SCROOGE 「South Side Songs +1」'23 北欧スウェーデンのメロディアスHMバンドBAD HABITのメンバーが2人同時期に在籍するも当時デモ・テープのみで正式なアルバム・リリースは無く、BAD HABITがメジャー CBSと契約した為に正式音源をリリース出来なかったキーボード入り5人組メロディアスHRバンドSCROOGE (スクルージ)の1986年~1993年の活動期間中に録音された幻の音源11曲をリマスター&世界初CD化でイタリアのSteelheart Records恒例なThe“LOST MELODIC JEWELS”Collector's SeriesのVol.5として限定500枚リリースされたのを素早く確保したのでご紹介。 オーストリアに同名のプログレ・バンドが90年代に活動しアルバムを数枚リリースしていましたがそのバンドとは別バンドですのでご注意下さい。 ベーシストの Jens Lundhahlとシンガー兼ギタリストの Richard "Bax" Fehlingとドラマーの Jaime Salazarと言う小学校以来の幼馴染がスウェーデン南部の町 Lundで1985年秋にトリオ・バンドを結成し、当初はDEEP PURPLE、BLACK SABBATH、Jimi Hendrixからの影響を出発点に次第にEUROPEやMETALLICA、MOTLEY CRUE等へ影響の幅を広げつつ、バンド活動をスウェーデン最南部のSkane地方にある Stockholmや Goteborgに次いで大きいスウェーデン第三の都市 Malmoを拠点に本格的に開始する。 続いてヴォーカリストとして Orjan "Cozy" Wallenをバンドに迎え入れるとバンド内で素晴らしい化学反応が起きてサウンドが一気に進化し、Orjan "Cozy" Wallenはすぐにギタリストへチェンジするとシンガーが Richard "Bax" Fehlingに固定になる頃には、JOURNEYやTOTOの様なUSメロディアス&産業ロック&AORから強く影響を受けたキャッチーなサウンドを身上とするバンドへ様変わりしていた。 バンドサウンドの方向性的にキーボーディストが必要となり、続いて〝歌える鍵盤奏者”の Peter "Pyrre" Nyrellが加入する頃にはトリプル・シンガーを擁するバンド名はSCROOGEへと改まっていた。 Orjan "Cozy" Wallenがスタジオ作業の技術を獲得すると早速バンドはデモ制作に入り、本作収録曲の内5曲が1987年に録音される。 同じ頃、BAD HABITも Malmoを拠点に活動を開始しており、Richard "Bax" Fehlingと Jaime Salazarは2つのバンドを掛け持ちで活動する事に。 面白いのは最初 Richard "Bax" FehlingはBAD HABITのギタリストで、シンガーは後にギタリストへ転向する Hal Marabelだったらしく、BAD HABITのデヴューEP『Young & Innocent』制作中、喉を痛めた Hal Marabelの代役で Richard "Bax" Fehlingが歌ったらそのままシンガーとギタリストが役所を交代する事になったらしい(マジデ?? リード・ヴォーカルを担えるメンツがゴロゴロいて、しかもギターも巧いとかそんなプレイヤーが奇跡的に近くに大勢いるのが北欧スウェーデンの神秘といいましょうかなんといいましょうか、日本じゃなかなか考えられないプレイヤー・スキルの高い人ばっかな層の厚さに驚きであります… この時点ではBAD HABITはよりメタリックなタッチのワイルドなギターがメインなメロディアスHMサウンドを鳴らすバンドで、SCROOGEの方がよりソフトでポップな分厚く爽快なコーラスをフィーチャーしたAOR寄りの洗練されたキーボードが心地よいメロディアスHRサウンドであり、本作のサウンドを耳にした方ならば当時彼等が非常に評判の良いデモを幾つかレコーディングし好評を博していたと聞いても誰もそれを疑わぬだろう、寧ろこの時点ではよりメジャー志向なアーバン・テイスト漂う洒落たサウンドのSCROOGEの方が成功しそうとさえ思える完成度高いキャッチーでポップな北欧メロディアス・サウンドであった。 