GNP 「Safety Zone +1」'23 レアリティ度、クオリティ共にハイレベルなリリース・ラインナップを誇るレーベル MELODIC ROCK CLASSICSの500シリーズ(限定500枚プレス)からカナダの忘れられた名盤、GNP (Gilmour Negus Project)の1989年リリース唯一作がボーナストラックを1曲追加して元KING KOBRAのギターリストとしてお馴染みな JK Northrupの手によるリマスタリングを施されリイシューされたので即GET!! 80年代中頃までに地道な活動の成果もあってかカナダを代表するプログレポップ・バンドSAGAは米国市場でも成功をおさめ、6枚目のアルバム『Behaviour』'85 もまずまずの結果を残したが、アルバム・リリース後のマネージメントに対する不満からキーボーディスト Jim Gilmourとドラマー Steve Negusが1986年に揃って脱退し、2人はGNPなるプロジェクト・バンドを新たに開始する。 分裂する形になったSAGAはフロントマン Michael Sadlerとバンドの中核を成すCrichton兄弟の3ピースバンド体勢になりながらもレーベルを移籍しレコーディングとツアーを続け、90年代初頭に2人が復帰するまでセッション・ミュージシャンを招いての活動が続く事に。 Jim Gilmourと Steve Negusは、70年代後半にファンク&ディスコ調ポップスでシングルヒットを幾つか飛ばした夫婦デュオ THE RAESのカナダ人シンガー Robert Bevanを1986年にフロントマンに迎えてGNPを正式に結成し、程無く英国Virgin Recordsと契約を結ぶと同郷カナダの著名ミュージシャン達をゲストに招いてアルバム制作に取り掛かる。 本作がGNPの唯一作である事や忘れられた名盤扱いされている事からお分かりの様に、本アルバムは1986年に録音されながらも何故か1989年と80年代末期に発売され、TOTO、Mr.MISTER、AMBROSIAといったバンド作に近い、キーボード主導のキャッチーでメロディアスなコンパクト・サウンドのヒットポテンシャルを秘めていたほんのりSAGA風味も有るハイ・クオリティな80年代AORアルバムであったが、時節の変わり目にリリースしたのが影響したのか殆どレコード会社からプロモーションをしてもらえず、LIVE活動も早々に打ち切られ、人々の記憶から忘れ去られてしまった不遇な一枚なのでした…(´д⊂) 2人が音楽的な相違でバンドを脱退したのではないのは本作のデジタリーで小洒落た凝ったアレンジ、キャッチーで爽快な分厚いコーラス、所々で少しSAGAっぽいエッジあるクリアーなギタ-、華やかなシンセを大々的にフィーチャーした鍵盤サウンド等を聴けば即お分かり頂けると思うのですが、奇しくもその後SAGAが三人体勢でリリースしたアルバムと近似したデジタリーでブライトなポップ・サウンドで、本作の方がよりコンパクトでアメリカナイズされた楽曲と打ち込み等も多用したキーボード主導なメロディアス・サウンドである僅かな方向性の違いしか感じられない(実際、SAGAのアルバムに収録されても違和感無い楽曲が多い)のがなんとも皮肉めいていますよね。 80年代末期から90年代初頭にかけて順調な活動を見せていたメジャー・バンド群が一気に隅に追いやられる事になるのは皆さんご存じの通りで、丁度その暗黒時代にSAGAはゴタついて足踏みと遠回りをした感があるものの結果的に元の鞘に収まったし、果敢にグランジやヌー・メタル風サウンドへアジャストしようと音楽性を変節させながら悪戦苦闘を繰り返しつつもアルバムをリリースし続けていた訳で、この80年代末期の分裂、90年代初頭の再合流のゴタつきが仮に無かったとしても80年代風サウンドのアルバムは良くて2枚程残せたかどうかでしょうから、80年代に活躍した他の多くのバンド達が悲惨な活動の末に停滞や活動休止、そして解散を迎えた事を考えるとSAGAは些かキビシイ所もありつつなんとか暗黒の90年代を乗り切ったと言えるのではないでしょうか? 話が逸れましたが本作は、ギタリストの John Albani (WRABIT、Lee Aaron)を筆頭に、同じくギタリスト Bob Bartolucci (Alannah Myles)、ベースに Jeff Jones (RED RIDER、Bachman Cummings)等、カナダの著名ミュージシャンだけでなく様々なスタジオ・ミュージシャンやストリングス奏者がセッション参加してアルバムの素晴らしい仕上がり具合に多大な貢献をしているのでカナディアン・ロック・ファンな方も見逃せない一作となっております。 