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イタリアン・プログHMの雄 DGMが自信作であるコンセプト・アルバム 12thアルバムをリリースしたのを今頃ご紹介。

イタリアン・プログHMの雄 DGMが自信作であるコンセプト・アルバム 12thアルバムをリリースしたのを今頃ご紹介。_c0072376_16273343.jpg
DGM 「Endless」'24

今やイタリアを代表するプログレッシヴHMバンドと言っても過言ではない、活動歴30年を超えるキーボード入り5人組ベテラン・バンド DGMの前作『Life』'23 から1年を開けずして続く新作が去年夏頃、Frontiers Music Srl 移籍後4作目となる通算12枚目(EP、LIVE含まず)のフルアルバムを半年以上遅れ(汗)てGETしたのでご紹介。

ベテランの彼等なら駄作をリリースするはずもない、と購入を後回しにし続けていたらこんなにも遅れてしまった…orz

前作『Life』リリース時点で既に当初二枚組にしてリリースする予定だったメロディアスな楽曲を集めたもう一枚分のマテリアルは出来上がっている、とDGMの中心人物でギタリストのみならず今やプロデューサーやエンジニアとして同郷バンドのアルバム制作への協力をはじめ多方面で活躍する奇才 Simone Mularoniが語っていただけに、同時に完全に路線変更になると事前に新たな方向性が仄めかされていた訳ですが確かにその言葉に偽りは無かった模様だ。

アルバムを重ねる毎によりパワフルに、更にアグレッシヴに、そしてドラマティック且つ洗練された叙情派モダン・プログHMを創作し磨き抜いて来た猛者達である彼等、短い間隔で届けられた本作が雑な仕上りであろうハズも無く、前作時点からタップリと時間をかけて練り上げられた本コンセプト・アルバムは、ある男が人生の旅路を振り返り『もし違う道を歩んでいたら己はどう変わったか、何があり得たか、何を見逃していたか』を想像する、あらゆる人にとって普遍的なテーマと問いかけを鮮やかなストーリー・テリングを通じて描ききった力作だ。

匠集団である彼等が満を持して放つアルバムに今更テクニック的な問題やプロダクション等に不備がある訳もなく、そうなると公言されている本作に置いての音楽性やサウンド等の変化にファンならずとも皆が注目していた事だろうが、一聴してハッキリとそれが聴こえて来て思わず笑みが零れてしまった。

メンバーチェンジを繰り返しバンド主導権が Simone Mularoniへ移るにつれ疾走するモダンHMサウンド要素ばかり強められて来た感があったが、ここに来て初期DGMが標榜していただろうDREAM THEATER等をはじめ90年代プログHMバンド作に顕著だったスリリングでテクニカルな技巧派要素と如何にもイタリアン・バンド作である事を強く思わせる濃密な叙情感と特有の優雅なロマンチックさを湛えたメランコリックな美旋律、そして持ち前のメロディセンスを存分に活かしつつ静寂と情熱のコンビネーションが絶妙な陰影色濃い凝った楽曲展開が続く、まるでプログレッシヴ・ロックの王道へ回帰したような、00年代以降のプログHM的アプローチと古典的プログレの影響をMIXした、モダン且つ非常に洗練されたユーロ・メロディアス・プログHMを聴かせてくれている。

これまで通りにスピードとテクニックを兼ね備えたクランチーで音数多いギター・サウンドとパワフルなハーモニー・ヴォーカルに重点を置きつつ、ヴァイオリンやフルートといった如何にもプログレ作に相応しい艶やかな楽器の音色も取り入れて楽曲に深みと美しさを加え、近年のDGM作で聴かれなかったヴィンテージなキーボード等の音使いや楽曲アプローチを垣間見せる事で〝定番のDGMらしさ”からの脱却を強く意識させる、今やユーロ圏のみならず世界的にも屈指のメロハー・インディ・レーベルへと成長したFrontiers Records所属バンドに求められる暗黙のルールから逸脱し、思うままに楽器を掻き鳴らす楽し気な雰囲気とフレッシュな爽快感がアルバム全体から感じられる点も本作が好印象を与える大きなポイントなのは間違いない。

途中キャッチーでフック満載の所謂ストレートなメロハー・サウンドが飛び出して来たのは正直予想外でしたが、意外にマッチしているミステリアスでメロディアスなサウンドを楽し気に奏でる彼等の姿は本当に新鮮で驚かされます (´∀`)

プログレ的な視点から見ると、音圧強めのメタリックな轟音から解放されたセンチメンタルな想いを突き破るような衝動がドラマチックに展開する楽曲に秘められており、決して遡る事は叶わぬ悔恨と感情の旅は退廃的な文学を背景にしたような深遠な幻想世界が渦巻くかの様で、今までとは違う事をしたかったという彼等が到達した新境地なのだろうし、意識的にボトム・サウンドを少し引っ込めた抑え目なHR的MIXに仕上げた事も決して無関係ではないだろう。

