SLAM 「Same」'23 Yngwie Malmsteen Band脱退後、経済的問題から様々なHMバンドやプロジェクト等でその見事な歌声を披露していた頃の Jeff Scott Sotoが、カナディアンHRバンドHANOVER FIST、HANOVER、ヘア・メタルのBEAU NASTY、Lee Aaron、Rick Springfield等との仕事で知られるカナダ人ギタリスト George Bernhardtと1990年初頭に結成した幻のファンクHMバンドSLAMが1991年から1993年までに残したデモ、スタジオ・セッション音源等を、レコーディングから30年後に当時残されていたアナログ音源を全て掘り起こしてデジタル・データ化し、Jeff Scott Sotoと George Bernhardtの協力の元にリマスタリングを施してリイシュー専門レーベル 20th Century Musicが限定リリースした未発音源コンピレーション盤を即GET! 一時はJOURNEYのフロントマンも務め、今や人気実力共に米国HMシーンのトップヴォーカリストの一人にまで昇り詰めた感のあるアメリカ人シンガー Jeff Scott Sotoだが、それまでの道のりは御多分に漏れず長く険しいものであったのはHMファンな諸兄なら良くご存じな事と思う。 1984年のメジャーシーン・デヴューこそ時代の寵児 Yngwie Malmsteenに見いだされた華々しいものであったが早々に首を切られ、以降長きに渡って様々な世界中のプロジェクトやバンドに参加してきたUSロック界きっての超多忙ヴォーカリスト Jeff Scott Soto (現SONS OF APOLLO、ex:Yngwie Malmsteen Band、ex:EYES、ex:TALISMAN、ex:JOURNEY、ex:Axel Rudi Pell、etc…)が、TALISMANのデヴュー作リリースの後の空白期間、インディ・メロディアスHMバンド EYESでの活動もまだ軌道に乗らず暗中模索な90年代初頭、アンダーグラウンドを中心にグランジー・ブームがシーンを席捲しつつある中、メジャー・レーベルはヘア・メタルに代わるHMの次なるトレンドとしてファンク・メタルに注目し、EXTREME、DAN REED NETWORK、LIVING COLOUR、KINGOFTHEHILL、KING'S X等のバンドがマスコミに取り上げられ持て囃されていた事から、ファンクやPrinceの音楽をMIXし、そこへヘア・メタル要素を加えた前記のバンド達からの影響が色濃いファンク・メタル・バンドSLAMを Jeff Scott Sotoはギタリスト George Bernhardtとカリフォルニア州ロサンゼルスで結成する。 90年代初頭に録音されたものの長らく失われていた、正式リリースされなかったSLAMのセッション音源は、これまでにブート等を始め様々なメディアで広く出回っており、その名だけは Jeff Scott Sotoの活動を追っている熱心なファンなら何度か出くわす幻のバンドとして有名で、実際デモ曲の幾つかは Jeff Scott Sotoのファースト・ソロ作『Love Parade』'94 やTALISMANのアルバム『Humanimal』'94、そして Jeff Scott Sotoの5曲入EP『Believe In Me』'04 にもリメイク収録されていたので、ロサンゼルスを拠点に短期間だけ活動していたSLAMのラップも取り入れたファンキーでグルーヴィなそのサウンドの片鱗は伝わっていた知る人ぞ知るファンク・メタル・バンドでもありました。 今回の未発音源の殆どは古いカスタムの8トラック・レコーダーで制作されたデモテープが元になっているものの、当時ミキシング、プロデュース、エンジニアリングを担当した George Bernhardtの優れた作業手腕と適切に保管されていたマスター・テープの状態が良好だった為か今回のリイシューに際して行われたデジタル・リマスター作業によって正式リリース作と少しも遜色ない発掘音源に付き物なノイズや音ヨレ等が皆無な磨き抜かれた美しく瑞々しいファンキー&グルヴィー・サウンドへと生まれ変わっており、これまでブート等で彼等の非公式音源を入手していたマニアックなファンにこそ本作の高品質なオリジナル・サウンドを是非耳にして欲しい、当時のサウンドをそのままに何も足さず変えもせずリマスターしただけなのにクリーンでスムースな実に素晴らしい仕上がり具合に驚かされます。 Jeff Scott Sotoファンにはお馴染みなSLAMですが、一般的には無名な存在でありますので、まずは簡単なバイオから。 