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90年代中期に Vince DiColaが参加していた幻のプログレ・ユニット THREADの唯一作がリマスター&ボートラディスク付きで限定リイシュー!!

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THREAD 「Same Limited 2CD Edition」'23

以前ここでも紹介した『Rocky IV』『Staying Alive』『Transformers:The Movie』等の有名映画のサントラなどに参加したりソロ活動している事でも知られるペンシルベニア州出身の米国人ミュージシャン&ソングライター Vince DiCola(ヴィンス・ディコーラ)がまだ裏方へ引っ込む前のロック系ミュージシャンらしい活動もしていた頃にたった一枚だけアルバムを残していた知る人ぞ知る幻のユニット THREAD (スレッド)のアルバムが英国Escape Musicから24ビット・リマスター&初回ナンバリング1000枚限定のボーナスディスク付き2枚組仕様にてリイシューされたので即GET!

メロハー系やHR&HM系リスナーやメジャーな映画音楽ファンに知られる Vince DiColaですが、その彼があの Ray Charlesの愛弟子と呼ばれた米国SSW、マルチ・インストゥルメンタリスト、俳優、作曲家のみならず、ポップス、ソウル、ファンク、ゴスペル、映画音楽、舞台音楽や、TOWER OF POWER及びEARTH, WIND & FIREへの参加をはじめ数えきぬプロジェクトやセッション等々のジャンルを跨いだ幅広い活動で知られる超有名盲目黒人ソウル・シンガー Ellis Hallと、英国プログレ・バンドJETHRO TULLに1984年から2011年まで在籍したアメリカ人ドラマーで、作曲家、作家、プロデューサー、パーカッショニストとしても活動し、映画、TVドラマ等の複数のジャンルにまたがる何百ものレコーディングに参加(USプログHMバンドMAGELLANの2ndアルバム『Impending Ascension』'93 にゲスト参加)するなど、ロック、ポップス、ジャズ、フュージョン、R&B、クラシック、ワールド・ミュージック、フォーク等の幅広い音楽的素養を身につけているベテラン中のベテラン・ミュージシャンで1988年から1996年までCalifornia州HollywoodにあるMusician's Instituteの教授陣の一員として働き、世界中のドラム・フェスティバルや音楽大学でドラム・クリニックを続けている Doane Perryと組んだスリー・ピース・ユニットで、各自の持つハイレベルな音楽的素養が遺憾なく発揮されたキャッチーで華やかな美旋律が満載な上にエキサイティングで絶妙なアレンジが随所に散りばめられた1996年リリースと信じられないくらいモダンでハイソなAOR風味も香るプログレッシヴ・ロック・アルバムとなっている。

本作参加ミュージシャンで間違いなく破格の知名度を持つのはシンガー Ellis Hallだろうが、マイナーでマニアックな音楽性故か彼本来のフィールドと違うからか本作はそれ程商業的な成功を収められなかった事も影響してか、彼のWikiには本作に参加している旨が明記されていない…(涙)

ていうかどうして Ellis Hallが畑違いのプログレ系アルバムに参加してくれたんでしょうね? 恐らく映画音楽関係からくる Vince DiColaのツテがあってでしょうけど、Ellis Hallがジャンルに拘らずどんな音楽性のアルバムにも参加しれくれるオープンマインドの持ち主だったのも功を奏したのは間違いなく、それにしたって良く彼のような超大物を引っ張ってこれたものだ、と当時も随分驚かされました。

