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米国産モダン・シンフォIZZの女性シンガー LAURA MEADEの11年ぶり初のフル・アルバム!

c0072376_20464495.jpgLAURA MEADE 「Remedium」'18

米国産ハイブリッド・モダンシンフォ・ロックバンドIZZ(ツイン・女性ヴォーカルの片割れ)や、RENAISSANCEのキーボーディスト Jason Hart率いるシンフォ・バンドI AND THOUのメンバーとして活動する、ミュージカル系バックグラウンドを持つ女性シンガー&シンガーソングライターの1stソロ・アルバムがリリースされたのを、ちょい遅れてGET!

フィメール・ヴォーカルものが得意でない自分ではありますが、07年に5曲入りEP『LAURA MEADE』をリリースして以来11年ぶりとなる初のフル・アルバムである本作、前作に続きIZZの J.Garando(Bass、Guitars、Keyboards、Drums、Programming、Backing Vocals、Ukulele) が作詞作曲、演奏等で全面的にバックアップするだけでなく、THE FRIDGEの Rabdy Mcstine(Guitars)やRENAISSANCEの Jason Hart(Keyboards、String Arrangement)も制作に参加しているとあっては購入せぬ訳にはいかないでしょう。

女性ヴォーカルのソロ作と言う事で当然、演奏パートがメインではない歌モノ・アルバムで、IZZでも味わえる清楚さと透明感がありつつ、どこかコケティッシュさも漂わす可憐な歌声を活かした、ピアノ独奏での弾き語りや、アコギバックに切々と情感タップリに歌い上げるオペラティックな歌唱も楽しめる、シンプル且つメロディアス、そしてリリカルで華麗な楽曲が詰め込まれたポピュラー寄りなサウンドのアルバムだ。

勿論、J.Garandoが制作に関わっているので、YES、GENESIS等のプログレ系や Kate Bush等の歌姫系な影響も窺えるサウンド・アプローチだったり、音色の断片だったりが全編に渡って散りばめられていて、プログレ&シンフォ好きは、きっとニヤリとする事でしょう。

深いエコーのかかったドリーミィで、けれどその実ダークな情感も露わなゾクリとするような楽曲や、シットリとした優しげな歌声や朗らかな歌声が活かされたカラフルな楽曲が楽しめたりと幅広くバラエティに富んだ内容な上に、ソロ作と言う事もあってかIZZでは余り聞く事のない Laura Meade嬢の表情豊かで軽やかなポップス寄りな歌唱もフィーチャーされた米国産アーティスト作と思えぬウェットなメロディ満載なアルバムなので、シンフォ&プログレ抜きにしてもユーロ圏のメロディアスな作品がお好みな方なら文句無しに楽しめる良作だ。

プログレ&シンフォ系バンドに所属してるヴォーカリストのソロ作って、地味にバンドメイトが参加していて良作が多かったりするんだけど、余り知名度ないからか即廃盤になったりするので、ご興味ある方はお早めにね(*´ω` *)





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by malilion | 2018-12-12 20:39 | 音楽 | Trackback

まさかの23年ぶりの復活! オランダ産ポンプメタル・バンドDILEMMAが強力布陣で再結成し、新譜をリリース!

c0072376_16024294.jpgDILEMMA 「Random Acts Of Liberation」'18

まさの復活! オランダ産ポンプメタル・バンドの23年振り(!)となる3rdアルバムがリリースされたのを、ちょい遅れてGET!

アンダーグラウンド・シーンはシンフォ・サウンドという新風の奥にポンプの残り香がまだ幾分か漂い、メジャーシーンではプログレMHが一大シーンを形成していた95年当時、SI MUSIC(後にRoadrunner Recordsがディストリビュート)から『Imbroccata』にてアルバムリリースを果たすものの、その後音源を残せず02年に解散していたバンドが、オリジナルメンバーのキーボーディスト Robin Zuiderveldを中心に再結成され新作をリリースした。

オランダのアムステルダムで93年に結成され、同年カセットオンリーのデビュー・アルバム(現物未確認)『Trapped』をリリースし、その後95年に2nd『Imbroccata』にてCDデビューを果たすが、その時点で既にアルバム2枚分のマテリアルが存在するという事で、続く新作はすぐにも届けられるものと誰もが思っていた(ポンプ系やHM系のインディバンドでこの手の話は定番ですね)ものの一向に音沙汰は無く、いつの間にやらバンド名をUNDERNEATHへと変え、そのまま忘却の彼方へ消え去っていた彼等がまさかメンツを殆ど入れ替えて蘇るとは…

なぁ~んて、バンドHP覗いて偉そうな事今頃宣っちゃってる完全に知ったかぶりです。ハイ。

実際は1st(当時、何故か日本盤もリリースされていた…)聞いて『なーんかSHADOWLANDのヘッコポ版みてぇでイケてないなぁ…』と思い、完全に記憶の彼方へ消し飛んで行って、ついぞ思い出す事の無かったバンドでした(汗

全く関係ないけど、DALI'S DILEMMAって、いう夢劇場フォロワー系なUSカリフォルニア産プログHMバンドと似た名前なので混同しがちで、コッチの方も同じく1作のみで解散しており、DILEMMAって名前はツキに見放されるよろしくないバンド名なん? と、以前思った事がありましたねぇ…

後に英国のIONAへ加入(00年アルバムから)し活躍する Frank Van Essen(Drums&Violin)が元在籍していた、との知名度のみが僅かに残るマイナー・バンドであった訳だが、まさか Robin Zuiderveld(Key)を中心に、DILEMMA末期メンバーとして活動し、今はKAYAK、AFFECTOR、Neal Morse BAND等で活躍するCollin Leijenaar(Ds&Vo)、Paul"Cray-Z"Crezee(G)等により10年に再結成されていたとは、本作リリース・インフォを見るまで全く知りませんでした。

しかも、本作ではヴォーカル&ギターに Dec Burke(元DARWIN'S RADIO、元FROST*、AUDIOPLASTIK)、ベースに Erik Van Der Vlis(元SINISTER STREET)を迎える強力布陣に加え、オリジナルメンバーであるIONAの Frank Van Essenもヴァイオリンで2曲に参加し、変わらぬその艶やかで美しい美旋律で再結成作に華を添えております。

2nd『Imbroccata』は、フロントマンの Danny Butlerの声質や歌い方、そしてHM要素とポンプ要素をMIXしたような、当時の時流で言う“普通にメロディアスなユーロ・ロックサウンド”でイマイチバンドサウンドの特徴が弱く、そのせいでか Karl Groom& Clive Nolan率いるSHADOWLANDの劣化版バンドのように聞こえていた彼等の音楽だが、本作に置いてはオリジナルメンツは Robin Zuiderveld(Key)残すのみだし、時代も変わったし、で殆ど別バンドとも言える、ミステリアスな雰囲気と妖しい気配を漂わすサウンドを新基軸に、プログレHM的なギターとキーボードのド派手な高速ユニゾンや手数の多い弾けるドラミングの上で熱いインタープレイを交差させつつ、しっかりポップなフィーリングを失うこと無くテクニカルに複雑に大展開するモダン・ユーロ・シンフォ・ロックサウンドを新たに披露している。

23年という決して短くない時間を経てのバンド創作物なので、方向性やサウンドの質等々、当然以前とは全く違うと言っても過言ではなく、フロントマンが Danny Butlerから Dec Burkeへチェンジしている事で楽曲の情感の幅や、表現力の深み、繊細な歌メロ、そして、センチメンタルなサウンドのタッチや、単純に歌唱力や演奏技術が大幅にアップしているのも大きな新作の話題点だが、それ以上に見逃せないのが、タイトでソリッド、そしてテクニカルなリズムを刻むドラムを始め、Loops、Percussion、Additional Keyboards、Sound Design、Urban Sampling(SEの事?)、Programming、Backing Vocals、と以前と違って全編からモダンでデジタリーさを漂わす彼等のニューサウンドへ多岐に渡って貢献し、さらに本作のプロデュースまで担っている Collin Leijenaarの八面六臂(さすが電子音楽の本場オランダで活躍してるだけありますね)の活躍が本作に置いては最も大きな創作面でのプラス要素であったと言わざる終えないだろう。

