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優美なイタリアン・フォーキー・シンフォを聴かせる ANCIENT VEILが難解な一大コンセプト作をリリース!

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ANCIENT VEIL 「Puer Aeternus」'23

叙情派イタリアン・シンフォバンドERIS PLUVIAの Alessandro Cavatori[Serri]((Vocals、Guitars)と元ERIS PLUVIAの管楽器奏者 Edmondo Romano (HOSTSONATEN、FINISTERREでも活動)を中心に1984年に立ち上げられたプロジェクトが出発点で後に5人編成バンドへ発展した彼等の5年ぶりとなる待望の4thアルバムは、ギリシャ神話に登場する永遠の子供神イアッカスをモチーフに、フォーキー・シンフォ・プログレ・バンドによる叙情的で繊細なシンフォニック・サウンドに加え、数々のゲスト・ヴォーカル陣と二十名近くのオーケストラ楽器奏者及び合唱隊を中心とする客演者達と織りなすドラマチックな演劇性がミックスされ3年の歳月を費やし制作された一大コンセプト・アルバムとなったのを、ちょい遅れてご紹介。

本作タイトルはラテン語で『永遠の少年』を指し、ユング心理学でも用いられる年齢も性別もない不老不死の神『Puer Aeternus』を題材とした、彼(彼女?)の冒険を追いながら十名以上の登場人物を交えて語られるストーリーとなっている。

主人公、創造主、自然、ソウル、カントル、クロノ、マーキュリー、トート、など様々なキャラクターを、バンドのメンバーや人間性を象徴するコーラスである聖歌隊、そしてゲスト・ヴォーカリスト達が演ずるなど登場人物がやたら多いのと主人公である彼(彼女?)が三役に性別を変えて物語に登場し演奏に乗って演劇的な語りやヴォーカル・パートを代わる代わるに交えて楽曲が展開する、イタリアン・プログレ作に有りがちな男女ヴォーカル等を用いて歌い上げるオペラチックな作風とは一線を画す、通常のコンセプチュアルな枠組みを遥かに超え、ロック・オペラというジャンルの垣根さえ越えた一癖も二癖も有るアルバム構成な為に物語を追うのが非常に困難でコンセプトを理解するのが難解極まりない(マジ無理ィ…)が、バックに流れるサウンドはANCIENT VEILお得意のERIS PLUVIAが内包していた牧歌的イメージなサウンドのみを取り出して濃縮させた、滔々と紡がれるアコースティカルで素朴な音色には繊細でリリカルな上に民族音楽的テイストやイタリア然としたファンタジックさも加え、クラシカルな旋律が軽やかな管弦楽と見事に融合し優美な歌心も交えてシンフォニックにミステリアスに穏やかに紡がれる力作だ。

Edmondo Romanoの操る軽やかなリコーダーをはじめとした管楽器をフィーチャーしつつ、ピアノ、ギター、クラリネット、サクソフォン、ファゴット、フレンチ・ホルン、オーボエ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ等の幅広い楽器を交え、加えてOSSANNAの Lino Vairettiを始め、PRESENCEの Sophya Baccini嬢やFORMULA 3の Tony Cicco、DERILIUMの Martin Grice、MANGALA VALLIS、LABYRINTHの Roberto Tirantiなど、新旧イタリアン・ロックシーンを代表する豪華ミュージシャン達がゲスト・ヴォーカルとして参加し描き出す移り変わる拍子記号と融合した華やかで流れるようなメロディは美しいの一言で、小難しいコンセプトなんぞに頭を悩ます事なく数々のお馴染みの歌声とJAZZやシンフォの香りも漂わしながらダークな緊張感とフォーキーな爽快感を積み重ねつつ紡がれる美旋律を楽しむだけでも十分に満足出来る盛り沢山な一作なのは間違いない。

ウーン、ギリシャ神話の造形が深くないと本作は本当の意味で理解出来ないだろう設定だったり構成だったりするのがイタリアン・オペラでも四苦八苦なのに日本人にはハードルが些か高過ぎます…orz

これまでANCIENT VEILの作品はバンド・リーダーの Alessandro Cavatoriの爪弾くアコースティック・ギターとクラシック・ギターに加え Edmondo Romanoの木管楽器がフォーキーで牧歌的なテクスチャーを創造するアコースティックな楽器の音色の比重が大きかったが、本作では Fabio Serriの操る多彩な鍵盤楽器、特ニハモンド・オルガンとムーグ、そしてメロトロンは、殆どの楽曲で中心的存在として数多の場面でそのヴィンテージな薫りが立ち込める音色を響かせており、常にも増して70年代風なクラシック・プログレの雰囲気を与えている。

