人気ブログランキング | 話題のタグを見る

メロトロンを果てなくフィーチャーしたスパニッッシュ・シンフォ・ユニット SCALADEIが待望の2ndアルバムをリリース!

メロトロンを果てなくフィーチャーしたスパニッッシュ・シンフォ・ユニット SCALADEIが待望の2ndアルバムをリリース!_c0072376_00083875.jpg

SCALADEI 「School Of Pure Soul」'23

スペインはカタルーニャ州タラゴナ県のムニシピオ(基礎自治体)を拠点に活動する、HARNAKISとDOCTOR NOの元メンバーが新たに立ち上げた3人組シンフォニック・ユニット SCALADEI (スカラデイ)が前作『The Swing Of Things』から3年ぶりとなる2ndアルバムを200枚限定、見開き紙ジャケット仕様でアンダルシアのレーベル 5Lunas Produccionesからリリースしたのを少々遅れてGETしたのでご紹介。

前作と同じく既にデジタル先行で楽曲は幾つか公開されており、アルバムも現物が遅れてリリースされるのも同じく前作と同様な流れで、非英語圏のさらにプログレというニッチな市場でしか売れないアンダーグラウンドな音楽スタイル故仕方がないが、このリリース方式が本バンドの基本的なスタイルなのだろう。

因みに本バンドのヴォーカルは英詞で歌っており、スペイン語(カタルーニャ語)で歌う別名義バンドEL MAR DE LOS METALESも活動中であります。

またインディ・レーベル 5Lunas Produccionesと出版契約しディストリビュート等を担当してもらっているハズなのだが、資金的に脆弱なレーベルなのか本作も前作と同じくCD‐R製でのリリースとなっている…orz

ただ、自主盤よりは幾分か資金的援助は得られたのか、CD‐R製ではあるもののPS1のゲームROM盤のような音源データ盤面が真っ黒な特殊仕様のアナログレコードを模したデザインのRでのリリースとなっており、前作の如何にも手造り感は薄れていて多少はマシな体裁となっているのがせめてもの救いか(汗

まぁ、プレスCDはマスタリングやらにお金かかりますし、デジタルなら流通費用も掛かりませんからバジェットに余裕の無い弱小インディ・シンフォ・バンドには最適なリリース方式なのは間違いないですよね…現物主義な音源マニアにはキツく悲しい世の中ですが…(´д⊂)

前作と同じユニット・メンバー3名によって本作は録音されており、新メンバーの加入などはなかった模様だが、恐らくLIVE等ではヘルプ要員を招いているのだろう。

さて、前作は美しいメランコリックなメロディと多くのネオ・プログレッシヴ・バンド群からの影響を取り入れた叙事感あるサウンドで、これでもかと徹頭徹尾メロトロン&ストリングスを大々的にフィーチャーし、初期MARILLION風なダークでファンタジックな雰囲気とドイツのプログレ・バンドELOYを彷彿とさせる壮大なスペクタクル感をMIXさせ、HARNAKISやDOCTOR NOの頃の安っぽさを完全に払拭したパワーとメロディに満ちた演奏を堂々と繰り広げていたが、本作ではさらにサウンドのスケール感が増しており、GENESISやCAMELを思わす英国風味ある儚く淡いロマンチックなメロディと哀愁漂う叙情的な音使いで、再びメロトロンとストリングスをたんまりフィーチャーしながら切々と美旋律を紡いでいく様には、情熱のスペイン産バンド特有な臭みや定番の癖の強さ等は殆ど感じられず驚かされるばかりだ。

レーベル・インフォによると本作は『70年代プログレッシヴ・サウンドに新しいアイデアとタッチを加えたコンセプト作』という事らしく、ジャケットやインナーのイラスト、そして楽曲タイトルを見るに、東洋的なモチーフ、甲冑鎧、兜と、侍をイメージしたと思しきコンセプト作らしいのだが、如何せん詳しい情報が無いので仔細は良く分からないが、サウンドにはベタな東洋風なフレーズも聴こえず(ラストの17分超えの大作のイントロで多少歌舞伎要素が聴けるのみ)東洋を思わす音色や東洋楽器の露骨な使用もされていないので、どうコンセプトと東洋的な要素が関係しているのか判断出来ない(汗

