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スタープレイヤー達が集うベテラン英国シンフォ・バンドARENAが4年ぶりに10thアルバムをリリース!!

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ARENA 「The Theory Of Molecular Inheritance」'22

元MARILLIONのドラマー Mick PointerとPENDRAGON、SHADOWLANDのキーボーディスト Clive Nolanを中心に1995年に結成されて以来、数多くの英国ポンプ&プログレ系ミュージシャン達がARENAに在籍しその素晴らしい演奏を披露して来たが、今やソロ活動、IT BITES(残念ながら活動終了)、FROST*、LONELY ROBOT等のみならず数多くのシンフォ・プロジェクトやシンフォ系ソロ・アーティストの作品にも欧米問わず幅広く参加するギタリスト兼ヴォーカリストの John Mitchellも所属し、既にこの時点でUKシンフォ&メロディアス・ロックシーンのスーパーグループと言えるビッグネームな彼等に、本作から四代目フロントマンとして新たに強力なシンガーが加入した。

『The Seventh Degree Of Separation』'11 から『Double Vision』'18 まで長らくフロントマンを務めて来た Paul Manzi (ex:SWEET、ex:CATS IN SPACE、Clive Nolan、etc...)に代わって、ソロ及びポンプ系シンフォ系のみならずHR系やプログHMまで彼の参加したバンドやプロジェクトは数知れず、これまでに70枚以上(!?)のアルバム制作に参加してきた英国ロック界きっての渡り鳥シンガー Damian Wilson (ソロ、ex:LANDMARQ、ex:THRESHOLD、HEADSPACE、Adam Wakeman、MAIDEN UNITED、Rick Wakeman's ENGLISH ROCK ENSEMBLE、etc...)が本作からフロントマンに迎え入れられ、活動歴27年以上となるブリティッシュ・スーパー・グループの名に相応しい百戦錬磨の猛者揃い踏みな強力編成が更に固められている。

プログレ&シンフォ系バンドはHR&HM系バンドと同じようにメンバーチェンジが激しいジャンルではありますが、それにしたって…どうして彼を…うーん(汗)…いつまで Damian WilsonがARENAに在籍するのかと、一抹の不安を抱くのは私だけでないハズ…('A`)

ただ、逆説的に言えばそれだけ数多くのバンドや一流アーティスト達から引っ張りダコになる確かな歌唱力、そして安定したステージ・パフォーマンスを披露出来るデヴュー以来常に第一線に身を置いて活動してきた英国人シンガーでありますから、そのエモーショナルで音域の広い抜群のヴォーカル・パフォ-マンスでこれまで以上にARENAの楽曲のクオリティを向上させるだろう事は誰の目にも明らかだったので、彼がARENAへ電撃加入(最初、眉をひそめたケド)しアルバムを制作中というインフォを聞いて近い将来届けられるだろうアルバムの出来具合に些かの不安も抱かなかったのも事実であります。

折角前作は久しぶりにメンツ変動なく作品をリリースしてくれたのに呆気なく編成が崩れてしまい、結成当初から今一つメンツが安定しないのが玉に瑕なバンドではありますが、まぁ活動期間が長いとどうしてもマンネリズムに陥り易いし定期的にメンツを入れ替えてフレッシュな感覚を取り戻しているのかもしれませんね…前向きに捉えよう、ウン(汗

タイトル『分子遺伝学の理論』が示す様に遺伝をキーワードに、受け継がれる要素、また受け継がれない要素等といった難解な主題を展開するコンセプト作である本作は元々2020年にリリース定だったが、付きモノの制作遅延やパンデミック、その影響からのツアー延期に伴って発売が延びに延びていたが遂に10月末に世に放たれ、現在では27日間のヨーロッパ・ツアーが22年9月から10月にかけて実施されている最中なハズだ。

さて、注目の内容の方は、前作『Double Vision』'18 が壮大なスケール感を漂わす初期スタイルへ回帰しながら、近作に共通するソリッドで硬質なHM色を保ちつつモダン・シンフォ・サウンドとディープなドラマティックさが光るダークな世界観を継承した“動”と“静”の対比が劇的で重厚なコンセプト作であったが、『今のバンドはよりモダンで硬質なサウンドで、既存のファンを喜ばせ、新しいファンも獲得するんじゃないかな?』という Clive Nolanの言葉通り前作で示した音楽性を受け継ぎつつも、親しみ易くポピュラリティあるメロディ、複雑だが洗練され過ぎる事無い絶妙なアレンジ、多層的で立体的なリズム・ワーク、英国ネオ・プログレ・バンドらしい知性と哀愁、そして多彩で重厚な鍵盤サウンド重視なスタイルで、時にパワフルでハードなアンサンブルの妙や、ウェットな叙情感香る流麗な美旋律と、リスナーを飽きさせぬ精緻な楽曲展開と密度の高いプログレッションを提示し続け、めくるめく展開を魅せるドラマチックでセンチメンタルな素晴らしい音楽性と高い完成度の英国モダン・シンフォ・サウンドが徹頭徹尾貫かれた、待った甲斐のある力作だ!('(゚∀゚∩

