さて、ソングライティングのピークと言わしめる本作の仕上がり具合ですが、デヴュー以来メンバーチェンジが絶えなかった彼等がフロントマンを Titta Tani (ex:ABSTRACTA、ex:GLORY HUNTER)から Marco Basile (前作まで Mark Basile名義。ex:B.R.E.A.K、ex:MINDE KEY)へ7th『frame』'09 でチェンジしてからは安定期に入ったのかそれまでが嘘のように本作も同じメンツで制作されており、そんな14年に及ぶ固定メンバーでの活動が鉄壁のアンサンブルやステージでの絶妙な〝阿吽の呼吸”を生み出しているのは想像に難くなく、メロディアスさとインテリジェンスを兼ね備えたユーロ・プログHMらしい技巧的で緊張感漲るフレットワークが織り成す印象的なテクニカル・パッセージ、エモーショナルでフックある魅惑的なヴォーカルと爽快で高揚感あるアンセミックなコーラス等、これまで築き上げて来た〝彼等のアルバムに期待されるDGMのトレードマーク”をほぼ全てキッチリと踏襲し、さらに磨きを掛けてモダンにコンパクトに洗練された圧巻のイタリアン・プログレッシヴ・メタル・サウンドが耳を捕らえて放さない!
所でジャケット・デザインが近作はミステリアスな近未来的イメージを感じさせていたのに、本作では70年代古典イタリアン・プログレの巨匠達、PREMIATA FORNERIA MARCONIやBANCO DEL MUTUO SOCCORSOを彷彿とさせる物語性を連想させる洒落たデザインとなっておりちょっと驚かされたのと、遂に彼等がその内で沸き起こる変化を匂わせ始めたか、とか勝手な予想をしたりして個人的には妙に嬉しかったですね (*´ω`*)
Tracks Listing:
01. Unravel The Sorrow
02. To The Core
03. The Calling
04. Second Chance
05. Find Your Way
06. Dominate
07. Eve
08. Journey To Nowhere
09. Leave All Behind
10. Neuromancer
11. Unravel The Sorrow(Acoustic Version)
DGM Line-up:
Marco Basile (Vocals)
Simone Mularoni (Guitars)
Andrea Arcangeli (Bass)
Fabio Costantino (Drums)
Emanuele Casali (Keyboards)
Produced by Simone Mularoni
Recorded、Mixed 、Mastered by Simone Mularoni
旧音源のリマスター&新録&コンピレーション・リイシュー作である『The Edge of Time』'20、『An Alternative Arrive Alive』'21、『Fragments of The Sun』'21 や『No Sleep 'til Rotherham』'23 などのLIVE音源も含めると定期的に音源がリリースされて来たのでそんなに間隔が空いている意識は無かったが、スタジオ作となると随分久方ぶりとなる通算8枚目のアルバムを36pブックレット付のメディアブック仕様限定盤で入手したのでご紹介。
PALLASは、MARILLIONとのジョイントLIVE活動で人気を博してEMIレコードと契約を交わしたメジャー・デヴュー前後の80年代初期、2ndアルバム『The Wedge』'86 リリース後にレコード会社の内部問題に巻き込まれメジャーからドロップし殆ど解散と同じ開店休業状態になった90年代中期、古株メンバーのベーシスト Graeme Murrayとドラマー Derek Formanを中心に旧譜音源やLIVE音源等をリリースしつつ存続を維持し、長い空白期間を経てメジャー時代のメンバーでリユニオン(ドラムだけ新メンバー)して1998年に13年ぶりとなるカムバック・アルバム『Beat the Drum』をリリースした90年代後半、途中フロントマンを Alan Reedから Paul Mackieへチェンジし順調に活動を続けた00年代、RAINBOW結成当時から唯一のオリジナル・メンバーである Graeme Murrayが突如として長い沈黙期間の訪れをFacebookアカウントから伝えバンド活動が暗雲に包まれ殆ど仮死状態になった2018年、さらに全世界をパンデミックが襲い追い打ちをかけた2020年以降、そして前作から9年振りとなる復活作と、音楽性やファンの人気とは全く関係ない所で彼等はその長い活動期間と裏腹に、しばらく姿を消し、後になって復活する常に断続的なインターバル期間を挟んで紆余曲折ありながら今日までバンドを存続させて来た特異な英国バンドであります。
本作最大のトピックはなんと言っても存続が危ぶまれた中での9年振りとなる復活作な事と、80年代から2010年の脱退まで長きに渡りバンドの顔としてリードシンガーを務めてきた Alan Reedが、スタジオ作としては『The Dreams Of Men』'05 以来18年振り(!)に復帰(過去に2度脱退、3度目の再々々加入)してのスタジオ作である事だろう。
また Alan Reedの復帰は嬉しいものの00年代直前から断続的な休止期間を挟んで長らくバンドを支えて来たドラマーの Colin Fraserが本作には参加しておらず、ドラム・パートは全てギタリストの Niall Mathewsonとキーボーディスト Ronnie Brownの手による巧みで精緻なプログラムで賄われているものの、現在のPALLASはドラムレスの4人組バンドと言う事になっているのが少々残念であります。
シンガー Paul Mackie在籍期のナイーブな叙情性も受け継ぎつつも全体的に初期作に近しい感触な事もあってここ数作で顕著だったメタリックなサウンド・テイストは弱まり、YESやPINK FLOYDを彷彿とさせる古典的シンフォ・タッチとエッヂの効いたエネルギッシュなHRタッチを巧みに組み合わせ、翳りを帯びたエモーショナルな叙情性と、ダークでドラマチックな音使い、英国らしい優美なストリングスやアコギ、ピアノのアコースティカルな音色、パワフルなロック・サウンドと内省的でクラシカルな美旋律が融合し、様々な感情を包み込むかの様な深い陰影と驚嘆に満ちたシネマティックな幻想美が絶妙なバランスで配されたPALLAS流モダン・シンフォへ回帰しており、その分厚く重ねられたギターとデジタリーなエレクトロ・サウンドが奏でるソリッドなハード・シンフォ・サウンドには往年のファン程に喜ぶだろう会心の傑作へと仕上がっている。
テーマがテーマなので聴き易く気軽に聴けるアルバムでも無いし即効性のある作品でもなく万人にお薦め出来る作風でもないが、そのイマジネイティヴで印象的なアートワークから没入感が強く、ダークでありながら高揚感があり、ロックでありながら優しさと驚きの瞬間が途切れず、非常に思慮深く雰囲気がある印象的な音楽性と素晴らしく知的で真摯なソングライティングが抜群の表現力とエモーショナルで力強い Alan Reedのヴォーカルと相まって、ベテラン・メンバー一丸となった鉄壁のアンサンブルは勿論の事、その紡がれる一音一音に心を奪われるような豊かな表現力が非常に際立った音楽ドラマを作り上げており、まるで長編映画のサントラを思わせる充実ぶりだ。
Tracks Listing:
01.Sign Of The Times
02.The Great Attractor
03.Fever Pitch
04.Heavy Air
05.The Nine
06.The Messenger
PALLAS Line-up:
Alan Reed (Lead & Backing Vocals)
Graeme Murray (Bass、Taurus Bass Pedals、12 String Guitar、Vocals)
Niall Mathewson (Guitars、Programming、Vocals)
Ronnie Brown (Keyboards、Programming、Vocals)
]]>米プログレッシヴ・ロックバンド KANSASのドラマーでリーダーの Phil Ehartが重度の心臓発作でツアー離脱!http://malilion.exblog.jp/33269029/2024-02-25T17:37:00+09:002024-02-25T17:37:24+09:002024-02-25T17:37:24+09:00malilion音楽
アメリカン・プログレッシヴ・ロックの重鎮バンド KANSASのオリジナル・ドラマーでありリーダーでもある Phil Ehartが重度の心臓発作を起こした。
