WONDERS 「Beyond The Mirage」'23 バックカタログだけ見るとアルバム2枚目の新人という事になりますが、その実は以前ここでも紹介したイタリアのサルディーニャ島出身のギタリスト Pier Paolo Lunesuとドラマー Giorgio LunesuのLunesu兄弟が中心な半ばプロジェクト・バンドであるイタリアン・プログHMバンドEVEN FLOWに、それまでEVEN FLOWのアルバム制作にゲスト・プレイやプロデュースで力を貸して来たギリシャ人ミュージシャン Bob Katsionisがメンバーとして正式参加し、新たにWONDERSとして活動し始めたバンドで、メンバーもEVEN FLOWの2ndアルバム制作時とほぼ同様だし演っている音楽も同じ路線のプログHMなので、簡単に言えばEVEN FLOW + Bob Katsionis = WONDERSと言う事になるだろう。 一般的HMファンにおける知名度的にはTEMPERANCE + Bob Katsionis = WONDERS、かもしれないケド… 1990年代後半にEVEN FLOWは結成されており、今まで数枚のEPやアルバムをリリース済みだしこれまでのイタリア国内外のツアーや、イスラエルのプログレッシヴ・オリエンタル・デスメタルバンドORPHANED LANDのスペシャル・ゲストとして、Aix-en-Provence、Lyon、Lille、Manchester、London、Parisと共にユーロ圏を股にかけたヨーロッパ・ツアーへ赴くなどに加えアルバム制作で培ってきた人脈は多岐に渡り、ANGRAのアルバムに招かれたブラジル人キーボーディスト Fabrizio Di Sarno (ex:Paul Di Anno、ex:KARMA)や、フィンランドのメロデズ・バンドNOCTURNAL WINDSを率いる Jani Loikas(ex:HIN ONDE、AZAGHAL、YearningのLIVEメンバー、etc..,)、FATES WARNINGの元ドラマー Mark Zonder (ex:FATES WARNING、DRAMATICA、ELEGACY、etc...)や、SYMPHONY Xのベーシスト Mike Lepond、そしてDREAM THEATERのシンガー James LabrieのプロジェクトバンドMULLMUZZLERやソロ作でのコラボレーターであるキーボーディストの Matt Guillory (ex:DALI'S DILEMMA、ex:MOGG/WAY、ex:ZERO HOUR、現PFMギタリスト Marco Sfogliのソロ作、DEATH、TESTAMENT、OBITUARYに参加したアメリカ人ギタリスト James Murphyのソロ作、etc...)など著名なアメリカ人ミュージシャン等、インディ・バンドと思えぬ欧米だけでない幅広い交流をこれまで行い着実に音楽性と演奏技術の向上を計って来た訳だが、遂にゲストのみでの参加であった凄腕ミュージシャン Bob Katsionisを正式にメンバーへ迎え入れる事によってEVEN FLOWではない別バンドが誕生した、とLunesu兄弟は捉えてWONDERSという別名義でバンド作をリリースする事にしたに違いない。 まぁ、マネジメント的に殆ど無名に近いEVEN FLOWの3rdアルバムをリリースするより、VIRTUAL SYMMETRYやFALLEN SANCTUARYでも活躍するイタリアン・メロディック・パワーHMバンドTEMPERANCEのシンガー Marco Pastorino (Vocals & Guitars)と有名ギリシア人マルチプレイヤー Bob Katsionis (ex:FIREWIND、OUTLOUD、VASS/KATSIONIS、ソロ、etc...)を擁する新バンドWONDERSがデヴュー作『Fragments Of Wonder』'21 をリリース! という売り方の方がよりHMファンに訴求するというビジネス的な判断だったのかもしれませんが…(汗 Lunesu兄弟も別バンドWONDERSとして差異を意識的に儲けている節が見受けられ、EVEN FLOWは3rd以降のDREAM THEATER作で感じられるダークでグランジーな要素も加味したイタリア産バンドらしい叙情を感じさせるモダン・プログHMサウンドを聴かせておりましたが、EVEN FLOWはキーボード・レスでギター中心の楽曲構成であったのだから当然ながらWONDERSでは専任鍵盤奏者が居る事を最大限に活かしたキーボードサウンドを大々的にフィーチャー(ちょっと前に出過ぎに思えるMIXだが…)しつつ、テクニカルで各プレイヤーの派手なインタープレイやソロパートをフィーチャーしたより典型的プログレ系サウンドや楽曲構成に近づけており、さらにスピーディーでダイナミックなWONDERSのサウンドにはEVEN FLOWで聴かれたグランジ&オルタナティヴ・ロックの影響はほぼ皆無で、そういう点からも日本受けするイタリアン・プログHMと聴いて連想するだろう派手で技巧派、モダンでカラフル、その上叙情的メロディが舞い踊るキャッチーでパワフルな高品質サウンドを余す事なく披露してくれている。 