TNNE (THE NO NAME EXPERIENCE) 「Life 3.0」'23 西ヨーロッパの真ん中に位置するルクセンブルグ大公国唯一のシンフォ・バンドだったNO NAMEが23年に渡る活動を2011年2月にピリオドを打ち、元メンバーの Alex Rukavina (Key)と Patrick Kiefer (Vo)が新たに立ち上げた5人組シンフォ・バンドの待望の3rdアルバムが前作から6年ぶりにリリースされたので即GET! 前作でギタリストとベーシストがチェンジし、ギターレスのままメキシカン・シンフォ界の首領バンド CASTのギタリスト Claudio Corderoをゲストに招いてアルバムは制作されていたが、前作リリース後にギタリストは無事 Cedric Gilisが迎えられて定番の5人編成に落ち着いていたのに、残念な事にこのインターバルでメンバーチェンジが勃発した模様で、再びベーシストが Michel Casadei Della Chiesaから Stephane Rossetへチェンジしている。 Alex Rukavinaと Patrick Kieferのコア・メンバーさえいれば良い、ってな訳でもないでしょうが、どうにも本バンドはベーシストが定まりませんね…まだ3枚しかアルバムをリリースしていないのに、気が付けば全てのアルバムでベーシストが違ってしまっているという…(汗 リズム隊を組むドラマー Gilles Wagnerのお眼鏡に適うベーシストが中々居ないんでしょうか? それとも Gilles Wagnerのドラムプレイが独特でベーシストが上手くマッチしたプレイを出来ない? いやー、そんな特殊にテクニカルなプレイをギンギンに繰り広げている訳でもないし、バンドもそういう方向性のサウンドじゃありませんし…謎ですね('A`) さて、デビュー作でプログHMっぽいタイトでメタリックな新世代サウンドへ接近したアルバムを放った彼等、続く2ndではギタリスト不在も影響したのかバンド誕生前に活動していたNO NAMEで演っていたネオ・プログレ風な少々古臭いサウンドへ逆戻りして些か面食らったのを覚えていますが、続く本作では無事1stで示したメタリックなタッチも有る新世代メロディアス・シンフォ系サウンドへ路線が戻っており一安心であります。 欧州各国のシンフォ&プログHMバンド達のテイストを取り入れつつ、如何にもユーロ圏バンドな透明感があり軽やかで叙情味あふれるメロディアスなサウンドをベースに、若々しくメタリックでハードエッヂなギター・プレイもフィーチャーしたバランス重視の優等生的サウンドなのは前作同様で、Alex Rukavinaの操る縦横無尽に鳴り響く多彩なキーボード・サウンドと Patrick Kieferの穏やかなヴォーカルを主軸に、今回は新にJAZZ風味なんかも加味しつつ、軽やかで華やか、それでいてダークでミステリアスな、ユーロ圏バンド特有のリリカルな叙情も織り込みつつキーボードとギターの華麗なアンサンブルや優美なストリングスもフィーチャーし、立体的に複雑に展開するシンフォニック・サウンドを鳴り響かせ、けれど決して冗長にならずカッチリしてコンパクトにまとめられた印象が強いモダンでシャープな音像のユーロ・シンフォニック・ロックを展開している様は見事の一言に尽きる。 モダンでもハード過ぎもせず、かと言ってやたらとベタベタのメロゥ過ぎる事もなく、そして技巧やテクニックをひけらかす訳でもない、勢いばかりやポップでキャッチーばかりでも無く、聞きようによっては中途半端なサウンドと思えるかもしれないが、そこは前身バンドを含むと30年以上のキャリアを誇る彼等、聴かせ処をちゃんと心得ていてユーロ・シンフォ系ファンにも、普通のユーロ・ロックファンにもしっかりと訴求する中道でバランスを考慮した舵取りが難しいメロディアス・サウンドを鳴らしており、この辺りは流石はベテランの経験と技と言った所だろう。 