツがいつまで続くのか、って事もありますよね…

元々、デビュー以来メンバーが流動的で、特にリズム隊は常に不安定で Magnus Ulfstedt(ECLIPSE、Jimi Jamison、TALISMAN、LIONS SHARE)が前作リリース前の13年から15年辺りまで在籍していたものの、ECLIPSEを優先する(当然だわな…)と言う事で16年にはCOLDSPELLの Perra Johanssonがヘルプで叩き始め、本作の収録も担当したもののCOLDSPELLを優先する為彼はバンドを離れ(またか…)、本作リリース後に新ドラマーとして Joakim Jonsson(AXENSTAR、PSYCHOPUNCH)が加入という、これもまた掛け持ちメンバーなので不安が拭えませぬ…(汗

それにも増して、ドラッグ&セックス&ロックンロール、なんて今時恥ずかしくて口にも出来ぬフレーズを恥ずかしげも無く高らかに歌い上げ、ゴージャスで煌びやかな人工的サウンドを合成して飾り立てた甘々メロディーと爽快エネルギーが一杯な楽曲をこれでもかとプッシュしてくる、絶えて久しいド・ストレートな80年代的スリージー&グラム要素満載LAメタルサウンドと合わさって今の時代には逆に新鮮に映っちゃうのが、なんとも微笑ましいというか自分も歳を取ったんだなぁ、とちょっと寂しく感じたりして(苦笑

80年代スタイルのAOR&ハードポップサウンドにモダンなダイナミックスを加えLEPS的なサウンド路線はそのままに、DEF LEPPARD的な流暢なハーモニーとメカニカルなグルーヴに人工的処理が未だに強く感じられるものの、Janne Stark(G)が奏でるHM要素全開なギター・ソロはよりメロディアスでフックが増し、まさに北欧HM的フレーズとウェットな艶をバンドに与えてそれらのマイナス要素をいい具合にカバーし打ち消しているし、PRETTY BOY FLOYDやMOTLEY CRUEが明らかにヒントであろう彼等の表現しているグラムやスリージーのバッドボーイズ・テイストやPVイメージ等は、下品さやダーティさ、そしてバカっぽさ(笑)が本家に比べて希薄で、それが本作では上手い具合に混ざり合って独特の輝きを放つオリジナリティの確立に大きく役立っているのが個人的には大変よろしく思っております。

前作の時点ではオリジナリティの増加につれて楽曲の完成度が低くなるのではと危惧しましたが、それは杞憂に終わって一安心なのですが、本作のゴージャスで煌びやかなサウンドが派手になればなる程に、リーダーでありフロントマンである Pelle Saetherの歌声のか細さやパワー不足が浮き彫りになるという新たな問題点が浮上してきて、イヤハヤなかなかに手放しで活動を喜べないバンド、という印象は未だに覆りませんね…(汗

とまれ本家DEF LEPPARDが捨て去った&進まなかった路線が行き着く“聴けそうで聴けなかった”LEPS進化サウンドをこうしてしっかりと提示するという、数多くいるLEPSフォロワーの中でもなかなかに為し得ない偉業(大げさ過ぎかw)を果たした彼等のこの新作の頑張りと手腕には素直に喝采を送りたい。

北欧風な憂いあるウェット感の強いメロディや透明感と清涼感溢れるメロディを保ちつつ、グラム&スリージィーなダーティなロックンロール要素も加味して人工甘味料的LEPSサウンドに独自色と多様性を加えるという、実に絶妙なさじ加減が必要なこの方向性、いつまで続けられるのか…次なる新作に今から期待が高まりますね(*´ω` *)



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by malilion | 2018-06-30 20:22 | 音楽 | Trackback

GEKKO PROJEKTが発展して生まれたUSシンフォ新バンドBOMBER GOGGLESをご紹介。

c0072376_14223563.jpgBOMBER GOGGLES 「Gyreland」'18

元SPOCK'S BEARDのドラマー Jimmy Keeganを迎えてカリフォルニアのロック・トリオが新たに結成した4人組USシンフォ・バンドのデビュー作をGET!

