IQ 「Dominion」'25 MARILLIONを筆頭に英国ポンプ・ロックを代表するGENESISフォロワーの1つとしてPENDRAGON等と共に80年代初頭に唸りを上げてシーンを賑わした新鋭バンドであった彼等も既に活動歴40年を超える重鎮バンドであり、今やシーンを代表するバンドの1つでもある彼等が前作『Resistance』'19 以来、約5年半振りに通算12枚目となる待望の新作スタジオ・アルバムをリリースしたのを少々遅れてGETしたのでご紹介。 5年以上の歳月をかけて丁寧に作り上げられた新作は、如何にも彼等らしい英国プログレッシヴ・ロック直系の濃密なシンフォ・サウンドが詰め込まれているが、前作で重厚且つ翳りのあるダーク&ミステリアス路線は突き詰め切ったと悟ったのか、本作ではこれまでと些か毛色の違う爽快感さえある美しいシンフォ・サウンドを聴かせてくれ驚かされた。 一番顕著な違いが感じ取れたのは Peter Nichollsのヴォーカル・アプローチの変化で、これまで不吉で邪悪な物語の語り部の如く仄暗い情熱渦巻く大仰でシアトリカルな歌唱を聴かせる事が多かった彼だが、今作ではこれまでの陰鬱な雰囲気が立ち込めるダークなイメージを大きく覆す意外な程に爽やかでリラックスした優し気な歌声をメランコリックなメロディに乗せてシットリと歌い上げており、けれどバックのサウンドは初期作から一貫してGENESISをはじめ70年代ブリティッシュ・ロック影響下にあるロマンチシズムが漂う美旋律と緻密なアレンジ、HR的アプローチも辞さないハードでダイナミックなギター・ワーク、そして『Frequency』'09 以降の作品で顕著な三代目キーボーディスト Neil Durantを迎えて一気に加速したモダン・テイストが色濃い、これぞ英国叙情という気品と明快な音使い、そしてこのバンド独特のリリシズムを湛えたドラマ性を継承した従来通りの英国シンフォ・サウンドで構成されているので80年代末期の様な売れる為のサウンド変節を危惧した方々は安心して欲しい。 壮麗なメロトロン、幻想的なシンセ、重厚なオルガン、繊細なピアノ、優美なオーケストレーションも取り入れ、多種多様な鍵盤楽器を用いて様々な音色をイマジネイティヴに紡ぎ出す多彩なキーボード・サウンドをメインに、ダークなだけでなく爽快さも新たな表情豊かなヴォーカル、ハード・タッチで泣きまくりのギター・ソロやアコギも含むエモーショナル且つ精巧なギター、パワフルでソリッドなリズム・セクションが一体となって、センチメンタルでデリケートなタッチのサウンドから一転爆発するような激しくドラマチックな楽曲展開と、絶妙な緩急の付け方で思わず息を呑む研ぎ澄まされた美旋律と胸に迫る叙情の数々を対比させる、カラフルでイマジネイティヴに満ちた劇的な効果を何倍にも高めて魅せる彼等お得意の手法が随所で味わえるスケール感ある充実のシンフォニック・ロック作だ。 まぁ、爽快なヴォーカルを聴かせているとは言っても、やはり定番の憂鬱で暗い重厚なヴォーカルや軋むようなダークで邪悪な歌声を聴かせるミステリアス・パートも多々あり、いきなり180度バンドの印象が変わった訳ではないし、けれど流石にヴォリュームタップリの二枚組大作も創り終えたしそろそろ別方向の軽めな作品を創ろう、となったに違いない。 リードトラック『The Unknown Door』は22分越え、他にも12分越えの楽曲を含むものの、他は3分台とコンパクトな楽曲もあり、彼等のコンポーズ能力が高く楽曲構成も見事な為かアッという間に最後まで聴き通せてしまう、聴き終えた後の印象が妙にアッサリしていて思いの外にアルバムが短く感じられる、そんな作風なのもこれまでのアルバムと印象が大きく違って感じる要因になっているのだろう。 センチメンタルでメランコリックなメロディを奏でるだけでなく予想外にノイジーでハードエッヂなギター・サウンドが活躍する場面も多々あり、随所で顔を出すシンセ・サウンドのデジタリーな響きが妙に耳に残るのも拍車をかけるのか、いつになくソリッドでモダンなシンフォ・サウンド作に思える新譜であります。 従来からの忠実なIQファンは言うに及ばず英国シンフォ作好きな方や、モダン・テイストあるユーロ・シンフォ作好きな方なんかに是非チェックしてみて欲しい、彼等のサウンドにダークで陰鬱なイメージばかり抱いて忌避してきた方にこそ本作は少々毛色が違うサウンドなので興味を持たれたなら一度本作のサウンドを実際ご自身の耳で確かめてみては如何だろうか? Track list: 01. The Unknown Door 02. One Of Us 03. No Dominion 04. Far From Here 05. Never Land IQ Line-Up: Paul Cook : Drums & Ppercussion Neil Durant : Keyboards Tim Esau : Bass、Bass Pedals、Backing Vocals Michael Holmes : Guitars、Keyboards、Backing Vocals Peter Nicholls : Lead & Backing Vocals Produced by Michael Holmes
by malilion
| 2025-04-30 02:15
| 音楽
|
Trackback
|
カレンダー
カテゴリ
以前の記事
2025年 06月 2025年 05月 2025年 04月 2025年 03月 2025年 02月 2025年 01月 2024年 12月 2024年 11月 2024年 10月 2024年 09月 more... お気に入りブログ
最新のコメント
メモ帳
検索
最新の記事
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||