RIO 「Borderland +4」'23 1984年に7"EPを一枚リリースしていた英国NWOBHMバンド BOMBAYが改名し、ARGENTの Jim Rodfordの息子 Steve Rodford (Drums、Bass、Keyboards)と Jon Neill (Vocal、Guitars)とが新たに結成したスタジオ・プロジェクトであるブリティッシュ・ハードポップ・デュオが1985年にリリースしたデヴュー作が未発表曲を含むボーナストラック4曲を追加収録し、元KING KOBRAのギターリストとしてお馴染みな JK Northrupによる2023年度リマスターを施され、オリジナルLP盤はMFNレーベルからのリリースであったが今回はMelodicRock Classicsからリイシューされたのを即GET! TERRAPLANE、SHY、TOBRUK、EMERSON等と共にNWOBHMのポップ・サイドを代表する80年代英国AOR&ハードポップ好きなら外せない名盤中の名盤と言われる一作で、以前英国のリイシュー専門レーベル Krescendo Recordsから初CD化されたり近年当時の古いマスタリングのままな国内盤CDも再発されていましたがオリジナル通りの9曲収録だった為、今回の2023年度リマスター&ボートラが追加された最新盤はハードポップ・ファンならば見逃せぬ一枚であります。 因みにアナウンスでは初のオフィシャルCD化と言う事らしいので、国内再発盤は別ににして以前リリースされていた Krescendo RecordsとRetrospect Recordsからの再発CDはグレーな扱いだったんだな、と再確認出来ました… まぁ、 そもそもKrescendo Records盤は収録曲欠けてたりと胡散臭さ炸裂してましたしねぇ…そりゃそうだよね、と(汗 実際、彼等のデヴュー作は米国以外からリリースされたAOR&ハードポップ・アルバムの中でも最高傑作の一つであると広く認められており、本作のキャッチーでメロディアス、そして煌びやかでムーディーなキーボードが楽曲を彩るアダルトで洗練されたサウンドとコンパクトな楽曲を耳にした方ならばその意見に異を唱える事は無いだろう。 そんな素晴らしい作品が何故に今まで大々的に周知されずリイシューされて来なかったかと言うと、英国MFNレーベルは通常NWOBHMバンド作を数多くリリースしてきレーベルで、当時こんなに軽いサウンドのポップ・バンド作がリリースされると誰も予想しておらず、そういったレーベルの毛色の違いも彼等の素晴らしい作品と無関係な所で活動やプロモーション等の足を引っ張っていたのではないかと予想します。 さて、内容の方はと言うと未だ角方面から絶賛され続けているのも頷ける出来映えで、伸びやかで軽やかな印象のハイトーン・ヴォーカルと清涼感あるコーラス、リヴァーブの効いたビッグなドラムと当時最先端だった満載のシンセ・ドラム、派手なアーミングとメタリックに響き渡るキャッチーなリード・ギター、曲の冒頭や曲間で雰囲気を盛り上げ常に煌びやかな美旋律を紡ぐ柔和なキーボード、そしてスムースでタイトなベースと、コンパクトでアレンジとコンポースが行き届いたラジオフレンドリーな楽曲には、職人芸が光るAOR、デジタリーでお洒落なUKポップス、抜けの良い爽快なUSメロディアス・ロック、人工甘味料的キャッチーさなグラム・ロックと、80年代初頭にメジャー・シーンを賑わした様々な音楽性が織り込まれ、さらに洗練させたフックに満ちたメロディアスなポップ・サウンドで隙無く構成されており、ほぼ捨て曲が無い本作は現代の基準からしても新鮮に聴こえる素晴らしい作品なのに疑いは無い。 ここまでガッチリと造り込まれ、シングルヒット狙いな楽曲で構成されたアルバムながら、如何にも英国バンドらしい適度にウェットなメロディと底抜けにドキャッチーに成り切らぬ哀愁を伴った叙情感と甘過ぎぬ爽やかなサウンドの上品さが実に英国アーティストの作品らしく、長い年月を経て今やちょっとしたカルト・クラシック・ポップ作としてメロディアス・ロック愛好家の間で未だに愛され続けているのも納得な極上のメロディアス・ハード・ポップ作だ。 これだけ諸手を上げ絶賛して置いてなんだが『セルフ・プロデュースで自宅で録音し、仕上げとミックスはロンドンのスタジオで行った』と Steve Rodfordが今回のリイシューに際して語っているようにプロダクションの質はお世辞にも最高と言い難いが、無駄無い楽曲と的確な演奏のクオリティの高さが全てを補っており、流石に今の耳で38年前のオリジナル音源を聴くと辛い箇所がまま有るものの今回のリマスター作業でそういった問題的が幾分か改善されファンにとって嬉しい事だろう。 