幸い命に別状はなく、現在は静養しているが当面の間はツアー活動から離脱する事に。
Phil Ehartはバンドのマネージャーでもありその役割は継続するという。
代役は以前ヘルプで叩いた事のある Eric Holmquistで、彼は20年以上に渡って Phil Ehartのドラム・テックを務めていた人物。
本作リリース前の1987年に4曲入りカセットEP『Catalytic Conversion』を自主リリースしており、フルアルバム『Paradise』制作前にオリジナル・ドラマー Tony Rinellaが抜け、新たなドラマーとして Matt Stevensが加入。
80年代末期に活動していたCCM系バンド、OXIDOやFLORENCE 99という幻のメロディアス作の待望のリイシューを果たしたMinotauro レーベル・リリース、な情報で予想はつくと思いますが、80年代USバンドに相応しいフックある爽快なメロディアスHMチューン目白押しで、CCM系お得意のクリアーなハイトーン・リードヴォーカルと分厚く爽快なハーモニー・ヴォーカル、メンバー複数がSTYX張りにリード・ヴォーカルを執ったり、更にリーダー Walt Wiseが操るピアノとサックスもフィーチュアしたムーディーで美しいバラードも当然の様に収録と、要所でハードエッヂなギターもフィーチャーしつつ煌びやかなキーボードも薄っすらバックで聴こえ、ソリッドなリズムワークもしっかりとしたコンパクトでラジオフレンドリーなシングル志向の楽曲満載な80年代USメロディアスHMアルバムの教科書的構成作となっており、メロハー・ファンにもお薦め出来る掘り出し物的一品だ。
実際、彼等は本作リリースの後、即座にスプリング・アーバー・ディストリビューターズとワールドワイド・ディストリビューション契約を結び、Atlantic RecordsやOcean Recordsを含む複数のレーベルから興味を持たれる中で全米ツアーを敢行、『Paradise』完成直後にドラマーを1983年からアルバムをリリースし既に活動していたCCM系アメリカン・メロディアスHMバンドBRIDEの元オリジナル・ドラマー Stephan Rolandへ再びチェンジするなど、Contemporary Christian Music Magazine、White Throne Magazine、Heaven's Metal Magazine等から絶賛された事からも分る様に無名の新人インディ・バンドとしてはCCM界周囲から大きな期待を寄せられていたのが察せられるが、折り悪くメジャー・シーンの時流が変り全世界がグランジーの闇に呑み込まれてつつあった90年代初頭、特殊なカテゴリーとは言えやはり米国シーンの影響をCCMチャートも受けないハズもなく、素晴らしい音楽性とは無関係に80年代直系のブライトでハッピー、キャッチーで爽快なCATALYSTのサウンドが受け入れられぬままに、結局は1991年に解散してしまう。
この顛末に納得行かなかったのかバンドの中心人物でシンガーであった Walt Wiseは1994年に殆ど単独で楽器全てを演奏し、エンジニアリングやプロデュースも全てこなして完成させた実質的ソロ作な全メンツを新たにしたCATALYSTを再始動させ3曲入りカセットEP『The Mystery』をリリースするも、暗黒のグランジーに塗り潰された米国シーンで活動の場は無く、敢え無く再び解散する事に…
まぁ、グランジー・ブームが勃発していなくとも他で聴けぬ強烈な個性的サウンドを演奏していた訳でもなく、HMと言うには軽めなサウンドでCCM系定番のキリスト賛歌を身上としている音楽を演り続けている限りメジャー・シーンでの大きな成功は望めなかったでしょうから、シンガー Walt Wiseが器用に様々な楽器を演奏できる点は特異なポイントではありますが遅かれ早かれな展開であったかもしれませんね…
Tracks Listing:
01. Crackdown / Breakdown
02. Dropout Loser
03. I Wanna Live
04. Break My Heart Again
05. You Can't Please Everybody
06. Time
07. Fire In Her Eyes
08. Shelter Of Your Heart
09. Hold On To Love
10. Paradise
11. Burning In The Fire
12. Trash Before You Crash
CATALYST Line-up:
Walt Wise (Lead Vocals、Lead & Rhythm & Acoustic Guitars、Piano、Keyboards、Alto & Soprano Saxophone)
Alan Newman (Lead Guitars、Backing & Lead Vocal on Track 10)
Paul Soos (Bass、Backing & Lead Vocal on Tracks 03、12)
Matt Stevens (Drums)
Produced by George Payne & CATALYST
]]>新世代イタリアン・プログレ・シーンでも屈指の実力派バンド SYNDONEが30周年記念作を限定リリース!!http://malilion.exblog.jp/33264037/2024-02-19T15:37:00+09:002024-02-22T19:00:13+09:002024-02-19T15:37:19+09:00malilion音楽
SYNDONE 「DirtyThirty 1992-2022 30 Years of Syndone Anniversary」'23
前作『Kama Sutra』'21 で70年代の古典プログレ・バンド群と肩を並べるレベルへ遂に到達し、現在のイタリアン・プログレッシヴ・シーンで堂々の存在感を示すイタリアはトリノを拠点に唯一のオリジナル・メンバーでリーダー、そして作曲とキーボードを担当する Nick Comoglio率いるSYNDONEの、復活後第7弾にして通算9枚目でこれがバンド最終作(!?)かもと何やら噂されるバンド結成30周年記念盤が、前作より2年ぶりに限定リリースされたのを少々遅れてGETしたのでご紹介。
完全新曲の『DirtyThirty』『Fight Club』『I Spit On My Virtue』に加え、過去曲のフレーズを引用しつつ新たに作曲された『The Angel』『I Only Ask For A Super glue』、90年代に発表された初期~中期曲にオーケストラ・セクションを導入しリアレンジや再解釈した新録曲『Valdrada's Screen』『Mary Ann』『God's Will』『Thousand Times I Cried』等の他、ボーナストラックとして2018年作『Mysoginia』収録曲『Evelyn』の日本語歌唱ヴァージョン (!?)も含む全11曲を収録した、彼等のこれまでの活動を総括するかの様な内容となっている。
Tracks Listing:
01. Dirty Thirty (The End Of My Love)
02. Fight Club
03. The Angel
04. Valdrada's Screen
Restyling The Track "Spleen" from The Album "Spleen" 1992
05. I Spit On My Virtue
06. I Only Ask For A Super Glue
07. Mary Ann
Restyling The Track "Marianne" from The Album "Spleen" 1992
08. Rene
Restyling The Track "Magritte" from The Album "Melapesante" 2010
09. God's Will
Restyling The Track "Inca" from The Album "Inca" 1993
10. Thousand Times I cried
Restyling The Track "Proverbi" from The Album "Inca" 1993
11. So Long Everybody - The Time Has Come & I Must Leave You
Restyling The Track "Penelope" for full Orchestra from The Album "Odysseas" 2014
12. Evelyn [Japanese Version:Bonus Track]