と、言っても全くの新人と言う訳ではなく、むしろ古参ミュージシャンを中心に元のバンドから発展して新バンドへと移行した、と言った方が正しい状況だろう。

本作の中心人物である Peter Matuchniak(Guitar&Vocals)は、MARILLION、PENDRAGON、IQ、TWELFTH NIGHT、PALLAS等と同じく80年代初期に結成され活動したUKポンプの先駆バンドの1つJANYSIUMの中心人物である英国人ミュージシャンで、そのDURAN DURAN meets GENESIS×CAMELと例えられるニューウェーブ系の影響が強いサウンドが好評を博したJANYSIUMは断続的な活動を続けるものの00年で活動を終え、その後に Peter MatuchniakはEVOLVE IVなるロックバンドを結成し1枚アルバムを残したがバンドは開店休業状態に陥り、次いでGEKKO PROJEKTなるUSシンフォ・バンドを立ち上げ12年、15年にシャープでテクニカルなアンサンブルが織り成すメロディアスで繊細な楽曲が美しい2枚のアルバムを残している。

因みにそれ以外にも Peter Matuchniakは2枚のソロアルバムをリリースしているので、本作のギターサウンドが気に入った方はチェックしてみるのもいいかもしれない。

本作はそのGEKKO PROJEKTの3rd制作時の Peter Matuchniakの構想が発展し、GEKKO PROJEKTのバンドメイト Vance Gloster(Keyboards&Vocals)はそのままに、新たに Steve Bonino(Vocals&Bass)を加え、新ロック・トリオとしてコンセプト・アルバムの制作を進めている最中、ドラマーにSPOCK'S BEARDを脱退したばかりな Jimmy Keeganを迎える事で新USシンフォ・バンドの体制が整い、デビュー作をリリースするに至る、という流れらしい。

そういう経緯もあってかGEKKO PROJEKTのサウンドに似た、US産バンドらしいカラっとした抜けの良いサウンドのシンフォ・コンセプト作で、USモノお約束のオッサン声ながら分厚いコーラス有りの、メロディアスでスピーディーな楽曲の所々にダークでミステリアスな英国的叙情風味が仄かに香る、ちょっとジャズっぽいシャレオツなサウンドや儚くロマンチックなサウンドなんぞも垣間見える、US産シンフォ・バンド作のアルバムとしては少々毛色の変わった独特なサウンドの一品と言えるだろう。

本作のコンセプトは、海に大量に浮かぶプラスチック片が造りだした架空の土地、浮遊大陸『Gyreland』と、そこへ逃れた人々が織り成す社会と訪れる危機が描かれたSFチックな物語だ。

1985年から1988年の間に発見された北太平洋中央部の海洋塵粒子の渦巻き“Gyre”や、海洋に浮遊するプラ片の量は膨大で、海流によってプラスチックが集まり、一説にはテキサス州に相当する広大な海面を帯となり、渦巻き、覆っている事実が、本作の創作インスピレーションなのは明らかだろう。

『Gyreland』の物語は、亡命者、流出者、難民がGyreとして知られる海流によって捕獲された膨大な量のプラスチック廃棄物をどのように発見したかから始まる。
人々は何とかそのプラ片で出来た大陸に家々(!?)を建て、その場を“Gyreland”と名前づけ暮らし出す。

『Gyreland』では人々が話し合う事無く知識を互いに伝達可能なテレパシー能力が発現し、人々は迅速な意思疎通のお陰もあって前例のないスピードで建築、開発が進むのだが、その事実は環太平洋周辺の国々の関心を集める事となり、特にロシア、中国、米国が強い関心を示し、遂に『Gyreland』へ三カ国の軍から成る侵略同盟軍が派遣される事になってしまう。

人々はその動きに抗議するものの『Gyreland』は軍隊や武器を持たぬため、侵略が開始されれば為す術も無いのは明白であった。
争いを避けて新天地へ集った人々なのに、三カ国は望むものを手に入れたら互いの同盟を破るつもりなのを予想し、さらなる争いが『Gyreland』を中心に起こる事を嘆き、悲しみます。