以前にも増して鍵盤奏者である Emanuele Casaliの作曲関与が強まった(サックスとフルートまで演奏と多才ぶりを発揮!)為に、テクニカルなバンド・アンサンブルに70年代プログレに根差したヴィンテージな残り香が漂う様になったのは間違いなく、変化を求めた Simone Mularoniの思惑とも合致した結果が本作でのサウンドの変遷なのでしょうから、心地よいメロディ・ラインとセンス良いアレンジに各メンバーのスキルの高さを感じさせるこの方向性を次作でも是非引き継いで欲しいですね (*´∀`*)

考えてみたらオリジナルのDGMメンバー達がDREAM THEATERに影響を受けてスタートしたDGM初期サウンドには Simone Mularoniは一切関わっていなかった訳だから、彼にしてみれば本作で提示したのは新基軸サウンドで、けれど初期からのファンからすれはデヴュー当時へ回帰したかのような作風が大変好ましく、よくあるベテラン・バンドの初期作風を蔑ろにした挙句に無理して最新モダン・サウンドを標榜する歪な進化では無い、バンドとファン双方にとってWin-Winな変化だったのがラッキーでした♪

やはり今までどちらかと言うとパワー押しなサウンドばかりが耳につき、今作で新たに示した引きの優美な叙情感が際立つヴィンテージ風味増しでアコースティカルなサウンドを聴くにつけ、その点が弱かったと今なら思えるそれくらい柔剛幅広く奥行ある魅力的な新規サウンドを構築し、一段も二段もサウンドスケールとレベルをアップさせた彼等には脱帽であります。

主要メンバーが抜ける大幅なメンバーチェンジを数多く繰り返したのに更にバンドが発展しサウンドのクオリティも活動も保たれ続けているなんて、DGMは実に稀有な例とも言えますよね。

別バンドと比較するのは何ですが、今年初めに前作から4年振りの新譜『In The Vanishing Echoes Of Goodbye』をリリースしたイタリアン・シンフォHMバンド LABYRINTHは彼等と同期バンドながら、新作で示したサウンドはDGMが前作までで捨て去ったスピーディでメロディアスなモダンHMといったイメージで、今まで両者似通った音楽性でしたが本作をもって大きく互いの進む道が隔たった気がします。

『プログHMは好きだけど古典プログレはちょっと…』という若いメタル・ファンの皆さんは安心して欲しい、相変わらず攻撃的でヘヴィなシュレッド・リフが唸りを上げ、雄々しくメロディアスなコーラスと耳を惹く高速ユニゾン・パートを繰り広げるキーボードとギターもシッカリとフィーチャーし、リズム・セクションは怒涛の勢いで変拍子を多用したソリッドなビートを叩き出す、それでいて少しも鼻につく強引さや粗野さは無く、美しく溶け合うフルートとクラシカルなストリングス、フックある歌メロと爽快ささえ覚えるヴォーカル・ハーモニーが渾然一体となって洗練され知的な印象を与える辺りが如何にもベテラン・ミュージシャン達が練り上げたユーロ・プログHM作といった所で、総じて全てがパワーアップしている点は見事の一言だろう。

尚、専任ヴァイオリン奏者を擁するイタリアン・シンフォニック・パワーメタル・バンドWINTERAGEのヴァイオリニスト Gabriele BoschiとDELAIN、NIGHTLAND、MODERN AGE SLAVERY、SUN OF THE SUNS等で活躍するイタリア人マルチ・ミュージシャンである Ludovico Cioffiがオーケストラ・アレンジで客演しているので2人のファンも要チェックなアルバムだ。

そうそう、日本盤ボートラのアコースティック・ヴァージョンはアコギとピアノ、そしてヴォーカルだけで切々と歌い上げられる正に今回の古典プログレ・テイストを感じさせる新作に相応しい優美で艶やか、爽快で煌びやかなドリーミィ・サウンドで、この一曲の為にもちょっとお高いけど国内盤を購入せざる負えない、それくらい買い逃すと後悔する素晴らしい出来栄えな曲ですので、本作をお求めの方は是非に日本盤のご購入を!

去年末に8年ぶりとなる待望の来日公演を果たしその雄姿を直に目にした諸兄も多いだろう彼等、既に同時期にデヴューしたプログHMバンド達の多くがその姿を消した今、是非ともこのまま更なる音楽性の発展と前進を刻んだ名作を届け続けて欲しいものであります。

Tracklist:
01. Promises
02. The Great Unknown
03. The Wake
04. Solitude
05. From Ashes
06. Final Call
07. Blank Pages
08. ...Of Endless Echoes
09. Blank Pages (Acoustic Version)

DGM Line-up:
Mark Basile : Vocals
Simone Mularoni : Guitars
Andrea Arcangeli : Bass
Fabio Costantino : Drums
Emanuele Casali : Keyboards、Flute、Sax

Guest Musicians:
Gabriele Boschi : Violin on Tracks 02 & 08
Ludovico Cioffi : Orchestral Arrangements & Programming on Track 08

Produced by Simone Mularoni
Recorded、Mixed 、Mastered by Simone Mularoni

P.S. 本作からシンガー Marco Basileのクレジットが英語風に改まっていますが当然、同一人物であります。

by malilion | 2025-03-04 16:27 | 音楽 | Trackback
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