CREYE 「III Weightless」'23 北欧スウェーデンのメロハー・バンドGRAND SLAMの元ギタリスト Andreas Gullstrand率いるキーボード入りツインギター6人組北欧モダン・メロハー・バンドCREYEが前作『II』'20 から3年ぶりとなる3rdアルバムをリリースしたのでご紹介。 GRAND SLAMはデヴュー作『A New Dawn』を16年にリリースするが、自身で自由に音楽性やコンセプトをコントロールできる活動がしたいと早々にバンドを脱退したギタリスト Andreas Gullstrandが新たに立ち上げたCREYEはGRAND SLAM在籍時の15年から画策していたプロジェクトで、まずフロントマンに同郷欧スウェーデンのメロハー・バンドART NATIONのシンガー Alexander Strandellを迎え、メンツも補充しつつ北欧メロハー・プロジェクト作として見事な出来栄えのデヴューEP『Straight To The Top』を17年にデジタル先行でリリース(国内盤未発売)する。 Alexander Strandellのブライトな声質や伸びやかなハイトーンもあって若干ART NATION風であったデヴューEPのキャッチーな北欧メロハー・サウンドだが、続くフル・デヴュー・アルバム制作前にイタリアのメロハー・レーベル Frontiers Recordsと契約を結び、メンツも盤石な6人体勢に整え、さらにフロントマンに80年代北欧スウェーデンの代表的なメロディアスHMバンドALIENの初代シンガー Jim Jidhedの実子(!!) Robin Jidhedをヴォーカリストとして迎え一躍話題となった17年リリースのセンセーショナルなセルフ・タイトルのデヴュ-作『Creye』は、Robin Jidhedの父親譲りの甘い声質と伸びやかな美声をフィーチャーしたフックあるキャッチーな歌メロと甘く美しいコーラス・ハーモニーを随所に散りばめ、煌びやかなキーボードを多用したメロディアスな楽曲には80年代から脈々と受け継がれる北欧バンド特有のクリアーな爽快感と仄かな哀愁に満ちた美旋律に古き良きスウェディッシュHRテイストが色濃く、特に奇異なアプローチや新基軸は見当たらぬベーシックで正攻法な造りなれど、リスナーの期待を裏切らぬメリハリの効いた曲展開と上品でハイ・センスな洗練された都会的エッセンスを加えた叙情的メロディ、そして新鮮な感触と高品質でキャッチーなAORテイストが満載な、新人バンドの放つ第一弾フル・アルバムとしては完成度の高すぎる一作であった。 ただ、どちらかと言えばAOR寄りなそのサウンドは完成度優先で、キャッチーで造り込まれたギンギンにブライトなメロハー作と言う訳でなかった為か、同時期にデヴューした新人メロハー・バンド達が放つ華やかな処女作と比べて派手さは少々劣る地味めな作風であったのも事実で、ここ国内では大ウケとはならなかったもののAOR系の完成度の高い作品を好むリスナーには絶大な支持を受けたのも本当であります。 そんないきなり破格の出来栄えのデヴュー作に続く2ndにも俄然注目が集まったCREYEですが、1stをリリースして直ぐに Robin Jidhedが脱退(こんなトコまで父親を真似せんでもイイのに…)してしまい、急遽 Andreas Gullstrandの友人であったシンガー August Rauerを迎え、事なきを得て活動を続行し、19年にはMelodicrock Fest、Frontiers Rock Sweden、Rockingham Festivalへの出演を含むスウェーデン国内及びドイツ、ベルギー、スイス等の国外のフェスティバルにも参加するヨーロッパ・ツアーを敢行してバンド練度と腕前の更なる向上を果たすと、August Rauerの如何にも北欧シンガーという滑らかで伸びやかなハイトーン・ヴォーカルをフィーチャーした、1st路線を継承した楽曲とアプローチに更なる磨きをかけたAOR寄りのバランスを重視した2ndアルバム『II』を20年にリリースし、1stを歓迎したAOR系リスナーの望む通りに前作を凌ぐ完成度と美旋律の品質向上を示して、AOR系リスナーだけでなく北欧メロハー・ファンにもやっと認知されたのでありました。 