そして、侵略軍が『Gyreland』へ到着するのだが、兵士達がプラスチックの地面に足を踏み入れるにつれ、奇妙な事が起こる。
彼等も共同体の感覚と知識を得て、『Gyreland』の人々と心が通じ合い、武器を捨て、平和を望む共感力に圧倒されていく。
理由が何であれ、侵略者達は軍を放棄し、人類史上の新たな転換点である『Gyreland』の人々に加わっていく……

と、最後ちょっとご都合主義というか理想主義的ロマンチックな流れながら、しっかり深刻な海洋汚染の環境問題や不穏になりつつある世界情勢も描いてみせる、如何にもプログレっぽい小難しいテーマを中心に据えたファンタジックなSF物語だなぁ、と(*´ω` *)

コンセプト作ではあるものの映画的な大仰な楽曲やSE等の演出は行われておらず、小曲を織り成す事でコンセプトを表現する、という手法でアルバムは構成、表現されているので、その手のコンセプト作が苦手な方でも、別段コンセプトを意識せずとも楽曲を楽しめるのは良い点でしょう。

勿論、欠点がない訳ではなく、ヴォーカルのレベルが楽器演奏者の兼任レベルで、つまりポンプやプログレバンドでよく聞くヘタウマなヴォーカルより多少マシな程度に聞こえるレベルなのが、バックのサウンドがなかなか気品あって艶やかで美しく、その上モダンでシャープな完成度高いサウンドなだけに少々残念かな、とは思いましたけどね…

Peter Matuchniakのファンは勿論のこと、GEKKO PROJEKTの新譜を待ち望んでいたファンの方などにもお薦めな一作なのは間違いありませんので、ご興味あるなら一度チェックしてみてはいかがでしょうか?


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by malilion | 2018-06-30 14:16 | 音楽 | Trackback

SPOCK'S BEARDチックなプログレ・プロジェクト CELL15が遂にバンド作をリリース!

c0072376_20163638.jpgCELL15 「River Utopia」'18

BOSTONに楽曲が採用された事もある70年代から地道な活動を続けAORファンにその名が知れていたアメリカン・メロディアス・ロックバンドHYBRID ICEでキーボードとヴォーカルを担当している(いた?)USAペンシルバニア州レノボ出身 Robert Scott Richardsonが11年から新たに立ち上げたプログレ・プロジェクトの14年デビュー作『Chapter One」』に続く待望の2ndがリリースされたので即GET!

デビュー作時点ではヴォーカルを含め全ての楽器を Robert Scott Richardsonが演奏していたナンチャンッテ・バンドだった訳だが、デビュー作が好評な事を受けてメンバーを募り、数多くのオーディションを経て15年に Robert Scott Richardson(Vocals&Keyboards)を中心に、Shane Jones(Guitar&Vocals)、スコットランドのバンド Elephantsの元メンバー Dan MacDonald(Bass&Vocals)、USAフュージョン・プログレバンド CIRCULLINEの Andrew Colyer(Keys&Vocals)、Bill Brasso(Drums&Vocals)の5人のフルメンバーから成るツイン・キーボード体制の本物のバンドとして本格始動し、満を持して放つアルバムが本作だ。

2ndアルバムを制作しつつ17年はニュージャージー州でのショーや、RahwayでのProgStock Festivalへ参加し演奏を披露するなど精力的な活動を続けていたが、18年アルバムが完成したのと前後してメンバーチェンジが勃発し、Bob Richardsonなるヴォーカリストを新たなフロントマンに迎え、ボスの Robert Scott Richardson(Keyboards&Vocals)は当然として、Dan MacDonald(Bass&Drums&Keyboards&Vocals)、Andrew Colyer(Keyboards&Vocals)、Shane Jones(Guitar&Vocals)の5人を正式メンバーに、Ornan McLeanをゲストドラマーとして迎え、現在は活動を継続中な模様。

