MASTER SPY 「Maze Runner」'25 ポルトガル、カナダ、イギリス、ロシア混成キーボード入り7人組メロディアスHMバンド MASTER SPYが Blaze Bayley (ex:IRON MAIDEN)をフロントマンに招いたEP『The Ghost Agent』'22 以来となる2ndフル・アルバムをデヴュー作に引き続き米国インディ StormSpell Recordsから500枚限定盤でリリースされたのを少々遅れてGETしたのでご紹介。 彼等がカナダ産メロディック・パワー・メタルバンドと紹介される事が多いのは、Roland Grapow (ex:HELLOWEEN、MASTERPLAN)がミックスを手掛けギター・ソロでも一曲客演して話題を呼んだデヴュー作『The Train』'21 時にカナダ人ベーシスト Martin Beauchampと同じくカナダ人ギタリスト Merk、そしてスウェーデンのスラッシュ・メタル・トリオ CONDEMNED-ADのデヴューEPにヘルプ参加したりPCゲームのサントラ制作に参加していたギリシャ人ドラマー兼キーボーディスト Kostas Vassを中心 (と思われていたが実は違った)にゲスト奏者を招く制作体勢だったのと、長尺曲ばかり収録し叙事詩に挑んだデヴュー作が、Blaze Bayley時代の90年代IRON MAIDENのアルバム『X-Factor』'95 や『Virtual XI』'98 からインスパイアされた、ツインリード・ギターが官能的に絡み合う点も拍車をかけ殆んどMAIDENトリビュート・バンド状態なサウンドに加え、フロントマンで英国HMバンドAIRFORCEに現在も在籍しているポルトガル人シンガー Flavio Linoの歌唱スタイルがまんま Bruce Dickinsonフォロワー(声質がモロ。Michael Kiskeっポさも有)な為に、MAIDENフォロワー=ベーシストがリーダー=カナダ産バンド、という風に捉えられたのが大きかったのだろう。きっと。 結局の所、全曲作詞作曲していたギタリスト Merkがリーダーなのでカナダ産バンドという捉え方で間違ってはいないが、デヴュー・アルバムは最初デジタルオンリーで2021年に自主リリースされ、多国籍ミュージシャンが関わるだけでなく他バンドとも掛け持ちだったメンバーが居た事や、誰も有名バンドの元メンバー等でないマイナー無名新人バンド(当初メンバーは匿名だった)であったのに加え、2022年に米国StormSpell Recordsからフィジカル盤が改めてリリースし直された時差のせいで誤った情報が色々と広まってしまったと思われ、現在でも誤情報等が各メタル・バンド紹介サイトに散見しているので注意されたい。 ただ、3年ぶりとなる待望の2ndアルバムである本作、正に多国籍メンバーからなる強力な新メンバーを迎えた大幅なメンバーチェンジを行った新編成で制作されているので『カナダのHMバンド』という紹介のされ方が今も正しいのか些か疑問だ。 1stから引き続き参加はドラマー Kostas Vassとギタリスト Merkのみとなっており、新フロントマンに英国HMバンド TAILGUNNER、ドイツのシンフォニック・パワメタ・バンドINDUCTION、ドイツHMバンド TITAN BLOOD、米国スラッシュ・メタル・バンドMETAL ASSAULT等々、数多くのバンドに籍を置く実力派英国人シンガー Craig Cairnsを迎え、ロシアのメロデス SILENCE OF SORROWや同じくロシア産メロデスINSTORMに籍を置くロシア人ギタリスト Roman Nemtsevに代わって、壮大なスケール感あるオペラチックな作風で独自の地位を築きシンフォニック・メタルの先駆者として名を馳せた北欧シンフォ・プロジェクトTHERIONのテクニカルで華麗なリード・プレイで知られるアルゼンチン人ギタリスト Christian Vidalを迎えたのに加え、デヴュー作でも客演していた現IMPELLITTERI、元BONFIREの英国人ベーシスト James Amelio Pulliを正式なベーシストに据えるなど正にワールドワイドな国籍を持つ実力派ミュージシャン達が集った強力布陣となっている。 その他、デヴュー作のギター・ソロパートで一部客演しEPでは全面参加していたカナダ人ギタリスト Officer Xも在籍しているので現状3人ギタリストがバンドにおり、これは Christian Vidalが常にバンドに帯同出来ぬ為の措置なのか、それとも今後もトリプル・ギター編成で活動するのか現時点では不明だ。 加えてデヴュー作でもバッキングシンガーとして参加していたポルトガル人シンガー Alex VanTrueが本作にも同じくバッキング・シンガーとして参加し、デヴュー作ではドラマーの Kostas Vassがキーボードとオーケストレーションを担っていたが本作ではステージでのアルバム再現を踏まえてかカナダ人鍵盤奏者 Pascal Lamarcheを迎え同じくキーボードとオーケストレーションを任せるなど構成メンツの点でもデヴュー作を上回る充実ぶりを示している。 又、CDにはEP『The Ghost Agent』収録曲が一曲ボーナストラックとして追加されており、Blaze Bayleyの歌声と1stスタイルのメランコリックなメロディの楽曲も楽しめる盛り沢山な内容の本作、まだまだ無名の新人インディHMバンドの2ndアルバムとしては参加メンツが豪華過ぎなのは間違いない。 