FOREVER TWELVE 「Neighborhood Of Spirits」'23 前作『Home』'17 から6年ぶりの新作となった米国カルフォルニア州ロサンゼルスを拠点に活動するキーボード入り4人組USシンフォ・バンドの5thアルバムがリリースされたので即GET! 7年ぶりの新作となった前作は、それまでフロントを務めてきたフィメール・ヴォーカリスト Cat Ellen嬢からYESへの憧憬を隠さぬサウンドを聴かせたUSAプログレ・バンドMARS HOLLOWに在籍し、他にもコマーシャルやドラマへの楽曲提供、数多くのソングライターのデモのエンジニアリングもこなす John Baker (2KX、etc...)を新たなフロントマンへと招き、ベーシスト不在でオリジナル・ギタリストでリーダーの Tom Grahamがベースも兼ねる専任ベーシスト不在の4人組編成で制作されていたが、久しぶりの新作となる本作でも引き続き専任ベーシストは招かれておらず前作同様 Tom Grahamがベースも兼ねる4人編成で制作されている。 メンバーチェンジが数多く起こるのがプログレ・バンドの常で本バンドもその例に漏れないのだが、残念ながら本作から長らくドラマーを務めオリジナル・メンバーでもあった Fernando Martinezが抜け、代わってMARS HOLLOWの元ドラマーであった Robert Craft (ex:UNDER THE SUN、ex:MAGELLAN'S GHOST、etc...)が新ドラマーとして迎え入れられた新編成で初となるアルバムでもあります。 元々YES系フォロワー・バンドであったが、フィメール・ヴォーカリストの歌声と穏やかなシンフォ系のサウンドなのも幸いしてYES臭をそれ程強く感じさせていなかったのに前作から男性フロントマンになりサウンドにロック的なパワフルさとダイナミクスが加えられた事によって一気に米国に多い典型的YESフォロワー・インディ・シンフォ・バンドになり旧来からのファンにとってバンド復活は嬉しいけれど痛し痒しだったかもしれないが、久しぶりの本作ではそういった露骨なフォロワー臭は随分と弱まり、MARS HOLLOWで聴かせた歌声以上にYES寄りな歌唱スタイルで中性的な声質のハイトーンと分厚い多重コーラスを一人でこなしていた John Bakerのヴォーカル・アプローチにも明確な変化が今回は見て取れ、無理にハイトーンを張り上げる事は無くなり、爽快なYES風コーラスも止め、ミドルレンジ主体でよりエモーショナルで気怠げな雰囲気あるロートンも多用する、YESでもないMARS HOLLOWでもない、FOREVER TWELVEにアジャストしたオリジナルな歌声と歌唱スタイルを披露し、2002年アルバム・デヴュー以来ずっと感じて来たYES系フォロワーな臭気をキャリア30年超えにしてやっと完全に払拭する事に成功している。 とは言えサウンドの根幹にはYESの影響が脈々と受け継がれているのはプログレ・ファンならばすぐ気が付くだろうが彼等は70年代よりも80年代の影響が強く、MARILLION、CLEPSYDRA、FLAMBOROUGH HEAD等の近年のシンフォ系バンドもチラつくモダン・サウンドが特徴で、USAシンフォ・バンドらしいスピード感と、テクニカルでエモーショナルなギターと繊細で華麗な音色を響かせるキーボードが絡み合いながら屈折した意表を突く展開を見せる複雑な構成の楽曲、そして妙なヘヴィさの無いアメリカ産らしい抜けの良い透明感あるクリアサウンドを披露しつつ、今回は特にPINK FLOYDやGENESISを思わす奇妙な浮遊感あるメロディやミステリアスな雰囲気が全編に色濃く漂っていて、米国産バンドらしからぬリリカルな響きと哀愁も醸し出しながら、メランコリックで伸びやかな歌メロがふんわりと全てを包み込んで駆け抜けていく、大雑把に言って英米折衷モダン・シンフォ・スタイルなサウンドながら英国風味の方が強めな印象に仕上げられており、どちらかと言えばユーロ系シンフォ・バンドを好むファンに強く訴求する新スタイルを提示していると言っていいだろう。 ギターとベースが複雑に絡み合いアグレッシヴなメロディとハーモニーを奏で、ドラムは変拍子も交えて忙しなくビートを叩き出し、Steve Howeを思わす引っ掛かりのある線の細く甲高いトーンのギターやメロディアスなヴォーカル、華やかなシンセワーク等に未だにYESの影響が色濃く感じられるが、繊細でより深みあるリリカルなユーロ系バンド風の艶やかな音色とメランコリックで柔和な旋律で全編が埋め尽くされている点がこれまでとは決定的に違う点で、前作での米国バンドが演るYESフォロワー・サウンドに対するモダン・アプローチな分かり易くキャッチーな方向性が気に入っていた方からすると少々残念な方向へ進化したかもしれないですが、よりバンドとしてオリジナリィを増し、完成度と創作性を上げ独自のスタイルを構築した本作での彼等の哀愁漂う翳りある新路線サウンドを個人的には歓迎したいですね。 前作ではリードヴォーカルとして求められる仕事を精一杯こなしYESカラーを強める役割を果たした John Bakerですが、本作ではよりバンドに馴染んだのか細かな音像の細工や音響加工等のエンジニアリング面で大きくサウンドを革新させるのに尽力しており、前作時点ではギタリストとして今後貢献するのかも、と述べていましたが全く別アプローチで新たなクリエイティヴィティをもたらしているのと、他の活動でギタリストとしての能力は発揮しているからか本バンドではあくまでシンガーというスタンスで参加している為なのか、リーダー Tom Grahamに演奏面は全て委ねているからなのかギター等楽器は一切演奏していない模様だ。 まぁ、John Bakerはベースもプレイ出来るのでLIVEでは彼がベースを弾いているのかもしれないケド、まだLIVEの様子を見た事がないので分からない。 モダン・シンフォ系ではありますがプログHM系とは距離感あるサウンドなので一聴すると刺激と派手さに乏しく感じるかもしれないが、聴けば聴く程に奏でられる旋律の豊かな深みと陰影が生み出す美しさ、そして隠されたトリックやお遊び等いくつもの楽しさや驚きを発見させてくれ、妙な癖の強さやプログレお得意の難解さは無いので聴き易いが決して凡庸ではなくイージーリスニングにも成り得ない、インディ作ながら現代的でモダンな高品質な音像で構成された、シンフォ&プログレッシヴ・ロック歴の長いリスナーな方程に気に入るだろうお薦めな一作であります(*´ω` *) 因みにアルバム・ジャケットは John Bakerの奥方 Lisa LaRue-Bakerがデザインしている。 Track List: 01. Mankind 02. August In September 03. Eight Billion Heartbeats 04. New Man 05. Neighborhood Of Spirits 06. Peaceful Planet 07. A Thousand Men FOREVER TWELVE Line-Up: John Baker (Lead Vocals) Steve Barberic (Keyboards) Tom Graham (Guitars、Keyboards、Bass、Imaginetion & Delirium) Robert Craft (Drums) Produced by FOREVER TWELVE Mixed & by Tom Graham & John Baker Mastered by John Baker
by malilion
| 2023-10-26 17:47
| 音楽
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