SYNDONE Line-up:
Nick Comoglio (Hammond、Moog、Juno dist、Mellotron、Composition、Orchestration、Keyboards)
Riccardo Ruggeri (Lead Vocals、Composition、Lyrics)
Marta Caldara (Vibraphone、Marimba、Keyboards)
Gigi Rivetti (Hammond、Acoustic Grand Piano、Electric Piano、Clavinet、Moog、Accordion)
Simone Rubinato (Bass、Fretless Bass、Electric Baritone Guitar)
Ciro Iavarone (Drums、Percussion)
Guest:
Tony De Gruttola (Electric & Acoustic Guitars on Track 01)
Andrea Carbone (Electric Guitars on Track 07)
Pino Russo (Classic Guitars on Track 08)
Gianluca Cagnani (Pipe Organ on Track 04)
Rebecca Onyeji (Backing Vocals)
Charlie Poma (Backing Vocals)
Kaori Tsutsui (Clarinet in Bb on Track 12)
String Trio
Valerio Iaccio (Violin on Track 05)
Roberto D'Auria (Violin on Track 05)
Michelangiolo Mafucci (Cello on Track 05)
Budapest Scoring Symphonic Orchestra Conducted by Francesco Zago on Track 11)
YESのフロントマン Jon Davisonが在籍していたインディ・バンドとして一躍メジャー・シーンにその名を知らしめ、Fred Schendel (G、Key、Ds)と Steve Babb (B、Key)を中心にテネシー州で1992年結成され90年代以降の米国産シンフォニック・ロックを代表するバンドの一つとなった彼等が『Dreaming City』'20、『Skallagrim - Into The Breach』'21、『At The Gate』'22 で千年に及ぶ放浪物語『叫ぶ剣を持つ盗賊スカラグリム』三部作を描ききったのに続き、22枚目のスタジオ・アルバムとして今度はSFコンセプト作がリリースされたのを少々遅れてご紹介。
前三部作は Steve Babb執筆による小説がベースとなった剣と魔法の世界が織り成すダーク・ファンタジー物語だったが、本作は心機一転銀河の謎を解明する為に熱狂的な科学者によって派遣されたアンドロイドの深宇宙探査に置ける驚異的な旅を描いており、映画『Blade Runner』の一コマや John Mitchellのソロ・プロジェクト LONELY ROBOT作を連想させるSFチックな物語を、旧来からのシンセサイザーやメロトロンを駆使した重厚で壮大なサウンドと近作で顕著なハード・エッヂで攻撃的なHMテイストを絡めドラマティックなストーリー仕立てで描く一大コンセプト・アルバムとなっている。
本作タイトルの『Arise』とは、Android Research Initiative for Space Exploration (宇宙探査の為のアンドロイド研究イニシアティブ)の頭文字をとったもので、歌詞やブックレットの注釈で語られるストーリーには Deadalusという名の深宇宙探査艇のオペレーターであるアンドロイドが登場し、その探査中に Deadalusは意識を内側に向けると自分に呼びかけて来る存在を感じ…と自我が無いハズのアンドロイドが己の存在という内的な問いかけを喚起され、広大な宇宙空間をバックに Deadalusの内側で繰り広げられる『2001年宇宙の旅』や『ALIEN』等でも描かれた人工知能やアンドロイドの葛藤というSF作お馴染みなネタをベースにしつつ独自の物語を綴った意欲作だ。
30年以上の活動を続けてきたGLASS HAMMERは Fred Schendelと Steve Babbの2人のマルチ・インストゥルメンタリストが演奏パートの殆どを担当して来たが、その過程でプログレ界のSTEELY DANの如くその都度に様々な音楽性に最も適した有能なミュージシャン達を迎え入れそして去って行ったにも関わらず、長年に渡って大手メディアに頼らずアンダーグラウンドな流通を主としてマイペースな自主リリースを続けてきた作品のクオリティは驚く程に一定レベルを保ち続けているだけでなく、他のどのプログレ・バンド達よりも長い年月をかけて大きく幅広く、下手をすると長年かけて築いてきたファンベースさえ失いかねない劇的な音楽性の拡張と転換を恐れずに挑み変化し続けてきた、その意味で本当にプログレッシヴな音楽ユニットと言えるだろう。
メンツは三部作からフロントマンに迎えられた可憐で伸びやかな歌声が麗しい Hannah Pryor嬢、ドラムスには"YESエミュレート期"の『If』'10、『Cor Cordium』'11、そしてゲスト扱いになった『Perilous』'12 で叩いていた Randall Williamsが復帰し、『Chronomonaut』'18 からゲスト参加し『Skallagrim』三部作ではリード・ヴォーカルも披露していたのが記憶に新しい Reece Boydがギターで参加している他、アルバム・コンセプトの立案だけでなく、全曲の作曲、録音、プロデュースと名実共にバンドを率いる Steve Babbがベーシストとして本作でも大活躍しており、長年の相棒 Fred Schendelは1曲のみでドラムスとギターをプレイするに留まっていて三部作は Steve Babb執筆の小説ベースなので遠慮して手控えたのかと思っていたが、本作で更にバンドへ関与が少なくなっているのが些か心配で…向こうの本作紹介で〝実質的な Steve Babbのソロ・アルバム”とまで言われており、もしかしたらプライベートな問題や健康状態が思わしくないのかもしれず、最悪 Fred Schendelが脱退なんて事にならなければいいケド…(汗
Tracks Listing:
01. Launch of the Deadalus
02. Wolf 359
03. Arion (18 Delphini b)
04. Mare Sirenum
05. Lost
06. Rift At WASP-12
07. Proxima Centauri B
08. Arise
09. The Return Of Deadalus
Part 1) Battle At MARS-WRM-001
Part 2) Reentry
Part 3) The Doom Of The World
GLASS HAMMER Line-up:
Steve Babb (Bass、Keyboards、Rhythm & Lead Guitars、Percussion、Vocals)
Hannah Pryor (Lead Vocals)
Reese Boyd (Lead & Rhythm Guitars)
Randall Williams (Drums)
With
Fred Schendel (Guitars & Drums on Track 06)
Composed、Recorded & Produced by Steve Babb
]]>BAD HABITのメンバーが在籍し80年代中期から90年代初頭まで活動していた北欧メロハー・バンドSCROOGEの幻の音源が初CD化!http://malilion.exblog.jp/33253831/2024-02-08T09:01:00+09:002024-02-11T16:00:26+09:002024-02-08T09:01:17+09:00malilion未分類
SCROOGE 「South Side Songs +1」'23
面白いのは最初 Richard "Bax" FehlingはBAD HABITのギタリストで、シンガーは後にギタリストへ転向する Hal Marabelだったらしく、BAD HABITのデヴューEP『Young & Innocent』制作中、喉を痛めた Hal Marabelの代役で Richard "Bax" Fehlingが歌ったらそのままシンガーとギタリストが役所を交代する事になったらしい(マジデ??