特筆すべきはやはり抜群の歌唱力と安定感、そして多様な情感をエモーショナルに優美に歌い上げるポンプ&シンフォ界随一のベテラン・シンガー Damian Wilsonの素晴らしい仕事ぶり抜きに本作を語る事は出来ず、哀愁と幻想に満ちたフックある歌メロやディープで細やかな感情の動き、それら全てをメロディアスなエッジを失う事なく高らかに歌い上げる圧巻のパフォーマンスは、伊達に数々のシンフォ&ネオプログレ・バンドを渡り歩いていない強固な実績と能力を堂々と証明しており、完璧にARENAにフィットしたそのヴォーカルは歴代フロントマンの中でも最高峰に位置するのは間違いなく、バンド・サウンドに新たな魅力と新鮮な感覚をもたらしている。

エネルギッシュでシンフォニックなメロディを織り成すキーボード・ワークがプログレ黄金時代を思わせるノスタルジックな感覚を与えるが総じてモダンな鍵盤サウンドに仕上げられており、凝ったギターとキーボードのテクスチャー、テンポ変化が多いがソリッドなリズムセクション、随所で雪崩れ込んで来て加速するインストゥルメンタル・セクションは純粋なプログレ・スタイルでテクニカルにエモーショナルに展開され、さらに John Mitchellのダイナミックなソロやマッシブなリフなど七変化なギターが活躍する場が増えた結果か、タイト且つハードなプログ・メタルへ接近したタッチが随所で感じられるなど、優れた演奏技術と音楽性、そしてクラシックとモダンな特徴が混在したハイクオリティなプログレ・スタイルの楽曲の数々は最初から最後まで非常に強烈な印象を与え、ベテランらしい独創性高いモダン・シンフォ・サウンドのその艶やかな美しさと力強さ、そしてミステリアスでリリカルなフィーリングは唯一無二だろう。

正直、今までもARENAは優れたシンフォ・バンドだと思っていたが Damian Wilsonの加入で一気にその他大勢の英国シンフォ・バンド群から頭一つ抜きんでた存在になった感と風格が本作からヒシヒシ感じられ、最先端のモダン・サウンドではなく、ヴィンテージ懐古サウンドでもない、古典と最新サウンドを折衷するスタイルのモダン・シンフォ・バンドとしては他の追随を許さぬ位置へ到達した記念すべき作品が本作なのだと改めて気づかされました。

凄腕の演奏集団のフロントを巧いベテラン・シンガーが務めると言う正に鬼の金棒状態な今のARENA、出来る事ならこの編成で長く活動を続けて欲しいけどこの先どうなるのかなぁ~(ツд`)

とまれ是非とも英国ポンプ&シンフォ・ファンのみならず、プログHMも聴かれる英国メロディアス・ロック・ファンにチェックして欲しい一枚であります。

所で…作品の内容と関係ないトコで文句を言いたいのは、延期に延期を重ねて制作費がかさんだ影響なのか、やたら本作の価格が高くて驚かされ、シングルCDアルバムなのに二枚組クラスの価格なのはどうなのかと…(汗

オマケにアルバム未収録曲にアコースティック・ヴァージョンやインストゥルメンタル・ヴァージョンを追加したボーナスCD付きの二枚組特別盤(Ear Book版)も同時にリリースされており、そっちはなんと9千円超えのお値段に…orz

この辺りの値段が契約の障害になったのか、今の所本作の国内盤リリースは予定されていない模様だ…(´д⊂)

また、ハードコアなファン向けには『Arena...From The Beginning』という180ページの豪華なCoffee Tabl Book(ハードカバー)が付属する豪華装丁パッケージ(お値段、二枚組盤の数倍!!)や、カラー・ヴァイナルのLP2枚組盤もリリースされており、どちらもお値段は張りますがアナログマニアな方はオフィシャルHPの方のチェックをお忘れなきようご注意されたい。

Track listing:
01. Time Capsule
02. The Equation (The Science Of Magic)
03. Twenty-One Grams
04. Confession
05. The Heiligenstadt Legacy
06. Field Of Sinners
07. Pure Of Heart
08. Under The Microscope
09. Integration
10. Part Of You
11. Life Goes On

ARENA Line-up:
Damian Wilson    (Lead Vocals)
John Mitchell      (Guitars、Backing Vocals)
Clive Nolan      (Keyboards、Backing Vocals)
Kylan Amos      (Bass)
Mick Pointer     (Drums)


P.S. 因みに2枚組Bonus CDの内容はと言うと、以下の通りであります。

Deluxe Edition Ear Book Only
01. Vindication
02. The Equation (The Science of Magic) (Acoustic Version)
03. Pure of Heart (Acoustic Version)
04. The Heiligenstadt Legacy (Acoustic Version)
05. Life Goes On (Acoustic Version)
06. Twenty-One Grams (Instrumental Version)
07. Field of Sinners (Instrumental Version)
08. Part of You (Instrumental Version)


by malilion | 2022-12-09 17:16 | 音楽 | Trackback
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