さて本作の内容の方だが、殆んどMAIDENトリビュート・バンド状態であったが所々で耳を惹くメロディが聴かれるもののやりたい事にバンドポテンシャルが及んでいない、概ね無駄に長い楽曲がマイナス要因として働き凡庸な印象を強めていた〝イマイチピンと来ぬ″B級マイナーHMサウンドな前作から、強力メンツを得て大きく音楽性とサウンドを進化させ、楽曲をコンパクトに改め、一気にスピードを上げ、熱いシンガロングと高らかに歌い上げるパワフルなヴォーカルをフィーチャーし、煌びやかなシンセを多用したドラマティック且つ壮大な美旋律が乱舞する、トラディショナルHMからパワー・メタルへ大きく舵を切ったキャッチーでメロディアスなユーロ・スピード・メタルを披露している。 フロントマンがチェンジしたのだから受ける印象がガラリと変わるのは当然で、伸びやかなハイトーン・ヴォイスを聴かせる新シンガー Craig Cairnsの歌唱スタイルや声質がドイツ産スラッシュ・メタル・バンド SEPTAGONのシンガー Markus Beckerを思わせる所が多々ある為かよりスピード・メタルな印象が強くなり、加えてデヴュー作で聴かせた80~90年代IRON MAIDENからの影響も若干残しつつ大々的にBLIND GUARDIAN風な熱いコーラスを響かせ、STRATOVARIUSや初期ELEGYを彷彿とさせるテクニカルで込み入った楽曲展開も垣間見えるが只メロディアスでティピカルなパワーメタルを演奏している訳でなく、DRAGONFORCE辺りを連想させる00年代型のモダンなサウンド・アプローチとスピーディな楽曲展開、そして華やかでデジタリーなシンセ・サウンドを随所に活用しオクトジェニックなジャーマンHMテイストを残しつつシンセウェイヴ風なタッチも感じさせる、古くて新しいモダンHMサウンドをシンフォニックにエピカルに高らかに轟かせた、正直『大化けした!』と驚かされたかなりのスケールアップを見せつける渾身の力作だ! 乱暴に新作サウンドを例えると、高速ツインギターの轟音でサウンドが埋め尽くされているDRAGONFORCEのハッピー・サウンドのギター・ワークを少し抑え、代わりにSFチックで華やかなシンセ・サウンドを加えつつブリティッシュHM由来のオーセンティックでエピカルな臭メロっぽさも感じる旋律をメインに、ハイトーン・シンガーが力一杯に歌い上げ、80年代ジャーマンHM風の疾走感と分厚い野郎コーラスを伴って怒涛の勢いのままツーバス・ドカドカと突っ走る、といったイメージだろうか? 上手く例えられなくて申し訳ない(汗 歌詞の題材はMAIDENトリビュート・バンドなのが出発的なので驚かないがデヴュー作同様にファンタジーがメインで、IRON SAVIOR、GLYPH、DRAGONFORCEといったバンドの流れを汲むシリアス過ぎない、バーチャル・ゲーム、冒険、ダークヒーロー等の如何にもHMらしいSF&ファンタジーな題材を扱っているのでその辺りで好き嫌いは出て来るかもしれない。 2ndアルバムにして驚異的な進化発展を果たした彼等だが、無論問題が全く無い訳でなくバジェットに限りあるインディ・バンド故仕方が無いが本作のプロダクションとサウンドの品質が些か低く、前作は Roland Grapowの協力があったお陰でインディ作ながら悪くないサウンド・プロダクションだったのだと新ためて痛感させられた。 後は驚くような新基軸サウンドでなく、既存バンドの要素を巧く組み合わせて現代的なモダンHMへ仕上げている、独創性という点で言うとまだまだなのは否めないと言うのも本当の所だろうし、アルバムの顔であるジャケット・デザインにもう少しセンスと言うかお金を掛けて欲しいと言うのが偽らざる本音ですかね…もしかしたら敢えて80年代スラッシュ・メタルっぽさを演出しようとしたのかもしれませんが、折角の入魂のHM作もB級メタル丸出しのチープなイラストでは彼等の事を知らぬリスナーに興味を持ってもらえないのは勿体無さすぎるので。 とまれ参加メンツのファンや彼等が在籍するバンド名を見て引っ掛かりを感じた方や、LOST HORIZON、IRON MAIDEN、MASTERPLAN、ANGRA、STRATOVARIUS、BLIND GUARDIAN、DRAGONFORCE等のファンな方なんかにも一度チェックしてみて欲しい期待の新人HMバンドMASTER SPYの聴き応え十分な新作であります。 Track List: 01. Maze Runner 02. Challengers Of The Unknown 03. Speed Racer 04. Doppelganger 05. The Vigilante 06. The Storm 07. The Asylum (Bonus Track) MASTER SPY Line-up: Craig Cairns : Vocals Merk : Guitars、Songwriting Officer-X : Guitars、Songwriting Christian Vidal : Guitars James Amelio Pulli : Bass Kostas Vass : Drums Pascal Lamarche : Keyboards、Orchestrations Additional Vocals & Backing Vocals by Alex VanTrue with: Blaze Bayley : Vocals on track 07 Mixed & Mastered by Frank Pitters
by malilion
| 2025-04-09 17:42
| 音楽
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