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“北欧のDEF LEPPARD”みたいなエストニアのAORバンドFIRST NIGHTが2ndをリリース!!

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FIRST NIGHT 「Deep Connection」'23

北欧スウェーデンの右下、フィンランドの真下に位置するバルト三国の中で一番北に位置する小国エストニアの、フィンランド海を挟む北欧に程近い北部都市タリンを拠点に活動するAORバンドが前作『First Night』'19 以来4年振りとなる2ndを今年初めにデジタル先行でリリースされていたのですが現物が2月に自主盤でリリースされたのでご紹介。

本バンドを率いるフロントマン Reneck Sweetは元々07年結成のRISING SUNなるローカル・エストニアバンドで活動しており、本バンドでもギターを弾いている Mikk Tivasやドラマーの Kristjan Aasamaeも在籍していたが、Reneck Sweetが英国移住に伴いバンドを脱退し、RISING SUNのシンガーは Mikk Tivasが引き継ぐ事になったらしい。

10年程英国で生活をしていた Reneck Sweetはショービジネスの盛んな英国で世界中の様々な音楽に触れ、数多くのAOR&HRバンド達を目にし、自分も正にそれをやりたいと思い立つと、7年に及ぶ英国人女性との結婚生活が破綻したのを契機に16年には故国エストニアへ戻り、英国在住中に温めていたAORバンド構想を実現するべく行動を起す。

元バンドメイトの Mikk Tivasと Kristjan Aasamaeにアコースティック・ギターで創作した自作曲を聴かせ、2人が乗り気になった事で3ピースのAORバンドFIRST NIGHTが16年に結成され、Mikk TivasがRISING SUNの時のようにアレンジや様々なアイディアを加え、Mikk Tivas自身の手でミックスとプロデュースを施され、記念すべきデヴュー・アルバムが19年にデジタル先行でDLリリースされた後、自主制作盤でCDもリリースされる。

Skypeを産んだ事でも良く知られ、IT分野においてエストニアは今や世界の最先端を走るデジタル大国なのですが、反面メロディアスな北欧HMやハードポップが盛んな北欧三国に近しくミュージック・シーンのレベルの差が大きく開けられている事や、ソヴィエト連邦に支配された過去がある為かエストニア国内の音楽市場の発展が遅れ規模も小さい事、そして欧米のポピュラー・ミュージックのシェアの方が大きい事などからエストニア国内のバンドでメロディアス・ロックをプレイするAORやメロハー系バンドは殆ど存在していないらしく、けれど Reneck Sweetとしては自身の大好きなAORバンドで活動して是非故郷のシーンを盛り上げたい、と一念発起してバンド活動を続行中なのだそうだ。

さて、そんな彼等のサウンドですが、Reneck Sweetの声質や歌い方がモロにDEF LEPPARDのシンガー Joe Elliottを彷彿とさせ、ちょっと Joe Elliottより音程が低くく Joe Elliottの様なシャウトや喉を搾った甲高いハイトーンでなどは聴かせず、穏やかにミドルレンジ主体で歌い上げる歌唱スタイルなのと、バンドのミキサー、プロデューサーも兼ねるギタリストの Mikk Tivasのお気に入りのプロデューサーがDEF LEPPARDでお馴染みな John“Mutt" Lungeで、バッキングトラックのアイデアやミキシングのアイデアは全て彼から影響を受けているらしく、その為かアルバム全編から隠しようもなく80年代DEF LEPPARDの影響やサウンドが感じられるが、Reneck Sweetはフェバリットバンドにオランダの貴公子こと Robby Valentineも初期に在籍していた事で知られるオランダのメロハー・バンド 1st AVENUEを上げていたり、AEROSMITH、BON JOVI、DEF LEPPARD、Bryan Adams等々の80年代を賑わした“良いメロディを奏でる”メジャー・アーティスト全般から影響を受けていると公言しており、FIRST NIGHTが世界中にゴマンと居るDEF LEPPARDのフォロワー・バンドではない事はそのサウンドの端々に独特な哀愁のメロディが漂っている事からも良く分かる。

彼等のサウンドにお手本バンドに無い独特な哀愁のメロディが漂っている理由を Reneck Sweetが語る所によると、

『“Deep Connection” は、ファースト・アルバムと同じく人間関係がテーマで、ファンタジー・アルバムではなく、僕の以前の恋愛についての実話が中心となっている』

『僕は7年間結婚していたんだけど、あの結婚が上手く行かなくなってから、1stとこのアルバムの為に多くの曲を書き始めたんだ』

『最初の曲が出来た時、それをアルバムにしようとは思っていなかった。そう思えたのはもう少し後の事だ。だから、今回のアルバムも前作も、曲も歌詞も全て、とてもパーソナルなアルバムになっているんだ』