一丸となって奔流の様に突っ走るバックのスピーディーでパワフルそして技巧的サウンドに負けじと、伸びやかでエモーショナル、時に艶やかで繊細に、またある時は野獣の如き咆哮と荒れた刺々しいアグレッシヴな熱唱を聴かせる Marco Pastorinoの確かな歌唱力と説得力ある(余りにも幅広い感情のふり幅を表現しようとして疑問に思える箇所もあるものの概ね素晴らしい)ヴォーカル、それに加えてプロデュース、アレンジ、エンジニアリング、マスタリング、ジャケットアートワーク(!?)と表に裏に八面六臂の活躍を魅せる Bob Katsionisの華麗な演奏技術の数々がWONDERSをその他の数知れぬインディ・プログHMバンド作との歴然とした差を生み出しているのは誰の目にも明らかだろう。 EVEN FLOWは幾分かグランジ&オルタナティヴ・ロックの影響があった事で他のプログHMと毛色の違うサウンドを奏でていたように思うが、WONDERSはより明確にIRON MAIDEN、ANGRA、DREAM THEATER、FATES WARNING等といった90年代初期までのHMサウンドをベースにしたメロディック・パワーメタルにプログレ要素とNIGHTWISHやSONATA ARCTICA等の北欧メロスピやシンフォHM的要素を加えたサウンドを構築しているので、その点から言うと幾分レイドバックしたサウンド形態と言えるかもしれないが、新しさを売りにした欧米の凡庸で完成度の低いインディ・プログHM作を聴くくらいなら、今となっては古典的かもしれないが前作よりさらに美旋律に磨きが掛かった魅力的でスリリングな完成度の高いWONDERSのアルバムを聴きたいですね。 個人的にはもうちょっとイタリア産バンドらしい“引き”の叙情的な静けさと味わい深い調べやセンチメンタルで艶やかな音色なんぞが楽しめると言う事無しなんですが、アグレッシヴさが売りのフレッシュな新人バンドのアルバムに野暮な事はいいっこなしにします。ハイ。 これまでも数知れぬバンド作へのゲスト参加やソロ活動、そして数多くのプロジェクトやコラボバンドへの参加のみならずプロデュース等の裏方作業でも引く手数多な Bob Katsionisがどれくらいの比重で本バンドの活動に時間を割いてくれるかでWONDERSの未来が決まりそうなのも不安要素ではありますが… 後は注意深く耳を傾けて聴かないと気にならないのですが、アルバム全体的に各所でチリチリとしたノイズ(最初、音割れかと勘違いした)のようなものが聴き取れ、マスタリングかミックスに何か不手際か問題があったのかプロダクションのアクシデントなのか不明です。 尚、国内盤にボーナストラックが一曲追加されておりますが、ユーロ盤には別のボーナストラックが収録されている模様なので音源マニアな方はそちらのチェックも怠らぬようにご注意を。 後はジャケット内のメンバークレジットの所でリーダーである Pier Paolo Lunesuだけ何故かクレジットが消えてしまっているのですが、これは国内盤だけのミスなのか外盤もそうなのか未確認であります(汗 とまれテクニカルでスピーディーなパワメタ寄りのユーロ・プログHMサウンドがお好みな方や、既述したバンド名で興味を持たれた方なんかは一度チェックしてみても決して損はしない期待の新バンドですので、是非ご自身の耳で彼等のサウンドを確かめてみてください。 Tracklist: 01. One Million Miles 02. Breaking The Chains 03. Here I Go Again 04. Hold Me, Save Me 05. Once Upon A Time 06. In & Out Of Time 07. Coming Home 08. All My Dreams 09. Into The Light 10. The Time Of Your Life 11. Confidence In You (Bonus Track for Japan) WONDERS Line-up: Marco Pastorino (Vocals:VIRTUAL SYMMETRY、FALLEN SANCTUARY、TEMPERANCE) Pier Paolo Lunesu (Guitars:EVEN FLOW) Giorgio Lunesu (Drums、Percussion:EVEN FLOW) Bob Katsionis (Keyboards:OUTLOUD、VASS/KATSIONIS、etc...) Luca Negro (Bass:TEMPERANCE) P.S. ジャケのクレジットが欠落している問題ですが、なんとオリジナルの外盤でも同じく欠落しておりました。つまりオリジナルのデータを忠実に使用して日本盤は制作された訳ですね。 さすがにリリースまでに誰か気が付いただろうに、どうしてせめて日本盤だけでもちゃんと修正してあげなかったのか…(w また、ユーロ盤のボートラは彼等にしては珍しく横ノリでグルーヴィな高速ツーバスドコでないタイプのちょっとミステリアスな雰囲気も漂う面白い楽曲でしたがボーナストラック扱いが妥当なイマイチっぽい楽曲でありました。
by malilion
| 2023-08-21 13:24
| 音楽
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