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イタリアン・プログレ期待の新星、TRITOPが自主制作盤でデヴュー!!

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TRITOP 「Rise Of Kassandra」'23

イタリアのローマを拠点に活動するキーボード入り5人組イタリアン・プログレ・バンドTRITOP(トリトップ)の自主制作デヴュー盤を少々遅れてGETしたのでご紹介。

最初に彼等のサウンドを耳にした時の印象は、ベテラン・スウェーデン人ギタリスト Roine Stolt率いる北欧モダン・シンフォの雄 THE FLOWER KINGS + 北欧スウェーデンの変態屈折ムーミンバンド(笑) RITUALでした。

元々ドラマー Ivo Di Tragliaが立ち上げたプロジェクトからバンドへ発展したユニットと言う事もあって緩急の妙や意表を突くハッタリの効いた切り返し、渦巻くようなグルーヴ等の変化に富む鮮やかでテクニカルなリズム構築が特に耳を惹くが、HMの影響も受けているエッジあるサウンドを紡ぐギタリストと古典プログレ的アプローチやデジタリーな最新のモダン・シンフォだけでなく様々な音楽要素を垣間見せるキーボーディストが奏でる多彩で技巧的、それでいて抜群にメロディアスなしっかりとコンポーズされた楽曲はとてもインディ・バンドのデヴュー作と思えぬプロフェッショナルな印象を与え、RITUALのフロントマン Patrik Lundstromを思わす声質のエキセントリックでエモーショナルな癖の強い(芝居がかった風は Patrik Lundstromより弱目)荒れたヴォーカルは、繊細で艶やかな反面些かパワー不足なイメージを持ちがちなイタリアン・プログレ・バンドのシンガーと思えぬHR的なワイルドさと野獣の如き咆哮を轟かせ、ヴィンテージとモダンが絶妙なバランスでMIXされ展開し、めくるめく構築されていく古くて新しいモダン・プログレ・サウンドは実に痛快だ!

Ivo Di Tragliaが語るには、定番の70年代の巨人達 GENESISやKING CRIMSON、YES等は勿論、DREAM THEATER、THE FLOWER KINGS、SPOCK'S BEARD、KAIPA、ANGLAGARD、ANEKDOTEN、LANDBERK、KARMAKANIC、HAKEN、OPETH等々をはじめ70年代~現代の欧米で活躍する様々な幅広いジャンルのバンドに影響を受けており、ANGLAGARDのヴィンテージなダークなヘヴィネスさや、LANDBERKっぽさがダークなメロトロン・パートで透け見え、DREAM THEATERが魅せる各メンバーの派手でテクニカルなインタープレイ、THE FLOWER KINGSの古典的なテイストを再構築したモダンなシンフォニックさ、HAKENの現代性、SYMPHONY XのHM的メタリック・スピード・プレイ等と雑多なバンドの音楽要素を限界無視で貪欲に取り込みつつ、プログレ・バンドお得意の複雑で難解なサウンド・ジクソーパズルは無論の事、一番重要なのは何よりも美旋律を際立たせる事で、複雑なハーモニーやリズムをベースにしながらキャッチーなメロディを作り複雑さとのコントラストがこの種の音楽を面白くすると考えていたらしく、その成果は本作のドラマチックで大仰、そして偏執的で重厚な、フックある独特なメロディアス・サウンドに如実に現れており、それでいてアルバム全体がとても良く練られた高い完成度には驚かされるばかりだろう。

