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フレンチ・シンフォ・デュオ SEVEN REIZHが超大作となる2枚組アルバムをリリース!

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SEVEN REIZH 「Quand S'envolent Les Mots...」'23

フランスはブルターニュのシンフォニック&プログレッシヴ・デュオプロジェクトの前作から5年ぶりとなる5thアルバムがリリースされたので即GET!

2015年に発表された野心的な前々作『La Barque Ailee』、その続編となる2018年リリースの『L'Albatros』と、共に2001年デビュー作以来恒例のLPサイズな分厚いハードカバーなブックレット形式のアルバムジャケットだったが、今回も恒例のLPサイズの豪華装丁ハードカバー&ブックレット形式となっている。

SEVEN REIZHは Claude Mignon (作曲家、ギター&キーボード)と GerardLe Dortz (作詞家、ヴォーカル)二人が率いるシンフォニック&プログレッシヴ・プロジェクトで、2001年のデビュー以来一貫してスケール感の大きいサウンドのコンセプト作を多数のゲストを迎えて寡作ながら独特な美旋律で綴り続けて来たが、本作は初めて GerardLe Dortzがアルバム制作に不参加で、Claude Mignonのみが単独で制作指揮を執りサブタイトルにも有るように『La Barque Ailee』と『L'Albatros』収録曲からヴォーカル・パートを無くし、より緻密で壮大な新アレンジを施して楽曲の多くを新たにインストゥルメンタル・スタイルへと書き換え、殆ど完全新作と呼んでも差し支えない数多くの新録音パートも加えて再構築した、これまで以上に雑多で幅広い音楽要素を取り込みながらも同コンセプト作と言えるスタンスを保つシンフォニック・サウンドは、よりメロディアスで壮大、且つバランスを考慮した、堪らなくドラマチックで目を見張る美旋律満載な2枚組アルバムへと生まれ変わった孤高の超大作だ。

実質的に Claude Mignonのソロ・プロジェクト作とも言える本アルバムだが、前2作の続編として同じ趣の新曲を収めた3部作の最終作とする事も容易かっただろう差異を感じさせる素晴らしい仕上がり具合にも関わらず、敢えてわざわざ『La Barque Ailee』と『L'Albatros』の楽曲を再構築し収録と明記している事からも自作曲に対する Claude Mignonの並々ならぬ自信が伺えるし、今回不参加ではあるが長年の相方である GerardLe Dortzへのリスペクトも込めてかSEVEN REIZH名義での作品となっているのだろう。

本作がSEVEN REIZHの5thとしてリリースされたのは Claude Mignon名義のソロ作よりSEVEN REIZH名義の方が既にファン・ベースもあるし商業的な成功もし易いから、と普通なら邪推しがちですが、そんな事を考えるアーティストであるならばそもそも購入者を選び商業的成功の足枷にしかならぬ上に値の張る流通状況最悪(涙)なデカイ豪華装丁ハードカバー&ブックレット形式でのリリースなど選択せぬし、芸術的な完成度を優先して拘り抜いた制作体勢(相当数の器楽と声楽パートを新たに書き起している)や創作期間、なにより全て自身の懐へ直撃する自主制作盤なのに敢えてバジェットを度外視した姿勢からも明白で、偏に Claude MignonのSEVEN REIZHに対する深い愛着とアーティストとして20年以上積み重ねて来た揺るぎないプライド故なのが察せられます。

さて、本作の内容についてですが、Mike Oldfield、PINK FLOYD、GENESIS、CAMEL、MARILLION、XII ALFONSO、ENYA、CLANNAD等の影響を受け、フォーク、ゴシック、ネオ・プログレ、ケルト、ワールドミュージック等を融合させた独自のシンフォニック・サウンドは、英語、フランス語、ブルトン語、ゲール語、時にはカバイ語などの多言語のヴォーカルをフィーチャーし、劇的で旋律的なインスピレーション与えるこれまでの作品で披露してきた多彩で複雑な音楽性は継承しつつ、今回もあらゆるプログレ要素を取り込んだエレクトリック・ロック・サウンドと艶やかなヴァイオリンや Loreena McKennittのエッセンスを感じさせる大らかで優美なハープを始めとする多彩な管弦楽器が奏でるアコースティカルで豊かな音色が幻想的に交じり合いながら、40人程の演奏家をゲストに招いてまるで映画のサントラ張りに壮大なオーケストレーションや、これまで余りフィーチャーされる事の無かったニッケルハルパや中王国の代表的な楽器である竹笛と古筝をはじめ二胡なども含む世界中の様々な珍しい楽器の独特な音色も加え、トルコ人歌手、ベトナム人歌手、フランス人歌手、ドイツ人歌手、そしてフランス人のカウンターテナーと、時間を掛けて緻密に練り上げられた圧倒的な迫力でせまる声楽パートは西洋風でない旋律をはじめエキゾチックで音響的に豊かなメロディを優雅に響かせながら、まるで数多くの楽器が奏でる哀愁を帯びた音色が遥かなる旅路へ誘うような、そんな独特の雰囲気が漂うパワフルで感情を揺さぶる音楽は、サントラやシンフォといったカテゴリーやジャンルの境界を容易く超越した非常に独創的で美しい旋律の集合体である事に一片の疑いもない。