Ellis Hallのソウルフルで伸びやかな抜群のエモーショナルなヴォーカルや絶品の歌唱力について今さらここでどうこう言う必要もないので後は本作の楽曲が問題になる訳ですが、凝ったアレンジと絶妙な楽曲展開、そしてプレイヤーの腕の見せ所もしっかりフィーチャーした、コンパクトに纏め上げられた5分未満の楽曲が殆どでプログレ作として考えると短めな楽曲ばかりと言えるが、楽曲展開が複雑なのとツボを押さえた洒落たインタープレイ、そしてキャッチーなヴォーカル・メロディとファンキーでソリッドな Doane Perryの叩き出すセンス良く多彩で軽快なリズムワークの為か一般的なプログレ作と比べても少しも聴き劣りしない、各楽器のテクニカルなプレイが楽しめる点で言えばプログレ的でキャッチーでフックあるメロディ満載な点で言えばAORやポップスの様にも聴こえるASIA的アプローチな盤石の楽曲構成と言え、プロフェッショナルなミュージシャンの技が演奏にも楽曲にも随所で活かされており、本作のみで本ユニットが終ってしまったのが勿体なくて仕方がない、各自売れっ子の超多忙ミュージシャンだし Ellis Hallがもう気の迷い(汗)を起してくれないだろうから当然なんですが、そんな一枚であります。

元々、Vince DiColaと Doane Perryが数十年来の友人で、90年代初頭のメロディアス・ロック・プロジェクト『STORMING HEAVEN』参加を経てさらにプログレッシヴな音楽性を模索する内にユニットが構成され、Vince DiColaがYES、EL&P、GENESIS等から多大な音楽的影響を受けていた事からTHREADが生まれたらしいが、時期的にDREAM THEATERの2nd『Images And Words』'92 が米国で大ブレイクを果たし一世を風靡して世界中にプログレHMブームを巻き起こした後なので、もしかしたら彼等の活動に触発され Vince DiCola主導で本作が画策されたのかもしれない。

何より耳を惹くのは Vince DiColaの操る多種多様なキーボードが奏でるサウンドで、米国ミュージシャンらしくグルーヴィだったりジャージィーだったりするハモンドやプログレ的な煌びやかなシンセワークやモダンなフュージョン風だったりクラシカルな音色も響かせながら艶やかで叙情的なピアノ等の多彩で巧みな鍵盤捌きを魅せ、所々でウエスト・コースト風だったりAOR風の小洒落たアレンジが効いた音色が飛び出してきてニヤけてしまうが、概ねプログレ風な流麗(そこかしこで顔を出すモロ Keith Emerson風なシンセ!)でシンフォニックなほんのり映画サントラっぽい風味とスケール感ある美旋律を解き放たれるように嬉々として奏でている点だろう。

やっぱりプログレ系はプレイヤーが思い切り演奏出来る時間が長く派手なインタープレイをフィーチャーしてしかるべき音楽形態なだけあって、腕に覚えのあるミュージシャンならそりゃ弾き倒してしまいますよねぇ(笑

ただ、そんな完成度高くモダンでしっかりコンポーズされたプロフェッショナルなアルバムではあったのですが、総じてプログレと言うにはお洒落でポップでキャッチー過ぎるし、グランジーがメジャーシーンを席捲している中でヌーメタルと言う訳でもない軽めでモダンなサウンドに、ポップスと言うには複雑でテクニカルなサウンド過ぎて、また水と油くらいジャンルの違うソウルとプログレをミックスした一風代わった独創性ある音楽もリスナーを困惑させたのか、クロスオーバーな雑多な音楽性のサウンドやシンセウェブが流行っている今ならば問題なく受け入れて貰えるかもしれないが、当時としては余りにも中庸でバランス重視なサウンドだったのが災いしたのか多くの注目を集めるに至らなかったのが悔やまれます…

さて、今回のリイシューの目玉でもある未発音源ですが、アルバム収録曲のオリジナル長尺ヴァージョンで元Yngwie Malmsteen Bandでお馴染みな Mark Boalsが歌声とギター、マンドリンで参加し、数多くのメジャー・ミュージシャンのサポートやレコーディングに参加し、2017年からTOTOのサポート・ミュージシャンでベース&ヴォーカルを務め、オペラ歌手でもある多才なシンガー&マルチ・インストゥルメンタリスト Shem von Schroeckもその歌声を披露している他、AGENT、THE BESTでフロントマンを務めた Rick Livingstoneもヴォーカルで参加、BLACK ROSE、STEPPENWOLF、Stan Bush、Rick Springfield、David Lee Roth、Fergie Frederiksen、中島みゆき等の作品に参加しているギタリスト Rocket RitchotteやMIAMI SOUND MACHINE、Kenny Loggins、David Foster等との仕事で知られるギタリスト John DeFariaも参加し、本編と未発曲でその腕前を披露している。