実際、唯一のオリジナルメンバーである Robin Zuiderveld(Keyboards、Grand Piano、GEO Synthesizer)の印象は、以前のポンプ的ハッタリプレイばかりを聴かせていたプレイと比べ、バランス重視でバンドサウンドに絶妙にキーボードプレイやキーボードサウンドが溶け込んでいる事もあってか総じて薄く、寧ろポップな歌メロとトリッキーなギタープレイを聴かせる Dec Burkeと変拍子をはじめテクニカルな技と見せつけつつしっかりと楽曲に即したセンス良い小気味なドラムプレイを聴かせる Collin Leijenaarが結成した新バンドへ Robin Zuiderveldの方が後から加入した、くらいのサウンドバランスに聞こえるのだから、どうしてDILEMMAの名前に拘ったのか、その理由の方が気になるくらいだ(汗

また、無名ながら Paul"Cray-Z"Crezeeのギタープレイも実にそつなく、泣きのフィーリングや哀愁漂うアコギ、ハードタッチでエッジある攻撃的リフや、しっかりと音の厚みを出す為のバッキングや、モダンなタッチの透明感あるメロディを紡ぐクリアートーンの流暢な演奏等、悪目立ちする事なくしっかりとバンドサウンドを支え多様な彩りをもたらしている点も見逃せない点だろう。

キャリアを重ねたのが無駄でなかったのと、強力なメンバーを迎えられた事が予想以上に素晴らしい化学反応を引き起こしたのか、テクニカルなプレイを織り交ぜつつ、メロディアスでキャッチーな面も垣間見せる、以前と比べものにならないくらいリリカルでハイレベルな、実にオランダらしいモダンでクリアー、それでいて時折垣間見せるダークなメロディや楽曲展開を隠し味に、貪欲に実験的なデジタリー・サウンドも導入して古色蒼然とした70年代プログレの巨人達のサウンド・エミュレートから脱却して見せたセンスは、まさにポンプメタルから新世代ユーロ・シンフォ・ロックバンドへ彼等が生まれ変わった証えよう。

勿論、全く斬新なサウンドと言う訳ではなく、所謂80年代ネオプログレや90年代以降のプログレHM、さらにFLOWER KINGS、SPOCK'S BEARD、Neal Morse BAND等からの影響が聞き取れるものの露骨なフォロワー臭は無く、即効性のある強烈に個性的なシンフォ・サウンドと言えないけれども、アコギの爪弾きや艶やかなヴァイオリン、センチメンタルで軽やかなピアノ等々のサウンドで如何にも叙情的ユーロ・サウンドといったウェットな感触も保ちつつ、SEやプログラミング等の如何にもデジタリーで冷ややかなサウンドを交差させ、誰かに似ているようで誰にも似ていない独特な寂寞感の漂う世界観と隙間があるようで実際はジックリと造り込まれたサウンドが漣のように紡がれゆくのに耳が惹きつけられて離れない(*´ω` *)

スタンダードでオールドスタイルのシンフォ・サウンドではないし、幾分かHMチックなサウンドや、ポップでキャッチーな点も多々あって説明するのが難しく、さして知識がある訳でないので分かり易い例えバンドが思いつかず申し訳ないが、是非このカラフルで軽やか、それでいてミステリアスで不可思議なサウンドにユーロ・シンフォ・ファンな方ならば一度触れてみて欲しい、そう願わずにおれません。

メンツがメンツだし、このま安定して活動出来るのか定かではありません(汗)が、是非とも次なる新作を今度こそ早めに届けて欲しいものであります。






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by malilion | 2018-12-09 15:55 | 音楽 | Trackback

若き日の Dan Swanoが挑んだ北欧プログレ・ポップバンドUNICORNの幻の音源がリリース!

c0072376_12235284.jpgUNICORN 「A Collection Of Worlds ~Resurrectio~」'18

90年代にMELLOW RECORDSへ2枚のアルバムを残している、若き日の Dan Swano(Lead Vocals、Drums)が率いていた、Peter Edwinzon(Piano、Synthesizers、Vocals)、Anders Mareby(Guitars、Flute、Vocals)、Per Runesson(Bass)の4名からなる北欧スウェーデン産プログレ・ポップバンドのフルアルバムデビュー前に残していたデモテープがリミックス&リマスターを施されリリースされたので即GET!

メロディアス・デスHMバンドEDGE OF SANITYやゴシック・ロックバンドNIGHTINGALEのリーダーにしてマルチプレイヤー、音楽プロデューサーとして著名な北欧メロデス界の重鎮、スウェーデン人ミュージシャン Dan Swanoが10代の頃に結成し、活動していたHRバンドから発展した、EDGE OF SANITYの活動と並行し断続的に2枚のフルアルバム(イタリアのMELLOW RECORDS盤、マニア泣かせ…)、2枚組コンピ(『A Collection of Worlds PartⅡ』と3rdデモテープ『The Weirdest of Tales』'91を収録)、4枚組CDのBOXセット・コンピレーション音源集、そして4本のカセット・デモテープを、90年代後期に活動停止するまでに残した北欧プログレ・ポップバンドの、最初期のデモテープ『A Collection of Worlds PartⅠ』'88と『A Collection of Worlds PartⅡ』'89の音源をまとめた、まさに幻の音源のリリースだ。

今や北欧メロデスのみならず多岐に渡って精力的に活動している Dan Swanoのブレイク前のプレイ(ヴォーカルとドラム)が聞ける幻の音源とあってか、インディ・レーベルからながら初期のデモテープ音源はこれまで幾度かCD化されて来たが、本作は単なる発掘音源CD化ではなく、『A Collection of Worlds PartⅡ』の音源の曲順を変化させ、17年リミックス&リマスター、さらにヴォーカル・パートのみ11年再録音源に差し替えてのリイシュー作となっている。

本作のサウンドは、後にMELLOW RECORDSよりリリースされる2作のサウンドと比べるまでもなく特異で、若さ故に才気走るのが抑えきれぬのかハッタリ連続のテクニカル押しな上、スピィーディでパワフルなHR的要素が強く、さらに80年代初期に英国で唸りを上げたポンプ・ムーブメントの影響(間違いなくIQとMARILLION)が垣間見え、如何にもプログレ、という複雑な構成の楽曲(Dan Swanoは70年代プログレッシヴ・ロック愛好家)が実に個性的で、そこへ Dan Swanoの中域メインなヴォーカルを活かしたASIA的キャッチーな歌メロ要素やメンバー全員からなる分厚く爽やかなコーラスを加え、さらに後の活動が予見出来る Dan Swanoの自己主張が強くテクニカルで頑張り過ぎ(汗)なドラムスが目まぐるしい変拍子をそこかしこに叩きつけながら強引に楽曲を推し進める、破綻スレスレながら怒濤の勢いで駆け抜けていく、一種爽快感さえある手に汗握る展開に継ぐ展開な楽曲に、燃え上がるような創作意欲が迸る、ティーンエイジャーのアマチュア・ミュージシャン達の剥き出しな情熱と渇望が漲るサウンドだ。

80年代後期USAインディ・シーンに大量に居たテクニカル・スラッシュメタルバンド達に通じる複雑怪奇で強引な楽曲展開なのだけれど、途中で聞く気が失せてしまうUSA勢と違って彼等は爽快なコーラスやポップでキャッチーな歌メロと一丸となったメンバー達のアンサンブルでなんとか楽曲が破綻しないように力業で纏め上げていて、そんな所は如何にも清涼感あるメロディ創りが得意な北欧ミュージシャン達のプレイだと感心してしまうが、如何せん全体的なサウンドの完成度は低く、勢いとキャチーさで聞き通せるもののプログレ的な艶やかさや構築美、さらにオリジナリティといった点でまだまだ至らず未完成なバンドサウンドなのは否めないだろう。

しかし、10代でこれだけ強力なサウンドと次に何が飛び出してくるか分からぬ怒濤の楽曲展開、そしてタイトでソリッドなプレイを自主制作のデモテープに残している時点で、やはり Dan Swanoは只者じゃなかったと、改めて感心させられますね。

後にデビュー・フルアルバム『EVER SINCE』'93 に再録収録(この時点でベーシストは不在でゲストのプレイ)される楽曲のオリジナル・ヴァージョンを収録している点や、本デモではフルートを効果的に使ってプログレ的なサウンドの彩りと艶やかさをバンドにもたらしていた Anders Marebyが以降はフルートをプレイしなくなり、代わってCelloをプレイ(何故かゲストでフルート奏者を招く…)するようになるという変化や、よりスタイリッシュなバンドサウンドへ変化し、Peter Edwinzonのテクニカルで情熱迸るHR的プレイは影を潜め、代わってセンスあるシャレオツでモダンなキーボードプレイや華やかな音色のシンセでサウンドの整合感を上げていくようになる変化が分かったり、一番の大きな違いは Dan Swanoのど派手で騒々しいドラムプレイが大人しくなってタイトさに重きを置いたシンプルなプレイへと変化した点(w)等の、軽めなサウンドなMELLOW RECORDSのアルバムとの差異を楽しめるのでファンは勿論、ポンプからシンフォへ向かう過渡期のHR風味あるハードシンフォ好きな方にもマストアイテムと言えるだろう。

