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ロシアの暴走バカテク野郎 LOST WORLD BANDがデヴュー前の未発音源を交えた再録作第三弾をリリース!

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LOST WORLD BAND 「Remission」'25

現在は米国NY在住の天才的ヴァイオリン奏者にしてマルチ・プレイヤー Andy Didorenko率いるロシアン・シンフォニックの最高峰バンドLOST WORLD BANDが、バンド初期の1994年にリリースしたカセット・アルバムを元に1996年に楽曲が追加されCD-Rでリリースされた再構成アルバムの旧音源を元に新録音源を追加して再々構成されたアルバムとなっており、『Lost World 1992』'21、『The Dawn』'24 に続く旧音源再構成アルバムがリリースされたのを少々遅れてご紹介。

本作はデヴュー前のロシア時代の古い楽曲リメイク作と言う事もあってか現在の Andy Didorenkoのワンマン・プロジェクトと化したLOST WORLD BANDが披露する癖の強いミクスチャー系サウンドでない、新人プログレ・バンドらしいフォロワー成分を感じさせる為に独創性では些か劣るが反面大変聴き易く、ソリッドでヘヴィな後期クリムゾン要素と優美で気品あるクラッシック音楽要素を組み合わせた如何にもロシア産シンフォ・バンドらしいその流麗なサウンドは活動初期時点で既に後の飛躍を予感させる粗削りながら煌めく様な魅力を放っていたのに驚かされます。

本作時点の編成はヴァイオリン、ギター、コーラスの Andy Didorenkoと彼の長年の相棒であり惜しくも2020年に早逝したフルート奏者 Vassili Soloviev、そしてデヴュー作『Trajectories』及び2nd『Awakening Of The Elements』にも参加しそのテクニカルな鍵盤捌きを披露するキーボーディスト Alexander Akimovをコア・メンバーに多数のゲスト奏者を招き制作されており、後のデヴュー作では華麗で切れ味鋭いヒステリックなヴァイオリンとハードエッヂな攻撃的ギターを軸に展開する後期クリムゾン的なシンフォ・サウンドを血気盛んに轟かせ続く活動が楽しみな新鋭バンドだったが、渡米後の鈍色で甘味が無く癖の強いミクスチャー系サウンドを思うと、相棒である Vassili Solovievを失い、さらに Alexander Akimovとも決別し、追い打ちをかけるようなロシア・ウクライナ戦争勃発が Andy Didorenkoの創作面に暗い影を落としてしまったのは否定しようがなく、現在の彼が奏でる音楽が闇と怒りに覆い尽くされ神経質で陰鬱なダーク・サウンドに塗り潰されてしまったのが本当に残念でなりません…

実は1996年にアルバム7作分(!?)ものマテリアルを制作し極々少数枚だけCD-Rに収め人知れずリリースしたという事で、未だ見ぬ旧音源再構成アルバム『The Dawn』の次の創作時期音源が多数存在する事が今回初めて明かされた訳ですが、本作も基本的に『The Dawn』をここで紹介した時と音楽的な方向性は同じで、後はゲスト奏者が持ち込む歌声や演奏で差異が生まれるのが特徴なだけで大きくサウンドの本質が変化してはいないのが今回の旧音源再構成作で確かめられ、恐らくこれからも続々とリリースされる事になるだろう非常に短期間で制作された旧音源の再構成作も殆ど音楽性に変化はない同系統な作品なのだろう、と勝手に予想しております。