ちょっと露骨にUSポップやメジャー・シーンを彩る当時の流行りの音楽要素だったりどこかで聴いたアレンジを丸パク…取り入れているのでSCROOGEはオリジナリティという点で些か問題があったのも事実だけど…(汗 グランジーな暗黒の90年代の雌伏を経てBAD HABITがよりアダルトでソフトなサウンドの、まるでSCROOGEの様な作風のユーロAORアルバムを後にリリースする事になるのだから実に本バンドの存在は興味深いですね。 BAD HABITがメジャー CBSと契約し1988年にデヴューEP『Young & Innocent』をリリースした事で Richard "Bax" Fehlingと Jaime Salazarは活動の軸足をSCROOGEからBAD HABITへ移し、SCROOGEの活動は停滞へ。 それもあってか Orjan "Cozy" Wallenはデモのミックスやエンジニアリングも担当していたバンドの影の功労者ながら脱退してしまい、新ギタリスト Magnus Edsbergerを加入させてバンドを続行させるもののSCROOGEはサイド・プロジェクト的な立場の為か以前のような活動状況からは遠のいていく。 因みにBAD HABITの初期作に Orjan "Cozy" Wallenはバッキング・ヴォーカルとして参加しているのでSCROOGE脱退後もBAD HABITの2人とは友好的な関係は続いていたのだろう。 BAD HABITが1990年にメジャーからドロップした影響でか解散(2ndフルアルバム『Revolution』リリース前に解散状態だった模様)すると再びSCROOGEの活動が盛んになるかに思えたが、ドラマーの Jaime Salazarを始めミュージシャンとしての腕前が認められた各メンバーのバンド外活動等が忙しくなり、結局1993年頃にはSCROOGEは自然消滅してしまう… 幅広い音楽要素が伺える上にセンス良いテクニカルなギター・プレイを軽やかに繰り広げる Orjan "Cozy" Wallenが脱退せず、メジャー契約を果たし良いプロデューサーの元でよりオリジナリティを増したキャッチーな北欧メロディアス・サウンドを構築し、シンガー Richard "Bax" FehlingがBAD HABITメインで殆ど開店休業状態の時に遜色ないレベルの新シンガーを獲得し独自の活動へ乗り出していたならば、強烈な個性という点では弱いけれど妙な癖が無い分SCROOGEの方が大衆受けしてメジャー・シーンで良いチャートアクションを残していたのでは、と妄想が止まらなくなってしまう、そんな可能性を感じさせる素晴らしい幻の音源であります。 シンガー Richard "Bax" Fehlingが抜群に歌が上手くAOR寄りのソフトでキャッチーな北米市場を意識したサウンドにピッタリなの歌唱を披露するのはBAD HABITのアルバムを耳にした事がある方ならご存じでしょうが、本作のキャッチーでフックある80年代USロック風ブライト・サウンドをより際立たせているのはギタリスト Orjan "Cozy" Wallenと両輪で活躍するキーボーディスト Peter "Pyrre" Nyrellのセンス良い洗練された音色のチョイスと巧みな鍵盤捌きなのは間違いない。 チラチラッとTOTOやCHICAGOを彷彿とさせるシャレオツなキーボード・アレンジと如何にも北欧バンドというキラキラしたオクトジェニックで軽快なシンセ・サウンドがホントに良いんですよねぇ~♪(゚∀゚) キーボードのムーディーな使い方やギターのミステリアスなロングトーンなんかにASIAやGTRっポイ瞬間もあるので Peter "Pyrre" Nyrellが実はプログレ系、もしくはプログレベースなキャッチー・サウンドのバンドの影響を受けていたのかもしれませんね。 やはり北欧ミュージシャンがプレイするサウンドな為か、北米バンド特有な泥臭いブルーズ風味や埃っぽくいなたいカントリー・テイストだったりが希薄なのが実は彼等の強みだと思うのですが、懸命に北米サウンドをトレースしようとしてスライド・ギターやバンジョー、ホーン等を鳴らしているのが逆に微笑ましく思えてしまう(*´ω`*) これまで陽の目を見なかったデモ音源ながらオリジナル・テープから丁寧にリマスタリングされた楽曲の数々はデモと思えない完成度とプロフェッショナルな録音が成されており、発掘モノに有りがちな大きなノイズや酷い音ヨレ等が見当たらない極上レベルなサウンドとなっているのも嬉しい所だ。 