Ellis Hallがシンガーに決定する迄にかなりの数のシンガーとセッションしたと Vince DiColaがライナーで語っている所を見るに、恐らく今回ボーナスディスクに収録された音源以外にも名の知れぬシンガー達が歌った数多くの未発音源があるもの(なんて贅沢な!)と思われ、ソッチの音源にも興味津々でどうせなら3枚組でリリースしてくれても良かったのに、とか思ってしまう、それくらいセッションで参加しているミュージシャンは誰もが優れた歌声や腕前を披露しているのでした。

やはり未発音源で歌っているシンガーの歌声と比べると Ellis Hallの歌声には黒っぽいフィーリングが自然と宿っていて、それが本編のサウンドに他のプログ・バンドに無い特異なタッチを与えているのですが、未発曲を歌うシンガー達の如何にもメロハー系という透き通ったハイトーン・ヴォイスも捨てがたい素晴らしい出来栄えで、メロハー系ファンならばコッチの方を好む方も多いのではないでしょうか?

未発曲の出来自体も本編収録曲に全く引けを取っていないセンス良い佳曲なのと、オマケで Vince DiColaが一曲で自身の喉を披露しているのも聴きモノです。意外と歌が上手くてビックリ。

今回のボーナスディスクの方がワイルドでロックテイストが強いアタック感とスケール感あるイメージ(ドラム&パーカッション大活躍!)に仕上がっており、本編アルバムがさらに磨きをかけられてよりAOR風味やソフトなタッチに仕上げられているのが分って、単なるヴォーカル・パートの入れ替えだけの未発音源でない中々興味深い音源が収録されていますし、オリジナル盤はちょっとヴォリューム低目でしたが今回のリマスター効果でググッとボトムが太く持ち上がり、全体的にクリアーでパワフルなサウンドに磨き直されている事もあってオリジナル盤をお持ちの方もボ-ナスディスクに収められている数々の魅力的な未発音源を楽しむ為にもまた本作を購入し直しても少しも後悔する事はないでしょう。

Track Listing: CD 1
01. Live At The Scene
02. Hands Of Kindness (Short Version)
03. Another Mean Day
04. Just Out Of Reach
05. Rage
06. Secrets Of The Game
07. Rainbow Suite

Unreleased Tracks: CD 2
01. Live At The Scene (Featuring Shem von Schroeck)
02. Hands Of Kindness (Extended version feat Mark Boals)
03. Top Of The World (R. Livingstone & S. von Schroeck Version)
04. The Last Of Her Kind (Featuring Vince DiCola)
05. Ever Changing World (Featuring Mark Boals)
06. Rainbow Suite (Featuring Mark Boals)
07. Jessie‘s Journey - The Suite (STORMING HEAVEN featuring Rick Livingstone)

THREAD Line-up:
Vince DiCola    (Keyboards、Bass、Guitars)
Ellis Hall       (Lead & Backing Vocals)
Doane Perry     (Drums & Percussion)

Additional Musicians:
Mark Boals     (Acoustic & Electric Guitars、Mandolin: Disc1 Tracks 2、5、7、Disc2 Tracks 2、4、5)
John DeFaria    (Acoustic & Electric Guitars: Disc1 Tracks 4、6、Disc2 Track 3)
Rocket Ritchotte   (Acoustic & Electric Guitars: Disc1 Tracks 1、3、Disc2 Track 1)
Mark Boals     (Lead & Backing Vocals: Disc2 Tracks 2、4、5)
Shem von Schroeck (Lead & Backing Vocals: Disc2 Tracks 1、3)
Rick Livingstone   (Lead Vocals: Disc2 Track 3、Additional Vocals: Disc1 Track 5)
Vince DiCola    (Lead Vocals: Disc2 Track 3)

Produced & Arranged by THREAD


by malilion | 2023-06-30 15:21 | 音楽 | Trackback
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