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オランダ産ベテラン・シンフォ・バンドTIMELOCKが再始動第二弾作を2年ぶりにリリース!!

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TIMELOCK 「Atomic Swap」'24

前作『Sygn Yn』'22 で14年振りに復活しユーロ圏の90年代ポンプ総本山レーベルだったオランダSI-MUSICからの1992年デヴュー作以来彼等を追い続けていたポンプ~ネオ・プログレ・ファンを歓喜させた、女性バッキング・シンガー2人を含むツイン・キーボード8人編成オランダ産シンフォ・バンドが前作から2年ぶりに6thオリジナル・フルアルバムを去年末にリリースしていたのを少々遅れてGETしたのでご紹介。

前作をここで紹介した際に『再始動に合わせて旧譜を全てリマスターして収めたBOXがリイシューされるかも』とシンガー Ruud Stokerが語っていたがやはり高額となるBOXは見送られた模様(デジタル音源では纏め買い出来るDLセット有)で、代わって旧譜を一作毎にボーナストラックを追加した2枚組にしてリイシューしたり、再始動前にリリースされていた旧譜4枚の中でも評判が良く優れた楽曲に新アレンジを施し現メンバーで新録した再録BESTとも言える『Contemporary Vintage』がデジタルと限定アナログLPにて2023年に販売されるなど再始動後は矢継ぎ早に音源リリースが続いていたのでファンとしては『え? もう新作?』と、驚きを隠せぬがそれだけ現在バンドの状態が良くクリエイティビティが高まっている証左なのだろう。

デヴュー時はポンプ系としてはヘヴィなギターもフィーチャーしたソリッド・サウンドが異色なれど全体的にはポンプ~ネオ・プログレ路線の如何にもSI-MUSIC所属バンドという印象で、活動休止前作『Buildings』'08 時点で既にポンプから脱却したシンフォ・サウンドへ大きく変化していたのは以前お伝えしたが、Ruud Stoker (Vo)と元YWISの Julian Driessen (Key、Synth)のオリジナル・メンバーを中心に再始動した前作は久しぶりの復活作故か現在主流となるシンフォ・サウンドを意識したのだろう必要以上にモダンな音使いとデジタリーな響きの強い楽曲が占められており従来のファンを驚かせたが、殆んど休みなく活動していたから当然メンバーは前作から変化しておらず、そんな安定した創作環境が更なるメンバー間のコミュニケーションとアイデア交換を促進させたのか前作以上に一体感とアンサンブルの向上したメロディアスで荘厳な美旋律が詰め込まれた、フックある甘美なギターと初期ポンプ作を思い起こさせる音数多く派手なシンセと本物に迫るオーケストレーションが効いた鍵盤サウンド、そしてエモーショナルなヴォーカルとユーロ圏バンド特有の冷ややかでメランコリックなコーラス・ハーモニーが主導しつつネオ・プログレ・テイストも仄かに漂わす旧来からのファンへのフォローも忘れぬ気の利いた力作となっている。

前作から加入した鍵盤奏者 Arjen van den Boschの手によるオーケストラル・アレンジが前作以上に壮大で重厚な楽曲の随所で強調されており、そこに従来のTIMELOCKカラーを感じさせる Julian Driessenのポンプ・テイストある弾む様なシンセ・サウンドが軽快に絡みつつ色濃い陰影を刻みながら巧みに展開し、Coby女史と Laura女史により補強されたヴォーカル・パートの分厚く壮大な男女混成コーラスがある時はユーロ・シンフォらしくメランコリックに、ある時はUSシンフォの様なキャッチーで爽快な歌声を響かせ長尺曲を飽きさせる事なくドラマティックに彩る様は素晴らしく、生っぽさは希薄ながら逆に電子音楽の本場オランダらしくデジタル・アクセントが効いたモダン・サウンドの洗練され具合と相反する様に至る所で90年代ポンプ・ロックを彷彿とさせる懐かしい音色とファンタジックな旋律が奏でられ複雑なモザイク画を描くかの様なシンフォ・サウンドが実に個性的で大変興味深いアプローチと言えるだろう。

初期作で顕著な英国HRからの影響あるドライヴ感やハードエッヂなタッチは薄れ、リズムワークのパワフルなソリッドさも後退したが、代わって楽曲全体の壮大なスケール感やオーケストラルで優美な音色の響きは一段と増し、派手さよりもメロディに重きを置いた説得力あるギターやシンセが織り成すパッセージや印象的なソロの数々はより向上するなど、更に重厚で華麗な男女混成コーラス・ワークは現在流行の男女ヴォーカル編成なユーロHMバンド群を思わす再結成以降のトレードマークとなっており、分かり易く爽快でけれどもチープでフォロワー臭の強い90年代初期ポンプ・サウンドを求める向きには些か大仰過ぎる風に聴こえるかもしれぬが、長い休止期間の後に最新のモダン・シンフォへサウンド形態がクラスチェンジした今のTIMELOCKに懐古趣味的サウンドを期待するのは最早お門違いでしかなく、ポンプ~ネオ・プログレ・バンド達が忘れていた命題『進化』を果たし生まれ変わった彼等が描き出すドラマチックな美旋律の数々に耳を傾けメランコリックな音使いと洗練されたデジタル・アプローチの機微を素直に楽しむべきではないだろうか?

まぁ、そんな事を言って置いてなんですが私個人としてももうちょっと初期ポンプ・テイストを感じさせてくれる叙情感あるキャッチーなメロディが強めだと嬉しかったりする(汗)のですが、やはり最先端で電子音楽の本場オランダで活動する“今”のバンドである彼等にそんな懐古的趣味を期待するのは酷なのは百も承知しておりますので、そこは無いもの強請りと納得するしかありませんね…

既に大幅に構成メンツも変わりデヴューからかなりの年月が経過したのだから大昔の自分が好きだったポンプ・サウンドから大きくズレる音像に成ったのは当然だし、彼等が健全な創作活動をしている証でもあるので嬉しくもあり些か寂しくもあり…あ~、古参ファンってこうして原理主義に陥るんだろうなぁ~(汗

とまれ70年代オランダ・プログレ・シーンを代表するバンドの一つKAYAKを思わせる幻想色を湛えたファンタジックで壮大なキーボード主導サウンドなど、今となっては珍しくなった80~90年代ポンプを継承するキャリア30年超えのベテランらしい深みある荘厳な楽曲とメランコリックな音使いを楽しめるユーロ・シンフォ・サウンドがお好みな方は一度ご自身の耳で本作をチェックしてみて欲しいですね。

Tracklist:
01.Inuit
02.Bachimo
03.Stranger Within
04.Lost In Your Mind
05.The Universe
06.Artificial Intelligence
07.Passage To Rapa Nui
08.Until Darkness Calls
09.Watch The Crime ! (Do We Care?)
10.Insomnia

TIMELOCK Line-up:
Ruud Stoker : Lead & Backing Vocals
Julian Driessen : Keyboards & Synthesizers
Martin Hendriks : Lead & Rhythm Guitars
David Guurink : Bass
Rob Boshuijzen : Drums & Percussion
Arjen van den Bosch : Orchestral Keyboards & Piano
Coby van Oorschot : Backing Vocals
Laura Eradus : Backing Vocals、Lead Vocals on Track 04



by malilion | 2025-02-04 16:35 | 音楽 | Trackback
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