特にデヴュー作なのに楽曲のその見事な構成力には舌を巻くばかりで、13分越え、24分越えの大曲の他、5分超えの楽曲のみ収録されている定番のプログレらしいアルバムなのにも関わらず、ハードエッジでトリッキーな音数多いメロディアスなギターとシンセ、オルガン、ピアノ、メロトロンなど多彩な音色を響かせる華麗なキーボード類それぞれの楽器を引き立てるヴィーンテージ・テイスト香る美旋律を巧みに織り交ぜ、スピードとテクニックを兼ね備えた手数の多いリズム隊がプログレ・ファンなら誰もが納得する素晴らしくグルーヴィなアタックの強い生々しい演奏で楽曲を激しく推進させながら、凶暴でエキセントリックなヴォーカルの意外にキャッチーで緩急めまぐるしい歌メロが万華鏡の如く変幻して一気に駆け抜けていく為か、本当にアッという間にアルバムが終ってしまい慌てて楽曲の長さを確認する始末で、どの曲も体感3、4分程度のコンパクトな楽曲にしか思えない、それくらいソリッドな一体感と奔流のようなパワーが駆け巡るリズミックなシンフォ・サウンドは、古典的なイタリアン・プログレやイタリアン・シンフォに通じる70年代風のヴィンテージ感が強いものの明らかに似て非なる音で、その遥か先を疾走しているかのようなエキサイティングで息を呑む新鮮な驚きに満ちている。

どうしても既存バンドとの共通点を耳が探してしまい、THE FLOWER KINGSとRITUALのイメージが強く北欧っぽい感触が最初に来るが、しっかりとイタリアの新鋭バンドならではの中世風なテイストやオペラチック(シンガー Mattia Fagioloも一転、しっとり如何にもイタリアンな繊細な歌唱を聴かせる)さも仄かに香り、ユーロ圏バンド特有のウェットな叙情感を醸し出しながらヴィンテージとモダンなサウンドが交互に変化し紡ぎ出すメロディは実に雄弁で、他の誰でも無いオリジナリティあるスケール感あるスリリングでドラマチックな最先端プログレッシヴ・サウンドを堂々と披露する様はベテラン・バンドも顔負けな風格さえ感じさせ、彼等の今後の活躍が楽しみでなりません!

無論、何もかも全てを取り揃えた完璧なサウンドと言う訳でなく、今までの賞賛はモダンな00年代以降のプログレ&シンフォ・バンドとして見た場合で、所謂古典的なイタリアン・プログレ・バンド群の作品を好む方達にとっては必ずしもそうではないという事だ。

ドラマーが中心なバンドなのでリズムアプローチはRITUALよりかなり複雑だがメロディアスさやキャッチーさではRITUALの方がまだ上な印象なのと、イタリア産バンドでお馴染みなクラシカルさやオペラチック等な濃厚で独特な臭みはそのサウンドから強烈に香る事は殆ど無く、モダンさに裏打ちされたメロディは如何にも現在進行形なバンドなれど濃密な美旋律を好む向き的には物足りなさを感じさせるだろうし、アルバム後半はRITUALでは聴けぬTHE FLOWER KINGSのような00年代以降のモダン・シンフォ風味と現代的感覚が強いキャッチーなメロディアスさがアップするが、メタリックでハードな音色を紡ぐ抜けの良いギター・サウンドにはHMの要素やフュージョン風味が強く感じられたりして、この辺りで従来の古典的プログレ作が好みな方は強い拒否反応を示すかもしれない。

数多くの鍵盤楽器を鳴らすキーボーディストだが、オーケストレーションは控えめでミステリアスな雰囲気は随所で漂うものの所謂プログレ風なタッチは少なく、またシンフォ的壮大な使われ方も余りフィーチャーされていない、どちらかと言えばオーバーダブを控えたLIVE的シンプルなバッキングに徹するかの様な印象の鳴り具合で、キーボードもギターもその音色やウェットでリリカルなメロディには北欧風味が強くプレイやアレンジを含めて非常にスタイリッシュにまとめ上げられており、イタリア産プログレの独特の魅力でもあるどうしょうもなくバタ臭く濃厚な、けれども優美な艶やかさ際立つ美旋律は全体として余り耳を捉えず、まぁソコはバンドの方向性や嗜好が違うと納得してもらう他ありませんね(汗

絶妙なロングトーンのギター・サウンドやメロトロンをフィーチャーしたヴィンテージ感ある音色はRITUALを強く思わせるが、摩訶不思議な楽曲展開は少なくふざけたコミカルさも無い分モダンさやサウンドの整合性は本作の方が上で、美旋律のコントラスト具合もこちらが勝っているより劇的なサウンドに感じる事もあって、寧ろRITUALの素っ頓狂で芝居がかったコミカルさが苦手な方にこそ本バンドのエピック且つシンフォニックな情緒すら感じさせるモダン・サウンドはうってつけかもしません。

