![]() カナダのケベックを拠点に活動し、1994年にはツイン・キーボード5人組編成バンドとしてデヴュー・アルバム『After The Storm』を自主リリースした後、同郷シンフォ・バンドVISIBLE WIND絡みで一時注目された事もある古参シンフォ・バンドが20年振り(!?)となる3rdアルバムをリリースしたので即GET! KAOS MOONは1985年にリーダーでフロントマンの Bernard Ouellette (Keyboards & Vocals)と Michel Caron (Keyboards)によって結成され、地道なデモ制作やLIVE活動を行っていたが、後に90年代カナダ・シンフォシーンを代表する事になる新世代シンフォの旗手バンドVISIBLE WINDの1988年リリース自主デヴュー作『Catharsis』に Bernard Ouelletteがバッキング・シンガーとして参加し、続くVISIBLE WIND2nd『A Moment Beyond Time』'91 にもゲスト・シンガーとして再びバッキング・ヴォーカルで参加してシンフォ系リスナーから注目を集め、名作アルバムのリリースを重ね90年代シンフォ・コミュティで絶大な人気を誇ったVISIBLE WIND関連ミュージシャン在籍の新シンフォ・バンドとしてさらなる活躍を期待されたがその後、長い休止期間へ突入してしまう… 実際の所、Bernard Ouelletteはデヴュー作をリリースした後にKAOS MOONの活動を休止し、自身のレコーディング・スタジオ Amadeusを設立して表舞台から身を隠してしまったのだが、彼等への期待の声が途絶えぬのに応える様に2004年になると自身のスタジオで、唯一のオリジナル・メンバーである Bernard Ouelletteを中心にバンドメンツを一新したキーボード入り4人編成バンドでレコーディングを再開し、ファン待望の2ndアルバム『The Circle of Madness』をリリース、したまでは良かったものの結成当時の相方 Michel Caron もデヴュー作のオリジナルメンツも誰一人居なくなり、一応バンド形態作であったが多数ゲスト奏者が招かれた半ば Bernard Ouellette主導のソロ・プロジェクト状態な事からも察せられる通り、アルバムリリース後しばらくして再びKAOS MOONは長い眠りに着き、もう復活は無いものと諦めていた多くのファンの予想を裏切る形で遂に20年の時を経て再びメンツを一新(涙)し、新たにトリオとなった新生KAOS MOONが作品を届けてくれたのを何よりまずは祝いたい。 …んですけどね、折角20年ぶりに新譜を届けてくれたのにこう言うのは何なんですが、Bernard Ouelletteは前作以上に数々の楽器パートをこなしており、リードヴォーカルと鍵盤楽器は無論の事、今回はドラム、12弦ギター、バンジョー、クラッシック・ギターと、再びゲスト奏者も迎えた専任ドラマーが居ない、ギター、ベースから成るトリオ編成作で、ドラムスを招かないとLIVEは行えぬ事からも到底パーマネントなバンド編成とは思えず、先行きは変わらず不確定なのがなんとも…(´A`) デヴュー作時点では古き良きプログレっぽさが香る80年代ポンプといった自主盤らしいシケシケ(笑)なイメージのサウンドな、欧州風のウェットな美旋律とメロディアスで柔和なジェントリー・ヴォーカル、そしてチープなサンプルながら頑張っているシンセと艶やかなピアノを基軸にしたハードポップに片足突っ込んだ作風であったが、休止期間を挟んでの10年ぶりとなる2ndでメンバー総入れ替えの影響もあってか大きくバンド・サウンドとスケール感を進化、拡大させると、持ち前の品の良いメロディ・センスとプログレらしい思索性あるサウンドに加え、多数のゲスト奏者が持ち込んだ多彩な音色とアンサンブル、デヴュー作には無かった民族音楽的テイストやクラシカルな曲想、繊細かつファンタジックな楽曲が織り成すシンフォニックな美旋律の数々にはカナダ産バンドらしい透明感と華やかさ、そして独特の淡い叙情の香りが隅々までに響き渡っており、甘いストリングスやパーカッションも交えたアレンジの妙、さり気なくテクニカルな展開を紡ぐ演奏力の高さに加え、Bernard Ouellette の歌唱スキルの向上もあってヴォーカル・パートとコーラスが1st以上に充実した為に楽曲に幅広い表情や深い味わいを生み出す事に成功し、VISIBLE WIND関係ミュージシャンの在籍するシンフォ・バンドとして注目を集めたのに相応しい上々の評価を受けたのでした。 正直、デヴュー作の時点ではそこまで評価の高い歌唱力でなかった鍵盤奏者兼任レベルのヴォーカルだった Bernard Ouellette ですが、既にその時点でデリケートでメロディアスな感触のサウンドが柔和なヴォーカルを引き立てる工夫を感じさせていたが、その効果が2ndでは楽曲構成の向上と劇的な楽曲展開の上達、そして静と動を組み合わせた巧みなサウンドが生み出すしなやかな陰影具合もあってさらに伸びやかで素晴らしくなり、そのセンス良い美旋律と情感豊かな音色の輝きは当時のMARILLIONに迫る勢いであったように思うし、一気に多重で高度化したシンフォニック・サウンドは一時のYESを彷彿とさせる構築美を感じさせ、彼等のさらなる活躍を大いに期待したものでしたが、先に述べたような残念な結果に…orz さて、久しぶりの新譜の内容の方はと言うと、大雑把に言って前作『The Circle of Madness』'04 路線をさらに推し進めた作風と言え、トリオ編成だからなのかよりストレートでパワフルな印象とメタリックな感触、そしてダークでシンフォニックなモダン・テクニカルサウンドを所狭しと繰り広げており、以前にもまして楽曲展開の妙と美旋律に磨きがかかり、メロトロン、ハモンド、シンセ、エモーショナルなメロディを奏で楽曲にエッヂを加えるエレクトリック・ギター、12弦ギターや、ゲスト奏者によるニッケルアルパ、シタール、クラシック・ギター、アイリッシュ・ブズーキ等が奏でるアコースティカルな繊細さとエキゾチックで情感豊かな音色が前作以上に、妖しく、そして趣深い響きを放ちながら、カナダ産バンドらしい淡い叙情感としなやかでメロゥな幻想的サウンドを独特のカラ‐で鮮やかに染め上げていく様は本当に美しい。 