ANUBIS 「The Unforgivable」'24 11月に待望の初来日公演が行われるオーストラリアのプログレシーンを牽引するキーボード入りトリプル・ギター編成6人組モダン・メロディアス・シンフォバンドANUBISが4年振りに7thアルバムをリリースしたので即GET! 2004年にシドニーで結成され2009年のデヴュー・アルバム『230503』から早15年、僅かに一度だけベーシストをチェンジした以外常に変わらぬメンバーで創作活動を続ける彼等は基本的にコンセプト作リリースを旨とするシンフォ・バンドだが、今回も恒例のコンセプト・アルバムで『The Legion Of Angels』と呼ばれるカルト宗教団体にのめり込んだ青年が、宗教の名を借りたスピリチュアルなマインドコントロールの有害さに気づき、そこから脱出して再び己の人生のコントロールを取り戻すという架空ストーリーを元に、全10セクションから成る約46分のタイトル組曲一曲のみを収録した、アメリカ中西部を舞台にカルト教団から、そして法律からも逃れながら語られる超大作だ。 最初リリース・インフォでアルバムタイトルが“許されざる者”と知った時は『ファッ!? マカロニウェスタン映画のサントラか!?』と困惑させられたが、続報でカルト宗教団体絡みのコンセプト作と知って如何にも現代的なテーマを扱った作品になりそうだ、と俄然興味が湧いてきたものでした。 暗闇の砂漠を必死の形相で駆ける男が描かれたジャケットやコンセプト故ダークでヘヴィなサウンドのオンパレードと内省的な歌詞がつらつら連なる物悲しい陰鬱な作品かと危惧したが、意外な程ゆったりとした雰囲気とデリケートで淡い叙情を感じさせる美旋律の数々や繊細なアレンジが実に魅力的で、複数の楽章からなる壮大な構成とアルバム全編に及ぶコンセプチュアルな展開の妙、その濃密でドラマチックなストーリーの中で、インタテクスチュアルなモダン・プログレッシヴ・サウンドやHMサウンドが乱舞しつつ、PINK FLOYDやYES、そして80~90年代ポンプ・ロック等からの影響を思わすリリカルで艶やかな音色と豪州産バンドらしい広大なスケール感と爽快感を伴って豪快に表現する、ウェット且つダイナミックなモダン・メロディアスロック・サウンドで重苦しくシリアスなテーマをオセアニアン・ミュージシャンならではの哀愁漂う音使いで余すところなく表現し魅力的に紡いでゆく… 1st『230503』'09 や2nd『A Tower Of Silence』'11 そして4th『The Second Hand』'17 等と同じ音楽的影響のいくつかを反映しながら初期作に顕著だったサントラ的作風へ回帰し、更に楽曲完成度と歌モノとしてのバランスを高めた、他の何者でもないバンドの独創性を確立し解き放った最高傑作と言えるだろう。 45分超えの組曲のみの作品と知ると聴く前から身構えてしまいそうですが、長らく世界中をLIVEで周って腕を磨き続け結成20年のキャリアを誇る叩き上げの豪州バンドである彼等、初期作で感じられた助長なパートや退屈な展開など今や影も形も無く、リスナーへと訴えかけるアクセシブルな魅力と心を捉える感情が乗せられた抜群のヴォーカル・パフォーマンスに導かれ、メロディアス且つハード・エッヂも忘れぬ泣きとツボを心得たエモーショナなギター・ワーク、主人公の心情の移り変わりや様々な場面展開を連想させる要所要所で鳴り響き、唸りを上げるハモンド、ムーグ、アープ、ピアノ、ソリーナ、メロトロン、シンセ等を駆使したキーボード・ワークが冴え渡り、狂気を孕んだダークなコンセプト作なのに予想以上にピアノやアコギ、そしてストリングスを用いたアコースティック楽器が奏でる上品でリリカルな音色の数々と奔放なエネルギーに満ち溢れたパワフルなロック・サウンドが生み出すコントラストによる起伏に富んだ展開と表現力は見事で、本当に『アッ』という間にアルバムを聴き終えてしまう圧巻の構成力と表現力には舌を巻く他ない壮大でムーディーなトータル・アルバムだ。 内省的なドリーミーに響くピアノとアメリカ中西部の気象警報を伝えるラジオが溶け合う上品なイントロからエレガントに物語の幕を上げ、シンフォ作にしては意外な程にシンプルなメロディをベースに、エモーショナルな耳に残るヴォーカル、心地よいハーモニー・ヴォーカル、バックで繊細にハミングするメロディアスなベース、変拍子を交えた変幻自在のドラムス、輝きを放つ鍵盤サウンドが迫り来る嵐を予感させ、アトモスフェリックな旋律に包まれ切れ目なく展開していく物語の最後に高鳴るギターが泣きまくり胸を打つ、感動的なハッピーエンドを迎えるとアルバムを通して繰り返されるテーマのアレンジ・メロディが紡がれ音楽が終わり、しばしの後に再び冒頭で聴いたのと同じ気象警報を伝えるラジオが流れ出す…リスナーにもう1度アルバムを聴くよう促すコンセプト作お約束な中毒性のあるエンドレス構成は、アルバム全体で壮大な叙事詩を描くかの様な聴き終える頃にはもう一度最初から聴きたくなって来る本作にピッタリの仕掛けと言えるだろう。 