BAD HABITが1990年にメジャーからドロップした影響でか解散(2ndフルアルバム『Revolution』リリース前に解散状態だった模様)すると再びSCROOGEの活動が盛んになるかに思えたが、ドラマーの Jaime Salazarを始めミュージシャンとしての腕前が認められた各メンバーのバンド外活動等が忙しくなり、結局1993年頃にはSCROOGEは自然消滅してしまう…
幅広い音楽要素が伺える上にセンス良いテクニカルなギター・プレイを軽やかに繰り広げる Orjan "Cozy" Wallenが脱退せず、メジャー契約を果たし良いプロデューサーの元でよりオリジナリティを増したキャッチーな北欧メロディアス・サウンドを構築し、シンガー Richard "Bax" FehlingがBAD HABITメインで殆ど開店休業状態の時に遜色ないレベルの新シンガーを獲得し独自の活動へ乗り出していたならば、強烈な個性という点では弱いけれど妙な癖が無い分SCROOGEの方が大衆受けしてメジャー・シーンで良いチャートアクションを残していたのでは、と妄想が止まらなくなってしまう、そんな可能性を感じさせる素晴らしい幻の音源であります。
シンガー Richard "Bax" Fehlingが抜群に歌が上手くAOR寄りのソフトでキャッチーな北米市場を意識したサウンドにピッタリなの歌唱を披露するのはBAD HABITのアルバムを耳にした事がある方ならご存じでしょうが、本作のキャッチーでフックある80年代USロック風ブライト・サウンドをより際立たせているのはギタリスト Orjan "Cozy" Wallenと両輪で活躍するキーボーディスト Peter "Pyrre" Nyrellのセンス良い洗練された音色のチョイスと巧みな鍵盤捌きなのは間違いない。
残念ながらギタリスト Magnus Edsbergは既に鬼籍で、元BAD HABITのベーシスト Patrik Sodergrenは起業家として成功し、2013年にキャリアをリタイアし現在は悠々自適な生活を送っているらしい。
Richard "Bax" Fehlingによると元メンバー達は皆30分程度の所に住んでいるので気が向いた時に簡単に集まってジャムれるらしいし、まだSCROOGEの物語は終っていないと思っているとの事なので、もしかしたら再結成作なんかがリリースされるかもしれないので、ちょっとだけ期待して待ちましょうか ('(゚∀゚∩
Track listing;
01. The Fire
02. Somebody's Calling
03. My Town
04. Blue Skies And Pain
05. Santiago
06. End Of The Road
07. Pieces Of A Dream
08. My Friend
08. Crying's Much Too Late
10. Right On Wrong
11. Dance Dance Dance
オリジナルのアートワークを再現しているのでジャケ裏には10曲しかクレジット(LP盤のA面、B面なクレジットが泣けるw)されていませんが、中にはちゃんと11曲目にオリジナル・アルバムには未収録のボーナストラック (1stの再プレス盤のアルバムタイトルで1st収録曲『Sing Me A Song』)が追加されておりますのでご安心下さい。
また、オリジナル・リリース時には収録され、その後の再プレス盤では謎のオミットが成され(替わりに1stにも収録されていた『Sing Me A Song』が収録)ていたTrack 04 『My Wildest Dreams』がオリジナル通りに収録されているのも古参ファンには嬉しいリイシュー盤となっております。
かなりUSロックを意識した非常にオーセンティックな80年代メロディアス・ロックの流れを汲む北欧ハードポップ・サウンドが身上の彼等ですが、やはり彼等のアルバムをその他の同年代バンド達の作品と一味違う秀でた印象にしているのはシンガー Kunt Erik Ostgardの抜群にキャッチーで冴え渡るヴォーカル・メロディ作りに長けた非凡な才故なのは間違いありませんし、それは本作でも十分に味わえます(*‘ω‘ *)
THE UNKNOWNは本作リリース後にメジャー・レーベル Epicと契約してバンド名をBLACKFISHへ改め1993年にメジャー・デヴュー作をリリースしたBLACKFISHの前身バンドでありますが、その音楽性は残念ながらグランジー全盛の90年代を反映してかレーベル・サイドの意向なのか変貌しており、彼等の80年代風サウンドを好んでいた方にとっては少々ガッカリな顛末となっている…
まずは簡単なバンドのバイオをライナーから。
本バンドはハイスクール時代から友人だった Steve Ballard (Vo)と Chris Reublin (B)がフロリダ大学時代に始めたパーティー・バンドがスタートで、1987年にTHE UNKNOWNを Steve Ballard、Chris Reublin、Andy〝Clash”Howerdの3人が中心になって結成するとフロリダ西海岸でギグを重ね、イケメンな彼等目当てのガールズ・ファンが増え、その女の子目当ての男が増えと、LIVE毎にファンを増やし、やがて彼等は大学生のバカンスのメッカの一つである Ft. Lauderdaleで春休みのギグを依頼されるまでになっていった。
デモ・テープを方々のレコード会社へ送りつけるも反応は芳しくなく、そんな中で南東地域の Budweiser Battle of The Bandsで優勝(全米決勝では2位)するとやっとA&Rスカウトが注目し始め、メジャー契約直前に新ギタリスト Mike Mahaffeyが加入し、1992年にEPICレコードと目出度く契約を交わす事に。
バンドのプレイは特にテクニカルと言う事もなく、爽快コーラスや楽曲展開、そしてアレンジ等も目新しい所は見当たらない、縦ノリ曲ありアリーナ・ロック風ありアコースティックなバラードありとUSメジャー・ロック・アルバムに忠実な教科書的創りとなっており、シンガーの Steve Ballardもこの手のポップな80年代USヘア・メタルを歌うのにピッタリな、REO Speedwagonの Kevin CroninとDANGER DANGERの Ted Poley、そしてブルージーな雰囲気を抜いたGREAT WHITEの Jack Russellを足して三で割って甘くしたイメージの癖の無い歌声で、もしグランジー旋風が吹き荒れなくともメジャー契約した後、アルバムを1、2枚リリースしたらドロップアウトしてそうな、正直そんなB級レベルなサウンドなれど、80年代末期らしく適度にハードエッチなギターも鳴らしつつも、半ばにハードポップの領域に踏み込んだキャッチーなメロディと軽快なノリが特徴な、今聴いても妙な癖もなくすんなり聴ける心地よいUSメロディアスHR作に思え、リマスターされているハズなのにメタルと呼ぶのも憚られる軽いサウンドには些か戸惑いますが、自主盤作と考えれば殊更文句を垂れる程に酷いサウンドでもない、ン万円は出せないけど『騙された!』と怒る程に劣悪なアルバムでもないと言えましょう。
Tracklist:
01. Can't Give Up
02. Hey Julie
03. Never Comin' Back
04. Just Like Him
05. Say It To Me
06. Hold Me
07. Sugar Shack
08. For You
THE UNKNOWN Line-up:
Steve Ballard (Lead & Backing Vocals、Slide Guitars)
Chris Reublin (Bass)
Andy〝Clash”Howerd (Drums)
Billy Summers (Lead Guitars & Backing Vocals)
]]>不遇な90年代に80年代風メロハー・バンドVALENTINEを率いていた Hugo Valentiが新たなAOR&メロハー・バンドHUGO'S VOYAGEを結成しデヴュー!!http://malilion.exblog.jp/33234369/2024-01-25T17:02:00+09:002024-02-17T13:31:04+09:002024-01-25T17:02:27+09:00malilion未分類