後にさらにモダンさとポップでキャッチーさが上がって、テクニカルさを抑えて整合感と北欧ならではの透明感が増していく彼等のサウンドですが、その変化は英米問わずこの時期のメジャーへの展望を画策するポンプ系バンド全般に言える事なので苦言を呈する気も無いし、軽やかなポップ度が上がって聞きやすくなった方が個人的には好みなので大歓迎だったのですが、本作で聞ける北欧バンドらしいHR要素を含みつつ変拍子を巧みに活かした、爽快なコーラスとフックある歌メロが心地よい、パワフルな疾走感を備えたテクニカルな初期シンフォ・サウンドが、もしそのまま発展したのなら一体どういったユニークで面白いサウンドへ進化したのだろうか、とか、間違いなく後のプログレHMバンドの先駆となりえたのに…惜しい! などなどと、妄想せずにはおけません(*´ω` *)

しかし、気になるのはアルバムタイトルに“Resurrectio(復活)”って入っている事で、これはUNICORNとして再び活動してくれるって事なんですかね?

今までの再発は旧音源のCD化でしかなかったけれど、本作はちゃんと新たに再録しているパートもある訳だし、きっと Dan Swano的にも若き日に成功を夢見て活動していたバンドに愛着はあるでしょうから、是非このまま本格的に活動再開して欲しいものです。

因みに、ジャケットのデザインは4枚組BOXセット『A Recollection Of Worlds』'01 の目を惹く人物(メチャ、目立つww)をピックアップしてトリミングしたリデザインされたものとなっている。



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by malilion | 2018-12-06 12:12 | 音楽 | Trackback

英国ハードポンプの雄、TWELFTH NIGHTが久しぶりに新録音源をリリース!

c0072376_13291953.jpgTWELFTH NIGHT 「Sequences ~Limited Edition~」'18

パンク色の強いシアトリカルでユニークなヴォーカルとニューウェーヴとNWOBHMの影響大なハード・シンフォサウンドが特徴だった、同時期デビューのポンプ勢の多くがエミュレートしようと試みていた70年代プログレの巨人達のサウンドから最も離れた位置に存在する特異点であり80年代UKポンプ・ロックの代表的グループの一つ TWELFTH NIGHTの、1994年以来初めてとなるスタジオレコーディング作が久しぶりにリリースされたので即GET!

07年再結成前の05年に、出るわ出るわの蔵出しLIVE音源の嵐と、続くボートラ追加再発既発リマスター盤攻勢、そして再結成という流れに嬉しいは嬉しいけど、今は亡きカリスマフロントマン Geoff Mannを出汁にした集金目的がアリアリで些か引いていた古参ファンも多かった事(かく言う、私もデス)でしょうが、本作の制作メンツは再結成に合わせてのLIVEに都合良く呼ばれたり呼ばれなかったりな元メンバー Andy Sears(Vo)に代わって、LIVE盤『MMX』'10 にてギタリストとしてプレイしていた、かってネオプログレ・バンドLAHOSTのフロントマンであり、現在はサウンドエンジニア、プログラマー、アレンジャー、もこなす裏方作業メインでマルチパート・セッションミュージシャン Mark Spencer(Vocals、Rhythm Guitar、Keyboards)が7代目フロントマンに迎えられており、後はオリジナルメンバーの Brian Devoil(Dr)と Andy Revell(G)の三人のみがバンドメンバーで、残りはサポートの Andy Faulkner(B ex:WALKING ON ICE、ex:JUMP)、そして同郷シンフォ・バンドGALAHADの Dean Baker(Key)の五名での制作となっている。

『Sequences』は、約40年前に最初に演奏されたインストゥルメンタル・トラックで、『Live at the Target』'81 にも収録されているバンド初期レパートリーの重要曲であり、LIVEでは Geoff Mannが軍服に着替えて勇敢な兵士のパフォーマンスを行う、ギグのクライマックス曲として幾度も演奏されてきた Geoff Mannの印象がとみに強い彼等の代表曲の一つでありました。

殆どバンド結成当初から存在していたと言える『Sequences』ですが、デモテープにその歌声を残すのみなアメリカ人女性ヴォーカリスト Electra Mcleod嬢をはじめ、このバンドを通り過ぎていった幾人ものヴォーカリスト達がその時々に歌詞の断片を残してきたが一向に完成する事はなく、けれど Geoff Mannがフロントマンの座につくと、彼の妻の祖父 Jack Parhamの従軍経験を元にした、イギリスのイングランド、チェシャーの町ウォリントンの若い男が軍隊のボランティアを経て、地元の南ランカシャー連隊(1881年から1958年にかけて存在した英国軍歩兵連隊)の入隊にサインし、第一次世界大戦の戦場へ出奔、そして変わり果てて故郷へ戻ってくる、という兵士の苦悩や栄光を描いたドラマチックな歌詞と物語を書き上げて遂に楽曲が完成するものの、Geoff Mannがバンド脱退を決意した為スタジオ録音される機会を逃し、The Marqueeでの Geoffのお別れLIVEでのプレイが録音され、84年リリースのLIVEアルバム『Live and Let Live』にその一部(約17分の有名なヴァージョン)が収録されるのみとなっていた、バンドメンバーにとってもファンにとっても馴染み深い、曰く尽きの古い古い楽曲であります。

本作はそんな『Sequences』の、2018年ヴァージョン(23分を越えるヴォーカル入り)、インストゥルメンタル・ヴァージョン、主要3セクションから成る組曲ピアノ・ヴァージョンという、同一曲3バージョンを初めてスタジオ録音にて再録したEPで、たった一曲『Sequences』だけ収録した作品ながら、収録時間は計57分とアルバムに匹敵するヴォリュームとなっており、如何に彼等がこの曲を大事に思っているかが伝わってくる入魂の仕上がりだ。

注目の Mark Spencerのヴォーカルについては、歌詞を完成させた作者に敬意を現す為か、それともかってのLIVEプレイに即した歌メロをなぞると必然的に似るのか、はたまたバンドの方向性的にそう求められたのか定かではありませんが、恐らくかなり意識して Geoff Mannっぽいパンク風でシアトリカルな歌い方をしているものの、声質が全く違うので Geoff Mannのコピーというネガティヴな感情は全くわかず、普通に下から上まで幅広い音域を持ち、その上さらに器用にどんな楽器もこなすミドルレンジ主体な歌の上手いフロントマンがTWELFTH NIGHTに迎えられて良かったなぁ、という印象しか持ちませんでした。

Mark Spencerのエモーショナルなヴォーカルが大活躍する2018年ヴァージョンは、当時のアレンジやフィーリングに全く囚われぬ、独創的で響きが強く、鮮明で印象的な楽曲へ見事にリビルドされた、まさに今風な英国シンフォニック・ロックへと仕上げられており、ヴァイオリンをフィーチャーしたスケールの大きいオーケストレーションや分厚く雄々しい合唱隊のコーラスを駆使したド迫力のサウンドで、死臭漂う激しい戦場の情景描写や兵士の悲痛な心情の吐露を訴えかけ、これまで発表されてきた『Sequences』に馴染んでいる旧来のファンにこそ、特に新鮮な感覚と新たな息吹を予感させる事でしょう。

新たに録音されたインストゥルメンタル・ヴァージョンは、映画サントラよろしく銃声や雄たけび、隊列の足音、囁くような無線の声、遠くで唸るように鳴る空襲警報、吹き荒ぶ風の音、高まる鼓動、雨音と雷鳴、そして兵士の叫び等の効果音や、悲壮な戦場を思わせるダークで重厚なコーラスなどが追加されており、『Live at the Target』'81 に収録された楽曲からさらに拡張したセクションが耳を惹き、いくつかのパートやフレーズは明らかにこれまで発表さて来たアレンジより素晴らしく、爪弾かれる哀愁漂うアコースティック・ギターをはじめ、不穏なシンセパートや荘厳なオーケストレーションを奏でるキーボードプレイの全てが、ほろ苦く感傷的なメロディで訴えかけ、セピアカラーのインナーの写真が思い起こさせるノスタルジックで歪な第一次世界大戦の兵士の苦悩や栄光、そして戦場という狂気の世界を圧巻のスケールで描き出していく。

