人気ブログランキング | 話題のタグを見る

現BOSTONのフロントマンでDECARLOを率いる米国人シンガー Tommy DeCarloの1stソロ・アルバムを今頃ご紹介。

現BOSTONのフロントマンでDECARLOを率いる米国人シンガー Tommy DeCarloの1stソロ・アルバムを今頃ご紹介。_c0072376_18243298.jpg
TOMMY DECARLO 「Dancing In The Moonlight」'22

去年の年末にリリースされていた現BOSTONのフロントマン Tommy DeCarloの1stソロ・アルバムをかなーり遅れてご紹介。

ここでも以前紹介したように実子である Tommy DeCarlo Jr.と共に結成したUSメロハー・バンドDECARLOで2020年にイタリアのメロハー・レーベルの老舗 Frontiers Musicからデヴュー・アルバムを既にリリースしているが、本作はそのFrontiersからの第二弾作であり Tommy DeCarloのデヴュー・ソロ・アルバムとなっている。

完璧主義者の Tom Scholz率いるBOSTONはなかなかアルバムをリリースしない寡作なバンドとして世界的にも有名なビッグネーム・バンドで、そんなスローペースな創作状況に暇を持て余した Tommy DeCarlが自身のリーダー・バンドDECARLOを結成し、満たされぬ創作意欲を吐き出すかのように米国で忙しく活動中なのだと思っていただけに、本作のインフォを見た時は『DECARLOの支持が得られず金銭的に困窮?』とか『意外に息子さんと創作で意見が衝突?』等々のネガティヴな予想が頭をよぎったが、どうやらそう言った諸々の問題の解消の為に Tommy DeCarloが発表したソロ・アルバム、という訳ではなさそうだ。

レーベル・インフォによると本作はFrontiers Musicの社長兼A&R責任者 Serafino Peruginoの『音楽的に70年代から80年代初期にUSメジャー・シーンを席捲し世界中で大衆文化として親しまれた、クラシックAOR&ソフトロック・サウンドなオーガニックでLIVE感のあるアルバムを作るべし』というヴィジョンに完璧に対応するシンガー Tommy DeCarloが選ばれ、Frontiersお抱えイタリア人ミュージシャンでワーカホリックな Alessandro Del Vecchioが例によって例の如く招集され彼の八面六臂の活躍の元(本当にいつ寝てるんだろう…)にFrontiers Music主導で制作されたAORプロジェクト作であり Tommy DeCarloのソロ名義作な模様であります。

アルバム・コンセプトがモロにレトロAOR&クラッシック・ソフトロックだし、70年代後半から米国で活躍するBOSTONの現フロントマンを招集した事もあって、そのサウンドは大まかにBOSTONの『Third Stage』'86 や『Walk On』'94 を思わすUSプログレ・ハードにも通じるキャッチーでソフトなAOR寄りのロックであり、ストレートに伸びやかに駆け上る、力強さと勢いある幅広いヴォーカルレンジが印象的な Tommy DeCarloの爽やかな歌声を主軸に、何重ものギター・レイヤーが形作るメロディアスなハーモニーと分厚く爽快なバッキング・ヴォーカルが奏でる80年代風のメロディアス・サウンドはどこまでも心地よくキャッチーで、まるで Tom Scholzの弾く甲高くハードエッジでエモーショナルな独特のスペイシー感あるギター・サウンドだけが欠落したBOSTONのアルバムのようだ。

制作コンセプト故か楽器の録音やミックスも80年代風のふくよかで温かみのあるクラシック・サウンドを表現しており、非常にスピリチュアルな高揚感を与えるメッセージを持ったソングライティングの方向性やロディアスでクラシックな構成のシンプルな鳴りのギター・ソロや作為的に音数を減らしたバックのサウンド等もあって、BOSTON、REO Speedwagon、STYX、KANSAS、FOREIGNERといったグループが全盛だった1970年代から1980年代前半の米国メジャー・シーンで持て囃されていた当時のサウンドを、アレンジ等も含めて作為的にモダンな感触を薄めてかなり似せているが、音の粒子の荒さやレンジが狭くノイズ混じりでクリアーで無い濁ったアナログ・サウンドまでは完全再現してはいないので、あくまで“ソレっぽいヴィンテージ風サウンド”に留まっていて耳には嬉しい仕上がりとなっている。

