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ベルギー人マルチ・ミュージシャン Kurt Vereecke率いる多国籍AOR&メロハー・プロジェクトが11年ぶりに3rdアルバムをリリース!

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FROZEN RAIN 「One Mile From Heartsville」'23

ベルギー出身のソングライターでマルチ・ミュージシャン&ンポーザー Kurt Vereeckeが率いる多国籍ユーロピアン・AOR&メロハー・プロジェクトFROZEN RAINが復活し前2ndアルバム『Ahead Of Time』'12 以来11年振りとなる待望の3rdアルバムをリリースしたのをちょい遅れてGET!

2ndまで在籍していたドイツのAvenue Of Allies Musicからデンマークのメロハー専科レーベル Lions Pride Musicへレーベル移籍しての初アルバムでもあり久しぶりの新譜なのでそれまでの流れを簡単に。

中心人物の Kurt Vereeckeは学生時代に友人にJOURNEYの『Escape』を聴かされたのを契機にメロディアス・ロックに魅了され、最初のバンドNO PROBLEMSでシンガー兼ギタリストとして活動を開始し、クラブ・バンドの常としてカヴァーに加えオリジナル・ソングも演奏し始めるのに時間はそう掛からなかった。

時が経ち1990年代初期に自身のバンドRHYANA(ライアナ)を率いていた頃、6曲のデモ曲をレコーディング(2ndアルバムの日本盤ボーナス・トラックとして収録済。デモ音源の一部は1stで正式に録音され収録されている)したが、結局大きな成功は望めずバンドは解散。

音楽教師でもあった Kurt Vereeckeは、1996年から2001年にかけて子供向けの童謡を収録した2枚組CDを3枚リリースし、教師向けのマニュアルも3冊執筆するがメロディアス・ロックに対する情熱は少しも衰えておらず、一連の童謡作業が終ると即AORレコードの制作に乗り出す事に。

Kurt Vereeckeはアルバムを何枚も作れるとは思ってもいなかったし、希望もしていなかった為、出来る限り多くの友人を招き、自身のアイドルであるミュージシャン達もゲストに招いたアルバムの制作を画策する。

Tommy Denander (G:RADIOACTIVE、PRISONER、RAINMAKER、IMPERA、etc...)や Steve Newman (G:NEWMAN、ACACIA AVENUE、COMPASS、etc...)、Daniel Flores (Ds:MIN'S EYE、THE MURDER OF MY SWEET、etc...)、Ollie Oldenburg (Vo:ex:ZINATRA)、Willem Verwoert (Vo:SILENT EDGE)、Jim Santos (G:NORWAY)といったメロハー系ミュージシャン22名とのコラボレーションが活かされたAOR&メロハー・プロジェクト作であるFROZEN RAINのデヴュー作が5年以上の制作期間を経て2008年に遂にリリース。

豪華なゲスト陣が反響を呼び、HEARTLANDやANGEL、そしてSKAGARACKに通じる華やかなキーボード・サウンドがフィーチャーされた、北欧メロハーも思わす透明感あるキャッチーで80年代風味ある洗練されたAOR寄りユーロ・メロディアス・サウンドが世界中で好評を博した事から、TOTO、JOURNEY、SURVIVOR等の80年代USメロディアス・バンド等に強く影響を受けたベルギー人ミュージシャン Kurt Vereeckeの一枚限りのアルバムをリリースする為のソロ・プロジェクトであったFROZEN RAINは本格的なベルジャン・AOR&メロハー・バンドとして始動。

デヴュー作リリースに先駆けて2007年にバンドの中核を成す事になるベルギー人ギタリストの Rik Priemと出会い、バンドに彼を迎えると直ぐ新曲を書き始める。

その間、この後に長きに渡って Kurt Vereeckeと創作活動の相棒となる1stアルバムで2曲にゲスト参加していたベルギー人キーボーディスト Jurgen Vitrierもバンドの一員に。

Avenue Of Allies Musicのレーベル・メイトであるSHINING LINEのイタリア人ドラマー Pierpaolo“Zorroll”Monti の紹介で、90年代末期から数多のバンドに参加し、その歌声をHM/HRシーンで轟かせているドイツ人HRシンガー Carsten“Lizard”Schultz (ex:DOMAIN、EVIDENCE ONE、EVIDENCE ONE、etc...)を2009年に新たなヴォーカルに迎え、前作ゲスト参加のベルギー人ベーシスト Vincent De Laat (後にベルジャンHMバンドSCAVENGERへ)を正式メンバ-に加え、ドラムスに実弟の Hans Vereeckeを据えると、2012年に2ndアルバム『Ahead Of Time 』がリリースされる。