Dean Bakerの華やかで繊細、そして物憂げで悲壮感漂うピアノが大活躍する主要3セクションから成る組曲ピアノ・ヴァージョンは、インストゥルメンタル・ヴァージョンをベースに、よりコンパクトでピアノ独奏曲風なタッチを加えたアレンジが楽曲に成されており、全てヴォーカルレスな楽曲だが、最初の希望あふれる軽やかな雰囲気から一転、汽車の音のSEが挿入され、兵士が故郷へ戻ってきた、けれど以前とは違う状況なのをピアノが同じ主旋律を弱々しく呟くように気怠げに響かせる事で暗示させる、エピローグ的な扱いの楽曲となっている。

なお、真っ赤なヒナゲシが美しく咲き乱れる草原を、亡霊のようなモノクロの兵士達(第一次大戦当時の兵士達の姿)が背を向けて進むジャケが実に印象的な本作は、1918年11月11日の停戦協定をもって終決した第一次世界大戦の終戦100周年を記念してリリースされており、本作の売り上げは、ロイヤル・ブリティッシュ・レギオン(英国軍の退役軍人の生涯サポートを提供する慈善団体)へ全て寄付される模様だ。

因みに、CD盤面には赤いヒナゲシの花輪(追悼の意と新たな人生の開始を表わしている)が印刷されており、CDを取り外すと、19世紀の英国詩人 Laurence Binyonの代表的な作品『Fall the Foren』から抜粋した“思い出の抒情詩”の、戦争のあらゆる犠牲者への賛辞を述べた有名な一節がサークル状に印刷されており、その中心には押し花の赤いヒナゲシが印刷されているのが目に飛び込んでくる仕掛けが施されており、この赤いヒナゲシ(scarlet corn poppy)は欧州では戦死者追悼の象徴で、対ナポレオン戦争で荒廃した欧州各国の戦場では、戦死者の遺体の周囲に赤いヒナゲシが生え、荒れた土地がヒナゲシの野原に変貌した事に由来している。

ニューメンバーを迎えたTWELFTH NIGHTの新録音源リリースが今回の終戦100周年記念の為だけのものなのか、それとも今後さらにメンツを補充、もしくは旧メンバーを呼び戻して(オリジナルベーシストで再結成にも参加してた Clive Mittenにも本作に参加して欲しかった…)再び精力的な活動を再開させるのか不明ではありますが、本作の極上の仕上がりを聞くに、まだまだ彼等は第一線で活躍出来るポテンシャルを持っているバンドなのは明らかなので、旧譜再発やLIVE音源メインのリリースをここらで一端休止させて、本格的に新しい楽曲を満たした新譜を届けて欲しいものであります。




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by malilion | 2018-11-24 13:24 | 音楽 | Trackback

東欧ポーランドのKING CRIMSONこと、LIZARDが新譜をリリース!

c0072376_13080535.jpgLIZARD 「Half-Live」'18

後期CRIMSONからの影響大な硬派サウンドを経て、東欧特有のモダン・ダークネス風味を加味したメタリックなシンフォHRサウンドを前作で披露したツインギター&キーボード入り5人組の彼等だが、2年ぶりとなる本作7thではヴァイオリンをフィーチャーした正に“ポーランドのCRIMSON”を地で行く、モダンでメロディアスなダーク・シンフォ・サウンドを披露している。

常にバンドメンツが流動的であった彼等だが、なんと本作はバンド結成25周年を記念した前作と同一メンツでの制作だ。

そんなバンド状態の安定が呼び水となったのか、これまでもアルバム全てを使った複数小曲より成る一大組曲や数曲の大曲のみで構成された実にプログレ・バンドらしいアルバムをリリースして来た彼等だが、本作に置いては遂に43分超えな一大曲、アルバムにたった1曲(CDではトラックが区切られてはいる)のみ収録の作品となっており、前作で多数招かれたゲストプレイヤー陣の名は無く、唯一美貌のJAZZ系ヴァイオリニスト Dominika Rusinowska嬢のみが招かれ(17年リリースの先行シングル『Single Omen』では元メンバーのヴァイオリニスト Krzysztof Maciejowskiがプレイしていたが本作には不参加。なので一部音源を Dominika嬢の演奏に差し替えている?)プレイしている他は、バンドが一丸となってクリエイティビティを高め、プログレ・バンドらしく持てるテクニックと発想力の全てを出し切って挑んだ、意欲的な野心作と言えよう。

しっとりたおやかなピアノの調べに導かれ、透き通るようなヴァイオリンの美旋律が柔らかに重なり合う導入から、一転して緊張感高まるJAZZロック張りのテクニカルなサウンドへ雪崩れ込む様は、前作と趣は違えど同一な作風に思え、けれどそこからウネる野太い邪悪なベースと妖しげなメロディを刻む冷ややかなシンセ、さらに暴れ回る手数の多くタイトなドラムスが不協和音を思わせる不気味なヴァイオリンやノイジーなギターの音色と絡みあって予想外の怒濤の展開を見せ、そんなサウンドの上にデジタル処理されたシアトリカルなヴォーカルのシャウトと語りが波状攻撃で突き刺さり、これまでに培ってきた東欧風モダン・ダークネス・サウンドと『Red』期KING CRIMSON張りなヘヴィで硬質なサウンドを、時に艶やかに、時に妖しく、その弦を震わせ旋律を奏でるヴァイオリン主導でスリリングに交差させながらストーリーを語る様は、正に“21世紀風にアップデートされたKING CRIMSON”と呼べる圧巻のサウンドだ。

これまでにも幾度か方向性が変化し、一時期などは鈍色モダン・ダークネスで塗りつぶされた陰鬱サウンドを披露して辟易させられたが、ソリッドな演奏とメロディアスな叙情性が抜群のアレンジで溶け合う東欧らしい構築美あるサウンドを、艶やかなヴァイオリン入りで奏でる彼等の“スタンダード”とも言える本作のような作風は大好きなので、アルバム一枚で一曲という如何にもプログレな作風で長尺曲なものの、万華鏡のように刻一刻と変化するサウンドを文句無しに楽しめ大満足です(*´ω` *)

某輸入盤店の“もし『Red』に Eddie Jobsonが参加していたなら、と想像させるようなサウンド”という宣伝文句が言い得て妙な、東欧ならではのエキゾチックさも漂わすファンタジー・サウンドとダークでモダンなシンフォ・サウンドをタップリ詰め込んだ、他のユーロ圏バンド達とハッキリ毛色の違う独特な魅力溢れる一品で、それに加えて以前の清涼感も合わせ持ったエキセントリックで奇妙な歌メロをもう一歩モダン化させた、オペラチックな歌い上げや、囁くような語り、そしてパワフルなシャウトと、正に七変化の活躍を見せるリーダー Damian Bydlinskiの歌声とテクニカルなギタープレイが、さらに本作を特異な存在にしているように思う。

まぁ、デジパック内に『ハードで難解、そして不快な音楽』『人々に今、自分で考えさせる』とか明記してるだけあって複雑怪奇な物語をコネくり回しているのは自身も理解しているのでしょうが、それでも今の本家KING CRIMSONのように、プログレとどこか違う地平へ旅立ってしまっていないし、あくまでヴォーカルメインな作風(リーダーがフロントマンだし、ネ)な彼等のサウンドの方がとっつき易いし、聞いていて心地よい(やっぱ、ヴァイオリンの活躍がデカイよなぁ~)と言えるのではないでしょうか?(汗

所謂、一般的に言う“シンフォ・サウンド”ではないけれど、ハードにメロゥにダークな叙情を発散させつつ、緊張感を高めるノイジーなツイン・ギターが縦横無尽に交錯し、CRIMSON張りに硬質で技巧あふれるクールなポリ・リズムを刻むリズム隊と、冷ややかでエキゾチックなファンタジー・サウンドを刻むキーボードの音色が重厚でダークネスな楽曲の裡で不規則に煌めいて輝きを一層に増し、それらが渾然一体となって生み出す華麗な東欧風モダン・シンフォサウンドを、艶やかに舞うヴァイオリンの美旋律が仄かな甘味と繊細な感触で薄っすら包み込んで、なんとも言えぬ不思議な感覚を呼び覚ますアルバムで、ユーロ圏のプログレやシンフォ・サウンドにマンネリを感じているダイハードなプログレ者な諸兄や、辺境サウンド好きな方に是非にお薦めしたい一作だ。

緻密に計算され描かれた物語に思える本作だが、注意深く耳を傾けると、前作『Troche Zolci Troche Wiecej Bieli』'16 のフレーズが楽曲に織り込まれていたりと、意外に彼等の遊び心が窺えたりするのも実に興味深い。

YESのジャケでお馴染みな Roger Deanっぽいイラストにニヤリとさせられる、SFチックな物語を思わせるデザインのジャケットに包まれた3面開きデジパックな本作、何時もの如く東欧盤はプレス数少なめでしょうからご興味ある方は早めに入手しましょう。




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by malilion | 2018-11-23 12:59 | 音楽 | Trackback

英国産プログレ・ポップバンドIT BITESの未発LIVE音源BOXがリリース!

c0072376_14013619.jpgIT BITES 「Live In London ~Deluxe 5CD BOX~」'18

英国産プログレ・ポップバンドの1st~3rd期にあたる、1986年、1988年、1990年のロンドンでの3公演を収録した、彼等の全盛期の様子を伝える初出LIVE音源が5枚組BOXセットにて自主盤(500セット限定!)ながらオフィシャルリリースされたので、遅ればせながらGET!