本作での歌声も悪くないものの、Bob Richardsonなるヴォーカリストを迎え入れた所を見ると、やはり自身のヴォーカルスキルではA級バンドへは難しいと冷静な判断を下した Robert Scott Richardsonの賢明にしてプロフェッショナルな英断を歓迎したい。
エゴなのか、耳の病気なのか、それとも自分の歌声に間違った自信を持っているのか、この手の冷静な判断の出来ぬミュージシャンの多いこと多いこと、特にプログレ系はホントに下手クソなリーダー・ヴォーカリストが多くて辟易させられますからねぇ~('A`)

さて、この新譜の内容の方ですが、1stと同路線の所謂最近のUSAモダン・グレなサウンド…ぶっちゃけて言うとモロにSPOCK'S BEARDなテクニカル・シンフォサウンドがさらにスタイリッシュでコンパクトになったイメージ、と予想通りな内容となっておりました。

デビュー作はそれに加えて当初の予定通り、KING CRIMSON、GENTLE GIANT、YES、GENESIS、PINK FLOYD、そしてKANSASの影響を受けたサウンド、というかそれらのお手本バンドのフレーズやサウンドパーツがそこかしこに散見しておりましたが、今回は流石に熟達したミュージシャン等によるラインナップを揃えたのが功を奏したのか、そういったモロという感触が薄れて安っぽいアマチュア臭さを払拭する事に成功(未だにキーボードのフレーズだったりに残り香があるけどね…)したのは着実な進歩と言えましょう。

ただ、良いことばかりでもなく、US産らしいスピーディな展開とドライなサウンド、派手でテクニカルなキーボード、スリリングに切り込むギター、アメリカらしいキャッチーな歌メロ、そしてプログレチックで巧みな曲展開等々、バランスのとれた実に優等生なUSシンフォ・サウンドと言え、余りに引っかかりの少ない素直で小綺麗過ぎる、無菌培養された無個性なサウンドというようなイメージがなきにしもあらずなのは少々問題かも…

勿論、そこらのアメリカン・シンフォがよくしでかすパワー一辺倒なアホさは皆無だし、予想以上にドラマチックな展開だったり、所々でジャズっぽい香りのするキーボードプレイや鍵盤の音色だったり使い方だったりにシャレオツなセンスが光る点など、リーダーがAOR系ミュージシャンだった故なのかモダンなサウンドの感触はその他大勢のUSシンフォ・バンドに無いこのバンドならではの特色とも言えるが、既に同一路線のバンドとしてSPOCK'S BEARDが存在し、似たサウンドを先んじて披露している訳なので、これから先どういった方向へサウンドを発展させるかがこのバンドが生き残れるかどうかの大きなポイントとなってくるような気がします。

USモノにありがちなちょっとリズムが単調な気がする点と、まだまだ強烈な個性が確立されていない点が気にはなりますが、自主制作のシンフォ・バンドの実質的なデビュー作と捉えれば十分以上の出来なのは間違いありませんので、その筋のサウンドがお好みの方は青田買いのつもりで今からアルバムをチェックして購入しておくのもありかもしれませんね。




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by malilion | 2018-06-29 20:11 | 音楽 | Trackback

北欧HMの雄 TNT、試行錯誤の00年代低迷は無駄じゃなかった! 新作が示す新たな可能性!

c0072376_13514820.jpgTNT 「ⅩⅢ」'18

かつて『北欧メタル』を代表するバンドの一角に数えられここ日本で絶大な人気を誇った、ノルウェーが誇る北欧HMの雄 TNTが2010年の『A Farewell to Arms』以来8年ぶりとなるスタジオ・アルバム13thをリリースしたのを、ちょい遅れてGET!

本作の最大の話題は、なんと言っても再結成して以来フロントマンが常に定まらず二代目ヴォーカリスト Tony Harnellが出たり入ったりな状況だった問題が解消され、無名のスペイン人新人ヴォーカリスト Baol Bardot Bulsaraを四代目フロントマンに迎えた新体制による第一弾作である事だろう。