この2ndは国内盤が6曲ものボーナストラックを追加されリリースされた事もあって彼等のメロハー・サウンドを耳にした方も多いと思われるが、80年代ハードポップを思わせるキラキラしたキーボード・サウンドと清涼感溢れる美旋律が止めどなく紡がれるAOR&産業ロック寄りのUS風味も感じる軽めで灰汁の少ない爽快なユーロ・メロディアス・サウンドが特徴だったデヴュー作から、打って変わってヘヴィで攻撃的なギターがフィーチャーされたハード寄りの所謂10年代メロハー・サウンド作となっていた。

古い創作曲の録音を念頭としたAOR&ハードポップ・プロジェクトからしっかりとメンツを固め現在活動するバンド作として2ndアルバムが制作されたのが良く分かり、なかでもリーダーの Kurt Vereeckeと共に楽曲創作の中核を成すギタリスト Rik Priemの存在感は絶大で、心に残るフックある弾むリフに随所で耳を惹くハモリを駆使したメロディアスなフレーズ、ピリリと楽曲を引き締めるハードでスリリングなチョーキングやここ一番で爽快に駆け抜けるテクニカルで華やかなソロ等、前作に欠けていたハードエッヂなメロハー要素を完全に一人で構築してさえいる大活躍であった。

ただ、キャッチーでコンパクトな楽曲の完成度や哀愁香るメロディアスさ、洗練されたアレンジ具合共にデヴュー作を大きく上回っていたのだが、デヴュー作で招かれていたヴォーカリスト達の多くが甘い声質のハイトーン系な典型的北欧ポップシンガー風の爽快な歌声に対して、Carsten“Lizard”Schultzは正反対のハスキーな濁り声でパワフルに熱唱する典型的HRシンガー・スタイルだった事もあってデヴュー作が気に入っていたリスナーの多くに少なからず失望をもたらしセールス的にも成功と言い難い結果になってしまう。

シンガーの歌唱がファンが求める方向性と些か違った事や、数多くのバンドやプロジェクトを掛け持ちしている Carsten“Lizard”Schultz がフロントマンだった事、そしてギタリスト Rik Priemとリーダー Kurt Vereeckeが揃って健康を害し、バンド活動は停滞、いつしか音信不通に…

Rik Priemの健康状態は深刻で、いくつかの手術を受けなければならず、更に自身のバンド Rik Priem's PRIMEのアルバム制作を優先してバンドを脱退...orz

Kurt Vereeckeの健康状態は現在も思わしくなく創作活動の大きな障害となっており、更にフルタイムのミュージシャンでない事もあって昼の仕事に時間が取られ、その上ベルギーではAOR&メロハー系に適した優れたミュージシャンを見付けるのが殆ど不可能な為にメンバー探しは困難を極め、新作の制作は遅々として進まぬ間に年月が経過していたらしい…

無論、その間になんの創作活動もしていなかった訳ではなく、ノルウェーのメロハー・バンドFAITH CIRCUSのシンガー Marc Farranoの依頼でFAITH CIRCUSの新譜(現在まで未リリース)のキーボードパートのレコーディング作業に約2年間手を貸したり、相棒の Jurgen VitrierはWAVE WALKERSなる一時期の VangelisやTANGERINE DREAMを彷彿とさせるシーケンシャルなデジタル・サウンドが特徴のアンビエント系エレクトロ・ミュージック・ベルジャンデュオ・ユニットで2021年にデヴュー・アルバム『Kronos 21』をリリースするなどバンド外活動は盛んなのに加え、現在のメンバーは三ヵ国に在住なので主にインターネットを通じて創作活動(メンバー・フォトさえ一堂に会して居ない)が行われ、各自が自宅スタジオで作業する為に制作期間が長引いたのとアルバムのミキシングも自ら手掛けた為、更に時間とエネルギーを消費してしまったと Kurt Vereeckeは語っている。

さて、待望の新作ですが Kurt Vereecke、Jurgen Vitrier、そして実弟 Hans Vereeckeは前作に引き続き参加しているのに加え、新たに2名のミュージシャンがベルギー国外から正式メンバーとして迎え入れられた新体勢で本作は制作されている。