そうそう、『Ivo Di Tragliaってイタリア人なのに北欧シンフォ・ファンなだけじゃないか』と思った諸兄はご安心下さい、彼は17歳の時にEL&Pのトリビュート・バンドで演奏し、LA METAMORFOSIのオープニング・アクトを務めた事があったり、古典的イタリアン・プログレ・バンドのメンバーだった Francesco Di Giacomo (BANCO DEL MUTUO SOCCORSOのオリジナル・ヴォーカル)や Giacomo Anselmi (GOBLIN REBIRTH、BAROCK PROJECTのギタリスト)と知り合い、交流したり、Fabio Moresco (BANCO DEL MUTUO SOCCORSO、 LA METAMORFOSIのドラマー)に師事した事もあるらしく、ドップリとイタリアン・プログレ・コミュニティに属している期待の新世代正統派プログレ・ミュージシャンな模様でありますから、彼個人は THE FLOWER KINGSとの共演を夢に見る(笑)程に熱烈なファンでもありますが、他のバンドメンツによるインプットも受け入れる柔軟性を持つ人物でもありますし、来るべき次作も安直な売れ線狙いや有名バンドのフォロワー的なアルバムや懐古主義的なヴィンテージ・エミュレート作をリリースする愚は決して犯さぬ事でしょう(*´ω`*)

また、専任で歌詞担当の人物を招いている点からしても、かってのEL&PやKING CRIMSONを彷彿とさせ、如何にも往年のプログレ的でアーティスティックなスタンスなのがプログレ・ファン的にも嬉しいですよね。

因みにダンテの『神曲』が本作歌詞のベースとなっており、視覚的な寓意に富んだテキストでリスナーをメタファーに満ちたファンタジーの世界へと誘う為か難解な作詞が成されていて、タイトル曲でリードトラック“Rise of Kassandra”は、宇宙的な不可抗力によってゼロになった世界を描こうとし、2曲目“Delighted Insanity”では、混沌と無秩序の影から這い上がってくる人々を見下ろし、“Island Of Servitude”では、社会が自然に圧制的なヒエラルキーへと発展していく様子を描写し、最後に”The Sacred Law Of Retribution”では、このサイクルを突破しようとして罰せられ、人類を振り出しに戻したのと同じ存在になってしまう人物の道を辿っている。

と、説明されてもSF映画のプロットのような正直なんのこっちゃなチンプンカンプン(汗)の歌詞ですが、その手の歌詞は70年代からYESを筆頭にプログレ作では特段珍しくもないので別に殊更騒ぎ立てる事もないですよね?( ´_ゝ`)ウーン…

とまれ、100% Pure Progressive Rock. No Additives, No Preservatives, No artificial Flavoring、なのでプログレを愛する方には是非!(w

Track List:
01. Rise of Kassandra
02. Delighted Insanity
03. Island of Servitude
04. The Sacred Law of Retribution

TRITOP Line-up:
Ivo Di Traglia        (Drums、Composer、Arranger)
Pierfrancesco Di Pofi    (Hammond Organ、Synthesizers、Mellotron、Piano、Keyboards)
Francesco Caponera    (Electric & Acoustic Guitars)
Jacopo Tuzi        (Bass)
Mattia Fagiolo        (Vocals)

Iacopo Di Traglia     (Lyrics)

Guests:
Peter Cornacchia    Acoustic Guitar、Classic Guitar、Mandolin
Simone Cozzetto    Electric Guitar、Steel Guitar、Acoustic Guitar
Andrea Ricci      Electric Guitar
Vincenzo Mancini   Electric Guitar
Emanuele Andolfi   Electric Guitar
Pasquale Ripa      Electric Guitar




by malilion | 2023-04-08 13:55 | 音楽 | Trackback
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