HOUSE OF SHAKIR 「Xit」'23 1991年にストックホルムで結成され活動歴が32年になる北欧スウェーデンのツインギター5人組ベテラン・メロハー・バンドであるHOUSE OF SHAKIRAが、2019年リリースの前作『Radiocarbon』から約4年ぶり、2022年3月に1997年リリースのデヴュー・アルバム『Lint』リリース25周年を記念してデヴュー前に在籍していたオリジナル・シンガー Mikael "Zifa" Erikssonのヴォーカルをフィーチャーしたデモ音源を含む2枚組リマスター&リイシュー盤に続く15枚目のアルバム(BEST、LIVEを含む、スタジオ・アルバムとしては10th)をリリースしたのをちょい遅れてGET! 新ヴォーカリスト Andreas Novakを迎えて5枚目となる久しぶりの新作でも、爽快なコーラスワークを活かしたポップでキャッチーなアメリカン・ロックに北欧フレーバーをまぶした絶妙のメロディアスHRサウンドな方向性に大きな変更はなく、前作からオリジナル・ベーシストでありROYAL HUNTにも在籍していた Per Schelanderが復帰し、イタリア最大手でありメロハー・ジャンルのレーベルとしてユーロ圏で代表的な存在であるFRONTIERS Musicへレーベルへ移籍して2作目のスタジオ・アルバムとなっている。 元々THE STATIONと名乗っていた彼等だがアルバム・デヴューするに当って新たにバンド名を公募すると、ロンドンにある"The House of Shakira"という店がブティックを装って実は売春宿を営んでいた、という英国の新聞記事に因み『見かけによらないモノ、全く違う商品を提供し販売している』良い比喩だと考え、彼等の音楽が一般的に『メロディアス・ロック』と呼ばれるジャンルのサウンドに期待されるモノと異なっている事に合致しているとその店名を採用した経緯通り、今回も典型的なHRのイメージに当て嵌らない、人気バンドのフォロワーや見せかけだけの量産型フェイク・バンドが多い昨今に、25年以上に渡って多様な音楽要素を含んだキャッチーなコーラスをフィーチャーした奥行あるメロディアスで独創的なロック・サウンドを力強く奏で続けてきた、そのキャリアに裏打ちされた確かな品質とファンを裏切らぬ北欧メロディアスHR作を届けてくれた。 ただ、前々作『Sour Grapes』'16 でそれまで試行錯誤し研鑽してきた、印象的なフックと分厚いヴォーカル・ハーモニー、キャッチーなメロディと耳に馴染みやすい歌メロを主軸にしつつ、ギター・オリエンテッドな80年代風味漂うアメリカン・ロックに北欧情緒をまぶし、デヴュー作からのお約束である中近東の民族音楽的な旋律やミステリアスな雰囲気漂う音色を交えてベテランらしい風格と安定感バッチリに、ヴァラエティ豊かでバランスも考慮されたHRサウンドは一応の完成を見たと判断したのか、前作『Radiocarbon』'19 からは路線を変更し、VAN HALEN、EUROPE、DEF LEPPARD、ROXY BLUE、AC/DC、DANGER DANGER、RAINBOW等の影響がこれまで以上に感じられる自身のルーツを色濃く反映させたアルバムだった事に驚かされたが、その路線はなんと本作でも続いてる模様だ。 これまでに欧米折衷サウンドに透明感ある北欧フレーバーとバナキュラーでエキゾチックなテイストを加えひと捻りした独創的サウンドを聴かせていただけに、何故に駆け出し新人インディ・バンドみたいな事をし出したのか定かではありませんが、欧州ではCATS IN SPACE等のレトロなサウンドのリヴァイバル系バンドやクラッシック・ロックサウンドが幅広い聴衆に受けているらしいのでその辺りの客層を考慮しての変化なのかもしれないが詳しい事は分からない…(汗 無論、モロパクしたりパロディ染みたシリアスに受け止めてもらえないカバー・バンドような安っぽいコピー・サウンドでは無い、しっかりオリジナリティを感じさせるお約束のキャッチーで分厚く爽快なコーラスをフィーチャーした、グルーヴィでファンキー、リズミックでエネルギッシュな良く練られた魅力的な楽曲には、繊細さや深みある美旋律をはじめスリリングなフックや凝ったアレンジ等の仕掛けがバッチリ施されており流石はベテラン・バンドと嬉しくなるのだけれど、明らかに意図的に元ネタが透けて見える瞬間が多く、弾むビートにキャッチーに歌い上げるヴォーカルを聴くまでもなく"Fun"なフィールに満ち溢れた朗らかでブライトな北欧的な透明感と爽快さを押し出したダイナミックでメロディアスなHRサウンドに今回はBON JOVI、FOREIGNER、EXTREME、BOSTON、ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA、HAREM