特筆すべきは益々 Bernard Ouellette の歌唱力が向上しており、以前のような穏やかで伸びやかな歌唱のみならず濁った喉を鳴らす風な歌声やHMへ接近したダークでパワフルな唸り声、芝居がかったシアトリカルでエキセントリックなファルセット等々、多彩な楽曲に合わせて実に多様なスタイルの歌唱を披露しており、デヴュー作からかなりの時間的隔たりがあるとは言えもう完全に別人レベルなエモーショナルで情熱的、そしてキャッチーなヴォーカルを堂々と聴かせているのは見事と言う他ないだろう。 そして Bernard Ouellette のプロデュース能力と楽曲コンポーズ能力もこの年月で数段向上したのだろう、以前までは鍵盤サウンドが楽曲の中心を占めギター・サウンドは脇を固める扱いが殆んどだったのが、本作では Eric Bonetteが弾くギターがリフにソロにと楽曲に置いて大きなウェイトと存在感をしっかり感じさせ、楽曲要素の1ピース以上にバンド・サウンドやカラーを決定付ける重要ポイントとして終始耳を惹く旋律と音色を奏でているのが大きな変化と言えるのは間違いない。 また現代的なプログHMやメジャー・ミュージックシーン、そして最近デヴューしたモダン・シンフォ勢の影響もあるのか、いつになくタイトでソリッドなベース・サウンドが強調されており、終始メロディアスでフックある魅力的なベースラインが楽しめ、3rdになって遂に大きくクローズアップされたギター・サウンドと同じく以前よりも多重的で奥行の増したバンドサウンドを構成する重要な要素になっているのも見逃せないように思う。 所々でかってのポンプっぽいキーボード・サウンドが楽曲をよぎるのは Bernard Ouellette 的サービスなのか古き良きポンプへの愛着なのか郷愁故なのか、ともかく楽曲のアクセントになっていて旧来からの彼等のファン程に感慨深いものがあるだろう。 注目の Bernard Ouellette が本格的にドラム・パートを初めて担った本作だが、以前からコンガやボンゴ、パーカッション等を多数演奏してきた事もあったり、元々器用なタチなのか本職以上とは言えぬまでも十分ボトム・パートを演奏するのに問題ないアタック感あるドラム・プレイを披露しており、決して本作の演奏レベルを損なう事ないインディ・バンド作以上品質に自身のスタジオでタップリ時間をかけて作り込んだ的確なドラム・サウンドには彼の強い拘りのようなものが感じられる。 一般的に難解で長尺曲が多いテクニカルなモダン・シンフォを演っているのにサラリとアルバムを聴き終えてしまえるのは、ヴォーカル・パートがキャッチーで多彩なのとメロディアスな楽曲の一体感が優れ、そして全曲が無駄無くコンパクトにまとめ上げられた程が見事な為なのは疑うまでもない。 そう言えば、妖しくエキゾチックで謎めいた旋律を奏でるアコースティカル・サウンドに絡む Bernard Ouellette のファルセットを交えた伸びやかなハイト-ン・ヴォーカルのパートが、妙に北欧シンフォ・バンドのRITUALっぽく聴こえる時があって、別段両バンドに共通点なんて無いのにそこはちょっと面白かったですね (*´∀`*) ゲストには前作にも参加の Jean-Francois Belangerと Benoit Chaputの2人に加え、同郷カナダのテクニカル・モダン・シンフォバンドHAMADRYADのベーシスト Jean Francois Desiletsが今回は参加しているので彼等のファンの方も要チェックであります。 キャッチーで爽快感ある北欧シンフォや、透明感ある叙情派ユーロ・シンフォ等がお好みな方ならきっと本作を気に入る事と思うので、もし興味あるようでしたら是非一度ご自身の耳でチェックしてみて下さい。 Tracks Listing: 01. Love Transfusion 02. Logger's Tale 03. Noisy Shoes 04. The Hatching 05. Miles Away 06. Fly 07. The King Of Dead Men Living 08. The Goldfish KAOS MOON Line-Up: Bernard Ouellette (Lead & Backing Vocals、Drums & Percussions、Hammond Organ & Keyboards、12-string Guitar、Korean Banjo & Classical Guitar) Eric Bonette (Electric Guitars & Backing Vocals) Eric Portelance (Bass) with Benoit Chaput (Classical Guitar、 Irish Bouzouki & Electric Guitar) Jean-Francois Belanger (Nickelharpa & Sitar) Jean Francois Desilets (Bass on Tracks 03、07) Recorded & Mixed by Bernard Ouellette
by malilion
| 2024-08-17 21:24
| 音楽
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