新たにフロントマンに迎えられたのは、90年代中期から主にソングライティングやバッキング・ヴォーカルで数多くのソロ・シンガーやバンドのアルバム制作に協力していた、どちらかと言えば裏方ミュージシャンだがキャリアも能力も十分のベテランで、あのHAREM SCAREMのシンガー Harry Hessを中心としたメロハー・プロジェクトFIRST SIGNALにもソングライティングで参加しているスウェーデン人シンガー Lars Edvallと、EXTREME、Gary Moorem、Steve Lukather等の楽曲をカヴァーしたギター・プイレ動画をYou Tubeをはじめ様々な媒体のネット上にアップしている事から彼がどんな音楽に影響されギターの腕前を磨いて来たかが分る、無名の若きドイツ人ギタリスト Jens Ambroschの2名のみがFROZEN RAINの新メンバーで、残念ながら専任ベーシストは今回参加しておらず、Kurt Vereeckeと Jurgen Vitrier、そしてゲスト奏者も交えてベース・パートを補っているツイン・キーボード5人組編成バンドとなっての第一弾作だ。

惜しむらくは制作期間が長期に渡った為か新メンバー2人が加入する前に本作収録の楽曲は Kurt Vereeckeと Jurgen Vitrierの手によって殆どレコーディングは終えられており、新メンバーがバンドに持ち込んだ新要素がほぼ無い状態(僅かに一曲『One Of These Mornings』だけシンガー Lars Edvallの自作曲が収録)なのと、当初はスペインの期待の新星メロハー・バンドHACKERSのギタリスト Fran Alonsoにバンド加入を打診するもHACKERS活動を優先する為に断られ、最後の最後にネットで見つけた無名のギタリスト Jens Ambroschがほぼ完成していた楽曲に付け足す形でプレイするのみで、他はデヴュー作と同様に友人ギタリスト達をゲストに多数迎えてほぼギター・パートは録音された形になっており、ギタリスト主導で楽曲の数多くが創作されたハードエッヂなサウンドが心地よかった2ndと違って今回はキーボーディストの2人がメインとなっての体勢でアルバムが完成したのが前作との明確な違いなのは間違いない。

因みにそのHACKERSのギタリスト Fran Alonsoは本作で客演しており、3曲で彼の素晴らしいギター・プレイを楽しむ事が出来る他、Roger Ljunggren (T'BELL、NIVA、etc...)とカナダのベテランHRバンド APRIL WINEのドラマー Roy Nicholとスウェーデンのフォーク・ロックバンド FROKEN UNDERBARでドラムを務める Daniel Trobellも客演参加し、アルバムの多面的なサウンドをさらに引き立てている。

と、公私共に諸々のゴタゴタが山積し決して万全の制作体勢で望めた訳でない新作の内容についてだが、FROZEN RAINファンならずともメロハー好きな方ならば彼等の新譜で一番の注目点はニュー・シンガーがどういった質の歌声なのかという事だと思うが、ご安心下さい、新フロントマン Lars Edvallはスウェーデン人と言う事である程度予想は付いた方もいらっしゃるだろうが皆さんが望んでいた通り(笑)デヴュー作の流れを汲む所謂ハイトーン系の定番北欧シンガーな歌声で、80年代から活動を開始し、MADISONや Yngwie Malmsteen、GLORY、KARMAKANIC等々とのHMからポップス、プログレまで幅広い作品で活躍し今や北欧シーンを代表するシンガー Goran EdmanやTOTOの Joseph Williamsを思わす甘く滑らかな声質と長い音楽活動を経たベテランらしくエモーショナルな歌唱力が素晴らしい、正にキャッチーなユーロ・AOR&メロハーを歌うのにピッタリな透明感ある伸びやかな歌声と言えましょう。

また専任ギタリスト不在のキーボーティスト主導で制作された楽曲にしてはしっかりと要所で印象的なギター・プレイも聴こえており、デヴュー作の音楽性により接近した、2ndで聴かせたヘヴィなタッチは幾分影を潜めたものの決して鍵盤サウンドばかりの軟弱なイメージは無く、オーセンティックなHR要素も残しつつ産業ロックやAOR要素が強めな、所謂80年代風のクラシックなUSロック・スタイルと現在の主流となっているユーロ・メロハー・サウンドの中間に位置する様なバランスのキャッチーでメロディアスなモダン・ロック路線と言え、目新しい革新性や唯一無二の強烈な個性は無いものの彼等の紡ぐ美旋律と音楽性には殊更必要な要素ではないし、ファンも最先端の音楽性や超個性的だけど灰汁が強くて好き嫌いが分かれる、という状況を彼等には求めていないだろうから特に問題じゃ無いよね?