まぁ、本格的に Tom Scholzっぽいギター・サウンドの再現や実際にヴィンテージな楽器を鳴らして北欧70年代プログレ・リヴァイヴァル勢のように徹底的にアナログ・レコーディングに拘る事も出来ただろうが敢えてそれを行わなかったのは、露骨なBOSTONパロディ作に陥る危険性が高かったのと、そうなるともう Tommy DeCarloのソロ作という意味合いも薄れてしまうので、その一歩手前で踏みとどまったのは賢明だったと言えましょう。

とは言え、Serafino Peruginoの意思の働いた本作の方向性についてやはり海外では賛否両論となっている模様で、今は亡きBOSTONのオリジナル・シンガー Brad Delpを彷彿とさせる Tommy DeCarloの見事な歌いっぷりとクリアーで艶やかな美声や、かつてのクラシックス・ロックが生み出していた魔法が蘇るようなその魅力的で穏やかなヴォーカルを絶賛する批評は枚挙に遑がないが、やはりBOSTONをBOSTONたらしめている Tom Scholzのギター・サウンドを欠いたヴィンテージBOSTONサウンドの再現は、苺の無いショートケーキ張りに最もBOSTONから遠く離れた所にあるオリジナリティの欠片も無いフェイク・サウンドだ、とかどこかで聴いた事がある特徴的なBOSTONサウンドの焼き直し劣化コピーだ等々、熱烈なBOSTONファンであればある程に本作のモノマネ・サウンドに嫌悪感を抱くようで、まぁその気持ちも分からんではないけど、そこは大人の嗜みと言いましょうか一歩引いて楽しみましょうよ、と(汗

とか言いいつつ、私ももっと若い頃に本作のサウンドを耳にしていたら『売れたバンドのサウンドを安直にコピった商業主義企画作だ!』と怒気も露わに罵っていたかもしれません(笑 愛するバンドの安直なコピー・サウンドをレーベル主導で企画盤としてリリースされたら純粋なロック少年程に我慢ならないでしょうし( ´_ゝ`)

しかも、Tommy DeCarloのソロ作と言いつつ作詞にも作曲にも本人が関わっていない、Frontiers Musicが指示した楽曲に歌入れしただけ状態のソロ作ではねぇ…(´A`)ウーン

ただ、諸々の事前情報無しとして本作に耳を傾けてみると、ブライトで爽快な美しい数々のメロディ、深みと質感のあるキャッチーで伸びやかなコーラス、古き良き時代の豊かな歌唱力を思い起こさせる力強く艶やかなロック・ヴォイス、勢いとキレのある80年代米国メジャー・ロックサウンドを奏でるエネルギッシュでクリアーなギター、幅広い層に受け入れられる洒落て気の利いたアレンジやピアノの間奏も質感が高い80年代風のシンセサイザーとキーボード、そしてロック・エネルギーとポップミュージックとのバランスが取れ80年代プログレ・ハードとAORが完璧に共存する洗練され力強い魅力的な楽曲をほぼ一手に引き受け、オーナーの意向を十分に反映した作曲と音作りをし、殆どの楽器も演奏して、ミックス、マスタリング、プロデュースまでこなしている Alessandro Del Vecchioの破格な能力の高さ(本職は鍵盤奏者って、もう皆忘れてそうw)とバイタリティには舌を巻かざるを得ません。

そんな本作を一層に素晴らしいサウンドにしているゲスト奏者ですが、ギタリストの一人David Julianは米国ナッシュビルのセッション・ミュージシャンで、これまでにGOO GOO DOLLSやBETTER THAN EZRA等との仕事をした事がある幅広いジャンルで活動中の若手ギタリストでありソングライターだ。