HUGO'S VOYAGE 「Inception」'23
近年は再結成VALENTINE、ソロ活動、JOURNEYトリビュート・バンド等で活動し、そのJOURNEYの元シンガー Steve Perryを思わせる(ルックスも似てるw)クリアなハイトーンで多くのメロディック・ロック・ファンを魅了してきた米国人シンガー Hugo Valenti (ex:OPEN SKYZ)が中心になって立ち上げた、去年11月にデヴュー・アルバムがリリースされた新プロジェクト作を今頃に遅れてやっとこ入手出来たのでご紹介。
OPEN SKYZ解散後、英国メロハー・バンドTENのメンバーのバックアップを受けてソロアルバムを英国のNow And Then レーベルから2枚リリースした後、Hugo Valentiは母親の病の看護で思うような活動が出来ず、最愛の母を失った痛手からかシーンの時流が己の望む嗜好でなかった為か以降表舞台での活動から一歩退いてしまい、地元New York のミュージシャン達とJOURNEYのトリビュート・バンドEVOLUTIONを2002年頃に結成しNY界隈のクラブで気軽に演奏するに留まっていた訳だが、2004年に3枚目のソロアルバム『Fire In The Night』をEVOLUTIONのメンツを迎えて制作し、さらにVALENTINEをドラムスを除くオリジナル・メンバーで再結成すると2008年に2nd『Soul Salvation』をリリース、2021年にもシングルやVALENTINEの未発音源集をリリースと順調に活動中であった Hugo Valentiだが、オリジナル曲も演奏し始めたのを契機に2005年にEVOLUTIONの名をHUGO'S VOYAGEへ改め、JOURNEYトリビュート・バンドながらそのパフォーマンスのクオリティの高さから多くのファンを獲得し全米ツアーを行うなど積極的な活動を行って来た彼等が遂にオリジナル・アルバムを制作し本作をリリースするに至ったのでありました。
さて、そんな Hugo Valentiをバックアップするバンド・メンバーは、元ミュージシャンで現在はEXTREMEの敏腕マネージャーでもある Robby Hoffman (G)、Ted Nugent、Alice Cooper、RED DAWN、そしてRAINBOWでもプレイしてきた名手 Greg Smith (B)、EXTREMEの Gary Cherone率いるHURTSMILEのメンバーだった Dana Spellman (Ds)、80年代からFionaやANGELと仕事をし、Hugoの3枚目のソロアルバム『Fire In The Night』の制作にも参加するなどトリビュート・バンド名がEVOLUTION時代から活動を共にして来た一番の古株 Lance Millard (Key)というなかなかに興味深い顔触れとなっている。
で、トリビュート・バンドEVOLUTIONが前身である事や、フロントマンがルックスやヴォーカル・スタイルを含めて常に Steve Perryと比較される Hugo Valentiな事、それらの情報に合わせ彼がこれまでどんな作品を創作して来たかご存知なメロハー系ファンならば本作の内容を説明する必要も無い(笑)だろう『本当にJOURNEYが好きで好きで仕方がないんだなぁ…』と、しみじみ思えるくらいヒットチャートの常連であった頃の中期JOURNEY風な音色をそこかしこから顕著に感じ取れる、キャッチーでフックあるコンパクトな80年代USロック風のノスタルジックな楽曲の上をハイトーン・シーンガーの滑らかで伸びやかな美声が活き活きと鳴り響く作風であります。
一応、Hugo Valentiの為にフォローすると近年リリースされたVALENTINE未発音源集では Steve Perryから距離を置くヴォーカル・スタイルの歌唱を聴かせていたり、3rdソロ・アルバムなどでもJOURNEYでは聴く事が出来ぬ音楽要素のある楽曲等を提示と、彼がガチガチのJOURNEY& Steve Perryフォロワーと言う訳ではないのはこれまでリリースされて来た音源がお手元にある方なら理解し易いと思うのですが、如何せん本作は元々トリビュート・バンドが発展したバンド作である事や、レーベル・サイドからの要求か自身も売れると分かって狙ってかは判断つかないが恐らく意図的にJOURNEYを思わすオクトジェニックなノスタルジック・サウンドと Steve Perryかを彷彿させるヴォーカル・スタイルな歌声が確信犯的に収録されているように思え…そう考えないとちょっとあからさま過ぎて(汗
どこまでがオマージュでどこからがパクリなのか昔から意見の分かれる難しい問題ではありますが、少なくとも現行のJOURNEYがリリースしている音源よりも忠実に80年代JOURNEYサウンドをトレースしているし、さすがにAOR風味を増し小気味よく洗練されたモダンなメロディアス・サウンドに仕上がってはいますが Steve Perry在籍時のJOURNEYが好きだったオールド・ファン層に間違いなく訴求する一枚であると言えましょう。
とまれ、もう本家本元のJOURNEYは80年代サウンドと決別している訳だし、Steve Perryの歌声も流石に経年で往年の艶や伸びやかさが失われているので、当時の驚異的な音域、魅惑的なトーン、比類なきディープなエモーショナルさとどこまでも伸びるハイト-ン・ヴォーカルをエミュレートする Hugo Valentiの瑞々しい歌声を楽しめ、往年のJOURNEYを彷彿とさせるノスタルジックな美旋律の数々を疑似的に味わえる上に、今風のモダンな感触もしっかり加味されているメロディアスなロック・アルバムな一枚なのは間違いありませんので、オマージュ作にも寛容なJOURNEYファンな方やAOR寄りの心地よいUSメロディアス・ロックをお好みな方なんかにもお薦めなアルバムであります。
Track listing:
01. Inception (instrumental)
02. Crazy What Love Can Do
03. Don't Wanna Live Without Your Love
04. Sound Of A Broken Heart
05. Goin' Away
06. A Friend Like You
07. How Many Times
08. I'll Be Around
09. In My Heart
10. September Love
11. The Voyage
12. When Heaven Makes An Angel
HUGO'S VOYAGE Line-up:
Hugo Valenti (Vocals)
Robby Hoffman (Guitars)
Lance Millard (Keyboards)
Greg Smith (Bass)
Dana Spellman (Drums)
Additional Musicians:
Steve Ferlazzo (Keyboards)
Ray Herrmann (Saxophone)
]]>ベルギー人マルチ・ミュージシャン Kurt Vereecke率いる多国籍AOR&メロハー・プロジェクトが11年ぶりに3rdアルバムをリリース!http://malilion.exblog.jp/33217090/2024-01-11T07:14:00+09:002024-01-15T21:04:33+09:002024-01-11T07:14:40+09:00malilion音楽
FROZEN RAIN 「One Mile From Heartsville」'23
ベルギー出身のソングライターでマルチ・ミュージシャン&ンポーザー Kurt Vereeckeが率いる多国籍ユーロピアン・AOR&メロハー・プロジェクトFROZEN RAINが復活し前2ndアルバム『Ahead Of Time』'12 以来11年振りとなる待望の3rdアルバムをリリースしたのをちょい遅れてGET!
