NEWMAN 「Colour In Sound」'24 英国人マルチ・プレイヤー Steve Newman (Vo、G、Key)率いる英国産メロディアスHRバンドの3年ぶりとなる14th(LiveとBEST含まず)がリリースされたのを、少々遅れてGETしたので今頃ご紹介。 ここ10数年間アルバムをリリースしてきたドイツのリイシュー&メロハー専科レーベル AOR HEAVENが閉鎖となった為、今作から新たに英国 AOR Blvd Recordsと契約しての第一弾作となった新譜だが、レーベル移籍した事も影響したのかここ数作マンネリ感が強かった作風に変化が伺えるメロハー・ファンの信頼を決して裏切る事無い冴えわたるキャッチー&フック満載なメロハー・サウンドが目一杯に詰め込まれた快作が届けられた。 制作メンツはいつも通り、ドラムスだけ Rob McEwenに任せ、他は作詞作曲プロデュースも含め全て Steve Newmanが手掛けている相変わらずのワンマン・メロハー・バンド体勢に変わりは無い。 前作『Into The Monsters Playground』'21 は、幾分AOR風味抑え気味でハードエッジを際立たせた、ツボを心得た弾き過ぎぬテクニカルでセンスあるギターをメインに据え、小気味よく煌びやかなキーボードと練られたアレンジ(そこはかとTOTOっポサが匂う)が光る、フックの効いたヴォーカル・メロディを前面に押し出したバランス重視な洗練されたメロディアスHRサウンド作という従来の作風をなぞりつつ総合的な完成度を上げたアルバムで、安心のクオリティーは流石だし悪くないものの些かマンネリ感漂う刺激に乏しい作風であったのは否めなかった訳だが、久しぶりの本作は一聴してこれまで以上に華やかでデジタリーなキーボード・サウンドが随所で鳴り響く、最近メロディアス系界隈で流行っているシンセウェイヴっぽい音色やアレンジが顔を出す新基軸サウンドとなっている。 元々NEWMANはオールドスクールなメロディアスHRを演っていた訳だから80年代風レトロ・フューチャーな作風が定番のシンセウェイヴとの相性が悪いハズも無く、これまで度々フィーチャーされてきた80年代UASアリーナ・ロック&産業ロック風なHR寄りのキーボード・サウンドの活用され方が、本作ではよりデジタリーで意図的に80年代っぽいレトロ風タッチの柔和でキラキラしたシンセに置き換わったシンセウェイヴ・テイストを強く感じさせる作風へと変化したアルバムだと大雑把に言えるのではないだろうか? 只、そこは拘りのメロハー職人 Steve Newmanですので、単なる流行りに乗っかった安直なシンセウェイヴ作を創作するはずもなく、シンセウェイヴ作の多くが80年代USポップ・ロックをリスペクトしサウンド構築要素としてオマージュしているのに対し、同じ80年代でも当時USメジャー・シーンをも賑わしていたUKポップスやダンス・ミュージック等をイメージさせるクールでモダンなレトロ・シンセ・サウンドをフィーチャーし、従来通りのメロディアスなHR要素と今流行りのシンセウェイヴっぽいテイストを上手い具合にMIXした、如何にも英国ミュージシャン作と言ったUS作風に顕著な朗らかで底抜けに陽気なテイスト全開でない、ユーロ圏特有の淡い叙情感やロック作らしい疾走感もしっかりキープした新基軸AOR&メロハー・サウンドを披露してくれている。 全体的にコーラスは抑え目になり、各楽器の鳴りよりも伸びやかでエモーショナルな Steve Newmanのヴォーカルによりフォーカスした方向性の作風になった事もあって従来よりAOR感が強い楽曲が多いが、これは華やかでメカニカルなシンセウェイヴ風キーボードのフィーチャー具合が多い事や、意図的に軽いシンセ・ドラムを鳴らしたり打ち込み等の無機質でデジタリーなリズムワーク(露骨なハンドクラップw)を聴かせる場面もあって歌モノ・アルバム的な感触を強く感じさせる為かもしれない。 本作のサウンドを事前にチェックした方ならば、楽曲やサウンドを装飾する為の音色がHR寄りからデジタリーなシンセ・サウンドへ変わっただけで、基本スタンスはこれまとなんら変わりないキャッチーなUKメロハー作である事を分かっていただけると思うので、デジタリーなサウンドの耳障りや際立つアレンジ、洗練されたアプローチ等の変化が意外な効果を生み出しているのを楽しめる、流行りも取り入れたなかなかのマンネリズム打開作と言えるのではないだろうか? PALACE率いる Michael Palaceもそうだがメロハー系ワンマン・ミュージシャンは今、シンセウェイヴへ熱い視線を送っている様子で、幅広くコラボやプロジェクト等に関わっていると次に流行るだろう時流を敏感にキャッチし己の音楽にいち早く取り入れられるのかもしれませんね。 懐かしの80年代音楽をバックボーンに打ち込み系がベースなシンセウェイヴ故ソロ・アーティストと相性が良い音楽形態なのだろうが、同じ様な境遇でワーカホリック気味に活動するメロハー系ミュージシャンでもシンセウェイヴに色気を見せぬ人達も数多く居る訳で、敢えて距離を置いているのか是非考えを聞いて見たいものです。 無論、新しい試みの代償にロック的なダイナミズムは減退し、洗練度は上がった反面楽曲の深みや味わいは少々薄まった感はあるかもしれないが、毎度毎度同じ作風では Steve Newmanのみならずリスナーだって飽きてしまうのは明らかなので、今回はこの新しい挑戦が活かされた新基軸サウンドを楽しむ事としましょう。 唯一苦言を呈したいのは、今回新たに契約を交わした AOR Blvd Recordsがどうにも弱流通でプレス数が驚く程に少ない事でしょうか? 自主盤の方が流通状況いいんじゃないか、ってなくらいなかなか入荷してこないってソレどういう事なん??(汗 ワンチャン国内盤がリリースされればこの弱流通問題も解決するのですが、ここ数作NEWMANの国内盤リリースが見送られている事を鑑みるとその望みは薄そうで…orz 従来作と一風変わったシンセウェイヴに接近しつつ安心安定な流石のハイ・クオリティ作なれど、なかなか皆さんのお手元に届かない状況なのがもどかしいですね… Tracks Listing: 01. Godspeed 02. In Euphoria 03. Wake Of The Wanderlust 04. Afterglow 05. Colour In Sound 06. Cascaded 07. Games 08. Can't Stop Falling 09. Who Holds You 10. War Against The Mind 11. Line Of Fire NEWMAN Line-up Steve Newman (Vocals、Guitars & Keyboards) Rob McEwen (Drums & Percussion) Produced by Steve Newman
by malilion
| 2024-09-18 14:58
| 音楽
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