螺旋を描く様にメロディが上昇していくSAGA専売特許の独特なギター・フレーズが聴こえてこないだけでギター・サウンドやギター・フレーズはSAGAをかなり意識して似せている風だし、歌メロも Michael Sadlerが歌っても少しも違和感ない風なので、元メンバーである2人が“誰がSAGAの楽曲に貢献して来たのか”をハッキリと示すかのような作為的なものも少々感じはしますが、素晴らしい作詞・作曲能力が発揮され、さらにアダルトなテイストやモダンでデジタリーなポップフレーバー等も加味した、Jim Gilmourの幅広いキーボード・スキルに叙情感ある繊細なピアノの調べや、異国情緒を感じさせるエキゾチックで多彩な鍵盤サウンドとゲスト・ギタリスト達の味わい深く洒落たギター・プレイを楽しめる本作は、もし86年当時にリリースされていたならば米国メインストリームで大成功をおさめていたかもしれない、そんな高い完成度と確かなポテンシャルを感じさせるアルバムで、どうして80年代末期という暗黒の90年代の入口に本作がリリースされてしまったのか運命の悪戯を恨まずにはおれませんね… あ、言い忘れてましたが Robert Bevanはかなり上手いヴォーカリストなのですが、どうしても比較対象がSAGAの Michael Sadlerになってしまうので割を食っているだけで、実際はエモーショナルで情感豊かな伸びやかなヴェテランらしい見事な歌声を聴かせてくれておりますので、声質、ヴォーカル・スキル等に関して全く問題ありません、ご安心を。 結局、脱退した2人はSAGAへ戻った事でGNPは敢え無く消滅してしまった訳ですが、あのまま順調に活動を続けていたなら今頃はもっとポップ・フィールドへ接近したコンテンポラリー作をリリースして別ジャンルで活発な活動を順調に送っていたかもしれない、そんな風に思える実に素晴らしい作品を残したGNPなのでした。 とまれ80年代のSAGAファンやお洒落な80年代AORがお好みな方、そして既述したバンドがお気に入りな方なら一度チェックしてみても決して損はしない、如何にも80年代を思わせる古臭いCG風ジャケット・デザインでピピッと来た方(笑)にも是非お薦めしたい一作だと言えましょう。 Track listing: 01: How Many Times 02: One Life 03: No Parade 04: Remembering 05: Love Must Be the Answer 06: Safety Zone 07: Eyes on the Prize 08: French Connection 09: Russian Roulette 10: In Your Eyes 11. Safety Zone (Extended Version) GNP Line-Up: Jim Gilmour (Keyboards、Piano、Backing Vocals) Steve Negus (Drums、Percussion、Backing Vocals) Robert Bevan (Lead Vocals) With: Bob Bartolucci (Guitars on Tracks 1~4、6~9) John Albani (Guitar on Track 2) Jeff Jones (Bass All Tracks) Richard Fortin (Guitar on Track 5、Strings Arrangement on Track 10) Maddie Willis (Scat Vocals on Track 5) Pat Perez (Sax on Track 11) The Phase One Male Choir (Track 2、Strings on Track 10) Zhang Zhang (Violin 1) Julia Jones (Violin 2) Julian Knight (Viola) Ron Chambers (Cello) Produced by Steve Negus
by malilion
| 2023-07-21 20:22
| 音楽
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