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KANSASの弟分バンド 米国メロディアスHRバンドSHOOTING STARの8thアルバムがボーナストラック追加でリイシューされていたのを今頃ご紹介。

KANSASの弟分バンド 米国メロディアスHRバンドSHOOTING STARの8thアルバムがボーナストラック追加でリイシューされていたのを今頃ご紹介。_c0072376_22452447.jpg

SHOOTING STAR 「Circles + 6」'21

米国カンザス州カンザス・シティを拠点に70年代中期から活動しているギタリスト Van McLainが率いていたヴァイオリン入り6人組USメロディアスHRバンドSHOOTING STARが再々結成し、イタリアのメロハー・レーベル Frontiers Recordsと契約して06年にリリースした8thスタジオ・アルバムが各種ジャンルのクラッシック名作リイシューで有名なRenaissance Recordsからボーナストラックを6曲追加されて21年度リマスターを施されオフィシャル・リイシューされていたのを今頃ご紹介。

残念な事に長年バンドを引っ張ってきたリーダーの Van McLainが2018年に病死するアクシデントに見舞われ、存続が危ぶまれたが残されたメンバーでバンド活動を続行させる意向を示し、現在は新たなギタリスト Chet Gallowayを迎え地道にカンザスを中心に活動を展開中との事だ。

今まで二度の解散と再結成、そして幾度となくメンバー・チェンジを繰り返し(目出度くKANSASの三代目フロントマンに抜擢された Ronnie Plattも元はSHOOTING STARの四代目シンガーであった)てきた、長い長い活動歴を誇るバンドの歴史をまずは最初に。

1960年、Ron Verlin(Bass)と Van McLain(Guitar)はカンザスシティで隣同士に住んでおり、兄弟もバンドメンバーに加えて最初のローカル・カヴァー・バンドSTARSが結成される。

1974年、Van McLainは自作曲を創作し始め、それ以降カヴァーを演奏しなくなり、バンド名も改めTHE SHOOTING STARSとなった。

1978年、ドラマーの Steve Thomasがバンドに加わり、最後にヴァイオリン、キーボード、バッキング・ヴォーカルを担当する Charles Waltzをバンドに迎え、キーボード入り6人組のバンド編成が固まりバンド名をSHOOTING STARへと改め、英国のレコード会社 Virgin Recordsと契約を果たし2年後の80年1月にヴァイオリンをフィーチャーしたKANSAS風なメロディアスでドラマチックなサウンドをよりキャッチーでポップなアプローチで構成したセルフタイトルのデヴュー・アルバムをリリースする。

ラジオフレンドリーでキャッチーなサウンドを展開するバンドは、目論み通りに小規模なシングル・ヒットを繰り返し、『Hang On For Your Life』'81、『III Wishes』'82、『Burning』'83、『Silent Stream』'85 と途中何度かメンバー・チェンジを挟みながら徐々に洗練度とキャッチーさを増したアルバムをリリースし続け、シングルのチャートアクションは絶好調とは言い難かったが、REO Speedwagon、John Mellencamp、JEFFERSON STARSHIP、ZZ TOP、HEART、Bryan Adams、JOURNEY、CHEAP TRICK、KANSAS等のメジャー・アークト達のツアーに参加し徐々に知名度を上げていく。

SHOOTING STAR Line Up:
Van McLain   (Lead Vocals、Lead Guitars)
Ron Verlin    (Bass)
Steve Thomas  (Drums)
Charles Waltz  (Violin、Keyboards、Backing Vocals)
Gary West   (Lead Vocals、Guitars、Keyboards)

カンサス州のヴァイオリン入りバンド、という事でアメリカン・プログレ・ハードの雄 KANSASの弟分的な紹介をされデヴューした彼等ですが実際の所は音楽的な影響は殆ど感じられず、ベーシックな米国メロディアスHRバンドに鍵盤奏者がヴァイオリン奏者を兼任する形で在籍した為にKANSAS関連で語られていただけで、当初はサウンド・アクセント程度な扱いだったように思えるのですが、活動歴を重ねる毎にバンドサウンドの重要な要素としてヴァイオリン・サウンドが扱われていったのが面白く、けれど洗練さとキャッチーさを増していくにつれヴァイオリンの活躍する場が失われていったのは本家KANSASも同様なので、ナチュラルなサウンドよりもデジタリーなシンセ・サウンドの方が持て囃された80年代USメジャー・シーン故の悲劇ですね…