コンセプト云々は置くとして、YES、GENESIS、CAMEL、PINK FLOYD等の70年代英国クラシック・プログレを深く愛しているというリーダーの Enric Pascualの言葉通り古典的プログレを思わす複雑で流動的な構造と展開を見せるシンフォニックなサウンドと言え、キーボードは少々鳴り過ぎなきらいがあるものの概ねバランスの取れたパッセージと非常に美しく温かみのあるテーマが精巧に表現されており、陰鬱とした翳りと不穏さもそこはかと感じさせる非スパニッシュ風(重要!)の独特な叙情感漂うスタイルは前作から引き続き継承しているが、前作で感じた北欧系を思わせる冷ややかな爽快感は薄れて、逆に今回はイタリアン・プログレっぽい濃密過ぎるクラシカルな美旋律が紡がれる場面やミステリアスな雰囲気を醸し出すダークな音使いも見受けられ、相変わらず隠し切れぬ不器用さと野暮ったさが露呈している為か他の欧米や北欧で活躍するスタイリッシュでモダンな最先端のシンフォ系サウンドと大きく隔たりを感じさせ、結果的に一味違う他で聴けぬ独特な色合いのユーロ・シンフォ・サウンドとなっている点は、前作同様に本ユニットの強みであり味であり、メジャー・シーンで決して成功出来ぬ最大の弱点でもあるだろう。

リーダーの Enric Pascualが語る所によると『本作の一番のトピックは[Nothing Can Take You]の中間パートで、部分的にだが完全にシンフォニックでオーケストラ的な小節を作曲したのは今回が初めてである事を申し上げたい。 2つの楽章に分かれていて、片方は完全な管弦楽曲なのです』との事で、これだけ見てもSCALADEIは妙な売れ筋への色気や商業的な成功など微塵も気にしておらず、唯々、音楽に対する真正性と愛情を余す事なく集約し、演奏する事にのみ心血を注いでいる、真にアーティスティックな音楽ユニットなのが分かると言うものだ。

Enric Pascualのヴォーカルが音域も狭く歌心もイマサンでC級なヴォーカル・スキルが残念な点や、本職はドラマーなのに Enric Pascualの叩くドラムの音が軽くて貧弱な鳴りをしているとか、前作でもヤバ目だったけど今回の繊細なアコギを爪弾くパートもハラハラさせられる Santi Caleroのつたないギター・プレイ等々、問題的を指摘し出したらキリがないが、それらの欠点を補って余りあるメロトロンとストリングスをこれでもかとフィーチャーした他では滅多に聴く事の叶わぬ、朴訥で不器用な独特のユーロ・シンフォ・サウンドを直向きに真摯に鳴らしている姿には妙に心打たれるものがありますね…

なんて言うかテクとか派手にメロトロン鳴らすとか、そういう目立つポイント以上に妙な味わいのある英国風ユーロ・シンフォを真似た事で意図せず予想外な科学変化の起きたスパニッシュ・シンフォに独特な魅力を感じる事が出来る、と言えば本作のなんとも言葉にしずらい不思議な魅力が少しでも伝わるでしょうか?(ウーン…

尚、同時期に別名義バンドEL MAR DE LOS METALESも2ndアルバムをリリースしており、どうやら英語とスペイン語で歌う2つのバンドを今後も平行させ活動していく模様だ。

スペイン産バンドと思えぬ英国風味香るリリカルでウェットなメロディと、これでもかとメロトロンとストリングスをフィーチャーした古典的ユーロ・プログレ・スタイルな独特な音色を響かせるシンフォ・バンドがお好きな方や、スタイリッシュさやテクニカルさはイマイチでヴォーカルもダメダメなC級に片足突っ込んだB級シンフォなれどその他がピュアな美旋律に満ち満ちている変わり種プログレ・バンドでもイケる好事家な方なんかにお薦めなマニアックな一作であります。

Track listing:
01. Tall And Proud
02. Yama Uba
03. Taking Blows
04. Nothing Can Take You
05. Reach The Top
06. Gleaming Way
07. Midnight
08. Don't Want Dream It Over
09. Sakura Essence
10. School Of Pure Soul

SCALADEI Line-up:
Enric Pascual   (Vocals、Drums、Keyboards、Mellotron)
Santi Calero    (Electric、Rythm & Acoustic Guitars)
Samuel Calero  (Bass)






by malilion | 2023-02-07 00:14 | 音楽 | Trackback
<< イタリア産ハードポップ・... 北欧メロディアスHRの新星、... >>