そもそものバンド解散の引き金となった Tony Harnellの脱退を経て、96年に再び彼を迎えての再結成を果たしたものの、89年の4th『INTUITION』を筆頭に北欧HMかくあるべしと言わんばかりの透明感あるキャッチーでホップ、それでいてハードエッジも保ったテクニカルなサウンドを再現する道を捨て、時流を強く意識したヘヴィでダークなグランジー要素入りのUSAナイズなサウンドが大方の予想通りファンに受け入れられずに人気が低迷し、80年代に人気を博したバンド群と同じく世界的トレンドに翻弄されて迷走した90年代のバンド活動に追い打ちをかけるように、近年 Tony Harnellが脱退を繰り返したのが、どう考えても再結成以降このバンドが長らく飛躍出来無ず終いだった原因なのはファンならば皆ご承知のはずですよね…('A`)

06年に Tony Harnellの後任として加入し三枚のアルバムで見事な歌声を披露した三代目ヴォーカリスト Tony Mills(元SHY、SIAM)が鈍い活動状況のバンドに業を煮やして13年に脱退した後、再び Tony Harnellが加入して来日公演を行なったまではいいものの、まさかのSKID ROW(!?)に加入する為に15年に再び脱退、しかし6カ月足らずでSKID ROWも脱退して再びTNTへ加入(!?!?)という熱心なファンでさえも愛想を尽かす謎過ぎる脱退劇を経て新作の制作に取りかかるものの、新譜創作途中の17年10月に再びバンドを脱退し、今回のスペイン人新シンガー Baol Bardot Bulsaraが迎えられた次第で、その為か新譜のそこここに Tony Harnell的な歌メロが散見する訳だが、最終的な仕上げやアレンジを Tony Harnell抜きで行った事や声質や歌唱方法が違う Baol Bardot Bulsaraが恐らく前任者を意識して歌い上げた事によって微妙なズレが生まれ、今までのTNTの音像っぽいけど決定的に違うという絶妙な変化を生む効果となったのは本作の一番面白い点と言えるでしょう。

注目の新フロントマン Baol Bardot Bulsaraの歌声ですが、中低域では Tony Harnell的な甘さを感じさせる爽やかな優しい歌声で、新人ですから仕方が無いのですがハイトーンになると少々線の細さと不安定さを露呈してしまい三代目ヴォーカリスト Tony Millsのような堂々とした歌いっぷりやシャープな高域での歌声を披露するに至っていないものの、これまでのどのアルバムよりもソフトケイスされAOR要素が強くなった本作においては実に良くマッチしていて、もし Tony Harnellが脱退せず歌っていたならば暑苦しさやクドさを感じたであろう楽曲でも柔和さと温かみ、そして爽快さを感じさせてくれる見事な歌いっぷりで、結果的に彼の涼やかな歌声がもたらした新鮮な風が、再結成以来ずっと彼等に期待され(周囲からも強いられていた?)ていた“INTUITION”時代の輝かしいメロディアスHRサウンドを再現する“焼き直し行為”にならず、それでいてリーダーの Ronnie Le Tekroが常々口にしている“変化を恐れぬ姿勢”を保ったニュー・バンドサウンドを確立する足がかりとなったように思えます。

所謂“CLASSIC TNT”的な往年の80年代北欧メロハー・サウンドの復活を多くのファンが待ち望んでいるのは重々承知しておりますが、再結成以降の音楽的方向性や以前からの Ronnie Le Tekroの発言を鑑みると、80年代サウンド再現をTNTが果たす事はないと誰もが容易く予想出来ますよね?

実際、バンドメンツも世界中で約500万枚のアルバム売り上げを誇った“CLASSIC TNT”時代とは大きく違い、再結成(オリジナル・ドラマー Diesel Dahlは居るけど)バンドとは言え既に当時のメンバーは Ronnie Le Tekroしか残っていない状況ですので、そもそもソレを求め強いるのも少々酷ではないかと…

また本作においては三代目ヴォーカリスト Tony Millsと時を同じくして迎えられ長らく在籍した二代目ベーシスト Victor Borgeの姿もなく、新たに Ronnie Le Tekroのソロバンドでプレイしていた Ove Husemoenが三代目ベーシストとして迎えられた体制での初作品であるという点も地味ながら見逃せない変化ではないでしょうか?