尚、BAD HABIT、SNAKE CHARMERに参加する事になる Sven Cirnskiがリードギターで参加している曲もあり北欧スウェーデンHMファンには要注目かも? しかし、頑張って北米サウンドに仕上げ様と画策しているんでしょうが、どうしても北欧ミュージシャンらしい叙情的なメロディやリリカルな音色がサウンドのそこかしこで鳴っていて、その仄かなウェットな情感が実に日本人受けする要素で堪らないんですが、当時の北米はドライで抜けの良い屈託ないストレートなサウンドが望まれていただけに、今の欧米折衷なメロハー・サウンドを鳴らす新人バンド達の活躍を見ているとしみじみ彼等は〝早過ぎた”んだなぁ、とほろ苦い想いで胸が熱くなりますね… なんでも最近は Jaime Salazarはハイスクールの音楽教師になり、Orjan "Cozy" WallenはTV制作ビジネスを展開、Peter "Pyrre" Nyrellはデジタル・グラフィック・デザインを生業(!)とし、Jens Lundhahlは小学校の理科教師(!?)を務めている模様だ。 中でも一番驚かされるのが Richard "Bax" Fehlingがスカンジナビアの大手航空会社の機長(!?)として働いている事だろう。 え? もうBAD HABITは解散してる訳?? そう言や音沙汰なかったけど、そんな事になっていたなんて…っていうか、皆多才だなぁ…(汗 残念ながらギタリスト Magnus Edsbergは既に鬼籍で、元BAD HABITのベーシスト Patrik Sodergrenは起業家として成功し、2013年にキャリアをリタイアし現在は悠々自適な生活を送っているらしい。 Richard "Bax" Fehlingによると元メンバー達は皆30分程度の所に住んでいるので気が向いた時に簡単に集まってジャムれるらしいし、まだSCROOGEの物語は終っていないと思っているとの事なので、もしかしたら再結成作なんかがリリースされるかもしれないので、ちょっとだけ期待して待ちましょうか ('(゚∀゚∩ バンド自身による未発表写真とバンド・ヒストリーを完全収録した16ページの豊富なブックレット付きとなっておりますので、BAD HABITファンは勿論の事、爛熟の80年代末期を思わすノスタルジックな北欧メロディアス作がお好みな方なら迷わずGETしても損はしない、そんな掘り出し物作でありますので是非一度ご自身の耳でチェックしてみて下さい。 Track listing; 01. The Fire 02. Somebody's Calling 03. My Town 04. Blue Skies And Pain 05. Santiago 06. End Of The Road 07. Pieces Of A Dream 08. My Friend 08. Crying's Much Too Late 10. Right On Wrong 11. Dance Dance Dance SCROOGE Lin-Up: Richard "Bax" Fehling (Lead & Backing Vocals、Lead Guitars) Jaime Salazar (Drums), Jens Lundhahl (Bass、Backing Vocals) Orjan "Cozy" Wallen (Lead Guitars、Backing Vocals) Peter "Pyrre" Nyrell (Keyboards、Backing Vocals) Magnus Edsberg (Backing Vocals、Lead Guitars on Tracks 06、07、08) Engineer、Mixed By Orjan "Cozy" Wallen
by malilion
| 2024-02-08 09:01
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