また、マッタリした朴訥なフォーキー・サウンドばかりでなく、幾分かロック的なドライヴ感のあるドラム・パートや素早いムーグ・ソロや畳みかけるパッセージなどが場面を盛り上げ、場面展開等を示す使われ方もされており、Alessandro CavatoriもアコギだけでなくCAMEL風のエモーショナルなエレキ・ギター・ソロを轟かせたりロック的なエッヂあるディストーション・ギターのリフを刻んで見たり、Fabio Serriと Edmondo Romanoがサックスとハモンド・オルガンでドラマチックなデュエットに興じるなど、これまでのどちらかと言えばアコースティカルで静的な美旋律を紡ぐ瞑想的なイメージが強かったANCIENT VEILの作品には少ない動的な旋律やリズムアプローチがある楽曲も数多く収録されており、これまで以上に楽曲に抑揚の有る幅が生まれ、刻一刻と変化するダイナミクスや明暗の混ざり合いが美しい多彩な音のパレットで描かれた本作の旋律により深みと奥行が増した様に思えます。

聖歌隊も加えヴォーカルは盛り沢山だし数多くの楽器が織り成す音色を楽しめる本作ですが、やはりヴォーカルパートが一曲中でさえコロコロ変わるのでイマイチ没入し切れない点や、そのドラマチックでオペラティックで情熱的なイタリア人ヴォーカルは、決して繊細で艶やかな美声ばかり(なんでメンバーも歌ったの…)とは言えず、楽曲の華やかさと、アコースティカルな音色が生み出す素朴さと叙情性が共存した繊細な印象のシンフォニック・ロックとそぐわぬ瞬間があるのが少々残念な点だと思うのだが、この辺りは各自の好みによるかもしれない…

本作は構成が複雑なコンセプト作なれど所謂一般的なプログレ系作に近しい感触があるフォーキー・シンフォ・サウンドなのでそれ系統のサウンドを好む方には受け入れ易いかもしれないが、個人的にはデヴュー作のような民族音楽や中世古楽の香るフォーキーで唯一無二のアコースティカル・サウンドの方が好きでした…

とまれ Alessandro Cavatori[Serri]が3年の歳月を費やし、心血を注いで編み上げた、ドラマチックな美旋律、インテリジェンス高い音楽性、そして情熱にあふれた旅物語を、ANCIENT VEILファンは無論の事、フォーキーなイタリアン・シンフォ好きな方やナチュラルな響きと優しく心地よいアコースティカルな瑞々しい音色に満ちた、優美なアンサンブルを至上としたメロディアスでハーモニックなサウンドの美しさが際立つ作品がお好きな方などに是非一度チェックしてみて欲しい入魂作だ。

Tracks Listing:
01. L'eterno Tempo [Time Eternal]
02. Il Distacco [The Detachment]
03. La Caduta sulla Terra [The Fall To Earth]
04. La Vision della Parte Mancante [The Vision Of The Missing Part]
05. Nella stanza l'intera Storia Umana [In The Room, The Entire Human Story]
06. Il Senso dell'Insensato [A Sense Of The Senseless]
07. La miseria del Mondo [The Misery Of The World]
08. La Comprensione del Tempo [The Comprehension Of Time]
09. Amore e Potere [Love And Power]
10. L'ascesa di Hermes Nel Dio Visibile [The Rise Of Hermes As The Visible God]
11. Il Terzo Millennio [The Third Millennium]
12. La Culla Troppo Stretta [The Too Narrow Cradle]
13. Il Secondo Tradimento [The Second Betrayal]
14. Io e Ombra [I And Shadow]
15. Puer Aeternus
16. La Reviviscenza [Resurgence]
17. La Saggezza Della Natura [The Wisdom Of Nature]
18. La Nuova Aurora [The New Aurora]

ANCIENT VEIL Line-up:
Alessandro Serri   (Vocals、Classical & Acoustic Guitars、12-string & Electric Guitars、Flute、Harmonica、Keyboard Programming)
Edmondo Romano  (Alto、Soprano、Tenor & Bass Recorders、Soprano & Sopranino Saxophones、Chalumeau、Clarinets、Low Whistle、Vocals)
Fabio Serri     (Piano、Hammond Organ、Moog、Vocals)
Massimo Palermo  (Bass)
Marco Fuliano    (Drums)

With:
Martin Grice     (Alto Saxophone)
Francesco Travi    (Bassoon)
Natalino Ricciardo  (French Horn)
Marco Gnecco    (Oboe)
Roberto Piga      (First Violin)
Fabio Biale       (Second Violin)
Ilaria Bruzzone    (Viola)
Kim Schiffo      (Cello)
Olmo Arnove Manzano(Percussion)

Character Vocals:
Simona Fasano    (Nature)
Alessandro Serri    (Puer - Hermes - Kore)
Lino Vairetti      (Creator)
Elisa Marangon    (Soul)
Tony Cicco      (Cantor)
Roberto Tiranti    (Chrono)
Fabio Serri      (Mercury)
Sophya Baccini    (Thoth)
Edmondo Romano  (Humanity in choir)
Alessandro Serri   (Humanity in choir)
Simona Fasano   (Humanity in choir)


by malilion | 2024-01-02 13:23 | 音楽 | Trackback
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