SYNDONE 「DirtyThirty 1992-2022 30 Years of Syndone Anniversary」'23 前作『Kama Sutra』'21 で70年代の古典プログレ・バンド群と肩を並べるレベルへ遂に到達し、現在のイタリアン・プログレッシヴ・シーンで堂々の存在感を示すイタリアはトリノを拠点に唯一のオリジナル・メンバーでリーダー、そして作曲とキーボードを担当する Nick Comoglio率いるSYNDONEの、復活後第7弾にして通算9枚目でこれがバンド最終作(!?)かもと何やら噂されるバンド結成30周年記念盤が、前作より2年ぶりに限定リリースされたのを少々遅れてGETしたのでご紹介。 完全新曲の『DirtyThirty』『Fight Club』『I Spit On My Virtue』に加え、過去曲のフレーズを引用しつつ新たに作曲された『The Angel』『I Only Ask For A Super glue』、90年代に発表された初期~中期曲にオーケストラ・セクションを導入しリアレンジや再解釈した新録曲『Valdrada's Screen』『Mary Ann』『God's Will』『Thousand Times I Cried』等の他、ボーナストラックとして2018年作『Mysoginia』収録曲『Evelyn』の日本語歌唱ヴァージョン (!?)も含む全11曲を収録した、彼等のこれまでの活動を総括するかの様な内容となっている。 残念な事に再びメンバーチェンジが有った模様で、前作でリズム隊が一新されたのに続き今回もドラムスだけ Eddy Francoに代わってローマ在住のセッション・ドラマーで Giancarlo Erra率いるサイケ&アンビエント風味でメランコリックなポストロックを演るイタリアン・バンドNOSOUNDの元メンバーだった Ciro Iavarone が新たに加わっている他は前作と変り無く、初期から拘って来たバンド・コンセプトであるギター・レス&ツイン・キーボードを主軸とする6人編成バンドで復活以降は本格的なクラシック要素を取り入れ続けて来たが、今回もブダペスト・シンフォニック・オーケストラをフィーチャーしつつパイプ・オルガンやクラシック・ギター等のゲスト奏者も多数交えた再結成以来の定番体勢でアルバムは制作されており、華麗かつ技巧的な70年代プログレ・リスペクトなの姿勢はそのままに更に芸術性を練り上げイタリア然とした重厚でドラマチックなシンフォニック・ロックというアニバーサリー・コンピレーション盤と思えぬ期待以上の仕上がり具合で、これにはイタリアン・プログレ・ファンならずともシンフォ・ファンもニッコリだろう。 前作紹介時にもお伝えした通り Eddy Francoは今流行りのオンライン・ミュージシャンでインターネット上のミュージシャン派遣会社に所属し、世界中から依頼を受けてドラムの音入れをする、という元々パートタイマー的な扱いだった模様なのでこのメンバーチェンジはある程度は予定調和だったかも? 再結成してからはリズム隊は常にゲストを迎える形態でアルバム制作を行っていた期間の方が長いのでもうファンにはお馴染みのメンバーチェンジかもしれないが、やはりバンド・アンサンブルの完成度等を考えると出来る事ならばリズム隊は安定して欲しい所ですよね…(汗 さて、Nik Comoglioを中心に1989年に結成され、若さから来る情熱で勢い余って楽曲を統制不能に破綻させつつもピアノ、アナログ・シンセサイザー、ハモンド・オルガンの鍵盤楽器を2人のキーボーディストが『コレでもか!』とばかりに縦横無尽に操り、無駄にスピーディーでHMを凌ぐ程にエネルギッシュなイタリアン風味増し増しの畳み掛ける暑苦しいハイ・テンション変拍子キーボード・プレイが終始スリリングに強引に駆け巡る、JAZZありフュージョンありのテクニカルでエモーショナルな、疾走感ばかり耳に残る高速EL&P風の完成度イマサン、勢いは超A級なイタリアン・シンフォ・ロック作であった『Spleen』'92 『Inca』'93 の2作品をイタリア Vinyl Magic レーベルに残しその後活動を休止するも Riccardo Ruggeriを含む新体制にて2010年代に復活した彼等の結成30周年を記念する本作は、前作と同じく歌詞が英語で歌われており、これは新曲は当然の事として過去曲のリメイクも含めてより広い聴衆へ向けて自身の作品を届けたいという想いからの選択だろう。 彼等の濃密過ぎるイタリアン・プログレ風味を愛しているリスナーからすると英詞への変更は些か残念かもしれないが、多少スタイリッシュさが増しただけで相変わらず胸焼けしそ…いや、胸を締め付けるエモーショナルな Riccardo RuggeriのHMバンド張りに圧倒するワイルドな歌声や、前作で魅せた様々な歌唱アプローチに負けず劣らず千変万化に表情を変えお得意のオペラチックな歌唱も堂々と披露し、自己主張が強すぎてカリスマ性が炸裂するエキセントリックでジェットコースターの様に上下乱舞するヴァイオレンスな歌メロと何もかも少しも変わった様に聴こえない(汗)ので、その点を危惧している方はご安心を。 寧ろ過去曲をリメイクして取り入れている為か、完成度がダンチで上がった再結成以降作より先祖返りしたかの様に初期の灰汁が強い作風を思い出させ、この好き嫌いを極端に分ける他に無い独創性と癖の強さこそがイタリアン・プログレの美味なる味わいと言えばそうなのだが、だったら英詞にしてよりポピュラリティーを高めた意味はどこに、とは個人的に疑問を感じてしまいますけど…(汗 高い芸術性に加え、無意味なルールに縛られず、音楽カテゴリーの境界を越え、繊細なピアノやアコギを織り込んだメランコリックでオーケストレーションされたメロディとダイナミックに炸裂するかの如き暴力的でエネルギッシュなロック・パッションを交差させ、安っぽいコマーシャリズムに背を向けたコンセプトや難解な構成は欧米の商業主義音楽に反旗を翻すかのようで、良く言えば過去作で提示した90年代イタリアン・シンフォ作の勢い有り過ぎなパワフルさと癖の強過ぎる独創性、そして再結成して以来の楽曲で魅せる思慮深く洗練された整合性とクラシカルな叙情感あるダークな美旋律を高めた作風を過不足なくMIXし、本記念盤で新たに提示した、とも言えるかもしれません。 