2ndまで在籍していたドイツのAvenue Of Allies Musicからデンマークのメロハー専科レーベル Lions Pride Musicへレーベル移籍しての初アルバムでもあり久しぶりの新譜なのでそれまでの流れを簡単に。
中心人物の Kurt Vereeckeは学生時代に友人にJOURNEYの『Escape』を聴かされたのを契機にメロディアス・ロックに魅了され、最初のバンドNO PROBLEMSでシンガー兼ギタリストとして活動を開始し、クラブ・バンドの常としてカヴァーに加えオリジナル・ソングも演奏し始めるのに時間はそう掛からなかった。
音楽教師でもあった Kurt Vereeckeは、1996年から2001年にかけて子供向けの童謡を収録した2枚組CDを3枚リリースし、教師向けのマニュアルも3冊執筆するがメロディアス・ロックに対する情熱は少しも衰えておらず、一連の童謡作業が終ると即AORレコードの制作に乗り出す事に。
Kurt Vereeckeはアルバムを何枚も作れるとは思ってもいなかったし、希望もしていなかった為、出来る限り多くの友人を招き、自身のアイドルであるミュージシャン達もゲストに招いたアルバムの制作を画策する。
Tommy Denander (G:RADIOACTIVE、PRISONER、RAINMAKER、IMPERA、etc...)や Steve Newman (G:NEWMAN、ACACIA AVENUE、COMPASS、etc...)、Daniel Flores (Ds:MIN'S EYE、THE MURDER OF MY SWEET、etc...)、Ollie Oldenburg (Vo:ex:ZINATRA)、Willem Verwoert (Vo:SILENT EDGE)、Jim Santos (G:NORWAY)といったメロハー系ミュージシャン22名とのコラボレーションが活かされたAOR&メロハー・プロジェクト作であるFROZEN RAINのデヴュー作が5年以上の制作期間を経て2008年に遂にリリース。
豪華なゲスト陣が反響を呼び、HEARTLANDやANGEL、そしてSKAGARACKに通じる華やかなキーボード・サウンドがフィーチャーされた、北欧メロハーも思わす透明感あるキャッチーで80年代風味ある洗練されたAOR寄りユーロ・メロディアス・サウンドが世界中で好評を博した事から、TOTO、JOURNEY、SURVIVOR等の80年代USメロディアス・バンド等に強く影響を受けたベルギー人ミュージシャン Kurt Vereeckeの一枚限りのアルバムをリリースする為のソロ・プロジェクトであったFROZEN RAINは本格的なベルジャン・AOR&メロハー・バンドとして始動。
その間、この後に長きに渡って Kurt Vereeckeと創作活動の相棒となる1stアルバムで2曲にゲスト参加していたベルギー人キーボーディスト Jurgen Vitrierもバンドの一員に。
Avenue Of Allies Musicのレーベル・メイトであるSHINING LINEのイタリア人ドラマー Pierpaolo“Zorroll”Monti の紹介で、90年代末期から数多のバンドに参加し、その歌声をHM/HRシーンで轟かせているドイツ人HRシンガー Carsten“Lizard”Schultz (ex:DOMAIN、EVIDENCE ONE、EVIDENCE ONE、etc...)を2009年に新たなヴォーカルに迎え、前作ゲスト参加のベルギー人ベーシスト Vincent De Laat (後にベルジャンHMバンドSCAVENGERへ)を正式メンバ-に加え、ドラムスに実弟の Hans Vereeckeを据えると、2012年に2ndアルバム『Ahead Of Time 』がリリースされる。
古い創作曲の録音を念頭としたAOR&ハードポップ・プロジェクトからしっかりとメンツを固め現在活動するバンド作として2ndアルバムが制作されたのが良く分かり、なかでもリーダーの Kurt Vereeckeと共に楽曲創作の中核を成すギタリスト Rik Priemの存在感は絶大で、心に残るフックある弾むリフに随所で耳を惹くハモリを駆使したメロディアスなフレーズ、ピリリと楽曲を引き締めるハードでスリリングなチョーキングやここ一番で爽快に駆け抜けるテクニカルで華やかなソロ等、前作に欠けていたハードエッヂなメロハー要素を完全に一人で構築してさえいる大活躍であった。
Kurt Vereeckeの健康状態は現在も思わしくなく創作活動の大きな障害となっており、更にフルタイムのミュージシャンでない事もあって昼の仕事に時間が取られ、その上ベルギーではAOR&メロハー系に適した優れたミュージシャンを見付けるのが殆ど不可能な為にメンバー探しは困難を極め、新作の制作は遅々として進まぬ間に年月が経過していたらしい…
無論、その間になんの創作活動もしていなかった訳ではなく、ノルウェーのメロハー・バンドFAITH CIRCUSのシンガー Marc Farranoの依頼でFAITH CIRCUSの新譜(現在まで未リリース)のキーボードパートのレコーディング作業に約2年間手を貸したり、相棒の Jurgen VitrierはWAVE WALKERSなる一時期の VangelisやTANGERINE DREAMを彷彿とさせるシーケンシャルなデジタル・サウンドが特徴のアンビエント系エレクトロ・ミュージック・ベルジャンデュオ・ユニットで2021年にデヴュー・アルバム『Kronos 21』をリリースするなどバンド外活動は盛んなのに加え、現在のメンバーは三ヵ国に在住なので主にインターネットを通じて創作活動(メンバー・フォトさえ一堂に会して居ない)が行われ、各自が自宅スタジオで作業する為に制作期間が長引いたのとアルバムのミキシングも自ら手掛けた為、更に時間とエネルギーを消費してしまったと Kurt Vereeckeは語っている。
さて、待望の新作ですが Kurt Vereecke、Jurgen Vitrier、そして実弟 Hans Vereeckeは前作に引き続き参加しているのに加え、新たに2名のミュージシャンがベルギー国外から正式メンバーとして迎え入れられた新体勢で本作は制作されている。
新たにフロントマンに迎えられたのは、90年代中期から主にソングライティングやバッキング・ヴォーカルで数多くのソロ・シンガーやバンドのアルバム制作に協力していた、どちらかと言えば裏方ミュージシャンだがキャリアも能力も十分のベテランで、あのHAREM SCAREMのシンガー Harry Hessを中心としたメロハー・プロジェクトFIRST SIGNALにもソングライティングで参加しているスウェーデン人シンガー Lars Edvallと、EXTREME、Gary Moorem、Steve Lukather等の楽曲をカヴァーしたギター・プイレ動画をYou Tubeをはじめ様々な媒体のネット上にアップしている事から彼がどんな音楽に影響されギターの腕前を磨いて来たかが分る、無名の若きドイツ人ギタリスト Jens Ambroschの2名のみがFROZEN RAINの新メンバーで、残念ながら専任ベーシストは今回参加しておらず、Kurt Vereeckeと Jurgen Vitrier、そしてゲスト奏者も交えてベース・パートを補っているツイン・キーボード5人組編成バンドとなっての第一弾作だ。
惜しむらくは制作期間が長期に渡った為か新メンバー2人が加入する前に本作収録の楽曲は Kurt Vereeckeと Jurgen Vitrierの手によって殆どレコーディングは終えられており、新メンバーがバンドに持ち込んだ新要素がほぼ無い状態(僅かに一曲『One Of These Mornings』だけシンガー Lars Edvallの自作曲が収録)なのと、当初はスペインの期待の新星メロハー・バンドHACKERSのギタリスト Fran Alonsoにバンド加入を打診するもHACKERS活動を優先する為に断られ、最後の最後にネットで見つけた無名のギタリスト Jens Ambroschがほぼ完成していた楽曲に付け足す形でプレイするのみで、他はデヴュー作と同様に友人ギタリスト達をゲストに多数迎えてほぼギター・パートは録音された形になっており、ギタリスト主導で楽曲の数多くが創作されたハードエッヂなサウンドが心地よかった2ndと違って今回はキーボーディストの2人がメインとなっての体勢でアルバムが完成したのが前作との明確な違いなのは間違いない。