もう一人のギタリスト、Martin Jepsen Andersonはデンマーク人ギタリストでブルーズHMバンドBLINDSTONEやCREAMY BEAVER、FUNK ROYAL等で活動している、多彩で幅広い音楽性の人気ギタリストで、恐らくFrontiers Music絡みでの起用だろう。

一曲のみギター・ソロで客演している August Zadraは、以前ここでも紹介したメロハー・バンド WATING FOR MONDAYでの活動や元STYXリーダーで先頃惜しくも現役引退を表明した Dennis De Youngのバンドメンバーとして活躍し、他にもメロディアス系アーティスト作に多数関わって来た米国ロサンジェルスを拠点に活動するギタリスト兼シンガーで、去年2月にFrontiersレーベルからソロ作をリリースしている。

またボトム・パートを務めるイタリア人ドラマー Nicholas Papapiccoは、MSGでの活躍で知られる Robin McAuleyのソロ作やフィメール・シンガーInes Vera-Ortiz嬢を擁するアルゼンチンノメロディアスHMバンドINNER STREAM、ブラジル人シンガー Gui Oliverとスウェーデンのメロハー・バンドPERFECT PLANのギタリスト Rolf Nordstormによるメロハー新バンドMAYANK、米国産業ロックの王者 SURVIVORの活動で知られる Jim PeterikとPRIDE OF LIONSを結成したシンガー Toby Hitchcockのソロ作等々、何れもFrontiers Music所属のバンドやアーティストのアルバムでプレイしている、ある意味で Alessandro Del Vecchioの同僚と言える実力派ミュージシャンだ。

個人的には本作に全く嫌悪感も怒りも湧かない、ノスタルジックな当時のサウドをエミュレートしつつより洗練さを加えた良く出来たプロフェッショナルなアルバムだと思いますよ、ええ。

どこかに仕舞って所在を忘れていた古い色褪せた写真が不意に見つかったような、なんとも言えぬ懐かしく淡い想いで胸が満たされるそんなノスタルジックな香りと洗練された気品あるメロディがたくさん詰まったアルバム、と言うのが個人的な感想でしょうか?

とまれBOSTONやDECARLOのファンの方には当然お薦めだし、70年代から80年代初期にUSメジャー・シーンを席捲したJOURNEY、REO Speedwagon、STYX、KANSAS、FOREIGNER、SURVIVOR、STARSHIP等のクラシックAOR&ソフトロック・サウンドがお好きな方にもお薦めしたい、音楽の黄金時代に純粋に愛情を込めオマージュを捧げた大人も楽しめる80年代リスペクトなポピュラリティの高いロック作であります。

今の所、国内盤リリースの情報は無い模様なのでお求めの方は輸入盤をどうぞ。

Tracklisting:
01. Dancing In The Moonlight
02. Change Our Fate
03. Beyond Forever
04. Life Is Just A Game
05. No Surrender
06. The Game Is On
07. This Road Will Lead To You
08. In The Hands Of Fate
09. Find The Love
10. Home To You
11. Spread Your Wings And Fly
12. You And Me

Musicians:
Tommy DeCarlo      (Lead & Backing Vocals)
Allessandro Del Vecchio  (Bass、Keyboards、Backing Vocals)
Nicholas Papapicco    (Drums)
August Zadra        (Guitar Solo On Track 01)
David Julian        (Guitars On Tracks 01、02、04、05、06、09、11、12)
Martin Jepsen Anderson  (Guitars On Tracks 03、07、08、10)

Produced by: Alessandro Del Vecchio
Mixed & Mastered by: Alessandro Del Vecchio
Executive Producer/A&R: Serafino Perugino


by malilion | 2023-03-25 18:24 | Trackback
<< 蘇るか!? 北欧フィンランド... 随所でJOURNEYを思わす8... >>