時折透け見えるTOTOやJOURNEYの影響を受けたフレーズや音使いにニンマリしてしまうメロハー・ファンはきっと私だけでないだろう♪ (゚∀゚)

数多くのゲスト・ギタリストが迎え入れられ制作されている為、現時点では今一つ新ギタリスト Jens Ambroschのプレイやフレージングの個性が分かり難いが、各楽曲で奏でられているギターの音色からは不思議な郷愁とリリカルなセンチメンタルさが漂っており、そこはやはりバンドの中核を成すメンバーが北欧や英国に程近く北海にも接しているベルギー人ミュージシャンだからに違いなく、続く新作でも Jens Ambroschがギタリストであり続けるなら一体どのようなケミストリーが生まれ変化がもたらされるのか今から楽しみであります。

『私は強いメロディーと良く練られたアレンジが好きだ』とリーダーの Kurt Vereeckeが語るように本作の楽曲は、メロディ、リズム・アプローチ、ソロ・パート、ヴォーカル・メロディ、バッキング・コーラス、バンド・アンサンブル、スタイリッシュなアレンジ等どれを取っても実に丁寧に考え抜かれて創作されたのが分る、ちょっと聴きハードポップ作に思えるくらい軽めで爽快なキャッチー・サウンドだが、聴き込む程に随所にハードエッヂでメタリックなタッチと哀愁漂うユーロ圏特有のウェットで叙情的な旋律が顔を覗かせ、終始耳当たりの良いそのスムースなモダン・サウンドの奥底にシッカリとロック・スピッリッツを宿している事が分かり、病やメンバー探し、そして制作費等のアゲンストな状況にもめげず長きに渡り諦める事なくコツコツと魅力的な楽曲を創作し続けた Kurt Vereeckeの不屈の精神を感じさせる、AORファンだけでなくメロハー・ファンをも惹きつけるプロデュースが光る意欲作だ。

Kurt Vereeckeも Jurgen Vitrierも出しゃばるようなキーボード・プレイを聴かせる事もなく、終始楽曲第一を心がけて細心の注意を腹ってコンポーズされた美旋律の数々は素晴らしくアレンジ共々洗練され文句の付けようも無いのですが、個人的にはちょっとドラムの音がバタついている印象だし、総じて些かレンジが狭く音の広がりに欠けるきらいがあり、Lars Edvallのヴォーカルにもう少しパワフルさとキレが有れば文句無しだったなとか、専任ギタリストが居ない為に2nd作の楽曲の様にギター・サウンドがもたらすスリリングさやメタリックなハードエッヂさ具合を物足りなく感じてしまう等々気になる箇所が有るものの、メジャー・レーベルからリリースされていないバジェットの限られたインディ・アルバムと考えれば極上までいかずとも十分にメロハー・ファンの心を掴む楽曲が余す所無く詰まった力作なのは間違いないので、出来る事ならばこのままメンツを固定して次なる新作を一刻も早くに届けて欲しいものであります(*´ω`*)

Tracklist:
01.One Mile From Heartsville
03.Fire
04.She's The One
05.How Could I Know
06.Let Me Love You
07.One Of These Mornings
08.More Than A Friend
09.What's It Gonna Be
10.Ready For Tonight
11.That’s Why I'm Loving You
12.The Waiting's Ove
13.Tell Me No Lies *
14.Ready For Tonight (Alternate Intro Version) *

* = Bonus Track for Japan

FROZEN RAIN Line-Uup:
Lars Edvall    (Lead & Backing Vocals)
Jens Ambrosch  (Lead & Rhythm Guitars)
Jurgen Vitrier  (Keyboards、Bass、Acoustic Guitar、Backing Vocals)
Kurt Vereecke   (Keyboards、Bass、Clean Guitar、Drum Editing、Backing Vocals)
Hans Vereecke  (Drums)

Guest Musicians:
Roy Nichol    (Drums)
Daniel Trobell   (Drums)
Fran Alonso    (Guitars)
Roger Ljunggren (Guitars)
Morris Adriaens  (Guitars)
Mats Nermark   (Guitars)
Don Lecompte  (Bass)
Glenn Vandorpe  (Bass)
Josefine Wassler (Backing Vocals)
Joke Vereecke  (Backing Vocals)

Produced by FROZEN RAIN



by malilion | 2024-01-11 07:14 | 音楽 | Trackback
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