『The Dawn』紹介時に述べた通り、お約束のヒステリックなヴァイオリンとクリムゾン風な硬質なギターが疾走する攻撃的なナンバーを始め、スリリングなキーボードが活躍するシンフォ風、ファンタジックなフルートとエモーショナルなサックスがリリカルな叙情を響かせリズミックに展開するナンバー、艶やかな美声を聴かせるフィメール・ヴォーカルをフィーチャーしたロマンティックで揺らめく様にミステリアスな曲等々、『The Dawn』では色彩感あふれる管弦楽曲や民族色豊かなオペラタツチを魅せたが今回は繊細で柔和な感触が強く、美しいストリングと涼やかなフルートの音色が淡く重なって響き渡る楽曲やジェントリー・ヴォイスなヴォーカルがしっとり歌い上げるナンバーをはじめ彼等にしては大変聴き易い楽曲が数多く納められており、重厚な壮大さよりも些かコンパクトさや軽やかさに軸足を置いた作風に思え、若かりし頃の Andy Didorenkoと Vassili Solovievが手探りであれこれ試行錯誤しつつ何も恐れずに創作領域を押し広げていたのが伝わってくるかのようだ。

無論、相変わらずダークでスリリングなギターがメタリックな音色を不穏に轟かせるなど一筋縄ではいかぬアグレッシヴなプログレ・サウンドにクラシック由来の気品を漂わすスタイルから大きく外れてはいないが、『The Dawn』で魅せた超絶技巧で聴衆を魅了した若き日の Al Di Meolaや、テクニカルなインタープレイ飛び交う初期MAHAVISHNU ORCHESTRAを思わす、寒々しいロシアで鬱屈した焦燥感を抱えた若き日の Andy Didorenkoの抑えきれぬ創造性が火花を散らして煌めいていた様なパワフルでスリリングなサウンドから、フッと一旦力を抜いて圧倒する迫力よりも優美で気品あるクラシカルさ香る繊細さに主眼を置いたアコースティック・ギターやピアノの音色が美しいフォーク調のヴォーカル・ナンバーが中心となった彼等にしては歌モノ中心な方向性作と言え、それが実に悪くない出来栄えでこの方向性の作品をもっと早く聴かせて欲しかった、と一般的なシンフォ系ファンやフィメール・ヴォーカル系シンフォ作のファンは思うだろう知る人ぞ知るドマイナー作のまま埋もれさせて置くには惜しい作品なのは間違いない。

こうなってくると早く次の旧音源作を聴かせて欲しくなりますよね? 正直、渡米してからの音楽性作よりもロシア時代の作品の方が一般的なプログレ&シンフォ・ファンには受け入れ易いんで…(汗

実際、フィメール・ヴォーカルが苦手な自分でも本作を聴く限りではこのまま艶やかで清楚な美声の Phoebe Carter嬢をフロントに据えて本格的に活動を開始していたならば今頃また違った成功を収めてロシアと言わずワールドワイドにメジャーな展開を90年代に果たしていたかも、とか思えてしまうくらい良い出来映えなのが実に惜しい…

とまれ彼等のファンは無論の事、フィメール・シンガーもののユーロ・シンフォがお好みな方やKING CRIMSONの遺伝子を受け継ぐクラシカルさとモダンさを巧くMIXしたシンフォ作がお好きな方、そして90年代初頭の世界的な音楽の流行やメジャー・ミュージック・シーンとは一切無関係な、真に芸術的で冒険的な若きロシア人音楽家がピュアな創作活動で生み出したアート・ロック作にご興味ある方は一度本作をチェックしてみても決して損はしないだろう。

Tracks Listing:
01. Almost Asleep
02. Remission
03. Lullaby Part 1
04. Lullaby Part 2
05. Deep Still Part 1
06. Deep Still Part 2
07. The Waltz
08. Under Broken Skies
09. Solitude

Original Band Line-Up:
Vassili Soloviev : Flute
Andy Didorenko : Violin、Guitars、Backing Vocals
Alex Akimov : Keyboards

With:
Brian Paley : Vocal
Phoebe Carter : Vocal
Jordan McQueen : Drums
Sergey Didorenko : Saxophone
Yuliya Basis : Backing Vocals

Produced by Andy Didorenko & Alex Akimov


by malilion | 2025-09-12 18:41 | 音楽 | Trackback
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