やはり随所で奏でられるケルトとオリエンタルを絶妙にブレンドした独特な美旋律の数々が堪らなくエキゾチックな香りを放っており、妖艶な声楽コーラスも相まって出だしはまるでフィンランドのフォーク・バンドVARTTINAのように思えたのが一転、涼やかなハープやアランフェス協奏曲の美しいテーマを思わせるヴァイオリン、艶やかなフラメンコ・ギターや軽快なスパニッシュ・ギターも飛び出してきて目くるめく場面が予想外な展開をみせる映画的ドラマチック・サウンドがダイナミックにファンタジックに奏でられ、非常に詩的で幽玄な音楽の喚起を休む間もなくもたらし、ヴォーカル・レスだからと言って単なるBGMに成り下がる事が一時も無いのは見事の一言に尽きるだろう。

西洋音楽的なオーケストレーションやオペラチックな壮大なスケールのド迫力作ではないけれど、時間をかけただけある繊細なアレンジが施された、途方もなく豊かな美旋律の数々とこれまで積み上げて来たキャリアとバンド名に相応しい音楽が満載な、シンフォ・ファンだけでなく辺境の様子を鮮やかに描く映画サントラ好きや民族音楽的なエキゾチックなメロディの響きに惹かれる方々の心を掴んで離さぬような一作になるに違いない。

美声のフィメール・ヴォーカル・ファンや、ケルト・ミュージック、及びエスニック&ワールド・ミュージック好きな方へお薦めな一風毛色の違った野心的でインテリジェンス漂う壮大なアルバムですので、是非一度ご自身の耳でチェックしてみて下さい。

豪華装丁なので少々お値段がお高いですが、毎度の事ながら自主盤なのでお求めの方はお早めにね!

Tracks Listing:
Disc 1:
01. Antre
02. Chench
03. Kraozon
04. Odisea
05. The Middle Path
06. Brems

Disc 2:
01. Herzel
02. Vents contraires
03. Neseli
04. Breathe
05. L'ombre de Feng
06. Klozan

Musicians:
Claude Mignon   Compositions、Arrangements、Electric & Acoustic Guitars、Piano、Synthesizes、Lap Steel

With:
Huong Thanh    Chant、Vietnamese Vocals
Nadia Simon     Chant、French Vocals
Pelin Basar     Chant、Ney、Turkish Vocals
Stefanie Theobald  Chant、French & German Vocals
Alexis Vasiliev    Counter Tenor
Eleonore Billy    Nyckelharpa
Loic Blejan     Uilleann Pipes
Cyrille Bonneau   Duduk
Olivier Carole    Bass
Sebastien Charlier  Harmonica
Shan Charriau    Bamboo Flutes
Mathilde Chevrel   Cello
Jonathan Dour    Violin
Philippe Durand   French Horn
Rosendo Gomez   Flamenco Guitar
Ronan Hilaireau   Piano
Michel Hoffman   Oboe
Regis Huiban    Accordeon
Vincent Lecomte  Bass、Trumpet
Bernard Le Dreau  Tenor Saxophone、Clarinette
Ewan Le Gallic    Scottish Bagpiper
Shane Lestideau   Violin
Gurvan Mevel    Drums、Percussion
Gwenael Mevel   Tin & Low Whistles、Bombarbe
Gwendal Mevel   Transverse Flute
Francois Pernel   Celtic Harp
Ying Rao      Guzheng
Thierry Runarvot  Contrabass
Olivier Salmon   Electric & Acoustic Guitars
Gilles Sasongko   Violin
Laurent Sureau   Handpans
Mihai Trestian    Cymbalum
Xuan Vinh Phuoc  Dan Tranh



by malilion | 2023-06-09 20:44 | 音楽 | Trackback
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