所でなんで急に日本語で歌った曲を収録しようと思ったのかは謎ですよね、歌詞が何故か昭和演歌みたいなテイストなのも驚きですけど(w まぁ、なんだかんだと小難しく考えずとも、表に裏に華麗に舞い踊り煌めくシンセ、ワイルドに歪んで唸りを上げるオルガン、小気味よく響くクラシカルで洗練されたピアノ、幽玄さを演出するメロトロンと、ファンが求める通りなメランコリックでエネルギッシュな鍵盤サウンドの数々と艶やかな美旋律が終始織り成され、心震わす芸術性とHM張りの畳みかける勢いも相まって、ただひたすらに美しい音色の洪水と圧巻のパワーに身を任せて幸福感に満たされているとアッという間にアルバムを聴き終えてしまえるので、香る様にロマンチックでどこまでもドラマチック、そして艶やかなオーケストラ・サウンドが輝くかの様なイタリアン・シンフォニック・ロックをお求めの方には是非一度チェックしてみて欲しい、最近珍しいアーティスティックで完成度の高い作品の一つだ。 新曲も素晴らしい出来栄えだし、リメイクされた楽曲もオリジナル・アルバムと遜色ない聴き応えで楽しませてくれる本作、こんなに素晴らしいアルバムを創作しているのに『本当にこれで終りなの?』という噂に疑問しか浮かびません。 確かに Nik Comoglioはもう随分な高齢の様だけど、単なる噂であって欲しいというのが全イタリアン・シンフォ・ファンの想いでしょうし、ひょっこり新作が数年後にリリースされるのを祈って… Tracks Listing: 01. Dirty Thirty (The End Of My Love) 02. Fight Club 03. The Angel 04. Valdrada's Screen Restyling The Track "Spleen" from The Album "Spleen" 1992 05. I Spit On My Virtue 06. I Only Ask For A Super Glue 07. Mary Ann Restyling The Track "Marianne" from The Album "Spleen" 1992 08. Rene Restyling The Track "Magritte" from The Album "Melapesante" 2010 09. God's Will Restyling The Track "Inca" from The Album "Inca" 1993 10. Thousand Times I cried Restyling The Track "Proverbi" from The Album "Inca" 1993 11. So Long Everybody - The Time Has Come & I Must Leave You Restyling The Track "Penelope" for full Orchestra from The Album "Odysseas" 2014 12. Evelyn [Japanese Version:Bonus Track] SYNDONE Line-up: Nick Comoglio (Hammond、Moog、Juno dist、Mellotron、Composition、Orchestration、Keyboards) Riccardo Ruggeri (Lead Vocals、Composition、Lyrics) Marta Caldara (Vibraphone、Marimba、Keyboards) Gigi Rivetti (Hammond、Acoustic Grand Piano、Electric Piano、Clavinet、Moog、Accordion) Simone Rubinato (Bass、Fretless Bass、Electric Baritone Guitar) Ciro Iavarone (Drums、Percussion) Guest: Tony De Gruttola (Electric & Acoustic Guitars on Track 01) Andrea Carbone (Electric Guitars on Track 07) Pino Russo (Classic Guitars on Track 08) Gianluca Cagnani (Pipe Organ on Track 04) Rebecca Onyeji (Backing Vocals) Charlie Poma (Backing Vocals) Kaori Tsutsui (Clarinet in Bb on Track 12) String Trio Valerio Iaccio (Violin on Track 05) Roberto D'Auria (Violin on Track 05) Michelangiolo Mafucci (Cello on Track 05) Budapest Scoring Symphonic Orchestra Conducted by Francesco Zago on Track 11) Produced by Nick Comoglio
by malilion
| 2024-02-19 15:37
| 音楽
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