人気ブログランキング | 話題のタグを見る

80年代末期に一枚だけアルバムを残して消えたドイツのメロディアスHMバンドCZAKANのデヴュー作がリイシュー!!

80年代末期に一枚だけアルバムを残して消えたドイツのメロディアスHMバンドCZAKANのデヴュー作がリイシュー!!_c0072376_17461047.jpg

CZAKAN 「State Of Confusion」'89

1989年リリース当時にINTERCORDからCDが発売されていたのでオリジナルCD盤をお持ちの方も数多くいらっしゃるかもしれないメロディアスHMマニアの間では名を知れられ以前から高い評価を得続けている、80年代半ばドイツ南西部、バーデン=ヴュルテンブルク州のシュヴァルツヴァルト(黒い森)で結成されたキーボード入り5人組バンドCZAKAN (チャーカン)の唯一作がAOR Heavenの後継レーベル Pride & Joy Musicから23年度リマスターでオフィシャル・リイシューされたので即GET!

当時メジャー契約を果たしていたドイツのHR&HMバンドAXXIS、BONFIRE、CRAAFT、DOMAIN、VICTORYやMADMAX、MYDRA、KARO辺りと比べても少しも遜色の無い完成度とメロディアスでフックあるクリスプなハードサウンドを鳴り響かせていた彼等、ドイツ国内で約25000枚のセールスを記録し、Metal Star誌の月間最優秀レコードにも選ばれた事を見ても、70年代~80年代初期にドイツのHM/HRシーンで活躍したバンド達の流れを汲むそのサウンドとアルバムの仕上がり具合が如何に優れていたかを物語っているだろう。

ただ、そんな期待の新人バンドであった彼等が、本作の他に2曲目『Tears』の7”シングル(B面曲“Stand And Deliver”はアルバム未収録)一枚のみの音源を残すだけで呆気なく93年に解散を迎え、たった一枚の名作を残して姿を消してしまったのが惜しまれてなりません。

さて、今回のリイシューですが些か残念な事にオリジナル通りの11曲収録(当時、LP未収録でCDのみ収録な楽曲も同様に収録)となっていて、この手のリイシュー盤に付き物なボーナストラックやアルバム未収録音源の追加、未発音源等の追加、また当時の回顧録を元メンバーが語るライナーノーツ等の追加が無い、純粋にリマスターされて89年オリジナル盤より音がクリアーに良くなった仕様のリイシュー盤となっている。

“80~90年代ジャーマンHM”のサウンド定義を決定付け、後にデヴューする世界各地のHMバンド達に大きな影響を与える事となるHELLOWEENが87年に記念すべき名作『Keeper Of The Seven Keys Part 1』を、その続編の『Keeper Of The Seven Keys Part 2』を88年にリリースし、ここ日本は言うに及ばず欧州を中心にユーロ圏で絶大な支持と大ヒットを記録した事を考えると、CZAKANのサウンド・スタイルは明らかに当時破竹の勢いでシーンに伝播していった疾走するジャーマンHMスタイルではない、89年頃の感覚から言えばオールドスクールでベーシックな英国HMや伝統的な英国HRの影響色濃いユーロHMを演っていた訳だが、流行りに容易く乗っからずに自身の信じるサウンド・スタンスを崩さず、当時メジャーシーンを賑わしていたゴージャスで華やかな米国HMも意識したメロディアスでブライトなサウンドとキャッチーで煌びやかな歌メロをメインに洒落たシンセも隠し味に活かした英米折衷サウンドな本作を創作したのは、ドイツ・シーンを一色に塗り潰すジャーマンHMの勃興を横目に自分達の折衷サウンドこそがJUDAS PRIEST~IRON MAIDENの流れを汲むジャーマンHMスタイルより斬新なスタイル(NWOBHMの影に隠れて同じ選択をしたUKバンドは居たんですケドね…)のサウンドでよりポピュラリティが高くワールドワイドでヒットすると信じての英断だったのだろうし、メジャー・レーベルと契約していたらレコード会社のプレッシャーで本作のような方向性のアルバムを制作する事は叶わなかったかもしれないのだから、タイミングと音楽性の選択というのはなんとも運命的だなと思わずにいられません。

もしジャーマンHMスタイルのアルバムをリリースしていたら、もしかしたらもっと長くバンドは活動を続けていたかもしれないが、恐らくその他大勢のB級インディ・ジャーマンHMバンド群のフォロワー作の一つと捉えられて時の流れと共にその名を忘れられていっただろうから、こうして時の試練を耐えて現在でもそのオリジナリティ有る素晴らしいアルバムがリイシューされている訳なので、彼等の選択は今から見れば決して間違ってはいなかったと言えるのではないでしょうか?