しかし、USバンドにお決まりなアクシデントが彼等を襲い、86年レコード会社内でのゴタゴタに巻き込まれラジオでも頻繁にオンエアされ好評を博した『Silent Stream』はプロモーションに失敗し、一連の出来事に失望したフロントマンの Gary Westはバンド活動の熱意を失いソロ活動を決意し、それが引き金になってバンドは86年12月27日にお別れLIVEを行った後、解散する事に。

CBSレコードが Gary Westのソロ活動に興味を持ちアプローチしてきたが、結局 Van McLainが協力したソロ作は放置されてしまい、失意の内に Gary Westは音楽業界から足を洗ってしまう…

89年、BEST盤をリリースする話が持ち上がりバンドは再結成を果たし、Enigma Recordsと契約して新曲を含むBEST盤の制作が行われる。

如何にもアメリカンHRシンガーという少し苦みのあるミドルレンジ主体な伸びやかでドライな声質でワイルドな歌唱を聴かせる Keith Mitchellを二代目フロントマンに迎え、当初は Charles Waltzも参加する予定だったが既に他のバンドで活動中であった為に合流出来ず、バンドの代名詞であったヴァイオリン奏者を含まず、新たな鍵盤奏者に Dennis Laffoonを迎えた5人組バンドとして活動を開始する。

が、直ぐにドラマーの Steve Thomasが脱退し、Rod Lincolnへチェンジと、解散前と同じオリジナル・メンバーはリーダーの Van McLainのみという、殆どメンツ総入れ替えな再結成(オリジナル・ベーシストの Ron Verlinは84年に一度脱退し、再結成で再合流)になってしまう。

SHOOTING STAR Line Up:
Van McLain    (Lead Vocals、Lead Guitars)
Ron Verlin    (Bass)
Rod Lincoln    (Drums)
Dennis Laffoon  (Keyboards、Backing Vocals)
Keith Mitchell   (Lead Vocals)

ただ、この再結成は上手く運び、89年リリースのBEST盤収録の新曲『Touch Me Tonight』がシングル・ヒットし、ビルボードホット100で67位まで上昇した。

メンツ総入れ替えな再結成であったが、皮肉な事にバンド・キャリアの中で最も高いチャートを記録したシングルとなる。

その勢いのまま、1991年2月にバンドは6枚目のアルバム『It's Not Over』をリリース。

だが『It's Not Over』は難産なアルバムで、制作中にEnigma Recordsが倒産し、自主制作盤として自身のレーベル V & Rからリリースする事態に。

再びベーシストを Ron Verlinから Eric Johnsonへチェンジし、BAD ENGLISH、Bryan Adams、38 SPECIALとツアーを行う。

個人的にはヴァイオリンを欠いていた時期のシンセを大々的にフィーチャーしたハードポップ・バンド的サウンドを鳴らしていた当時のコンパクトでキャッチーなサウンドも嫌いじゃありません、只それがSHOOTING STARに相応しいサウンドなのかと問われれば否、としか言えませんけどね…(汗

『It's Not Over』は自主盤ながら好評で、約1万枚売った後に米国のマイナー・レーベル JRS Records(親会社はSCS Music)から連絡を受け、『It's Not Over』のディストリビューションを任せる事に。

しかし、JRS Recordsはまともなプロモーション活動を殆ど行わず、怒ったバンドが訴えて裁判沙汰(実際、大量の『It's Not Over』の廃盤が生み出された…)へ発展する。

1993年、Enigma Recordsの倒産、JRSの背信行為、グランジー旋風でクラシック・ロックの人気が壊滅的に低下した事等々が重なり、失望したバンドは活動を停滞させ半ば解散状態に。

この間にベースが再び Ron Verlinへチェンジ、断続的にLIVE活動を行う。

1997年、ヴァイオリニストの Terry Brockが加入し、再びヴァイオリンをフィーチャーした6人編成バンドとなり初期のドラマチックなサウンドが戻ってくる。

7枚目のスタジオ・アルバム『Leap of Faith』のレコーディングが1999年12月から2000年2月までテネシー州ナッシュビルのサウンドステージスタジオで行われる。

レコーディング前にヴァイオリニストを Terry Brockから Christian Howesへチェンジ。

00年リリースの『Leap of Faith』フォローアップ・ツアーの後の00年5月、Christian Howesから Shane Michaelsへチェンジ。

2003年末、オリジナル・ドラマーの Steve Thomasが復帰し、シンガーの Keith Mitchellが喉の問題を抱え2005年夏に脱退。

三代目フロントマンに、80年代初期から活動するベテラン実力派米国人シンガー Kevin Chalfant (ex:707、ex:THE STORM、ex:STEEL BREEZE、ex:JOURNEY、etc...)を迎え入れる事に。

