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北欧スウェーデンのムーミン・シンフォ・バンド(笑)RITUALが17年振りに5thアルバムをリリース!!


北欧スウェーデンのムーミン・シンフォ・バンド(笑)RITUALが17年振りに5thアルバムをリリース!!_c0072376_21040344.jpgRITUAL 「The Story Of Mr.Bogd Part 1」'24

フルアルバムは2007年リリースの前作『The Hemulic Voluntary Band』以来17年振りとは言え、2020年に予告編であるEP『Glimpses From The Story Of Mr.Bogd』をリリースしていたので音源的には4年振りの新譜となるキーボード入り4人組北欧バンドの待望の5thアルバムを少々遅れてご紹介。

EPリリースから早4年の歳月が流れていたのに驚きですが、フロントマン Patrik Lundstrom (Lead Vocal、Guitars)は北欧スウェーデンの古株プログレ・バンドKAIPAの2000年再結成時から参加し、以降フロントマンとして2、3年毎に新譜リリースと多忙なのも影響したのかメイン・バンドRITUALの新譜リリースの話が長らく聞こえて来なかった訳だが、やっと本編作が届けられファンの方々は一安心といった所だろう。

まぁ、そもそも1993年結成の1995年アルバム・デヴューながら、これまでにLIVE盤を含めてキャリア30年以上なのにたった5枚しかフル・アルバムをリリースしていない寡作バンドな彼等のファンにとっては4年待つなんて大した問題じゃなかったかもしれませんが…(汗

さて、前記したEPでも一部楽曲が公開されていた、成功者として身を立てた実業家“Chichikov Bogd”の人生を描いたオリジナル・ストーリーに基づくコンセプト作の第一部となる本作ですが、EP収録の"Chichikov Bogd"、"Mr. Tilly & His Gang"、"The Three Heads of The Well"の3曲も新たにリミックスされ改めて収録された完全版といった構成となっている。

デヴュー当時からヴァイオリン、マンドリン、ブズーキ等の民族楽器を使ったトラッド、フォーク・タッチが持ち味の、カンタベリー・テイストやお得意のメルヘン・テイストも織り交ぜた風変わりな独特の癖あるテクニカル・シンフォサウンドや、初期YESを彷彿とさせるメロディックで複雑なリズム使い、そしてデヴュー以来不変なメンツが織り成す鉄壁のアンサンブルと独特なキャッチーさを伴った北欧特有の冷ややかな美旋律が実に魅力的なのは本作でも変わっておらず、長らく待たされて来た往年のファンも満足する事間違い無しなブランクを全く感じさせぬ色彩豊かな音世界とマジカルな物語が描かれたダイナミック且つハイクオリティな仕上がりの力作だ。

プログレ特有の怒涛のハイテク応酬や圧倒的な技巧で聴衆を魅了するタイプのバンドではないが、しばしば Tove Janssonの小説 The Moominsにインスパイアされた変わり種のなかなか他で類を見ぬ独創的な音楽性と総じてアコースティカルな感触なのにどこか屈折した癖の強いハイブリッド・シンフォ・サウンドは、風変りでスピーディなビートとエキセントリックなヴォーカルを主軸に、JETHRO TULL風なフォーク・タッチやGENTLE GIANT的なリズミックで複雑なコーラス、更にヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ等の瑞々しいストリングスアレンジを巧みに交えたGRYPHONを彷彿とさせる中世音楽的な音色も散りばめ、エキゾチックでポップなのにどこかミステリアスで軽やかなメロディが舞い踊り、北欧バンドらしいノスタルジックな淡い叙情感と長閑な牧歌的雰囲気、そして初期GENESISを彷彿とさせるストーリーテリング風サウンドが一気に駆け抜けていく独創的サウンドのスリリングさとキャッチーさはコンセプト作であっても些かも衰えておらず、KAIPAを入口に本バンドをチェックしたプログレ・ファンをも必ずや虜にする事だろう。

本作でもアイリッシュ・ブズーキ、リコーダー、ホイッスル、ダルシマー、ニッケルハルパ等の楽器が奏でるトレードマークのアコースティカルな響きと軽やかな音色が織り成す美旋律の数々が鮮烈に楽曲を彩り、コンセプト作故か幾分これまで感じられたHRタッチが弱まってより70年代プログレ・テイストが強まった風で、そこにお得意のメルヘン・タッチとエキゾチックでトラディショナルな旋律が加わって密やかでエキセントリックなヴォーカルに導かれ謎めいたMr.Bogdの奇妙な物語が劇的にダークに展開していく、それらを描き出し語り尽くすドラマチックでテクニカルな唯一無二の北欧トラッド・シンフォ・サウンドは見事と言う他ない。

コンセプト作だからかいつもより少しお行儀良くはっちゃけたお遊び感が少なく感じるのだけがちょっとだけ残念だけれども、それで作品の質が少しも損なわれている訳ではない、単なる個人的な我儘です、ハイ。

文句のつけようなく素晴らしい内容だが、こんなに待たされたのに構成が見事な為か語り口や演奏が隙無い為か“アッ”と言う間に聴き終えてしまうのが唯一の不満点で、早く第二章作を届けて欲しい! と、次なる新作を渇望してしまうのでした。

彼等のファンは即GETしてモチロン後悔しない力作だし、フォーク風味のポップな北欧シンフォ作等がお好みの方なら是非チェックするべき彼等の久しぶりの新譜をお見逃しなく!

Track listing:
01. A Hasty Departure
02. The Inn Of The Haunted Owl
03. Dreams In A Brougham
04. Chichikov Bogd
05. Mr. Tilly And His Gang
06. Through A Rural Landscape
07. The Feline Companion
08. Read All About It!
09. Forgotten Qualities
10. The Three Heads Of The Well

RITUAL Line-Up:
Patrik Lundstrom   (Lead Vocals、Electric & Acoustic Guitars、Occasional Tourist Bouzouki)
Jon Gamble     (Keyboards、Backing Vocals)
Fredrik Lindqvist   (Bass、Irish Bouzouki、Hammered Dulcimer、Recoreds、Whistles、Backing Vocals)
Johan Nordgren   (Drums & Percussion、Nyckelharpa、Backing Vocals)

Additional Musicians:
Lovisa Hallstedt   (Violin on Track 1)
Fabian Lundstron   (Backing Vocals)
Mark Evitts      (Violin & Viola on Track 1)
Emily Nelson Rodgers (Cello on Track 1)




by malilion | 2024-09-12 21:04 | 音楽 | Trackback
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