MANTICORE「Elements」'22 93年デヴュー当時は同郷のヴィンテージ・プログレ・リヴァイバルバンドANGLAGARD、ANEKDOTENを凌ぐ逸材として米The Laser's Edgeレーベル一押しバンドだった北欧スウェーデンのシンフォ・バンドMANTICOREが前作から4年振りとなる3rdアルバムをリリースしたのをちょっと遅れてGETしたのでご紹介。 国内ディストリビューション盤もリリースされたデヴュー作『Time To Fly』'93 当時はトリプル・キーボードにツイン・ギター、リードヴォーカルをとるメンバー3人を擁する5人組バンドで、コーラスは多目で無かったがヴォーカル・パートもこの手のシンフォ系バンドの中ではソコソコ充実していてキーボードを主軸にバンド名から分かる通りEL&Pを筆頭にGENESIS、YES、CAMEL等、70年代英国プログレから幅広く影響を受けたカワフルで多彩なシンフォ・サウンドを稚拙なテクながらひたすら直向きに真摯に鳴り響かせていた彼等は、けれど暗黒の90年代を生き残る事は出来ずに沈黙、解散し、主要メンバー2人を中心に18年にツインギターでキーボード入りの新編成4人組で再結成し25年振りとなる2nd『Next Step: Flight 19』'18 をリリースしていた訳だが、半ばカヴァー曲で構成された前作を見るに一過性の同窓会的な再結成かもと危惧していたが、どうやらしっかりと活動を継続させていた模様で、前作から4年振りとなる3rdアルバムをデジパック自主盤CD-R(残念!)でリリースした。 バンドメンツは前作と同じで変化はなく、シンフォ系につきもののメンバーチェンジは起こらなかった模様で一安心だ。 まぁ、既に各メンバー共にかなりいい年だし、血の気の多い若いミュージシャン特有のエゴや無暗に成功を夢見て己の腕一本でビッグネーム・バンドを渡り歩く、なんて言う青臭い野望や才気走った渇望からは解放されたんでしょうな、きっと。 ただ、奏でるサウンドに枯れた詫び錆な渋さは無く、未だに70年代への憧憬を漂わせつつもしっかりと今風のモダンな感覚を取り入れ、北欧バンドらしいウェットな叙情感香る音使いやスウェディッシュ・ポップを連想させる意外にキャッチーな歌メロやヴォーカル・ハーモニー、Steve Hackettを思わせるエモーショナルで豊かなメロディを紡ぐギターと Tony Banksを連想させるカラフルで多彩な響きの鍵盤サウンドを主軸に楽曲が展開する所はデヴュー以来一貫して変わらない点で、1stはさすがに気恥ずかしくなるような稚拙なプレイが目だった彼等もこの長い年月を積み重ねる間に腕を磨きミュージシャンとしても成熟したのか、70年代の巨人達の影響を露わ(John Wettonや Greg Lakeの楽曲、そしてYESの『Release, Release』をカヴァー)にしたメロディアスなシンフォ・サウンドだった前作と同一路線ながらも、お約束のメロトロンをドラマチックにフィーチャーしつつ、楽曲によって生弦カルテットも加え、軽やかなフルートが随所で特有の儚く物悲しい音色でサウンドに彩りと叙情感あるウェットなメロディをもたらし、70年代英国プログレの呪縛から解き放たれたような爽快な開放感と新たにJAZZっぽいモダンなタッチも加えた、より北欧シンフォなテイストが強まった哀愁と陰影が色濃く艶やかなサウンドへ変化しており、前作以上のエネルギーとパワーを感じさせ、テクニカルで立体的なシンフォ・サウンドと魅力的な音使いとプログレらしい楽曲展開を魅せる新たなスタイルを具現化し堂々と披露している。 デヴュー作でも感じられた朴訥としたフォーキーなタッチや北欧ポップスのようなゆったりメロディアスでハートフルな歌メロも実に彼等らしく、歌心あるヴォーカルを主軸に置いて軽やに楽曲を展開している点だけとっても90年代に蠢いていた一連の北欧クリムゾン・クローン達の闇深いダークでヘヴィなヴィンテージ・サウンドとは相当の隔たりがあり、ANGLAGARD、ANEKDOTEN達とは元来違う音楽性をち合わせていた北欧バンドであったのだと、本作の芳醇で軽快そしてロマンチックでセンチメンタルなサウンドが響き渡る様を聴いて再確認しましたね。 と言うか、1st聴いた時点でも何故にANGLAGARDやANEKDOTENと彼等が比較されてるのか分からなかったです。ハイ。 前作ではバッキングに徹していた新加入のギター兼シンガーの Jon-Terje Sundbergが、本作では殆どのリードヴォーカルを担うまでに成長し、パワフルではないけれど味のあるそこそこハイトーンな歌声も聴かせてくれているのも、本作の歌メロの多様さとコーラスの厚みを生み出している要因なのは間違いない。 程よい隙間のあるサウンドと良い感じに鄙びたような味わいあるメロディが、なんとも言えぬ懐かしい感覚と安心感を与えてくれる、そんな北欧シンフォ・サウンドなのが実に良いのですよねぇ~(*´ω`*) また、前作は味も素気もないオッサンなメンバー並んでるだけの、久しぶりの復帰作にしては余りに不愛想すぎるジャケでありましたが、今回はその内容を伺わせる陽の木漏れ日が水面で跳ね美しく輝くような、それでいてしっかりバックに闇深い北欧の森林が描かれている風景が描かれたジャケットは、本作の優美なサウンドのイメージを掻き立てるシンフォ・バンドらしい幻想的で良い出来だ。 一般的に見て間違いなくドマイナーなB級北欧シンフォ・バンドだし、デヴュー作から2ndまで25年も間が空きすぎているし、デヴュー作と2ndで全く別バンドくらいにサウンドが変化し進化しているので彼等のアルバムを今から手に入れようとするとちょっと面倒かもしれませんが、もし北欧然としたメロディアスさとゆったり悠然とした音使い、そしてユーロ・シンフォ作らしい叙情感とストリングスの甘い音色とメロトロンをはじめ各種鍵盤サウンドにご興味あるようでしたら一度本バンドの作品をチェックして、意外な掘り出し物を探り当てた喜びを味わうのも乙なモノかもしれませんよ? 文句らしい文句と言えば内容ではなくて、バジェットの都合もあったのかもしれないけど、出来ればRでなくちゃんとデュプリ盤でリリースして欲しかったなぁ…くらいですかね。 Track List: 01. The Wood 02. Open Up Your Eyes 03. New Horizon 04. Rain Is Falling 05. Nordic Shadows 06. Elements MANTICORE Line-Up: Goran Holmberg (Bass、Bass Pedals、Lead Vocals on Tracks 4、6) Ulf Holmberg (Guitars、Keyboards) Jon-Terje Sundberg (Lead Vocals on Tacks 2、3、6、Keyboards) Per-Ake Saavedra (Drums)
by malilion
| 2022-12-13 16:49
| 音楽
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