まぁ、音源自体は今はDLで労せず入手可能ですが、やはりプログレ好き者としては現物を入手せねばネ!('(゚∀゚∩

◆◆◆ 閑話休題 ◆◆◆

その昔、80年代の中頃にそのバンドは英国の4人の若きミュージシャン達によって結成され、シーンに姿を現した。

70年代に英国を中心に開花し全世界で全盛を誇ったプログレシヴ・ロックの勢いは、けれどニューウェーブとパンクの荒波によって瞬く前に消え失せ、メジャーレーベルはプログレを過去の遺物として見捨て、数々のビッグバンド達が姿を消していった後の事だ。

プログレは時代遅れ、と嘲られるテクニカル・ロック不毛の時代、それでもプログレ・ファンはまだ全世界に存在していて、大衆やメディアは『紛い物(ポンプ)のサウンド』と揶揄したが、80年代初期から短期間だけ勃興したネオ・プログレッシヴロック・ブームに乗って、インディ・シーンから次々現れるYESフォロワーやGENESISフォロワー達が奏でる古式ゆかしいサウンドに彼等は心慰められておりました。

何故なら、往年のプログレ・バンド群が80年代に入って再始動し新作を発表したものの、サウンドをガラリとポップに変えて蘇りビッグヒットを掌中にしたYES、強かにサウンドを変えたPINKF LOYD、メンバーをチェンジしHMへ接近したEL&P、別バンドへ変わり果てていたKING CRIMSON、なんの迷いも無くポップロックを披露しヒットチャートを賑わすGENESIS等々、かってのプログレ・ファンを熱狂させたサウンドは最早そこに無かったからです。

そんな最中、メジャーレーベルと契約し颯爽と登場したこの風変わりな名前の英国バンドは、プログレ・ファンがシーン復興を信じるに足る、耳を惹きつけ離さぬ楽曲の数々や素晴らしい演奏技術は、来たるべきプログレサウンドの未来を予感させる期待の新鋭でありました。

もっとも彼等の奏でるサウンドは、どこか根暗で、やたら長尺な演奏をひけらかす難解な、所謂古き良きロック・クラシックなプログレ・サウンドではなく、モダンでコンパクトが持て囃される華やかな80年代という時代にマッチし、ニューウェーブやUKポップスといった当時のメジャーシーンを賑わすメインストリームサウンドを十分に意識した、独特なポップセンスと高度なテクニックに裏打ちされたプログレ感覚とヒネリの効いたアレンジや曲展開で聴衆を魅了する、若者らしいフレッシュでモダンなセンスが活きる明るく軽やかなロックサウンドが身上の、全く過去に囚われぬ『新世代のプログレ』を提示していたのですが━━

本BOXは、Francis Dunnery(Vo&G)、John Beck(Key)、Dick Nolan(B)、Bob Dalton(Ds)のオリジナルメンバーによる、MARQUEE、ASTORIA、HAMMERSMITH ODEONのロンドンで行われた3つのギグの様子を約4時間タップリと収録した、紙ジャケ5枚組からなる貴重なLIVE音源だ。

既発アルバム3枚に加え、この時点で未発売で結局完成に至らなかったオリジナルメンバーによる4thの為に用意されていた楽曲(後に Francis Dunneryのソロに収録されたり)を、3曲収録している点はファンならずとも見逃せないだろう。

マネージメントはASIA、元YESの敏腕マネージャーとして知られる Brian Laneが行い、当初は『第2のASIA』としての売り込みが考えられていただけあって、スタジオ盤ではキャッチーでポップなサウンドで、コンパクトな楽曲を演奏していた印象が強い彼等だが、本作以外にも複数リリースされているLIVEアルバムを耳にした諸兄ならご存じの通り、LIVEではよりハードなタッチのロックサウンドを押し出したLIVEならではのラフさも魅力なスリリングでダイナミックな演奏を聞かせ、同時代のHRバンドに負けず劣らずの勢いと、プログレファンを魅了したコーラス、プレイ、全てが渾然一体となった一糸乱れぬアンサンブルで聴衆を掌握していた、当時の空気感と会場の熱気が伝わってくる良盤だ。

LIVE LIST

CD1:The Marquee:21st July 1986
CD2:The Astoria:13th May 1988 - Part 1
CD3:The Astoria:13th May 1988 - Part 2
CD4:The Hammersmith Odeon:7th April 1990 - Part 1
CD5:The Hammersmith Odeon:7th April 1990 - Part 2

また、90年4月の音源は Francis Dunnery脱退前の最後のUKミニツアー(4th制作の為ロサンジェルスでレコーディングに入るが、音楽性の相違から脱退するのは7月)からとなっている。

03年発掘LIVE盤『LIVE IN MONTREUX』にボーナス収録された『Once Around The World』を除き音源は全て初出となっており、マスターはメンバーの Bob Dalton監修に加え、当時バンドのLIVE Mixerを担当していた Tom Oliverの手による、自身所有のマスター・テープを元にしたリマスタリング音源を使用と最上音質(時代柄プチパチなノイズは聞こえるけど)なクオリティに加え、カラー12ページのブックレット封入と自主制作故の貧弱な装丁なんて事は無いので、Bootで同じ会場の音源を既に入手済み、というハードコアなファンにもお薦めな一品と言えよう。

ファーストアルバムからして既に新人離れした完成度と、ポップでコンパクトなモダンサウンドのその裡に、シーンから失われて久しいブリティッシュ・ロック感覚がしっかりと息づくハイクオリティなアルバムを引っさげてデビューした彼等が、82年結成90年解散と10年にも満たぬ短い活動期間ながら3枚の素晴らしいプログレシヴ・ロック・アルバムを“あのプログレ冬の時代”にメジャーシーンに遺してくれたのを本当に本当に感謝したい(*´ω` *)




結局シーンは蘇ることなく、無数に現れたインディバンド達は軒並み自主制作というアンダーグラウンドな活動へ移行し、サウンドの方もポンプからシンフォへと移り変わっていく事になるのだが…orz

バンドは06年に Francis Dunneryに代わって John Mitchellをフロントマンに据えて再結成し、今も活動を続けている。

もっとも、15年に John Beckが事故で右手と右腕を骨折して以来、活動休止中なのが残念だけど……

再び素晴らしい新作をひっさげて彼等がシーンへ戻ってくるのを期待したい。




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by malilion | 2018-11-17 13:53 | 音楽 | Trackback

USプログバンドGLASS HAMMERが、新基軸サウンドを引っさげて新譜をリリース!

c0072376_20191280.jpgGLASS HAMMER 「Chronomonaut」'18

現YESのヴォーカリスト、Jon Davisonが在籍していた元バンド、としてインディながら世界中から注目を受ける事となったUSシンフォ・バンド6人組が、25周年レアトラックス集アルバム、LIVE作を挟んで、スタジオ作としては前作『Valkyrie』'16 以来2年ぶりとなる17thをリリースしたので、ちょい遅れてGET。

前作が散々な出来だっただけに、本作に手を出すのは少々及び腰でありましたが、事前情報で彼等の作品の中でも、最も技巧的でキーボード・オリエンティドな作風とインディ・プログバンド丸出しなバランス無視のフォロワー感剥き出しで弾き倒し展開(この当時はオリジナリティは薄かったけど勢いハンパなかったなぁ…)を見せた初期の代表作4th『Chronometree』'00 の続編的コンセプト・アルバムとの事で、意を決して購入してみました。