因みにそのHACKERSのギタリスト Fran Alonsoは本作で客演しており、3曲で彼の素晴らしいギター・プレイを楽しむ事が出来る他、Roger Ljunggren (T'BELL、NIVA、etc...)とカナダのベテランHRバンド APRIL WINEのドラマー Roy Nicholとスウェーデンのフォーク・ロックバンド FROKEN UNDERBARでドラムを務める Daniel Trobellも客演参加し、アルバムの多面的なサウンドをさらに引き立てている。
と、公私共に諸々のゴタゴタが山積し決して万全の制作体勢で望めた訳でない新作の内容についてだが、FROZEN RAINファンならずともメロハー好きな方ならば彼等の新譜で一番の注目点はニュー・シンガーがどういった質の歌声なのかという事だと思うが、ご安心下さい、新フロントマン Lars Edvallはスウェーデン人と言う事である程度予想は付いた方もいらっしゃるだろうが皆さんが望んでいた通り(笑)デヴュー作の流れを汲む所謂ハイトーン系の定番北欧シンガーな歌声で、80年代から活動を開始し、MADISONや Yngwie Malmsteen、GLORY、KARMAKANIC等々とのHMからポップス、プログレまで幅広い作品で活躍し今や北欧シーンを代表するシンガー Goran EdmanやTOTOの Joseph Williamsを思わす甘く滑らかな声質と長い音楽活動を経たベテランらしくエモーショナルな歌唱力が素晴らしい、正にキャッチーなユーロ・AOR&メロハーを歌うのにピッタリな透明感ある伸びやかな歌声と言えましょう。
『私は強いメロディーと良く練られたアレンジが好きだ』とリーダーの Kurt Vereeckeが語るように本作の楽曲は、メロディ、リズム・アプローチ、ソロ・パート、ヴォーカル・メロディ、バッキング・コーラス、バンド・アンサンブル、スタイリッシュなアレンジ等どれを取っても実に丁寧に考え抜かれて創作されたのが分る、ちょっと聴きハードポップ作に思えるくらい軽めで爽快なキャッチー・サウンドだが、聴き込む程に随所にハードエッヂでメタリックなタッチと哀愁漂うユーロ圏特有のウェットで叙情的な旋律が顔を覗かせ、終始耳当たりの良いそのスムースなモダン・サウンドの奥底にシッカリとロック・スピッリッツを宿している事が分かり、病やメンバー探し、そして制作費等のアゲンストな状況にもめげず長きに渡り諦める事なくコツコツと魅力的な楽曲を創作し続けた Kurt Vereeckeの不屈の精神を感じさせる、AORファンだけでなくメロハー・ファンをも惹きつけるプロデュースが光る意欲作だ。
Kurt Vereeckeも Jurgen Vitrierも出しゃばるようなキーボード・プレイを聴かせる事もなく、終始楽曲第一を心がけて細心の注意を腹ってコンポーズされた美旋律の数々は素晴らしくアレンジ共々洗練され文句の付けようも無いのですが、個人的にはちょっとドラムの音がバタついている印象だし、総じて些かレンジが狭く音の広がりに欠けるきらいがあり、Lars Edvallのヴォーカルにもう少しパワフルさとキレが有れば文句無しだったなとか、専任ギタリストが居ない為に2nd作の楽曲の様にギター・サウンドがもたらすスリリングさやメタリックなハードエッヂさ具合を物足りなく感じてしまう等々気になる箇所が有るものの、メジャー・レーベルからリリースされていないバジェットの限られたインディ・アルバムと考えれば極上までいかずとも十分にメロハー・ファンの心を掴む楽曲が余す所無く詰まった力作なのは間違いないので、出来る事ならばこのままメンツを固定して次なる新作を一刻も早くに届けて欲しいものであります(*´ω`*)
Tracklist:
01.One Mile From Heartsville
03.Fire
04.She's The One
05.How Could I Know
06.Let Me Love You
07.One Of These Mornings
08.More Than A Friend
09.What's It Gonna Be
10.Ready For Tonight
11.That’s Why I'm Loving You
12.The Waiting's Ove
13.Tell Me No Lies *
14.Ready For Tonight (Alternate Intro Version) *
* = Bonus Track for Japan
FROZEN RAIN Line-Uup:
Lars Edvall (Lead & Backing Vocals)
Jens Ambrosch (Lead & Rhythm Guitars)
Jurgen Vitrier (Keyboards、Bass、Acoustic Guitar、Backing Vocals)
Kurt Vereecke (Keyboards、Bass、Clean Guitar、Drum Editing、Backing Vocals)
Hans Vereecke (Drums)
Guest Musicians:
Roy Nichol (Drums)
Daniel Trobell (Drums)
Fran Alonso (Guitars)
Roger Ljunggren (Guitars)
Morris Adriaens (Guitars)
Mats Nermark (Guitars)
Don Lecompte (Bass)
Glenn Vandorpe (Bass)
Josefine Wassler (Backing Vocals)
Joke Vereecke (Backing Vocals)
Produced by FROZEN RAIN
]]>MAGNUMのリーダーでギタリストの Tony Clarkinが死去...http://malilion.exblog.jp/33216736/2024-01-10T17:19:00+09:002024-01-11T02:02:08+09:002024-01-10T17:19:37+09:00malilion音楽
70年代から一時の解散を挟み現在まで活動を続けて来た英国が誇るブリティッシュ・メロディアスHRバンドMAGNUMの創設メンバーにしてバンド・リーダーであるギタリストの Tony Clarkinが死去した。77歳だった。
]]>優美なイタリアン・フォーキー・シンフォを聴かせる ANCIENT VEILが難解な一大コンセプト作をリリース!http://malilion.exblog.jp/33208765/2024-01-02T13:23:00+09:002024-01-06T08:47:44+09:002024-01-02T13:23:11+09:00malilion音楽
ANCIENT VEIL 「Puer Aeternus」'23
叙情派イタリアン・シンフォバンドERIS PLUVIAの Alessandro Cavatori[Serri]((Vocals、Guitars)と元ERIS PLUVIAの管楽器奏者 Edmondo Romano (HOSTSONATEN、FINISTERREでも活動)を中心に1984年に立ち上げられたプロジェクトが出発点で後に5人編成バンドへ発展した彼等の5年ぶりとなる待望の4thアルバムは、ギリシャ神話に登場する永遠の子供神イアッカスをモチーフに、フォーキー・シンフォ・プログレ・バンドによる叙情的で繊細なシンフォニック・サウンドに加え、数々のゲスト・ヴォーカル陣と二十名近くのオーケストラ楽器奏者及び合唱隊を中心とする客演者達と織りなすドラマチックな演劇性がミックスされ3年の歳月を費やし制作された一大コンセプト・アルバムとなったのを、ちょい遅れてご紹介。
