EXIT STAGE LEFT 「Appleberry Trees」'23 プログレ・ファンなら即分かるだろう、本バンド名はカナダが誇る最強のプログレ・トリオ RUSHの初期傑作LIVEアルバムのタイトルに由来しており、それだけで俄然期待が高まる2019年に北欧スウェーデンはボロースで結成された、まだ若いキーボード入り4人組モダン・プログHRバンドをご紹介。 既にカナダに同名のRUSHトリビュート・バンドが存在するが、そちらと混同せぬようご注意下さい。 ただ、アルバムからバンド名を頂戴しているからといって70年代大作主義期RUSHフォロワーな訳ではなく、ましてや90年代に突如北欧スカンジナヴィアン域で勃興したKING CRIMSONフォロワーなヴィンテージ・プログ・リヴァイバル勢でもない、70年代の巨人達、YES、GENESIS、 PINK FLOYD等の影響をベースに、バンド名の元ネタとなったRUSH、さらにその源流であるDEEP PURPLEなどの70年代英国HR等、様々な影響を伺わせつつ70年代プログレッシヴ要素と現代的な新しいジャンルの要素を『対峙』させ、無数の有名バンド達を思わす旋律をパッチワークの如く組み合わせながら単なるエピゴーネンに陥らぬ絶妙な再構築を施し、タイトでテクニカルな演奏をバランスを考慮しながらシャープに聴かせる姿勢は北欧ミュージシャンならではで、処女作故のフレッシュな感性と迸る情熱、そして抑えきれぬ渇望にも似たポジティヴな勢いが感じられ実に好印象であります。 彼等が単なるノスタルジックな懐古主義でないのはリードトラックのRUSH風歌メロだけでなく、STYX、KANSAS、STARCASTLE等を彷彿とさせる、70年代後期~80年代アプローチのアップテンポでキャッチーなUSプログレ勢や、ASIA等のアメリカナイズされたコンパクトなサウンドのUKプログレのみならず90年代ポンプ勢のタッチも感じさせる非常にメロディアスな美旋律が主体のプログレッシヴ・ロック構造になっている点からも明確で、メタリックなタッチは少な目でメロディアスなフレーズ重視の細やかなギター・プレイにミドルレンジ主体で少し John Wetton風だがキーは高くギターと兼任と思えない爽快感ある伸びやかでキャッチーなヴォーカルがどこかで聴いたことある歌メロ(笑)を聴かせつつ、Neil Peart風なオカズを多用するテクニカルで立体的なリズムワークがソリッドなビートを叩き出し、プログレらしくキーボードが楽曲構成の重要な位置を占め、シンセ、ピアノ、オルガン等を駆使して『目立たない』ながらも非常に巧妙なアレンジと多彩な音色を駆使してカラフルに優美にアルバムを染め上げていく、プログレッシヴ・ジャンル全ての愛好家を刺激し必ずや満足させるに違いない、新人バンドのデヴュー作と思えぬ非常にバランスとコンパクトさを考慮した良く出来たアルバムと言えるだろう。 思いの他にカッチリ纏め上げられた非常にキャッチーで印象的なサウンドの為か、鳴っている音は明らかに欧州ユーロ圏なのに全体的に派手なアプローチな為か、どことなくアメリカン・ロックや80年代ニューウェーヴな雰囲気も漂い、JOURNEYやROADMASTER、AMBROSIA、AIRRAID、TOTO等のラジオフレンドリーなサウンドが売りだったバンド達を連想する瞬間も垣間見えたりして、パーカッシヴなパートで濃密な美旋律と高い芸術性で有名なイタリアン・プログレのビッグネームPFMっポイ要素やフォーキーなタッチのパートではTHE INCREDIBLE STRING BAND、初期STRAWBS、MAGNA CARTA、FAIRPORT CONVENTION等を思わす繊細な調べも飛び出して来たりと幾重にも複雑に交差する無数のバンド群からの影響が透け見える驚く程に多様性に富んだ叙情感を常に漂わす美旋律が複雑に絡み合い一筋縄でいかぬ展開を最後まで楽しめる、雑多で幅広い嗜好を目一杯内包しているにも関わらず少しも歪な所を感じさせぬバンドの高いアレンジ能力と確かな可能性が感じられ、無名の新人作ながら予想外にクオリティが高くセンセーショナルなアルバムなのは間違いない。 