2018年 08月 30日 ( 1 )

英国の古楽プログ・バンドGRYPHONが41年ぶりに再結成第一弾作をリリース!

c0072376_15352403.jpgGRYPHON 「ReInvention」'18

イギリス王立音楽院出身の Richard Harvey(Recorders,Soprano,Alto & Tenor Krumhorns,Organ,Harpsichord,Harmonium,Glockenspiel,Mandolin,Classical Guitar,Vocals)と Brian Gulland(Bassoon,Bass & Tenor Krumhorns,Recorders,Keyboards,Vocals)を中心に71年結成され、73年にアルバム・デビューを果たし、77年の解散までに五枚のユニークな作品を残した、宮廷風味の強い古楽スタイルのフォーク・ロックとポップス、そしてプログレ(特にYES)の影響を消化し、中世~ルネサンス音楽とプログレッシヴ・ロックを融合させ再構築した唯一無二のオリジナリティ・サウンドを誇った英国産古楽プログレ・バンドの再結成作が遂にリリースされたので即GET!

オリジナルメンツによるリユニオンは15年頃に成ったものの創作活動は遅々として進まず、結果的にオリジナルメンバーであり中心人物でもあった Richard Harveyが多忙を理由に脱退してしまったが、75年作『Raindance』を最後に脱退していたオリジナル・ギタリストの Graeme Taylor(Guitars,Acoustic Guitars,Vocals)が43年ぶり(!)にバンドに復帰しており、オリジナル・スタジオアルバムとしては41年ぶり(!!)となる本作にも参加しているのが昔からのファンには嬉しいトピックだろう。

なお、Brian Gullandと Graeme Taylor、そして Dave Oberle(Drums,Percussion,Lead Vocals)のオリジナルメンバー三名に加え、Graham Preskett(Violin,Mandolin,Keyboards,Harmonica)と Andy Findon(Flute,Piccolo,Soprano Krumhorn,Soprano Sax,Clarinet.Sweetheart Fife)、そして Rory McFarlane(Bass)の新規メンバー三名を含む6人組バンドとして本作は制作されている。

73年のデビュー作以降、75年の4th『Raindance』まで主要四名は変わらず、ベーシストだけ不安定だったのが彼等5人組バンドだと覚えているが、売りであった古楽的フォーキーさが激減し、一気にポップ度と一般的なプログ・ロック度が増したサウンドが賛否両論な最終作5th『Treason』では Richard Harveyと Brian Gulland、そして Dave Oberleの三名のオリジナルメンバー以外に、新たにベース、ギター、専任ドラマーの新規メンツ三名を迎え、初めて6人組編成で制作された経緯があったのを、41年ぶりとなる本作の制作状況もソレに似たものがあるなぁ、などとフッと思い出してしまいました。

惜しくもアルバムリリース前に中心人物が脱退したというニュースにガックリきた昔からのファンな方も多いだろうが、往年のGRYPHONを彷彿させる本作の素晴らしい出来を耳にすれば、代役の大任を担った Andy Findonのプレイは Richard Harvey不在を一切感じさせぬ軽やかで艶やかなサウンドとテクニカルさを十二分に発揮し、再結成作の出来を少しも損なう事ない見事な仕事ぶりだと理解するのに時間は要すまい。

さて、本作の内容だが、飛び出してきた軽やかで忙しないピッコロの調べに艶やかなアコギの爪弾きが絡み合い、まさに“アノ”GRYPHONサウンドが展開されていくのに耳を傾けるだけでもう十分に幸せで満足な気持ちになれる待ちに待たされたこの新譜、やはり再現されているのはポップ度とエレキのパワーを借りたロック度の増す前の初期から中期、『Midnight Mushrumps』頃の古楽をメインにして活動していた時分のサウンドで、メンバー一同何を周りから求められているかをしっかりと理解している(理解してない再結成の多い事…)流石の方向性なものの、やはりこれだけ時が経過している為か全く“まんまのサウンド”という訳でもなく、幾分かモダンなタッチがサウンドのそこかしこから感じられるのと、Richard Harveyが不在だからこそ外側から見て“GRYPHONてこういうサウンドが特徴だったよね?”的な新規メンツによる故意的な再現やインプットも関係してか“古臭いんだけど妙に聞いた事のない新しい音”というような不思議な感覚に陥ることがしばしある一作と言えよう。

個人的にも、まんまの再現ではセルフパロに陥ってしまうし、全く過去を顧みないサウンドを展開されても期待外れ作になるのは確実だったろうから、本作のような懐古趣味的な再現を果たしつつ、新しいサウンドも気付かぬ内にしたたかに組み込まれている、というような難しい顧客の要求に応える優等生なサウンドは、さすがのキャリアと英国ミュージシャンの気概を感じさせてくれて大変気に入っております(*´ω` *)

まぁ、この奇跡的なサウンドバランスに仕上がったのは Richard Harvey不在だからこそとも言え、もしオリジナルリユニオン状態のままで創作が進んでアルバムが完成していたなら、果たして一体どのような方向性だったのか、幾分か今風に変わっていたのか、どんな完成度だったのか、と尽きぬ妄想が膨らんでしまいますよね。

そうそう、本作収録の10曲目のトラックと以前リリースされていた『The Collection II』'95 収録のアルバム未収録曲と同名曲ですが作曲者が違う別曲ですので、お間違いのないように。

尚、本作は日本先行発売、紙ジャケット仕様、SHM-CD、さらにボーナス・トラックを1曲収録となっており、海外盤ではまた収録内容が変化するかもしれませんので、ファンの方は今後のリリース情報から目が離せません。

古楽器を用いた異色の編成で中世音楽を演奏するフォーク・スタイルから出発し、ポップスやロック要素を加えつつYESとの接触で一気にプログレ度を増大させ、ジェントリーなヴォーカルによる穏やかなコーラス、フォーキーだったりトラッドだったりと様々にその色を変えながらリズミカルに展開していく控え目だが着実にバンドサウンドの要所を押さえている繊細なギター、古楽風のフレーズを交え細やかに宮廷風な雅を奏でる気品ある多彩なキーボード、そして古楽で鍛えた精緻なアンサンブルの如何にもプログレらしいスリリングな演奏を披露し、独特のサウンドを展開し続けた何者にも似ていないGRYPHONサウンドを、もしまだ耳にした事が無い過多がおられるなら、これを気に一度彼等の作品に触れてみる事をお薦め致します。



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by malilion | 2018-08-30 15:30 | 音楽 | Trackback