EVEN FLOW 「Rinascimento」'24 イタリアのサルディーニャ島出身のギタリスト Pier Paolo Lunesuとドラマー Giorgio Lunesuの Lunesu兄弟が中心となって結成された4人組イタリアン・プログHMバンドEVEN FLOWの3rdアルバムが前作『Life Has Just Begun』'17 から7年ぶりにリリースされたのをちょい遅れてGETしたのでご紹介。 これまでアルバム制作にゲスト・プレイやプロデュース等で度々力を貸して来た、ギリシャ人ギタリスト Gus G (ex:MYSTIC PROPHECY、ex:DREAM EVIL、ex:NIGHTRAGE、ex:Ozzy Osbourne、etc...)率いるパワメタ・バンドFIREWINDの元キーボーディスト (ギターの腕前も凄い!)でギリシャ人ミュージシャン Bob Katsionisがメンバーとして在籍するイタリアン・プログHMバンドWONDERSの方が知名度もあるし国内盤もリリースされているので本バンドは“WONDERSのメンバーのサイド・プロジェクト”という様な捉え方をしている方もいるかもしれないが、1990年代後半にEVEN FLOWは結成され2008年にデヴューEP『Dream Weaver』をリリースと、今までに4枚のEPと数多くのシングルをリリース済みな既にキャリア20年近くの、けれど知名度イマイチなイタリアのマイナー・プログHMバンドで、時系列的には“ベテラン・プログHMバンドEVEN FLOWのメンバーが在籍する新プログHMバンドWONDERS”という捉え方が正しいのでご注意を。 EVEN FLOWはデヴュー作リリース以降も Lunesu兄弟がコアメンバーなだけで、常に他パートが流動的な半ばプロジェクト体勢だったのも人気と知名度が今一つ上がらなかった原因でしょうが、最大の要因は2019年リリースのアコースティックEP『Mother』でフロントマンが男女ツイン・ヴォーカルを擁するイタリアン・メロディック・パワーHMバンドTEMPERANCEの Marco Pastorino (Vocals & Guitars)へチェンジするまで前任シンガーの歌唱力が酷過ぎてバックのハイレベルなサウンドに全く追いついていない、世界中のインディ・プログHMバンドで良く聞く問題でもある演奏技術は高いのにヴォーカルがヘッポコC級レベルだった為だとは個人的に思っております…orz イタリアを訪れる欧米バンド達のサポートだけで飽き足らず積極的に国外へ赴いたり、他国のバンドとのコラボレーションも盛んに行って来た結果、マイナーなイタリア産インディ・プログHMバンドながらHM&プログレ系のみならず幅広い人脈を築けたのは長い活動歴の為ばかりではないのは彼等のファンならば良く知る所だろうし、その辺りの細かな交友については2nd『Life Has Just Begun』の紹介時に記したので気になる方はそちらを御覧下さい。 さて久しぶりとなる本作だが、まず前作との一番の違いは前作でキーボーディストとして客演してくれていた Bob Katsionisが本作には関わっておらず、プロデュースも Pier Paolo Lunesu自身が手掛けるなど意図的な Bob Katsionisカラーの払拭を行い明確にWONDERSとの差別化を図ろうとしているのが伝わってくる事だ。 EVEN FLOWに Bob Katsionisが加わった結果新バンドWONDERSが生まれたとは言え、5人組バンドのうち4人まで同じメンバーな訳だからかなり意識して差別化を図らないと“鍵盤サウンドを抜いただけのWONDERS”になると危惧したのか、それまで高らかに鳴り響いていた鍵盤サウンドが意図的に抑えられ、引っ込められたMIXの結果か従来作で聴けたシンフォニックなテイストが薄れ、よりエモーショナルで音数多いクリアーでメロディアスなギター・プレイを主軸に据えた、本来なら鍵盤サウンドが占めるだろうパートを手数が多くグルーヴィでスイングするリズム・ワークの活躍でカヴァーする風な、ソリッドなアンサンブルを前面に押し出しつつ逆にヴォーカル・アプローチは前作以上にソフトな歌唱やポップなメロディを歌い上げるパートが耳に付くなど、デヴュー以来の持ち味であるメロディアスな美旋律をコンパクトに凝縮したタイト且つアグレッシヴなプログHMサウンドが幾分か軽くモダンでキャッチーな方向へ傾いた作風へ改まっていて、寧ろアコースティックEP『Mother』で聴けた甘美な美旋律にフォーカスしたのと同様なメロディアス作となっている。 従来のDREAM THEATERやSYMPHONY X、そしてFATES WARNING等のUSプログHMサウンドから強い影響を受けた複雑な楽曲構成とパワフルな演奏によるスリリングなプログHMファンはWONDERSへ、EVEN FLOWの持っていたメロディアスでキャッチーなサウンドを大きくフォーカスしたテクニカルな展開は控えめな叙情派プログHMファンは新生EVEN FLOWへ、という風にサウンドの住み分けを図ったのではないかと勝手な予想をしますが、ヴォーカルも同じギターも同じでは耳に付き易い音に大きな差異は無く、どうせなら今までみたいにフロントマンを交代するくらいして大きく差別化を図った方が良いんじゃないかと…(汗 これまでインディ作だからこその灰汁の強さ、癖の強い独創性の様なものが薄れ、所謂普遍的なメロディアスHMサウンド作へ接近した、実は彼等にとって一番の冒険作かもしれない本作、下手をするとEVEN FLOWの存在意義を脅かす事になりはしないか少々心配であります… 意図的になのかサウンドの方もヘヴィさや生々しさよりクリアーでスムースな仕上がり具合を重視している風だし、ヴォーカルも変に力まずパッションよりクールで滑らかに歌い上げている風に感じられる為か、プログHM作と言うよりメロディアスでキャッチーだけどちょっとテクニカル寄りなHM作、みたいな感触と言えば伝わりますでしょうか? ウーン、なんかイマイチ上手く言い表せない…本作単品で考えると決して悪い仕上がりのアルバムでは無いんですが、どうしてもWONDERSの存在が頭にチラついて、ね… とまれまだまだプログHMカテゴリーで語っても問題ない彼等の新作、DREAM THEATER、SYMPHONY X、FATES WARNING等のバンドのメロディアスな要素に心惹かれる方やTHRESHOLD等のモダン・プログHMの整合性やインテリジェンスなサウンドに心惹かれる方にお薦めな作品なのは間違いありませんので、従来からの彼等のファンは勿論、WONDERSのファンにもお薦めしたい一作であります。 Track listing: 01. In The Night 02. Brighter Than The Sun 03. Rinascimento 04. Winter Sun 05. Back On The Streets 06. Pieces Of A Picture 07. Leaving It Behind 08. Maloa 09. Nothing Is The Same 10. Flying Colors EVEN FLOW Line-up: Marco Pastorino (Lead & Backing Vocals ◆VIRTUAL SYMMETRY、FALLEN SANCTUARY、TEMPERANCE、WONDERS) Pietro Paolo Lunesu (Electric & Acoustic Guitar ◆WONDERS) Giorgio Lunesu (Drums、Percussion ◆WONDERS) Luca Negro (Bass Guitar ◆TEMPERANCE、WONDERS) With Additional Musicians: Brian Maillard (All Keyboards & Orchestrations Arranged) All songs & lyrics written by Pietro Paolo Lunesu Produced by Pietro Paolo Lunesu & Giorgio Lunesu
by malilion
| 2024-10-21 21:00
| 音楽
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