1990年にTALISMANはデヴュー作をリリースするが、その時点ではまだTALISMANの活動が継続する予定はなく、同時期に在籍していたEYESもまだアルバムは制作しておらず、Jeff Scott Sotoはバンド、プロジェクト、デモのガイドヴォーカル、サントラ等々で歌う様々なセッション活動を平行して行う事で糊口をしのいでいた。 結局、その後も中々経済的な問題は解決せず、HMからプログレ、ポップスにAOR、ファンク、果ては子供向けアニメのサントラ参加に至るまで、様々な音楽スタイルを器用に歌いこなす抜群の歌唱力を活かし、数え切れぬほどのバンドやプロジェクト、世界中の有名無名ミュージシャン達のセッション等に参加して生活の糧を得て来た結果、85枚以上(!?)のアルバムにその歌声を残す事になってしまうとは、この時の彼も流石に予想していなかったでしょうけどね…(汗 BEAU NASTYのメンバー達と親交のあった Jeff Scott Sotoは、唯一余り親しくなかった(笑)BEAU NASTYのギタリスト George Bernhardtの誘いで1990年に曲作りを始める。 最初は2人のプロジェクト体勢でデモ制作を進めるが、LIVE活動にはバンドが必要な為メンバーを補充し、ボストン出身のドラマー Mark Bistanyを加え、続いてコネチカット出身のギタリスト Craig Polivkaと彼の親友のベーシスト Chris McCarvillを迎え入れ、ツインギター編成5人組バンドとしてロサンゼルスで活動を開始。 すぐこのラインナップは崩壊し、コネチカットから来た2人が抜け、新たなギタリスト Gary Schuttと新ベーシスト Ricky Wolkingがバンドに加わる。 因みに脱退したベーシスト Chris McCarvillはその後、James Christian率いる再結成HOUSE OF LORDS(!)に加入し、現在はDOKKEN(!!)のベーシストを務めている。 Gary Schuttと音楽的な相違が発覚し、Gary Schuttは脱退し、以降シングルギター編成4人組バンドとして活動を継続。 ナイトクラブだけでなくロサンゼルス中のライヴハウスを巡り、あらゆる場所でプレイし、DAN REED NETWORKのオープニングも務め、コロラド州やユタ州でもプレイし、1991年、1992年の間にあちこちでショーケース・ギグを披露し、Princeとグラム・メタルを組み合わせ、Jeff Scott SotoのバックボーンであるファンクやR&B、ソウル、ラップ等の様々なテイストが渦巻くファンキーでダンサンブルなビートが詰め込まれた独創的なデモテープとキャッチーでリズミックなステージングで数々のレコード会社に向けプロモーションを行うもののシーン全てが恐ろしいスピードで移り変わっていた時期であった事もあって結局どこのレーベルとも契約を交わすに至らなかった… そうこうする1993年頃には誰も彼もがシアトルのグランジ・サウンドへ向かっていて、既にファンク・メタルのブームも終わりSLAMには全く居場所が無くなっていた。 レーベルはリスクや賭けに出たがらず、80年代の音楽性を受け継ぐメロディアスで華やかなバンド達は揃って『古臭い音楽』のバンドと烙印を押されてメジャー・レーベルから姿を消し、無限の可能性を秘めたユニークなバンドSLAMの活動も頓挫してしまう。 その後、メンバーは各自の道を歩き出し…と、いう90年代初頭にグランジーの煽りを受け解散したメロディアスUSバンドの典型的な流れでSLAMの歴史は幕を閉じる事に。 改めて本作のサウンドに耳を傾けると、ファンク・メタルと言うには少しメロディアスでキャッチー過ぎる(主に Jeff Scott Sotoの分厚く爽快なヴォーカルハーモニーのせいで)きらいはあるものの音楽形態的にリズム隊のプレイが大きく前に押しだされており、特に Ricky Wolkingのタイトでソリッド、ファンキーにブインブイン唸りを上げるチョッパー・ベース等が際立って良く聴こえるが、80年代ヘア・メタルの流れを汲むテクニカルでメロディアスなベースプレイもかなりの量フィーチャーされたゴージャスなイメージも強いので、後期TALISMANのサウンドにも通じるその多彩な音楽性にはゴリゴリのファンク・メタルという感触は弱いようにも思えます。 AORっポイ雰囲気のある Jeff Scott Sotoの絶品の歌唱力をしっとりと堪能できる楽曲なんかもあって、どちらかと言えば騒がしいファンク・メタルのイメージから外れる楽曲も数多く収録されているのが本音源が一筋縄でいかぬ複雑で味わい深いサウンドに聴こえる要因だろう。 