その勢いに乗ってさらなる活動の範囲を広げようとした矢先に全世界がパンデミックに襲われ、世界中のエンターティナメント関連者達と同じように彼等も思うように活動が出来ぬ状況に陥るものの、デジタルのみのリリースではありますが初公式LIVE作品『Alive And Well』を21年にリリースしてバンドの健在ぶりをアピールすると、ロックダウン状態の渦中にも着実に次作への準備を進めていたバンドは23年初頭に満を持して3rdアルバム『III Weightless』を完成させる。 さて、待望の新作の内容ですが、前作と同じく別段特筆するような目新しさはないが、気品あるモダン・ロックが失われつつある今、そのサウンドには数々の素晴らしいエッセンスとエレガンスさが満ちており、モダンなメロディアス・ロック&AORに強烈なポップ・フレーバーをまぶしたより成熟したコンパクト・サウンドからはCREYEの進化は加速しているのが確かに実感出来き、メロハー・ファンが待ち望んでいる新鮮な喜びと満たされる安心感を正に提供していると言えよう。 北欧バンド作らしいキャッチーでクリアーなメロディーが紡がれ、2nd時よりハイトーンは抑えめながら滑らかでエモーショナルなミドルレンジ主体のヴォーカルや、細部までアレンジの練られた楽曲があり、全てが煌びやかキーボードとパワフルなギターの演奏に包まれ、何一つ欠ける事無い洗練された楽曲はダイヤモンドのように爽快な輝きを放っており、奏でられる透明感と哀愁に満ちた美旋律の数々には耳を惹くメロディやフックがきめ細かく配置された、メロハー・ファンならば笑顔が絶える心配は無用の、全てが完璧に近い形で構成され、モダンなサウンドの演奏で、細部まで注意深くプロデュースされた、北欧メロディアス・ロック・ファンの新たなるお気に入りの一枚となる事間違い無しな一枚だ。 無論、一切の不満点や問題が無い訳ではなく、殆どの楽曲のテンポや構成が似たり寄ったりな事や、全編に渡ってシンセサイザーとプログラムされたフリックやトリックで埋め尽くしたかのような無機質さも感じられ、ロック作らしい生っぽいフィーリングや揺らぎといったものが殆ど感じられず、その為かバンドメンバーのプレイの機微やニュアンスも欠けて聴こえ、完成度優先の弊害か些か“造られた感”が鼻につく瞬間が多く感じられてしまう事だろう。 その点で言えば前作『II』の方が全体の完成度は劣るかもしれないが、自然でキャッチーなフィールに満ちたブライトな美旋律には突き上げるような喜びが満ち満ちていて実に心地よかったように思える。 やっぱりギタリストがボスのバンドなのに少々キーボードがフィーチャーされ過ぎですかねぇ? でも絶妙なキーボードアレンジがまた実に楽曲の質を向上させていて堪らないんですよねぇ♪ 楽曲のエッジとギター・プレイのハードさは前作より増しているイメージなんですけど…ウーン(汗 後は少々、歌詞がパターン化してる気が…北欧バンドお約束と言えばお約束かもしれないけど… そうそう、完成度的には当然最新作に及ばないにしても個人的には Alexander Strandellの声質や歌いっぷり的にクリアーな北欧メロハーっぽさが一番ストレートに感じられるデヴューEPはかなり気に入ってるので、いつの日にか是非とも国内盤リリースして欲しいものであります。 とまれ三作目でこれだけ完成度の高い素晴らしい北欧モダン・メロハー作を提示出来た事は素直に賞賛すべきで、LIVEで実戦経験をもっと積み、より自然なフィーリングを楽曲で再現できるようになればCREYEは正に鬼に金棒状態になれる訳だから、まだまだ若いバンドの彼等の今後の成長を楽しみに待つとしましょう(*´ω`*) Track List: 01.Glorious 02.Air 03.One Step Away 04.The Game 05.Spreading Fire 06.Weightless 07.How Far 08.In The Shadows 09.Stay 10.Dangerous 11.Pieces 12.Air (Acoustic Verasion) CREYE Line-up: August Rauer (Lead Vocals) Andreas Gullstrand (Lead Guitars) Fredrik Joakimsson (Rhythm Guitar) Joel Selsfors (Keyboards) Gustaf Orsta (Bass) Arvid Filipsson (Drums)
by malilion
| 2023-03-13 14:52
| 音楽
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