分かり易い勢い重視でキャッチーなメロハー・サウンドだったり、プログレと聴いて真っ先にイメージするようなテクニカルで各プレイヤーのインタープレイが派手に飛び交うプログHMサウンドなんかの方が第三者に伝える時に表現しやすいサウンドなのですが、如何せん彼等のサウンドは一言で表し難い、ハードでもソフトでもない、最先端でも懐古でもない、程々にマイルドで程々にキャッチー、そこそこモダンでまぁまぁメロディアスなユーロ・シンフォニック・ロック、というなんとも言い表し難い中庸寄りシンフォ・サウンドなのが困りものであります(汗 以前ならゼロコーかLong Island Records辺りからリリースされていただろうハード寄り90年代初期ポンプ・バンドと簡単に表現していたでしょうが、既にLong Island Recordsもゼロコーも消えて随分時間が経ちましたし、両レーベルがリリースしてきた作品を知らない方も多いでしょうから、彼等の幅広い層に受け入れてもらえそうなモダン・シンフォ・サウンドをなかなか上手い具合に言い表せないの己の語彙力の無さがもどかしい…(ウガガ 別段彼等の作品が地味だとか個性が無いとか腐している訳ではなく、寧ろ自身の創作物に並々ならぬ自信を持つミュージシャンが多いプログレ&シンフォ系では滅多にお目にかかれないバランス感覚に優れた控え目で大人びた作風だな、とは思っとりますが、そんな風に取れてしまう表現が不味いんですよね、でもそんな表現になっちゃうんだよなぁ… やはり実験的な事に挑み易いインディのシンフォ系バンドには、メディアに過剰に露出するメジャー・アーティスト達の作品では聴けぬ独特なこだわりと癖の強いサウンドだったり成功は困難で失敗する危険性が高い冒険的なアプローチが成されたアルバムを期待するものだから、本作のようなメジャー寄りなサウンドな作品だと『そーいうの期待してないんだよなぁ』と、違和感を感じてしまう勝手な思い込みが原因なのかもしれません。 A級シンフォ・バンドと成るには些かヴォーカルの力量が足りぬように感じますが、バックのサウンドは既に述べたようにバランスを考慮して十分に幅広い層に訴求する細工の施されたベテランらしい隙無いコンパトなモダン・シンフォ・ロックを展開しているので、何か切っ掛けがあれば一気にメジャー・シーンでブレイクしてもおかしくない、そんな期待をさせる臭みの薄いポピュラー・ミュージック寄り(?)なユーロ・ロック・サウンドとも言えるのかもしれない。 尚、本作は米国のファンタジーとSF作家 Robert Paul "Tad" WilliamsのSF四部作で、ネットワールドでの冒険を描く『Otherland』にインスパイアされたコンセプト・アルバムとなっている模様で、引き続き続編のコンセプト・アルバムが制作されるのかは現時点では未確認だ。 題材的にもっとファンタジックで大仰なサウンドにしてもいいだろうし、もっとデジタリーでメカニカルなサウンド・エフェクトなんかの処理がバンバン飛び出してきても不思議でないコンセプト作なんですが、そこを敢えてそういう定番の手法で楽曲イメージを偏らせない所が彼等らしいと言えばらしいのでしょう。 所々でデジタリーな音色のシンセや幻想的なメロディやフレーズなんかも垣間見えるが、あくまで添え物でメインテーマ的な扱いや鳴らし方にしていないのが、他のシンフォ系バンドのコテコテなコンセプト作との違いで彼等らしい独特な個性と言えるのかもしれない。 癖の強いバランスを無視した刺激あるサウンドで好事家を虜にする系統のシンフォ・バンドではありませんが、普通に軽めなユーロ・プログHMをお好きな方や、メジャーな欧米ロック・バンドやメジャーなユーロ圏メロディアス・バンドがお好きな方程に本作は楽しめるかもしれせませんね。 Tracks Listing 01. The Net 02. Dreaming Awake 03. No Man's Land 04. Behind the Mirror 05. Heavenly Visions 06. Harvest TNNE Line-up: Patrick Kiefer (Vocals) Alex Rukavina (Keyboards) Gilles Wagner (Drums) Cedric Gilis (Guitars) Stephane Rosset (Bass)
by malilion
| 2023-01-29 12:06
| 音楽
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