デビュー以来メンバーの出入りが激しい彼等だが、本作制作メンツは Steve Babb(Bass、Keyboards、Lead & Backing Vocals)と Fred Schendel(Keyboards、Guitars、Backing Vocals)のバンド創設メンツはいつもの如く在籍し、14年『Ode To Echo』から加入した Aaron Raulston(Drums)と Susie Bogdanowicz(Lead vocals)も顔を揃えて本作にも引き続き参加しており、ここ数年のコアメンバーとしての地位を固めつつあるようだ。

で、現YESのヴォーカリスト Jon Davisonと長らく参加していたSALEM HILLの Carl Grovesに代わって本作から参加の男性ヴォーカル二人は、同郷USプログ・バンドで以前からバンドと交流があり、17年に新譜をリリースしたばかりなDISCIPLINEのリーダー Matthew Parmenter(Lead Vocals)とPatton Locke(Lead Vocals)なる新人ヴォーカリストによる男女3人のヴォーカリスト体制が構成されており、Matthew ParmenterはDISCIPLINEでキーボードやヴァイオリンをはじめ多種多様な楽器もプレイするマルチプレイヤーなのだが、本作に置いてはあくまでヴォーカリストという立ち位置で参加している模様だ。

まぁ、LIVEでは楽器をプレイするかもしれないが、本隊バンドDISCIPLINEとの兼ね合いもあるし、アルバムでのプレイは Steve Babbと Fred Schendelに任せているのだろう。

そして、長らくギタリストであった Alan Shikohの名は無く、本作にはパーマネントなギタリストは在籍せず、ゲスト・ギタリストがそれぞれの楽曲でプレイしているなどバンドメンツが常から流動的な彼等だが、その彼等がこれだけ拘ってヴォーカリストを3人揃え続けると言う事は、トリプル・ヴォーカルはGLASS HAMMERの定番バンド・フォーマットであり、オリジナリティある編成と Steve Babbと Fred Schendelが考えていると見て間違いない。

今となってはゴス系のみならず、ロックオペラ系のプロジェクトをはじめメロデス・バンドでさえ男女3人ヴォーカルな構成が多々見られるので、ズバ抜けて個性的な編成とも言えないのだが、確かにプログレ系に限っては3人もフロントマンがいるバンドは少ないでしょうね…なにせ、元からヴォーカルの活躍する場が少ない音楽形態だし…(汗

さて、本作の内容についてだが、00年リリースのSFチックで冗談めいたコンセプト作『Chronometree』の続編作らしく、エイリアンとコンタクトしていた若いプログレ・ファンだったトムが大人になった想定で、自身が率いるプログレ・バンドThe Elf Kingでの1980年代の成功に苦しみ、70年代のプログレ黄金期へ戻り、そして姿を消す…という、70年代のプログレシッヴ・ロックをリスペクトしつつ織り成す『究極のプログレ・ファン』のファンタジックな物語が綴られたコンセプト作だ。

続編と言っても『Chronometree』は殆どキーボードメインのインスト作のような造りで、ヴォーカルは完全に脇役だったのでアルバムを聴く前からアルバム構成や印象は全く違っているだろうと予想していたが、予想通り男女三声の分厚いヴォーカルをメインに、バンド初となるトランペットやトロンボーンなどホーン・セクション、リード管楽器を大々的にフィーチャーした『なんか初期CHICAGOっぽくね!?』という分厚いサウンドがある意味で新鮮な音像で、従来作と比べると大幅に控え目になったオーケストレーション、そして派手目なブラス・パート、そこへブルース、プログレッシヴロック、デジタルサウンド、アンビエント等の多様な音楽要素を組み合わせ、YESを筆頭に、GENESIS、VDGG、KING CRIMSON、PINK FLOYD、GENTLE GIANT、TANGERINE DREAM等の70年代プログレッシヴ・ロックバンドへのトリビュートを感じさせる、壮大で重厚、旋律的で叙情的な“これぞプログレ”と言わんばかりに複雑なアレンジと構成から成る楽曲が詰め込まれた野心的な冒険心剥き出しの意欲的アルバムとなっている。

『Chronometree』の続編作ながら、時間的間隔も開いたし、バンド自体もその間に進化したり、今やメンツも方向性も全く違っているので当然ながら、GLASS HAMMERお得意のYES+EL&Pというような派手でスピーデイ、そして畳みかける疾走感ある、如何にもUSAプログレと言わんばかりなパワー・サウンドを叩きつける豪快な勢いは最早どこにも感じられず、幾分マッタリ気味なテンポとサウンドが、初期作に比べ本当に聞き易くなったモダンなアレンジを施された、70年代プログレッシヴ・ロックバンド群を思わすサウンド(プログレ・ファンならニヤリとしちゃう)ピースを組み込んだ楽曲が、シットリと、そして艶やかに展開していく。

注意深く耳を傾けると実際はかなりのキーボードパートが聞こえるのだが、ちょっと聞きでは今までで一番キーボードの活躍する場面が少ないように聞こえ、本作はGLASS HAMMER始まって以来となる非常に独特な作風のアルバムと言えるだろう。

前作のとっ散らかった纏まりない作風を思えば、本作は余程マシで良い出来なアルバムと言えるけれども、GLASS HAMMERファンが期待していたUSAプログ作かと言うと、ちょっと疑問は残りますね……なんかJAZZロックっぽく聞こえるんで、そこをどう捉えるかで評価が別れるかも…

また Susie Bogdanowicz嬢の可憐な歌声、そして注目の Matthew Parmenterのリード・ヴォーカルパート全てに言えるのだが、やはり歌メロのアレンジや質はイマサンな上に、 折角の三声ヴォーカルの分厚いハーモニーのハモり具合も今一つというガッカリな仕上がりにゲンナリな気持ちを隠せず、 Steve Babbと Fred Schendel両氏は余程ヴォーカルパートに馴染みがないのか、フックある耳に残る歌メロを考えられないのか、バックのサウンドの質が上がってモダンなアレンジのポピュラー音楽に近い音像へ接近すればする程に、大きなマイナスポイント(USプログレハード・バンドはコーラス綺麗で上手いバンド昔から多いので余計に…)として浮き上がってアルバムの完成度を著しく貶めているので、今後よりメジャーな展開をバンドは目指しているのだろうし、そうであるならば早急にその点は改善すべきだろう。

複数ゲスト参加しているギタリストの中でも注目なのは、カナダのRUSHフォロワーなプログHMバンドTILESの中心人物で、DISCIPLINEへは17年作から参加した Chris Herinが2曲でその見事なプレイを披露しており、間違いなくバンドメイトの Matthew Parmenterの紹介によるものだろう。


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by malilion | 2018-11-14 20:11 | 音楽 | Trackback

北欧のSKID ROWなDAYNAZTYが、一気にモダン・デジタリー・ポップサウンドへ急接近な新譜をリリース!

c0072376_18090751.jpgDAYNAZTY 「Firesign」'18

北欧スウェーデン産ツインギターの5人組ツインギターHMバンドが約2年半ぶりに6thをリリースしたので、おっかなビックリしつつ即GET!

北欧のSKID ROWとでも言うような、LAメタル的華やかなアメリカンHMと北欧HM要素をMIXしたキャッチーでメロディアスなサウンドが身上の音楽性でデビューした彼等だったが、前々作で昨今の新人バンドが陥り易いモダン・ダークネス病とでも言うような鈍色USサウンドへ急接近し、持ち前の華やかだったサウンドをスポイルさせガッカリさせ、前作でいくぶん初期風なメロディアスさが戻って安心させてくれ、続く本作でどういった変化が見えるのかと興味津々だった訳ですが、今度はヘヴィな方向と真逆な方向へ進んだ模様でこれには少々驚かれました。

より北欧HM的な爽快感あるサウンド要素が強まり、さらに一時期ザクザクした疾走するソリッドでメタリックなギターリフがモダンヘヴィネスを強力に主張するサウンドへ傾倒していたにも関わらず、本作では一気にベーシスト Jonathan Olssonが奏でるキーボードサウンドの比重がググッと増え、華やかさが増すのと同時にサウンドが全体的に軽やかになって、メロハー的サウンドと言うよりもさらにポピュラリティが高い普遍的ロックサウンドへ接近するとは完全に予想外。

この方向性の急激な変化は、恐らくフロントマンの Nils Molinが17年に同郷のメロディック・デスメタル・バンド、男女3人のスクリーム・ヴォーカリスト、クリーン・ヴォーカリストを擁するモダンなエレクトロコア・スタイルが特徴的なAMARANTHEへ電撃加入した事が大きく影響しただろう事は想像に難くありません。

DAYNAZTYでは刺身のツマ状態だったキーボードのみならず、他にもSEや電子楽器やコンピューター処理したサウンドを積極的にバンドサウンドに取り込んでいるAMARANTHEでの活動を経験し、そしてDAYNAZTYより知名度がありHMファンから支持されているのを間近で見て、それらの要素をDAYNAZTYへ Nils Molinが逆に持ち込み、DAYNAZTYをよりメジャーな存在へ近づけんと画策したのは間違いないだろうし、それに加えて14年リリースの4thアルバム『Renatus』より加入した Jonathan Olssonがバンドに馴染んで作曲への貢献度が上がったか、発言力が増したかでキーボードサウンド増加へ繋がった(クレジットを見る限り、Jonathan Olsson主導の作曲ではないけど…)一因、という事もあるのかも?