サンバが飛び出してくるノリノリで陽気なダンサンブル曲はご愛敬♪ 無論、モロにラップ・ヴォーカル等がフイーチャーされた楽曲やメロディは殆ど無くリズムアプローチだけで構成されている楽曲等もあるのですが、やはり本バンドのもう一人の主人公であるギタリスト George Bernhardtのテクニカルでフラッシー、伸びやかで煌びやかな音数多いリード・プレイが大きく80年代風味を楽曲に与えており、そういった面からも90年代初頭に流行ったミクスチャー系の流れを汲むファンク・メタルとは微妙に毛色が違う、だからこそオリジナリティがあるのですが80年代メインストリームからのファンク・アプローチなサウンドといった範囲で収まる、強烈な冒険や実験を果敢に挑んだ新世代サウンドと呼べないのは確実で、この辺りは既にキャリアを築いていたミュージシャン主導のバンドなので仕方がないのですが、当時として考えればやはり隠しようもなく『古臭い』イメージが強く、結果的にメジャー・レーベルが手を出さなかったのも納得な方向性と言えるのではないでしょうか? まぁ、妙に当時流行りの音楽に阿って自身のバックボーンにある音楽性を全て捨てた巷に溢れかえるポーザーと化してオリジナリティの欠片も無い劣化コピー・サウンドを披露していたなら、今こうして再びデモ音源が正式リリースされる事もなかった訳で、Jeff Scott Sotoと George Bernhardtの強い信念が30年の時を経てこうして今日のSLAM音源リイシューへ繋がったのは間違いないですから、時流に安直に流され無様を晒さなかった2人の矜持と自らの音楽への揺るぎない信念を賞賛したいですね。 後は本作リイシューのインタビューで Jeff Scott Sotoが語っている今後の予定が気になります。 『残念ながら、このインタビューで話すには早すぎる。まだ話せない事が有るんだ。唯一言えるのは9月という事』 『俺が何を話しているのかハッキリ分かるはずだ。言ったように、話せないのは残念だ』 『でも、本当に、本当にクールな事なんだ。本当に誇りに思う。早く世界中の人に聴いてもらいたいし、見てもらいたい』 『SONS OF APOLLOとは違う。僕にとっては全く新しいものなんだ。聞く所によると、来年は世界中で爆発するらしい』 『だから、俺達はこのプロジェクトに全力で取り組んでいて、このプロジェクトの為に来年は色々な事を断ろうと思っているんだ』 『9月までに、これが何であるか発表され、音楽とビデオがリリースされるのと同じ日にリリースされる予定だ』 『全てが実現するんだ。誰もこの事を知らない。おっと、もう言い過ぎた』 SLAMの再結成は無い、と断言しているので George Bernhardtと再び新たなバンドを立ち上げるのか、それとも全くロスの人脈と関係ない新バンドなのか、このタイミングで Jeff Scott Sotoが自身で嬉しそうにリークしてきたのが気になります(w とまれ Jeff Scott Sotoファンな方や80年代のバブリーなヘア・メタル好きな方、90年代初頭のファンク・メタル、そして既述したバンドのファンな方なんかにもお薦めな、ファンキーでノリノリの本作のグルーヴィー・サウンドを是非一度チェックしてみて下さい。 15曲のオリジナル・ナンバーの中には、カナダのSKYLARKによるビルボード・トップ5シングル『Wildflower』の素晴らしいカヴァーも含まれている。 ストリーミングやデジタル・ダウンロードのオプションを好む人のために、アルバムは全てのストリーミング・プラットフォームで5月12日にリリースされ、LP愛好家の為には2023年夏の終わりにダブル・ヴァイナルとして発売される予定だ。 Track Listing: 01. Love Parade 02. Body Language 03. Lonely Shade Of Blue 04. What U Want It 05. Wastin' Our Time 06. Dear God 07. Candy 08. Dance The Body Elektrik 09. Funk Me 10. 4 U 11. B-Jam 12. Wildflower 13. People 14. Y U Doggin' 15. Monogamy & Lust 16. Everybody Want What They Can't Have SLAM Line-up: Jeff Scott Soto (Lead Vocals) George Bernhardt (Guitars) Ricky Wolking (Bass) Mark Bistany (Drums & Percussion) Former Personnel: Craig Polivka (Guitars) Chris McCarvill (Bass) Gary Schutt (Guitars)
by malilion
| 2023-09-19 19:52
| 音楽
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