新譜のサウントが前作よりハードさやヘヴィさに置いては大きく後退したのは否めませんが、Ronni Le Tekroの少し聞けば彼だと即分かる癖の強い独特で驚異的な、そして燃えるようなフレットワークは依然としてダイナミックで、テクニカルで屈折したギター・リフも未だに聞かせてくれるし、80年代より幾分落ち着いたナチュラル志向なサウンドは今でも十分に躍動感と透明感に溢れたメロディック・ロックサウンドであり、90年代からの音楽的実験や試行錯誤を経たのが無駄でなかった証明のように、多様なフォームの音楽的要素を奇妙に組み合わせて幾つかの味わいを加える為の音楽的ニュアンスを体現しており、加えて魔法のコードを奏でるエネルギッシュで奇妙なギター・サウンドとハーモナイズされた分厚く爽やかなヴォーカルというお馴染みのTNT印もしっかりと新譜サウンドには刻まれているのが聞き取れ、個人的には中途半端に“CLASSIC TNT”的なサウンドへ近づけていた Tony Mills時代の三枚のどのアルバムよりも本作の方が新鮮味を感じられ、アップテンポのバラードからキャッチーでライトなロックや果てはアリーナ・ロックに至るまで実に幅広いタイプの楽曲が詰め込まれた、洗練されたモダン・ハードポップ・アルバムで大変好ましく思えます。

以前のようなキンキンな煌びやかさや造り込まれたゴージャスなポップさ、ヘヴィさやスピードは無いものの、フックある魅力的なメロディーと美旋律が甘美な楽曲のアレンジにおいては近年作では随一と言える本作は、Ronnie Le Tekro(G)、Diesel Dahl(Ds)、Ove Husemoen(B)の組み合わせが生み出すマジックと新たなバンドの音楽的方向性に未だに未知の可能性が潜んでいる事を強く示唆しており、図らずも旧来のイメージを保つ事になった歌声を披露した Baol Bardot Bulsara(Vo)が最初から制作に参加するであろう次作で果たしてどのようなヴォーカル・パフォーマンスを示すのか、またソレが一体どのようにバンドサウンドと反応をするのか興味が尽きません。

最近デビューしてきているバンドが演っている80年代的リバイバル北欧HM好きな方には少々スリリングさやパワーに欠ける残念で軟弱なサウンドに聞こえ、旧来からのファンの期待に応えた汚名返上作とはなっていないかもしれないが、美しいメロディ愛聴家や北欧メロハー好き、そして朗らかで穏やかなサウンドをお好みのAORファンな方などにお薦めなメジャー志向なサウンドなので、幅広い音楽ファンにきっと受け入れられるだろうこの新譜、チェックしてみる価値があるのは確かですよ(*´ω` *)


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by malilion | 2018-06-29 13:46 | 音楽 | Trackback

フレンチ・シンフォ・デュオ SEVEN REIZHが待望の続編となる新譜をリリース!

c0072376_12152094.jpgSEVEN REIZH 「L'Albatros」'18

フランスはブルターニュのシンフォニック&プログレッシヴ・デュオプロジェクトの三年ぶりとなる4thがリリースされたので即GET!

16年に発表されていた野心的な前作“La Barque Ailee”の続編となる本作だが、デビュー作以来恒例のLPサイズな分厚いハードカバーなブックレット(200Pって、もう絵本!)付きのみならず、今回は前作も一緒に収納出来るハードケース付き(二作収納すると辞書みたいな分厚さに…)というこだわりようだ。

19世紀中期にブルトンの船乗りから初めて空を駆けた航空の先駆者であるフランス人ジャン=マリー・ル・ブリスの生涯を綴ったコンセプト・アルバムで、前作“翼のあるボート”の続編である本作“アルバトロス”で物語は圧巻の完結を迎える。

SEVEN REIZHは Claude Mignon(作曲家、ギター&キーボード)と GerardLe Dortz(作曲家、ヴォーカル)二人が中心となって率いているシンフォニック&プログレッシヴ・プロジェクトで、01年のデビュー以来一貫してコンセプト作を多数のゲストを迎え、寡作ながら独特な美旋律で綴り続けている。