ともかく昔から北欧HMはキラキラしたキーボードをフィーチャーしたサウンドが大の得意なバンドが多かったわけだし、DAYNAZTYの面々も恐らくそうした身近なサウンドを耳にして育ちミュージシャンになった訳だろうから、本作のようにキーボードがフィーチャーされた北欧HM的テイストが多々感じられるサウンドへ接近してもなんら不思議もなく、元々華やかなLAメタル的なサウンドをバンドサウンドの基軸にしていた彼等のサウンドにマッチするのも当然と言えば当然なのだろう。

さらにAMARANTHEでの活動の影響なのか、今まであまり聴かれなかったミステリアスでファンタジックな感触の歌メロや楽曲メロディ、ゴス系なダークで分厚いコーラスを多用するなど新要素の数々が本作で垣間見え、思いの外に Nils Molinは色々なモノをDAYNAZTYへ持ち込んできたのだなぁ、という印象が楽曲の端々で感じられました。

本作に至っては、初期のSKID ROW的なアメリカンHM的感触は薄れ、元々ユーロ圏のバンドなので当然だが、よりウェットでメロディアスなサウンドへバンドサウンドが傾倒しているのがハッキリ分かる楽曲で本作は構成されていて、そうなると必然的に派手でトリッキーなリフやテクを見せつけていた Love Magnussonと Mikael Laverの奏でるアメリカン寄りなソリッドなギタープレイも、より北欧HM的でメロディアスなフィーリングに特化し、さらにデジタリーでモダンなキーボード・サウンドにもマッチした、流暢な早弾きや憂いを湛えた泣きのフレージングなんぞも顔をだす美旋律プレイとサウンドへ変化し、北欧HM大好物な自分的には嬉しい変化ではありますが、初期のカラっとしたサウンドとザクザクギターを刻んで弾けんばかりに突っ走る80年代風アメリカンHMテイストを好んでいたファンにはちょっとガッカリな方向への進化と言えるかもしれない。

現代的モダンサウンドの感触が強まっている本作のサウンドは、所謂マイナー臭が強く繊細で美旋律の質は高いけれどパワーとモダン性が著しく劣る日本で根強い人気を誇る80年代風北欧HM的な感触は薄く、先に述べたようによりポピュラリティの高い普遍的なロックサウンドに近づいていて、特にデジタリーなキーボードサウンドが好みでないメタルヘッドな諸兄には、キーボード主導による売れ線的なアプローチの所々が気に触るだろう事は簡単に予想でき、より幅広いリスナーをファンに獲得出来る代わりにダイハードなメタルファンからの支持を失う危険性の高いリスクある勝負作で挑んできた、短期間でかなりサウンドの幅を拡げ貪欲に多種多用な音楽性を恐れることなく取り込んで自らの血肉にし続ける北欧期待の新鋭である彼等が、次作で一体どういう方向へ発展するのか今から目が離せません。

なんだかんだで同時期にデビューした同じ新人バンド達とは一味違う、バッドボーイズ系でも80年代アメリカンHMリバイバラーでもない独自の道を模索し、唯一無二のサウンドを確立しつつあるような彼等の、この先の活動に期待大なのであります(*´ω` *)

しかし、最近は複数のバンドをフロントマンが掛け持ちするのが当たり前になったりしてて驚かされますねぇ…ヴォーカリストって言ったら、バンドの顔とも言える存在なのに、どちらもインディ・レーベル所属ながらメジャー・シーンで精力的に活動するバンドを掛け持ちとは…時代が変わったんですねぇ…(シミジミ

と言うか、同時期にAMARANTHEも新譜をリリースとか、DAYNAZTYの活動との兼ね合いはどうするつもりなんだろうか?(汗

体力的にもかなりタフな状況(AMARANTHEのヴォーカルは分担だから負担は軽い、と踏んだのかも?)になるでしょうし、Nils Molin脱退なんていう最悪の事態が起こらなければいいんですけど…




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by malilion | 2018-11-12 18:02 | 音楽 | Trackback

往年の名曲に迫る良曲満載な新譜を英国HR老舗バンドURIAH HEEPが新譜リリース!

c0072376_12492218.jpgURIAH HEEP 「Living The Dream」'18

LED ZEPPELIN、BLACK SABBATH、DEEP PURPLEと並び称される70年代英国クラシックロックのアイコンが、14年の『Outsider』以来4年ぶり通算25作目となる新譜をリリースしたのを、ちょい遅れてGET!

もはや説明不要なブリティッシュHRのパイオニア、リーダーにして唯一のオリジナルメンバー Mick Box(G:なんと71歳!)率いるURIAH HEEPは、来年19年には結成50周年を迎える、正にブリティッシュHRの生き字引と言っても過言ではない存在だ。

70年代に全盛期だった同期のバンド達が解散を迎えたり、活動を停滞させたり、当初の路線とは別方向へ進んで別バンド化してしまったりしている中、80年代初期に短期間だけ彼等も活動休止状態であったが、それ以降は絶えず世界中を巡って幅広い年齢層のファンの前で変わらぬ癖の強い独特なヘヴィサウンドを披露し続けている、未だ現役バリバリのHRバンドなのが実に素晴らしい('(゚∀゚∩

計らずも前作でリズム隊が若返る事になり、以前にも増してパワフルでソリッド、そしてフレッシュにリビルドされたHRサウンドを披露した訳だが、本作では THE WINERY DOGS、STONE SOUR、ANTHRAX、STEEL PANTHER、Paul Gilbert、そしてEUROPE等の話題のバンドを近年手がけている著名なカナダ人エンジニア Jay Rustonをミックス&プロデューサーに迎え、アルバムリリースに先駆け公開されたリーダートラック"Grazed By Heaven"は、前作から新加入したベーシスト Dave Rimmerと TALISMANやW.E.T.、そして Yngwie J,Malmsteen等の仕事でメロハー・ファンにお馴染みな Jeff Scott Sotoとのコラボレーションによる新曲(Dave Rimmerの曲、これ1曲なのが悲しい…)で、それらの情報だけでもアルバムの音を耳にする前からいつになく"攻め"な印象で期待させてくれたが、本作の素晴らしいサウンドを耳にした方ならばその期待は決して裏切られなかったと分かってもらえるだろう。

過去50年間、バンドは幾度となくメンバーを変えて新しい血を導入し、さまざまな流行の波と時代の変化を乗り越え、決して順風満帆と言えぬ活動歴の中で幾度となくサウンドのカラーや方向性を微修正しつつ強かに生き残って来た彼等の楽曲に、ワウ・ペダルを使った Mick Boxのメロディアスで粘っこい独特なギターと重厚なサウンドを刻みまくる Ken Hensleyのワイルドなハモンド・オルガン、そこへ絡む裏声の分厚いバッキング・コーラスという、70年代に確立した唯一無二のHEEPサウンドは未だにバッチリとトレードマークとして息づき、一聴しただけでURIAH HEEPと分かる典型的な特性として、昨今デビューした新人バンドのモダンでスピィーディーでテクニカルなHRサウンドを寄せ付けぬ孤高を保っているのが実に頼もしいのです(*´ω` *)