個人的にはこの手の過去から現在を股にかけ欧米様々なバンドのサウンドを幅広くミックスし再構築したテクニカル・サウンドのバンドって嫌いじゃないのですが、大抵妙な雑味が感じられたりテクノロジー過多な弊害でか妙にメカニカルでドライな印象を受けたりとなかなか『コレは!?』という新人バンドに巡り合えないのが常なれど、彼等は北欧出身のミュージシャンな為に自然と奏でるメロディに清涼感や叙情感が宿っているのだろう点と、ゲスト奏者とは言えフルートの軽やかで涼やかな音色を楽曲に配していたりと大抵足りないと感じる箇所にも細心の注意と創意工夫を施して補完し高いレベルへサウンドを昇華させているのが実に見事だ。 アメリカン要素のあるプログレ&シンフォ系バンドにありがちなバッキング・コーラスでサビをゴージャスに飾り立てたり下手にハーモニー・コーラスなどで取り繕わず、リードシンガーの爽快な歌声だけをメインにキャッチーな歌メロをしっかり聴かせる本バンドの古臭いと言えば古臭いがスタンダードな王道スタイルが、実はその他多くのバンドとの差別化に大きく貢献しているようにも思えます。 驚く事にメロディアスでドラマチックなヴォーカル主体のキャッチー・サウンドなれど本作はコンセプト・アルバムとなっており、プログレッシヴ作らしく人生の旅の物語と、ある種の概念的な解放を70年代英国プログレから受け継がれてきた形式に乗っ取ってカラフルに綴られる物語は、一人の男が人生で遭遇するあらゆる困難を幼少期から追いかけ、成長し、成熟し、全ての物事が計画通りに運ぶ訳ではない、人生の出来事が見事に織り込まれたけれどしごく当たり前の事が語られる、別段突飛でも独創性に富んだ訳でもないがプログレにありがちな妙に夢想的なファンタジー物語にしなかったのは今の時代を考えると正解で、ポップなスタイリッシュさと70年代から受け継がれてきた伝統がハイセンスで溶け合ったプログレ然としたスタイルを保ちつつ、ここまでエネルギッシュなロック・フィールとフレッシュな感性を楽しませてくれるコンパクトな作品に仕上がっている点を見るだけでも早くも来るべき次作へ向け弥が上にも期待が高まってしまう、そんな超注目バンドのデヴュー作だ。 キャッチーでメロディアスな北欧プログレ好きな方や既述のバンド名に惹かれた方、そして雑多な要素をミックスしたテクニカル・ロックなんかがお好きな方にもお薦めな期待の新人バンドですので、ご興味あるようでしたら是非一度ご自身の耳でチェックしてみてください。 尚、本作はペーパースリーブの自主制作盤なのでお求めの方はお早目にネ! 因みにアナログLP二枚組でも同時リリースされているので、アナログに拘りのあるマニアな方は是非そちらもどうぞ。 Tracklist: 01. Piece Of Gold 02. Good People 03. End Of The Night 04. Appleberry Trees 05. Vagabond's Respite 06. Son 07. Shine Through 08. The Poet 09. Old Man Smile 10. Champs-Elysees EXIT STAGE LEFT Line-Up: Arvid Wilhelmsson (Lead Vocals、Guitars) Robin Hellsing (Bass) Daniel Lyngsaa Larsson (Keyboards、Backing Vocals) Jimmy Svahn (Drums) with: Jan Bengtson Flute
by malilion
| 2023-08-07 02:37
| 音楽
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