彼等が他のシンフォ・バンドやプロジェクトと大きく違っている点は、Mike Oldfield、PINK FLOYD、GENESIS、CAMEL、MARILLION、XII ALFONSO、ENYA、CLANNAD等の影響を受け、フォーク、ゴシック、ネオ・プログレ、ケルト、ワールドミュージックを融合させた独自のシンフォニック・サウンドを提示しただけでなく、LPサイズのCDブックレットで音楽と読書をMIXさせて物語を綴り、さらに英語、フランス語、ブルトン語、ゲール語、時にはカバイ語などの多言語で歌われ、劇的で旋律的なインスピレーションをコンセプト・サウンドに与えている事だろう。

また、それ故にメジャーに成りえない、マイナーでアンダーグランドな存在であるとも言える。

複数のフィメール・ヴォーカリストをはじめ、チェロやヴァイオリンや、サックス、トロンボーン、フルート、バグパイプやケルティックハープ等々の多数のゲスト・ミュージシャンを招いているものの、アルバムは必要以上に壮大な音の壁を構築するような事もなく、どちらかと言うとアコースティック風味が強いシンプル寄りなサウンドで、オリエンタルなワールドミュージック・テイストを全編から漂わす、エネルギッシュさより華やかで繊細なサウンドを優先したシンフォ&プログレ・サウンドと言え、奇をてらうような事もなくゆったり展開していくメロディアスなサウンドは非常に旋律的であり、けれど、時折シンプルなサウンドが複雑に絡み合ってエネルギーが爆発する瞬間が希にある、そのスリリングさがホント堪りません(*´ω` *)

実際、クラシカルなテイストはあるもののEL&Pのようなパワフルさはなく、GENESISを手本としたポンプサウンドよりも現代的なサウンドで、個々のプレイヤーのエゴはYESのように現れず、KING CRIMSONのように過度にテクニカルで複雑になる事こともない、それでいてネオプログレ・テイストもそこかしこから感じられ、メロゥでセンチメンタルなCAMELのようなテイストが一番大きく、全体的には感傷的でしっとりとした艶やかで儚げなサウンドで、それらは大きなオリジナリティや画期的なものではないものの、クリアーで神秘的な美声の女性ヴォーカリスト達が紡ぐ物語とひたすらメロディアスなギターとキーボードが渾然一体となって構築する叙情が際立つシンフォニック・サウンドに導かれ、古典的なプログレッシヴ・ロックから美しいアコースティック・サウンドへ突然に移行する、その差異と押しと引きの妙や、木訥でシンプルなメロディが、美しさ、繊細さを引き立てる非常に巧く細工の凝らされた作品だ。

テクニカルさやスピード、そして壮大なシンフォニックサウンドと言ったものは見当たらず、多様な楽器の様々なサウンドとマルチパートの構造にも関わらずアルバムは非常にシンプルなメロディが流れ、けれど幅広い音楽的影響から生み出されたエスニック&ワールドミュージックの皮をかぶったケルティック・シンフォサウンドが精緻で魅力的なサウンド・タペストリーを織り成していく様は、まさに絶品の美しさと言えよう。

その多言語で綴られるサウンドや、毎度分厚くクソ重いブックレット同封なアルバムの為か流通状況が悪く、彼等の作品はメジャーシーンどころかプログレ系のアンダーグラウンドな界隈でも余り話題にならないものの、緩やかな美旋律がお好きなシンフォ・ファンはもちろん、美声のフィメール・ヴォーカル・ファンや、ケルト・ミュージック、及びエスニック&ワールド・ミュージック好きな方へお薦めな、一風毛色の違った野心的でインテリジェンス漂うアルバムですので、是非一度ご自身の耳でチェックしてみて下さい。

因みに本作は2種類のアートワークが用意されていて、古地図のブラウン・カヴァーと空のブルー・カヴァーの2つからお好みの方をチョイス(ブックレット中&音源は同じ)出来る仕様となっております。

c0072376_12154058.jpg豪華装丁なので少々お値段がお高いですが、毎度の事ながら自主盤なのでお求めの方はお早めにね!




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by malilion | 2018-06-12 12:10 | 音楽 | Trackback