ブリティッシュHR黎明期に生み出された70年代クラシック・トラックが素晴らしければ素晴らしい程に懐メロ・バンドに成り下がるリスクが高まるのがベテランバンドの避けられぬ性ですが、往年の名曲と比べても遜色ないスリリングでキャッチーな新曲と、LIVEに継ぐLIVEで鍛え磨き上げられたタイトでソリッドな演奏能力と“今”を感じさせるベテラン英国バンドらしい気品あるモダン・サウンド、さらにリズム隊が若返って手に入れたパワフルさを十二分に活かした疾走感が前作以上に全曲に渡って漲っており、いつの間にやら歴代最長となり名実共にHEEPの"顔"と成った現ヴォーカリスト Bernie Shawの衰える事ない伸びやか且つパワフルな歌声もフレッシュ感あふれるサウンドの中で一層に輝きを増して実に素晴らしく、そんな懐メロ・バンド定説がHEEPに通用せぬのは前作を上回る傑作HRアルバムな本作を聴いた誰もが納得するに違い無い。

全編に渡って往年の名曲の雰囲気を持ったヴィンテージ感がありつつモダンなヘヴィ・サウンドとトレードマークの重厚なコーラスがフィーチャーされ、今まで以上に"HEEPらしいHEEPサウンド"なのに新しい感触を伴った極上の品質に仕上げれているのは、Mick Box曰く『HEEPに新鮮なアプローチをもたらした』と絶賛される Jay Rustonのプロデュース能力と手腕なのは間違いないだろう。

また、新人メンバーを迎えた事で『HEEPサウンドというものはこういう特徴だ』という客観的な視点を得て、そのインプットを受け入れた楽曲創作を経た事で、旧来のメンバーの意識から薄れがちな感覚をより強くHEEPサウンドへと向けさせた結果の、本作における往年の70年代を強く意識した、初期のプログレッシヴ・ロックのテイストも貪欲に取り入れていた頃の幻想的で、そしてフォーク・アコースティックな雰囲気もあるエレガントさも漂う、強烈で濃厚なブリティッシュ・ヘヴィサウンドではないだろうか?

HEEPファンなら当然迷わず即買い、70年代HRファンも勿論見逃せぬ一作であり、メロディアス・ロック好きな方も必ずチェックせねば後悔する注目作でありますので騙されたと思って宜しく御購入下さい。

なお、本作はCD(日本先行発売は紙ジャケ・ヴァージョンでボーナストラックは2曲追加)以外の発売形態で、CD+DVD・ヴァージョン、Deluxe Edition(ボーナストラック1曲追加のCD、DVD、LP)、Limited Box Set Edition(Deluxe Edition+オリジナルTシャツ)、スタンダード・ブラックワックス(アナログLP)盤、米国独占販売のブルー・ワックス盤、Frontiers EU Shop販売版のクリスタル・ワックス盤など数種リリースされる予定となっており、各種のフォーマットのみの音源が挿入されているのかは現時点で不明でありまして、正にコレクターズ泣かせな一品であります(つд`)


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by malilion | 2018-11-10 12:41 | 音楽 | Trackback

USポップメタルDANGER DANGERの Ted Poleyと北欧ハイブリッドHRバンドDEGREEDがドッキングして新バンドMODERN ART作をリリース!

c0072376_18085364.jpgMODERN ART featuring TED POLEY 「Same」'18

DANGER DANGERへ04年に出戻ったフロントマンの Ted Poleyが、北欧スウェーデン新世代ハイブリッドHRバンドDEGREEDと組んだ新プロジェクト・バンドによるデビュー作がリリースされたので即GET!

そもそもが Ted Poleyがソロアルバムを制作しようとした所が本作の出発点(アルバムジャケが全てを物語ってる)なので、本来ならDEGREEDのメンツはソロアルバム制作時のバックバンドという地味な裏方的扱いであるべきなのだが、DEGREEDの創作貢献に対する敬意とそのミュージシャンシップや演奏スキルに惚れ込んだ Ted Poleyが本作をバンド作として捉え、改めて対外的にアナウンスした結果の新バンドとしてのタイトルと言う事だ。

DANGER DANGER脱退の後、ソロ・キャリアやTRIXTERのギタリスト Steve BrownとのプロジェクトバンドTOKYO MOTOR FISTなどで精力的な活動を行っていた訳だが、そんな中でテクニカルでモダンなプレイが身上の新世代北欧HRバンドの有望株DEGREEDのハイセンスなプレイを気に入り、挙げ句にバンドにまでしてしまったのは、Ted PoleyがDANGER DANGER加入前はUSプログレHMバンドPROPHETでドラマー(有名な話だけど、今の若いリスナーは知らないかも…)だったのも大いに関係しているのだろう。

大抵、ヴォーカリストって奴はインストパートを延々と演奏するプログレ系のバンドサウンドや、そういった本来バンドの顔であり主役であるヴォーカリストの立場を蔑ろにしかねない音楽形態を当然と言えば当然ですけど好まぬ傾向にありますからね。

逆にプログレ系は、定番の変拍子だったりでドラマーのテクニカルなプレイが重要視されますし腕前の見せ所なので、そういった Ted Poleyのミュージシャンとしてのバックグラウンドも大いに関係して、優秀なバックミュージシャン達(そして、恐らく無名で制作コスト的にも割安な)の手によるソロ制作という Ted Poleyの望む環境と、17年に待望の4thをリリースし、プレイヤースキル的にもアルバムの出来的にも問題なく、あと1つ足りないのはメジャーな知名度だけ、というDEGREED側の要求を満たすWINーWINな関係が築かれたのだろう。

で、内容の方ですが、Ted Poleyのソロ作が出発点なので当然ですが、ヴォーカルがメインでクローズアップされたサウンド形態で、DEGREEDの派手なインタープレイやテクニカルなプレイは控え目で目立たない、彼等の持つモダンなセンスやそつないプレイスキル、またコンポーズ能力の方がクロースアップされた造りになっているアルバムと言えましょう。

キャッチーでフック満載な溌剌ポップサウンドが売りのDANGER DANGERフロントマン Ted Poleyのソロ作に求められる“売れ線要素”は当然満たしつつ、DANGER DANGERでは聞けぬモダンでAORにも通じるコンパクトに纏め上げられたハイソで洒落た楽曲の数々は基本的にアメリカンポップス路線なのですが、そこへDEGREEDからのインプットであろう北欧的なウェットなメロディや、楽曲の根底に流れる優美さ、終始艶やかで繊細さを感じるモダン・サウンドなど聞き所は満載で、もしアメリカ人ミュージシャンの有名所を集めて制作されていたならば、恐らくさらにキャッチーでもっと明るくカラっとした爽快感ばかり耳につくドライサウンドになっていただろうアルバムにユーロ圏独特のシットリした質感と北欧HR特有の清涼感を与え、Ted Poleyの関わった作品カタログの中でも大きく趣の異なる、その他のソロ作とも差別化されたサウンドのアルバムを残した点は大いに注目されるべきポイントと言えるのではないでしょうか?

DANGER DANGERのフロントマン Ted Poley、という点に惹かれて本作を購入したファンにとっては、イマイチUSメタル的な溌剌さやドポップな感触が足りない大人びたサウンドと捉えられ不満に思われてしまうかもしれませんが、さすがに彼もデビュー当時のバブリーなご時世の若者って訳でも歳でももうありませんので、こういった落ち着いてリラックスした音楽を演る歳に相応しいミュージシャンに成ったんだと納得して戴く他ありませんね…

私のような Ted Poleyのソロ作というだけなら決して本作は購入検討にならなかっただろうDEGREEDファンにとっては、DEGREEDの新たな魅力やスキルを確認出来る、彼等のこれまでリリースしてきたオリジナルアルバムとは一味違った大人向けなサウンドの、高品質なハードポップ&AOR作と捉え楽しめる一作と言えましょう。

幾分、整合感やAOR的な完成度に重きを置いたからなのか Ted PoleyがDANGER DANGER等やこれまでとは違った魅力を見せようと意識したからなのか、楽曲のセンスの良さやエレガンドな上品さ、そしてコンパクトさとは裏腹に、分かりやすいキャッチーさやUSAロック的なフックに欠けるきらいのあるサウンドに思え、DANGER DANGERのようなサウンドを求める向きには少々厳しいサウンドといった印象なのが本作への偽らざる感想ですね。

Ted Poleyには本体バンドのDANGER DANGERや Steve BrownとのTOKYO MOTOR FIST、そして自身のソロ活動もあるわけで、実際本作の完成までに3年を費やしたと言う事だし、続くMODERN ARTの新作が果たしてリリースされるのか甚だ疑問ではありますが、もし次作があるならばもっとDEGREEDに楽曲制作のイニシアチブを譲った純然たるバンド作としてのサウンドを聴かせて欲しいものであります。



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by malilion | 2018-11-08 18:03 | 音楽 | Trackback