HELLOWEENを筆頭にジャーマンHM系バンドは80年代の米国での受けはイマサンに終った事を考えても、もしバンドがURIAH HEEPの20周年記念ツアー(HEEPは昔からドイツで人気を堅持してましたから)のサポート・アクトとしてドイツ全土を回るプロモーション・ツアーの後、プレス・リリースでは語られていない理由によって解散していなければワンチャン新たな展望が開けていたかもしれないのでは、と思うとなんとも言えず悲しいですね。

まぁ、その後にグランジー・ブームが訪れ90年代を暗黒に染め上げる事を考えると、HELLOWEENのみならずCZAKANも華々しい活動が出来ていたとは思えませんけど…(涙

スピードとテクニックを兼ね備えたユーロ圏特有なウェットなメロディとフックあるクリスプでハードエッジな良く泣くギターがHMファンなら誰もが納得する素晴らしい演奏を披露し、米国HMに影響を受けたブライトで伸びやかなヴォーカルとキャッチーなバッキング・ハーモニー・コーラスがエモーショナルな情感を高らかに描き出し、タイトで堅実なリズム隊が土台を支え、楽曲にモダンなタッチと煌びやかな彩りをキーボードが控えめに添え、オールドスクールな残り香も漂う英米折衷のメロディアスHMサウンドは妙な癖が無くバランスが良く取られており、今の耳で聴いても実に素晴らしい一作なのは間違いない。

個人的には Oliver Guttingerの弾く、ネチこくて粘りのある音色を響かせる良く泣くエモーショナルでワイルドなギター・サウンドにほんのりURIAH HEEPの Mick Box風味が感じ取れてニヤニヤしちゃいます(w

英米折衷のメロディアスHMサウンドとは言っても、当時北欧によく居た哀愁漂うメロディアス・サウンドを聴かせるB級HMバンドを思わすマイナー調な叙情感ある美旋律がチラリと顔を出したり、70年代英国HRバンド風なタッチもそこかしこから感じられたりと、聴き込む程に複雑で幅広い音楽的バックグラウンドをCZAKANが有している事が分かり、そして彼等のアルバムが今も愛され続けているもう一つの大きな要因としては、ラジオフレンドリーでシングル・ヒットする事に色気を出して甘々なキャッチー・サウンドに成り過ぎず、エッヂを最後まで失わず質実剛健なメタリック・サウンドなスタンスを堅持した作品に仕上げた、ドイツHR/HM界の重鎮で70年代の独ロック・シーンで活躍したプログレ・バンドELOYの元メンバーで新人バンドのプロデューサーとしても活躍していた Frank Bornemannの手腕も見逃せないだろう。

妙な臭みの無いメジャー指向な音楽性、バランスの取れた完成度高い楽曲と瑞々しい音色、クリスプでハードエッジな勢いある演奏、パワフルで伸びやかな Michael Schennach(ex:MANIA)のエモーショナルな歌声、どれをとってもメジャー・アクト級な彼等だが、本作には幾つかメジャー・クラスのバンド群が残してきた作品に及ばぬ点が有るもの事実で、最新のデジタル・リマスターが施されてはいるがオリジナル音源の制作上の欠陥は補い難く、総合的に問題は大きく目立っていないのだが、アナログ録音からデジタル録音への過渡期な為か、デジタル仕様での録音技術の確立がまだ不十分だった弊害か、インディ故のバジェット問題が脚を引っ張ったのか、彼等が録音したHorus Sound Studio Hannoverには当時の音作りに見合った最新の録音機材が十分に揃っていなかったのか、他のドイツのHMバンド達のアルバムのサウンドよりギターやドラムなどで音作りの古さが目立ち、またこれは彼等のバンド名を初めて目にした諸兄なら皆経験しただろう『なんて読むバンド名なんだ?』という、楽器から取られたと思しきバンド名が読めない問題は正直真っ先に改めるべき点であったように思う。

短命に終ったCZAKANの後、ギタリストの Oliver Guttingerとベーシストの Frank Schrafftは新バンド BACKBONE SLIDEを結成しアルバムを一枚、シングルを二枚リリースしているが、その後大きく目立った活躍はしていない。

と、普通ならここでアルバム紹介を終る所なのですが、なんと今回のデヴュー・アルバムのリイシューが呼び水になったのか、CZAKANが34年ぶりに再結成(!?)を果たした模様だ。

まだ詳細な情報は伝わってきておらず、オリジナル・メンバー揃ってのリユニオンが成されたのか、主要メンバーのみで新メンバーを迎えてリユニオンしたのかは不明ですが、これは彼等のアルバムを長らく愛してきたメタルヘッズな諸兄には嬉しいニュースではないでしょうか?('(゚∀゚∩

語られなかった突然のバンド解散の真相やアルバム未収録のシングル音源の再収録等も含め、是非とも早く幻の2ndアルバムと一緒に続報を届けて欲しいものですね。

Track List:
01. State Of Confusion
02. Tears
03. Run With The Wind
04. Kind Of Temptation
05. High Speeder
06. So Cold
07. Eyes Of The Gods
08. Rock Will Survive
09. Thunder And Lightning
10. Too High To Touch
11. Heartbreake Savage

CZAKAN Line-up:
Michael Schennach   (Vocals)
Oliver Guttinger     (Guitars)
Tommy Fein      (Keyboards)
Randy Arcachon    (Drums)
Frank Schrafft     (Bass)



by malilion | 2023-02-02 17:48 | 音楽 | Trackback
<< 華麗なるヴァイオリン・シンフ... 南米アルゼンチン産AOR&ホ... >>