Tracks Listing:
01. L'eterno Tempo [Time Eternal]
02. Il Distacco [The Detachment]
03. La Caduta sulla Terra [The Fall To Earth]
04. La Vision della Parte Mancante [The Vision Of The Missing Part]
05. Nella stanza l'intera Storia Umana [In The Room, The Entire Human Story]
06. Il Senso dell'Insensato [A Sense Of The Senseless]
07. La miseria del Mondo [The Misery Of The World]
08. La Comprensione del Tempo [The Comprehension Of Time]
09. Amore e Potere [Love And Power]
10. L'ascesa di Hermes Nel Dio Visibile [The Rise Of Hermes As The Visible God]
11. Il Terzo Millennio [The Third Millennium]
12. La Culla Troppo Stretta [The Too Narrow Cradle]
13. Il Secondo Tradimento [The Second Betrayal]
14. Io e Ombra [I And Shadow]
15. Puer Aeternus
16. La Reviviscenza [Resurgence]
17. La Saggezza Della Natura [The Wisdom Of Nature]
18. La Nuova Aurora [The New Aurora]
ANCIENT VEIL Line-up:
Alessandro Serri (Vocals、Classical & Acoustic Guitars、12-string & Electric Guitars、Flute、Harmonica、Keyboard Programming)
Edmondo Romano (Alto、Soprano、Tenor & Bass Recorders、Soprano & Sopranino Saxophones、Chalumeau、Clarinets、Low Whistle、Vocals)
Fabio Serri (Piano、Hammond Organ、Moog、Vocals)
Massimo Palermo (Bass)
Marco Fuliano (Drums)
With:
Martin Grice (Alto Saxophone)
Francesco Travi (Bassoon)
Natalino Ricciardo (French Horn)
Marco Gnecco (Oboe)
Roberto Piga (First Violin)
Fabio Biale (Second Violin)
Ilaria Bruzzone (Viola)
Kim Schiffo (Cello)
Olmo Arnove Manzano(Percussion)
Character Vocals:
Simona Fasano (Nature)
Alessandro Serri (Puer - Hermes - Kore)
Lino Vairetti (Creator)
Elisa Marangon (Soul)
Tony Cicco (Cantor)
Roberto Tiranti (Chrono)
Fabio Serri (Mercury)
Sophya Baccini (Thoth)
Edmondo Romano (Humanity in choir)
Alessandro Serri (Humanity in choir)
Simona Fasano (Humanity in choir)
]]>フランス産モダン・メロディアス・プロジェクト・バンドHEART LINEが80年代名曲の限定カヴァーEPをリリース!http://malilion.exblog.jp/33204773/2023-12-28T17:31:00+09:002023-12-29T20:08:50+09:002023-12-28T17:31:23+09:00malilion音楽
HEART LINE 「Original Seeds」'23
フランス人ギタリスト兼プロデューサーの Yvan Guillevic (YGAS、PYG、UNITED GUITARS、EMPTY SPACES)によって2020年に結成されたメロディアス・ロックプロジェクト・バンドが、80年代メロディアス・ハードの名曲の数々をカヴァーしたEPをドイツのメロハー・レーベル Pride & Joy Musicから500枚限定リリースしたので即GET!
2023年6月に2ndアルバム『Rock 'N' Roll Queen』をリリースし、パリを含むツアーを成功させたHEART LINEが、まさかこの短期間にカヴァーEPとは言え新音源を年末にリリースするとは完全に予想外でした。
“Falling”は、1985年にリリースされた英国バンドTOBRUKの1stアルバム『Wild On The Run』収録曲で、印象的なキーボードとハードでワイルドなギターが唸りを上げるパワフルなトラック。
“Runaway”は、1984年の同名アルバムに収録されている米国バンドDAKOTAの名曲で、オリジナルのモダンさを交えた美旋律と表現方法、今耳にしても新鮮さを感じさせるアレンジ力の高さ、そして何よりも Jerry Hludzikのエモーショナルな抜群のヴォーカルが楽しめる素晴らしいトラック。
“Living On A Knife Edge”は、1986年にリリースされたLED ZEPPELINの亡きドラマー John Bonhamの息子でAIRRACEや自身のバンドBONHAMでも活動した Jason Bonhamや、HEARTLANDやSNAKECHARMERの Chris Ouseyらが在籍していた事で知られる英国バンドVIRGINIA WOLFの1stアルバム収録曲で、洒落たニューウェイヴ感覚とHR風味が絶妙に交差するトラック。
“Go Easy”は、スウェーデンの北欧メロハー元祖的バンドALIENが1988年にリリースした同名デヴュー・アルバム収録曲で、オリジナル・シンガーの Jim Jidhedをフィーチャーした北欧盤と元MADISONでALIEN、SNAKECHARMER、MIDNIGHT SUN、BEWARP、SILVER SERAPH、JADE、MAD INVASION等々、この後に数多くの北欧HRバンドを渡り歩く事になる実力派シンガー Pete SandbergをフィーチャーしたUSリミックス盤ヴァージョンのヴォーカルが違うデヴュー盤が有る事でメロハー・ファンには有名で、アルバム内でも最もキャッチーでアメリカン・テイストがあるトラック。
Track List:
01. Falling (TOBRUK Cover)
02. Runaway (DAKOTA Cover)
03. Front Line (AVIATOR Cover)
04. Living On A Knife Edge (VIRGINIA WOLF Cover)
05. Go Easy (ALIEN Cover)