SCAREM、THE BEATLES、NIGHT FLIGHT ORCHESTRA等がチラつき、前作でも感じた数多くのバンド・サウンドも加えてサンプリングし組み合わせた様な不思議な感覚が終始脳裏を掠めては消えて行って、どうにも釈然としないと言うのが個人的な見解だ…(´~`)ウーン 前作の紹介の時に『少々マンネリ気味になりつつあるサウンドに安定感を保ちながらも刺激を与えようと画策したのかも』と述べたが、レトロな有名バンドのサウンドをサンプリングして最先端のモダン・サウンドへリプロダクトしてひと捻りを加え、北欧フレーバー、キャッチーなコーラス、即効性ある美旋律、魅力的で馴染易い雰囲気、ソリッドで耳を惹くハードなギター・リフ、小洒落たシンセ・アレンジ、諸々が複雑に絡み合いながら新鮮で活気に満ちた爽快なHOUSE OF SHAKIRサウンドへ染め上げている、という風にも捉えられる前作路線の継承は、単なるフォロワー・サウンドになっていない時点で彼等に相当な実力があるのだと察せられるし、意外性やエキサイティングな刺激は弱めだが安定感と心地よさで言えば抜群な仕上がりなのは間違い無いので、妙に細かくオリジナリティだとかサウンドの進化だとかに拘らなければ大変に楽しい時間を過ごす事が出来る北欧メロディアスHR作だと言えるだろう。 正直な所、ベテラン・バンドは安定感はあるのは当然ながら新人バンドの奏でる作品に詰め込まれている、向こう見ずな勢いや新鮮な驚き、そして予想外な意外性と瑞々しい感性は望むべくもない、と思っていたのだが、もしかしたら新人バンド達の煌びやかな感性に満ちた作品群の後塵を拝するベテランの宿命に抗う為に、それまで完成度を高めて来た路線を捨てて新たに未知の領域へ踏み出し、自ら生まれ変わろうと模索している最中なのかもしれない、そう思える勢いや楽しそうな雰囲気が伝わってくるアイデアに満ちた彼等だけのHRサウンドを鳴り響かせているように感じる。 なんだろう、ノリノリでドライヴィンするフラッシーでワイルドなツインギターと煌びやかなキーボードの絡みや Andreas Novakの甲高い歌声のせいか、妙に初期のNIGHT RANGERを思い起こさせる時があるオクトジェニックな米国風HRサウンドが妙に耳についてワクワクが止まりません♪ヽ(´ヮ`)ノ 前作よりもハードエッジなサウンドや勢い、キャッチーさや即効性の刺激は増したが、独創性という点では疑問が些か残る作風になりつつある新路線の北欧メロディアスHRサウンドなれど、キャッチーなAORやフック満載なメロディアスロックを好む方やオクトジェニックなメロディアスHRがお好みの方ならまず問題なくお気に召すだろうアルバムに仕上がっているのは間違いありませんので、ご興味あるようでしたら是非チェックしてみて下さい(*´ω` *) 尚、アルバム・デヴュー前の初代シンガー Mikael "Zifa" Erikssonと2代目シンガー Andreas Eklundがリードとバッキング・ヴォーカルで参加しカラフルなコーラスと伸びやかな歌声を披露し、現在はスウェーデンのロック・シンガー Roger Karlssonのバックバンドのメンバーをはじめ各所セッション活動をしている70年代に結成されたスウェーデンでは知名度あるジャズ・ロック・バンドWASA EXPRESSにも在籍しているオルガニスト Kjell Allingerが本作のブルージィーなタイトルトラックでその見事な腕前を披露している。 Tracklisting: 01. Something In The Water 02. No Silver Lining 03. Toxic Train 04. Your Exit 05. Too Much Love 06. The Messenger 07. Twisted Attitude 08. Nowhere Bound 09. Chimera 10. Hell Or Heaven 11. Xit HOUSE OF SHAKIR Line-Up: Andreas Novak (Lead & Backing Vocals) Mats Hallstensson (Electric & Acoustic Guitars、Ebow、Backing Vocals) Anders Lundstrom (Electric Guitars) Per Schelander (Bass、Keyboards、Percussion、Backing Vocals) Martin Larsson (Drums)
by malilion
| 2023-06-19 18:52
| 音楽
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