SHOOTING STAR Line Up:
Van McLain    (Lead Vocals、Lead Guitars)
Ron Verlin     (Bass)
Steve Thomas   (Drums)
Dennis Laffoon  (Keyboards、Backing Vocals)
Shane Michaels  (Violin)
Kevin Chalfant   (Lead Vocals)

前作『Leap Of Faith』'00 から6年振りにリリースされた本作『Circles』'06 は、Keith Mitchellと似た声質ながらよりクリアーで伸びやかなハイトーン・ヴォイスとエモーショナルな情感表現に優れた Kevin ChalfantのJOURNEYの Steve Perryの代役を依頼される程の抜群の歌唱力が活かされた、これまで培ってきたSHOOTING STARの音楽性の集大成的アルバムとなっており、初期からの持ち味であるヴァイオリンをフィーチャーしたメロディアスでドラマチックな楽曲展開、アメリカンHRバンドらしい爽快感とスピード感あるストレートなサウンド、コンパクトでキャッチーな楽曲と耳を惹く素晴らしい歌メロ、そしてメロディアス・ロック・ファンのツボを知り尽くしたフックある美旋律と程良くポップなコーラス、ベテランらしく楽曲はバラエティに富みながらもアルバムとしての統一感もあり、だからといってセルフ・リメイクに陥る事なく新要素であるLED ZEPPELINっぽいタッチやブギー風味なども貪欲に取り入れる挑戦心も忘れない、正に彼等の最高傑作と言っても過言ではない素晴らしい出来栄えの一枚と言えましょう。

出しゃばり過ぎないヴァイオリンの艶やかな音色や軽すぎないシンセの気の利いたアレンジやジャージィでグルーヴィなオルガン、そしてピリリと全体のサウンドを引き締めるハードエッジでスリリングなギター・プレイと、抜群なヴォーカリストの歌声に負けじとバックのサウンドも今までで一番頑張っている感が強く、本作制作時かなりバンドメンツの創作意欲が高かった事が伺えます。

当時、日本盤も久しぶりにリリースされた事もあり本作を手元にお持ちに方も多いでしょうが、今回のリイシュー盤は日本盤ボーナストラックであった『George`s Song (Remix)』は残念ながら収録されておりませんが、代わって6曲のボーナストラックが収録されており内5曲は『It's Not Over』の収録曲で、バンドの唯一のオリジナル・メンバーでボスのギタリスト Van McLain主導であるV & Rレーベルからのオシシャル・リイシュー盤はマスター・テープを紛失した為か板起こしの酷い状態なリマスター盤であったが、本作はリイシューで有名なRenaissance Recordsリリースな事もあり実にクリアーで今の耳で聴いても十分に耐えるサウンドへブラッシュアップされておりますし、何より91年リリースの『It's Not Over』オリジナル盤をお持ちの方にとっては古い音源がリマスターされクリアなサウンドで楽しめ、お持ちでない方には嬉しいボーナス曲なのは間違いありません(*´∀`*)

残り一曲は Van McLainのリードヴォーカルがフィーチャーされた未発曲で、恐らく『Circles』制作時のアウトトラックではないかと思われます。

又、今回のリイシュー盤は曲順が入れ替えられており、06年リリース時と構成を変えるとこうも違って聴こえるのかと新鮮な驚きでありました。

素晴らしいアルバムをリリースしたにも関わらず、どこまでも運に恵まれないバンドは Kevin Chalfantがツアーへ参加出来なくなり、2007年に四代目フロントマンに Ronnie Plattを迎え入れる事に…orz

ヴァイオリニストの Shane Michaelsは別プロジェクトに専念する為2008年6月にバンドを脱退し、後任ヴァイオリニストに Janet Jameson嬢を迎える。

ベーシストの Ron Verlinは、1984年と1991年に2度脱退し、1994年に復帰して以来一時的に休養していたが2009年に永久に脱退。

以来、現在に至るまでベーシストは不在で、キーボーディストの Dennis Laffoonがベースパートをカバーし続けている・・・(汗

2011年、に Ronnie PlattがシカゴのバンドARRAで活動するためバンドを脱退し、2011年から2012年にかけてバンド史上初めて Van McLainのみがリード・ヴォーカリストとなって(ヴァイオリニスト Janet Jameson嬢がバッキング・ハーモニー・ヴォーカルでかなりヘルプをした)LIVE活動を行う。