個人的にはコンセプト作につきもののシアトリカルなヴォーカルは時としてエキセントリック過ぎて悪印象を抱きがちだし、歌モノとして考えると癖が強く余り魅力的でないヴォーカル・スタイルだと思っているのですが、本バンドは Robert James Mouldingがシャウトしたり声を荒げる所謂HM的なアプローチの歌声を聴かせる事なく、終始シットリ歌い上げる英国式ジェントリー・スタイルなのが非常に聴き易く、爽快で分厚いコーラスと相まって他のプログレ系バンドのコンセプト作と違って大変印象が宜しい大きなプラスポイントだと思っております(゚∀゚) ただ、アルバム全体の構成や完成度、センチメンタルでドラマチックなシンフォ・サウンドに欠片も文句は無いのだが、アルバム全編を使って雰囲気タップリに聴かせる凝った造りの作品な為、楽曲一曲一曲の印象がともすれば薄くなりがちで、彼等は元々シングル・ヒットなど毛頭考えていないだろうがANUBISの事を何も知らぬ人の耳を惹きつけるとっかかりになるキャッチーでコンパクトな楽曲は見当たらないので、まだまだシンフォ系ファン以外には名が知れているとは言い難い彼等が新規ファンを取り込むのは些か骨の折れる従来のファン向けアルバムなのは間違いない… とまれ米国産でも欧州産バンドでもない独特な壮大感と叙情感、そしてロック作らしいパワフルさを兼ね備えた現行オセアニアン・プログレを代表するモダン・シンフォバンドの作品に相応しい風格と高い完成度を持った傑作なのは間違い素晴らしいアルバムですので、ご興味あるようでしたら一度チェックしてみて南十字星に想いを馳せるセンチメンタルな情景が胸に去来したならば手を出してみても良いかもしれませんね。 Track listing: 01. Part I - A Legion Of Angels 02. Part II - The Mark Of Cain 03. Part III - Alone 04. Part IV - The Chains 05. Part V - One Last Thing 06. Part VI - All Because Of You 07. Part VII - The End Of The Age 08. Part VIII - Back 09. Part IX - Shadows Cloak The Gospel 10. Part X - The Unforgivable Produced、Written & Arranged by ANUBIS ANUBIS Line-up Robert James Moulding (Lead & Backing Vocals、Electric Guitar、Percussion、Kalimba、Additional Synthesizers、SFX & Soundscapes) David Eaton (Hammond Organ、Minimoog、Odyssey、MS-20、Solina、Taurus Pedals、Mellotron、Softwave Synthesizers、Autoharp、Guitar & Vocals) Douglas Skene (6、7 & 12 String Electric Guitars、Acoustic Guitars、Soundscapes & Vocals) Dean Bennison (Electric Guitar、Steel Guitar、Acoustic Guitar、Additional Synthesizers & Vocals) Anthony Stewart (4 & 6 String Electric Bass & Vocals) Steve Eaton (Drums、Percussion、Glockenspiel & Vocals) With: Becky Bennison (Additional Vocals on Tracks 7 & 8)
by malilion
| 2024-09-23 11:22
| 音楽
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