ただ、折角のリマスターなのに一部でチリチリとノイズが聴き取れ、もしかしたらマスター・テープの保存状態が宜しくなく劣化していたのか少々ソコだけは残念であります…クリアなサウンドだけにノイズが耳についちゃうんだよなぁ…(´д⊂) まさか板起こしなんて事はないだろうし、さすがにリマスターのプロダクション・ミスなんて事もない…よね? それとも単純に音圧を持ち上げ過ぎてしまった弊害なんでしょうか? 敢えて苦言を述べるとすればボトムは打ち込みも多用されており全体的にやや音が軽すぎる事くらいだろうが、本作にヘヴィでメタリックな00年代以降のダークでブルータルな重厚サウンドやロックバンドらしい生っぽさを求める向きは居ないだろうから特に大きな問題にはならないハズだ。 こんなに素晴らしい出来のデヴュー作をリリースしたにも関わらず、本デュオは1986年に2ndアルバム『Sex Crimes』を英国Music For Nations レーベルからリリースし、その後シングルを一枚リリースして消滅してしまう… 時代はバブリーでゴージャスなヘア・メタル&産業ロックが趨勢を極めんとしていた中で、シーンの流行を鑑みてキーボード控えめでよりヘヴィさを増したワイルドなギター・オリエンティド&ビック・コーラスを効かせたアローナ・ロック風サウンドで攻めの姿勢を見せたが、デジタリー風味ある英国ハードポップ・サウンドとコンパクトな楽曲に魅了されたファンからは望まれた路線ではなかったのか、バンドでなくデュオ・スタジオ・プロジェクトだったのが足を引っ張ったのか、はたまたHMメインのレーベル的にキャッチーなRIOの売り方をミスったのか、2ndアルバムは市場に訴求せず姿を消してしまったのが悔やまれます。 個人的には Jon Neillの爽やかな歌声はヘヴィなビック・サウンドの荒々しく勢いあるメタル系作には似合わないと思うので、その辺りの路線変更ミスも響いたのかな、とも思いますが… 引き続き2ndアルバムがオフィシャル・リイシューされるのを待ちましょう。 今回のリイシューの目玉と言えるボーナス・トラックには、シングルB面の分厚くキャッチーなバッキングコーラスがBON JOVIっぽいアルバム未収録曲『Casualty』、『I Don't Wanna Be The Fool』のシングルMIX、そしてオリジナル・バンドMIXの『State Of Emergency』と『I Don't Wanna Be The Fool』の4曲が追加されており、Steve Rodford的にはバンドスタイルで演奏した打ち込み感が弱くよりバンドらしい生っぽく広がりのある楽器の響きが活きた音源のプレイと出来栄えにかなり自信を持っていた模様で今回こうして初めて公開出来て喜んでおり、オリジナル盤をお持ちの方も今回追加されたボーナストラックを堪能する為だけに買い直しても決して損はしないだろう。 とまれ80年代メロディアス・ロック愛好家は必聴の名作ですのでレーベル・ソールドアウトする前に速やかに購入しておきましょう、お見逃しなく!! Track List: 01. I Don't Wanna Be The Fool (Original Mix) 02. Straight To The Heart 03. Tommy Can't Help It 04. Better This Time 05. State Of Emergency 06. Shy Girl 07. She's A Virgin 08. Close To You 09. Borderland Bonus Tracks: 10. I Don't Wanna Be The Fool (Stephan Galphas Single Mix、Pitch Down) 11. Casualty (Previously Unreleased Track) 12. State Of Emergency (Original Band Production Mix) 13. I Don't Wanna Be The Fool (Original Band Production Mix) RIO Musiciens: Jon Neill (All Vocals、Guitars) Steve Rodford (Drums、Bass、Keyboards) Produced By Steve Rodford
by malilion
| 2023-11-28 14:55
| 音楽
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