SHOOTING STAR Line Up:
Van McLain     (Lead Vocals、Lead Guitars)
Steve Thomas   (Drums)
Dennis Laffoon   (Keyboards、Bass、Backing Vocals)
Janet Jameson   (Violin、Backing Vocals)

Keith Mitchellは喉の問題が癒え、2012年に2005年以来バンドへリード・ヴォーカリストとして復帰したが、2013年に健康上の問題から再び脱退、Janet Jameson嬢も同時期にバンドを脱退。

カンサス州トピカ出身でバンドVANDELYN KROSSの Todd Pettygroveが新リードシンガーとして2013年6月にバンドへ加入。

SHOOTING STAR Line Up:
Van McLain     (Lead Vocals、Lead Guitars)
Steve Thomas   (Drums)
Dennis Laffoon    (Keyboards、Bass、Backing Vocals)
Todd Pettygrove  (Lead Vocals)

2014年7月、KANSASを脱退し音楽活動から引退したヴォーカリストのSteve Walshの後任として、元SHOOTING STARのシンガー Ronnie PlattがKANSASに加入。

デヴュー・アルバムから35年を迎えるSHOOTING STARは、2015年7月に9thアルバム『Into The Night』をリリースし、LIVE会場限定発売の他、当初はバンドのウェブサイトにて無料ダウンロードが可能だった。

折角無料でDLさせてくれたのに何でずが、前作が出色の出来栄えだったのと、ヴォーカリストの歌唱力の低下は如何ともし難く、悪くはないものの結果的に凡庸なアメリカンHR作に聴こえてしまう出来だったのが残念ではあります…

Todd Pettygroveの歌声は Keith Mitchellと同系統な声質ながらよりクリアーな印象で、意図的にか少し Keith Mitchellっぽい歌い方をしているので Kevin Chalfantの加入と脱退を知らずに本作を耳にしたならば、Keith Mitchellの脱退に気が付かない方がいるかもしれない。

ワイルド一辺倒でなくブルージーで感傷的な歌唱もこなすなかなか器用なシンガーだが、比較対象が抜群の歌唱力を誇る Kevin Chalfantだったのが不運でした…

2015年9月、Van McLainは西ナイル熱にかかり入院、2017年9月24日に入院が長引く Van McLainを支援する為、カンザスシティで数多くのミュージシャンやバンドが参加したSHOOTING STAR救済基金特別コンサートが開催されたものの、2018年3月2日、西ナイルウイルス感染症の合併症により Van McLainは62歳で死去してしまう…

SHOOTING STARは2015年に Van McLainが入院して以来活動を停止したままだったが、2018年末に元ヴァイオリニスト Janet Jameson嬢と新ギタリスト&ヴォーカリストの Chet Gallowayを含む新編成でバンドは再始動し、2019年1月19日にカンザスシティで復活コンサートを行う。

SHOOTING STAR Line Up:
Chet Galloway   (Lead Guitars、Lead Vocals)
Steve Thomas   (Drums)
Dennis Laffoon   (Keyboards、Bass、Backing Vocals)
Todd Pettygrove  (Lead Vocals)
Janet Jameson   (Violin、Backing Vocals)

出入りが激し過ぎるバンド体勢には些か不安がありますが、なんだかんだあったけれどバンドの売りであるヴァイオリン・サウンドも戻って来た事だし、SHOOTING STARは今後も活動を継続していく予定だと公式サイトで発表しているので、近い将来リリースされるであろう新作を期待して待ちましょう。

しかし、出来る事ならオリジナル・マスター・テープを発掘して、どうにかV & Rレーベルからの劣悪なリイシュー盤でない綺麗にリマスターされたサウンドのリイシュー盤をRenaissance Recordsがリリースしてくれないものでしょうかねぇ・・・どこかにマスターのバックアップは無いものか・・・orz

Track List:
01.Everybody's Crazy
02.Temptation
03.I'm A Survivor
04.George`s Song
05.Borrowed Time
06.Runaway
07.Without Love
08.What Love Is
09.Trouble In Paradise
10.We're Not Alone
11.Don't Waste My Time
12. It's Not Over
13. If You've Got Love
14. Believe In Me
15. We Can't Wait Forever
16. Blame It On The Night

SHOOTING STAR Line Up:
Kevin Chalfant     (Lead Vocals)
Van McLain      (Lead Vocals、Lead Guitars)
Ron Verlin       (Bass)
Dennis Laffoon    (Keyboards、Backing Vocals)
Shane Michaels    (Violin)
Steve Thomas     (Drums)


by malilion | 2023-03-16 22:53 | 音楽 | Trackback
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