『20歳くらいの頃は、大抵は他人の影響を受けて、他人のやっている事をそのままやってしまう。人生について多を知らないからね…』

『だからとにかくその関係は長続きしなかった。当時、妻は“もっと深いつながりが欲しい”と言っていたから、このアルバムタイトルになったんだ』

と言う事らしく、2ndアルバムのジャケにはその別れた奥さんの顔写真(!)もあしらわれていて、良く言えば非常にナイーヴなセンス、悪いく言えば女々しい感傷的な想いがアルバム全般に強く渦巻いている事で、お手本バンド達のメロディアスなサウンドとの差別化が図れていると言うのが実にユニークと言えましょう。

ただ、別れた奥さんへの想いがサウンドのベースにはなっていても本作は Reneck Sweetのソロ作ではなく、ちゃんとバンドメンバーからのインプットもあるバンド作で、北欧的なキラキラしたキーボードやモダンなタッチのシンセが奏でる透明感や、80年代ドイツ風な分厚く勢いあるシンガロング・パートの影響、カナダ風なタッチのリリカルで透明感ある流麗なギター・サウンドに、80年代から90年代にかけての英国ポップスや英国AORサウンドからのエッセンス、そしてバンドサウンドの7、8割りを占める80年代を賑わしたバブリーでゴージャスな米国メジャー・アーティスト達が奏でた華やかなアリーナ・ロック風のビッグ・サウンド等を巧みに取り入れ消化して自らの血肉にした、単なるDEF LEPPARDフォロワー・バンドではない一捻り効いたキャッチーでメロディアスな独特のテイストを持ったオリジナリティある80年代風AORサウンドへ昇華されているので、ウジウジと未練タラタラな男の劣情が告白された暗く後ろ向きな楽曲なのかと危惧された方は、ちゃんとコンパクトにまとめれたフックあるポップでブライトなメロディ満載なサウンドなので安心して欲しい(汗

デヴュー作の方が幾分メロハーっぽい感触が強く感じられ、本作の方がよりメロディの質や楽曲の完成度が上がってAOR度が増したイメージながら、好意的に捉えればUSアリーナ・ロックバンドや米国産業ロック・バンドのサウンドを叙情的な北欧風に仕上げ、ハイ・センスな都会的エッセンスを加えたような高品質でキャッチーな独特なタッチのあるユーロ・メロディアス・サウンドと言え、悪く言えば未だにSTAGE DOLLSのフロントマンに Joe Elliottが加入して、BON JOVIとDEF LEPPARD風なタッチの残るAOR曲を穏やかに演奏しているみたいなメロディアスなサウンド、という大雑把なイメージから大きくは外れておらず、その辺りのネガティヴなイメージを覆す新基軸サウンドなり方向性の変化なりがあればFIRST NIGHTがフォロワー的な捉え方をされる事から解放されるように思え、次なる3rdアルバムの仕上がり具合に注目したい所であります。

ウーン、DEF LEPPARDっポイけれど仄かな哀愁の漂うアンニュイな雰囲気を想わすギター・フレーズが、実は本バンドとお手本バンドとの差を大きく感じさせる要因に思え、そのユーロ圏アーティスト特有なマイナー調の美旋律が実に独特でセンチメンタルなイメージを強めていて個人的に大好物です♪(*´∀`*)

DEF LEPPARDでは余りフィーチャーされる事のない柔和なキーボードの音色や透明感ある爽快なシンセサンドも、彼等のサウンドの独自色とオサレ感を強めているのは間違いない。

残念な事に前作では一応3ピースバンドのはずだったが、デヴュー作に続き本作でも裏ジャケには Reneck Sweetと Mikk Tivasの2人しか写っておらず、1stはミドルテンポの楽曲が殆どでリズムアプローチの幅が狭く展開のメリハリがイマイチだった事から察するにやはりドラマー Kristjan Aasamaeの貢献度は低いセッション的な参加だった模様で、現在のFIRST NIGHTは Reneck Sweetと Mikk Tivasのデュオ・ユニットとなってしまった模様だ。

もっとアルバムが売れてバジェットが稼げればワンチャン本格的なバンド編成を組めるかもしれませんが、今の所ちょっと望み薄なのが悲しいなぁ…

とまれ北欧メロハー作と言うには刺激が少ないけれど、マイルドな北欧メロディアス系ロックがお好きな方や、穏やかでメロディアスなユーロAOR作がお好みの方、そしてBON JOVI、DEF LEPPARD、Bryan Adamの作品のメロディアスな要素だけ抽出して濃縮したような穏やかな美旋律作というキーワードにご興味ある方は一度本バンドをチェックしてみても損はしないと思いますよ?

Track List:
01. These Hearts
02. Little Love
03. Beginning Of The End
04. Savage Heart
05. It's Only Feeling
06. Love Me
07. Don't Ever Say Goodbye
08. Someone
09. Is Your Love Alive
10. Talk To Me
11. Suddenly
12. Can't Forget
13. In the Name Of Our Love

FIRST NIGHT Line-up:
Reneck Sweet   (Lead Vocals)
Mikk Tivas     (Lead Guitars、Backing Vocals、Music、Mixing)



by malilion | 2023-03-02 20:19 | 音楽 | Trackback
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