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RHAPSODYやANGRAでHMシーンにその名を轟かす Fabio Lioneが過去在籍したプログHMバンドATHENAが名を改め23年ぶりに再結成作4thをリリース!

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ATHENA XIX 「Everflow Part 1: Frames Of Humanity」'24

半年遅れのDGM新譜購入と合わせて、同じく90年代同期デヴューのキーボード入り5人組イタリアン・プログHMバンドATHENAの23年振りとなる再結成作をかなぁ~り遅れてご紹介(汗

オリジナル・メンバーが誰も居なくなったが現在も鋭意活動中なDGM、バンドを率いるリーダー Olaf Thorsenが突如脱退し、活動休止を挟んでアッサリ Olaf Thorsenが復帰し活動中なLABYRINTH、そして2001年に3rdアルバム『Twilight Of Days』をリリースするも翌2002年に解散していたが2019年にオリジナル・メンバーを中心に再結成し、バンド名を改め本作をリリースしたATHENA XIXと、DREAM THEATERの2ndアルバム『Images And Words』'92 大ブレイクに触発され全世界で雨後の筍の如く出現したプログHMバンド達の中でも元々イタリアでは70年代からプログレが盛んであった事もあってか数(当時、私も沼ってまだ見ぬ次なるビッグシングを探してアホな散財繰り返してたなぁ…)とレベルの高さは群を抜いており、その90年代イタリアン・プログHMムーヴメント時にほぼ同じタイミングでデヴューした有望バンドがDGM、LABYRINTH、そしてATHENAで、そんな彼等が再び時を同じくして新譜をリリースしたのには何か運命的なものを感じますね。

1991年にATHENAが結成された当時のフロントマンは Fabio Lioneで、デモ制作は行なうが1995年のデヴュー作『Inside, The Moon』リリース前に既に脱退しており、その後に前記のLABYRINTH、イタリアン・エピックHMバンドRHAPSODY OF FIREやイタリアン・パワメタ・バンドVISION DIVINE、そして南米ブラジルの至宝 ブラジリアンHMバンドANGRAのフロントマンとして世界を股にかけ大活躍してきたのはHMファンの皆様ならば良くご存じな事と思う。

元々ギタリストだったが Fabio Lione脱退に伴いシンガーも兼任していた Alessio Mostiがデヴュー作リリースの後ほどなくして脱退(個人的には嫌いでない歌声だし歌唱力も兼任とすれば十分なレベルだったが…半ばクビに)し、続く2nd『A New Religion ?』でRHAPSODYに在籍しながら Fabio Lioneがバンドに復帰し再びヴォーカルを担うと1998年にアルバムがリリースされ、その多彩でパワフルな圧巻のヴォーカル・パフォーマンスとプログHMからよりメロディアスでスピーディなHMサウンドへの進化を魅せた『A New Religion ?』はATHENAの傑作であり90年代イタリアン・パワメタの名盤とされているが、残念な事にやはりワールドワイドで活躍するバンドとの兼任は難しく再び Fabio Lioneは脱退してしまう…

Fabio Lioneの後任と言うプレッシャーを背負う新シンガー Francesco Nerettiを迎えダークなファンタジー・テイストとスラッシーな疾走感を強めたジャーマンHMへ接近した、その影響でか些かマイナーB級HM臭くなった(パタパタ鳴るバスドラが…)新サウンドを提示した3rdアルバム『Twilight Of Days』をドイツの大手インディ・レーベル Noise Recordsから2001年にリリースするが惜しくも2002年に解散を迎え長らく彼等の名はシーンで忘れられていたが、2019年にATHENAはオリジナルメンツを中心に新たなシンガーを迎えて活動を再開し、2022年には Fabio Lioneが再びバンドへ復帰、バンド名を改め本コンセプト作の制作を着々と進めて来たのは2025年夏以降ANGRAが活動を休止する事と決して無関係ではないだろう。

こうして見るとLABYRINTHもATHENAも中心人物、又はバンドの顔とも言えるフロントマンの出たり入ったりにバンド活動が否応なしに引っ張られてゴタついている風に思え、オリジナル・メンバーが誰一人として居なくなったDGMの方が解散も休止も迎えず、コンスタンスにアルバムをリリースし長年活動を続けてきたのだからなんとも皮肉ではあります。

さて、待望の新譜の内容についてですが、一聴してまず驚かされるのがその圧倒するかの様な音の密度の異様な濃さと一度聴いただけでは全ての楽器の音色を判断するのが難しい暴力的とも言える音数の多さだろう。

80年代中期から今も活動中なUSプログHMの元祖バンド FATES WARNING、同じく80年代から活躍するUSプログHMバンドQUEENSRYCHE、ネオクラ風味もあるUSプログHMバンドSYMPHONY X、そしてATHENAの音楽ベースであるDREAM THEATER、それらのバンド達のサウンドから影響を受けつつ、DREAM THEATERの2ndアルバム時を思わすメロディアスでテクニカルな音楽性、PLANET Xを彷彿とさせるメタリックなJAZZハーモニー、英国プログHMバンドTHRESHOLDを想起させる複雑でモダンな鈍色プログレ・ストラクチャー、ANGRA風の切れ味鋭いフックあるリフ、スラッシーでリズミックなギター・チューン、初期CONCEPTIONやイタリアン・プログレッシヴ・パワメタ・バンドELDRITCHを喚起する複雑で屈折した楽曲展開、更にエレクトロニック・ミュージック、JAZZ、そして壮大な映画音楽要素までを絶妙のバランスで過不足なく融合させ、爽快感あるソフトなクリーン・ヴォーカルとKAMELOTスタイルの熱くエピックなパワフル・ヴォーカルを自在に操る Fabio Lioneのエモーショナルで伸びやかな抜群の歌唱力を主軸にダークなディストピアのSFコンセプト・ストーリーを描き、恐らく意図的にだろう欧米の90~00年代プログHMタッチを随所で感じさせる渾身のモダン・プログHMサウンドを聴かせてくれている。

ガチガチに造り込まれた緻密で隙の無い硬質なプロダクションと80年代後半に流行ったオーバープロデュース気味なアルバム群を彷彿とさせる、今で言う期待の新人メロハー・バンドのデヴュー作にレーベルの入れ知恵が働いて人工的な音のレンジは狭く、けれどメリハリ強いキンキンのブライト・サウンドが塊となって耳に雪崩れ込む作風に近い、イタリアン・バンド特有な息苦しささえ覚える怒涛の勢いとやり過ぎな情熱が炸裂したサウンドで、まるで2ndアルバム『A New Religion ?』'98 の次に続くアルバムは本来こうだった、と言わんばかりに当時の音楽性の延長線上にある、さらに演奏技術を向上させ、十分な資金も投入してスタジオ作業に時間も費やし、Fabio Lioneの七変化の歌声と圧倒的な表現力、そして幅広く多彩な音楽性を反映させより洗練させた、20数年以上に渡って研鑽を重ねたベテラン・ミュージシャン達の入れ込み具合が痛いほどヒシヒシと伝わってくる入魂の復帰第一作目だ。

まぁ、再結成第一作だし必要以上に気負ってしまうのは分るし、もうちょっと力を抜いたベテランらしい余裕なんかも魅せて欲しかったが、情熱と芸術のイタリア人な血が騒ぐのか、どこまでも上を追い求めた異様な上昇志向が働いたが故に、スラッシュ・メタル、プログレッシヴ・メタル、シンフォニック・メタル、JAZZ、エレクトロニック・ミュージック、映画音楽を高次元で有機的にMIXしたハイブリッド・サウンドを生み出そうと画策した弊害でか、新人バンドも舌を巻く鮮血を撒き散らさんばかりのド迫力とチャンネルトラッキング全てを埋め尽くすかの如き怒涛のサウンドが炸裂し続け…結果、ここまで聴いてて耳が滅茶苦茶疲れるアルバムも珍しい、という少々残念な顛末に…ウーン(汗

そんな感想に追い打ちをかけるのがコンセプト・アルバムの一大絵巻を描ききる意図にも引っ張られたのか、ほぼ4分台のコンパクトな楽曲ばかりなのにも関わらず無駄にサウンドスケールが壮大な楽曲が連なっている為に各曲毎のメリハリが弱まり、更に絶え間なく叩き出されるボトムの轟音やSE等数え切れぬメタリック・サウンドと音色に塗り潰された印象が続く事もあって叙情感や繊細で優美なタッチの音使いも垣間見えるものの最終的に何もかも単色に濁って聴こえる、一言でいえばキーボーディストでリーダーの Gabriele Guidiが『やり過ぎた』仕上がり具合が総合的な完成度の足を引っ張った感が拭えぬアルバムとなってしまった様に思えます。

色々詰め込み過ぎて Gabriele Guidi自身が操る鍵盤サウンドが凄まじい音圧に押しツブされ良く聴き取れぬ上に、四六時中シンセは鳴ってはいるもののアグレッシヴに地響きを立てるボトム、ザクザク粒の粗い音色を刻むギター、そして存在感抜群なド迫力のヴォーカルに押しやられ、華麗に奏でられる美旋律を轟音が濁らせていく…(´A`)

無論、パワフルで歪んだクランチーなギターと巧みに様々な雰囲気を生むキーボード・ワーク、ダークで邪悪なミステリアス・サウンド、陰鬱でメランコリックな叙情的音使い、そしてシアトリカルでアグレッシヴなヴォーカルと、人気作2ndアルバム『A New Religion ?』で聴けた要素を保ちつつ、SOUNDGARDENっぽい賑やかなリズムワークやフュージョン風味あるシャープなサウンド、ジャジーなハーモニーやモダンで不協和音的なJAZZっぽいパート、そしてエクストリーム・ミュージックのインストゥルメンタル・セクションを彷彿とさせる超スピーディーな疾走感あるセクションとスムースでグルーヴィなシンガロング・パート等々、些か混ぜ過ぎて混沌としているが同時に他で中々聴けぬ複雑に絡み合う音楽要素の新鮮な驚きとエキサイティングな興奮を覚える瞬間も多々あり、彼等なりの創意工夫と〝新たなるプログHMサウンド”を構築しようと懸命に模索している様が見て取れ、なんとも痛し痒しな状態なのが勿体無い…

また、本作の大きなトピックが Fabio Lioneのバンド復帰の他にもう一つ有り、ノルウェー人メタル・シンガー Roy Khan (ex:KAMELOT、CONCEPTION)が1曲で客演しその見事な歌声を披露している事で、2011年に Roy KhanがKAMELOTから脱退した際、彼の抜けた穴を埋める為にKAMELOTのツアーに参加し急遽シンガーを務めたのが、当時RHAPSODY OF FIREに在籍していた Fabio Lioneだったという過去があり、そんな関係からか今回 Roy Khanがゲスト参加したのだろう。

とまれ90年代初頭のDREAM THEATERを出発点に、よりシンフォニックでパワフルなメロスピ・サウンドへ進化していったLABYRINTH、最新作で研鑽を重ねて来たモダン・プログHMからの脱却を図り、古典プログレ・テイストを取り入れより知性と叙情を感じさせるメロディアスHMへの高みへ辿り着いたDGM、そしてプログHMから疾走するスラッシュ・テイストあるパワーメタルへ進化し、23年振りの新作で再びプログHMへ回帰するだけでなく、更にモダンによりテクニカルに、シネマティックなタッチとスケール感を大きく増した新基軸サウンドを披露と、スタート地点では非常に近似したサウンドだったのに三者三様に独自の変化を重ねてきたのが分かって実に興味深いですね。

復帰第一弾作だし少々気負っただけで技術的には文句無く素晴らしいレベルにあるバンドですし、是非とも次作ではもう少し音楽性を整理して〝押しと引き”のメリハリを留意したり、持ち前の優美で繊細な音使いなんかが際立った美旋律が堪能できる、幾分か肩の力を抜いた作品を届けてもらいたいものであります。

って、タイトルから察するに次はパート2が届けられそうなんですが、同一方向性な轟音サウンドのギチギチ詰め合わせアルバムだけは勘弁して欲しいなぁ…そもそも Fabio Lioneが引き続きバンドに在籍してくれるかどうも疑わしいのがなんとも…(汗

Tracklist:
01. Frames Of Humanity
02. Legacy Of The World
03. The Day We Obscured The Sun
04. The Seed
05. I Wish [feat. Roy Khan]
06. The Calm Before The Storm
07. What You Most Desire
08. The Conscience Of Everything
09. Where Innocence Disappears
10. Idle Mind
11. Synchrolife
12. Inception
13. The Departure

ATHENA XIX Line-up:
Fabio Lione : Vocals & Backing Vocals
Simone Pellegrini : Guitars
Gabriele Guidi : Keyboards
Alessio Sabella : Bass
Matteo Amoroso : Drums

Produced、Recorded & Mixed By Gabriele Guidi、Simone Pellegrini、Fabio Lione


by malilion | 2025-03-10 18:08 | 音楽 | Trackback
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