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90年代初頭にUSフロリダで活動していたメロディアス・バンドBIG SHOTが残した30年前のお蔵入り音源が初CD化して限定リリース!!

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BIG SHOT 「Same - Digitally Remastered Limited edition -」'22

現在も同名バンドが他にも多数存在しますが本作のバンドは既に現在存在してない、どころか正式な音源を残さず解散してしまった90年代初頭に米国南東フロリダ州中部オーランドでシンガーの Deryle Hughesが結成し、率いていたキーボード入りツイン・ギター編成の5人組USメロディアス・ロックバンドが母体でありました。

Deryle Hugheはセントラル・フロリダで育ち、16歳の時に Edgar & Johnny Winter兄弟に影響を受け世界的シンガーになる事を夢見てミュージシャン活動を開始すると、独学でギター、スライドギター、ブルースハープを学び、80年代後期から現在までキャリアの殆どをアメリカ南東部で歌い続け、ツアーを行って来た根っからのミュージシャンだ。

本バンドは90年代初頭に Deryle Hughes Band名義で結成され、ヴォーカルは Deryle Hughes、キーボードとギターに David Mikeal、ベースは Paul Drennan、ギターに Angelo Janotti、そしてドラムスに Tommy Scottの5人がオリジナル・ラインナップであったが、すぐにドラムを Sean Shannonへチェンジし地元でLIVE活動を続行した。

PARCレコード(CBS系列)の Pat Armstrongがバンドのマネージメントを担当し、LIVEではオリジナル曲を中心にカヴァー曲も織り混ぜて演奏していた彼等は、クラブやコンサート会場でJOURNEY、FOREIGNER、BLACKFOOT等のメジャー・バンドのオープニング・アクトを務めるなどして腕を磨き、バンド名をBIG SHOTへ改めると満を持して91年から92年にかけてデヴュー・アルバムの制作準備に取る掛かるものの、グランジーの闇に覆われていた90年代米国に彼等のような黄金の80年代の流れを継承する煌びやかでメジャー感溢れるキャッチーなメロディアス・ロックを演るバンドが活動する場は殆ど無く、オマケに制作中のデヴュー・アルバムをリリースする目途も立たず、それでも数々のLIVEを果敢に行うものの一向に事態は好転せず、そんな絶望的な状況に打ちのめされてしまったのかギタリストの Angelo Janottiがバンドを脱退し、後任に Tony Samsを迎え活動を続行するが、世界中で数多くのハードロック・バンドやメロディアス・ロックバンド達が大苦戦を強いられた90年代のアゲンストな状況と時流に逆らうのは難しく、00年を迎える事は叶わず敢え無くバンドは解散してしまう…

フロリダ、と聞くと陽気なビーチと燦燦と降り注ぐ陽光をイメージし、実際華やかなアーティスト達の賑やかな活動の場であり、煌びやかで高級なサウスビーチ・エリアのナイトスポットがあるマイアミが特に有名ですが、彼等はテーマパークであるウォルト・ディズニー・ワールドリゾートがある中部オーランドを拠点に活動をしていたので、実はちょっとそういう華やかな地域イメージと違う場所で活動を開始したんですよね(w

ただ、バブリーでゴージャスな80年代のカリフォルニア・シーンに負けず劣らず華やかなロック・ミュージック・シーンが熱く盛り上がった地域である事は間違いないので、彼等が身近なマイアミ・シーンの影響を受け、80年代の流れを汲むキャッチーでラジオフレンドリーなメロディアス・ロックを演るのは必然だったのかもしれません。

本作はその91年から92年にかけて録音されながら長らくお蔵入り状態であった未発表音源に Jk Northrupの手による2022年度デジタル・リマスターを施し、Melodic Rock Classicsレーベルから初CD化&限定リリースされたアルバムとなっている。

因みに本音源はドラマーに Sean Shannonを迎えた第二期BIG SHOTのメンツ構成で大部分が録音(記念すべき第一期のオリジナル・ラインナップ故か Tommy Scott在籍時のグループショットもブックレットに掲載され Sean Shannonはジャケットのグループショットに収まっている)されており、一部のドラム・プレイを Randy Nicholsが叩いた音源を含んでいる。

どういう経緯で Randy Nicholsのドラム・プレイが含まれる事になったのかブックレットに詳細なバンド史やバイオ等の明記が無く、スタジオ音源も残さずメジャー・レーベルと契約していた訳でもないグランジー期の人気が低迷していた米国インディ・クラブ・バンドの一つであったBIG SHOTについての情報は少なく詳細不明であります…

まぁ、単純にデモを録音してる時にたまたまドラマーの Sean Shannonが不在だったので、スタジオに居たセッション・ドラマーにちょっとヘルプお願い、みたいな軽いノリだったんではないかと予想しますが…

さて、本作の内容の方はと言うと、Deryle Hughesのパワフルで伸びやかなハイトーン・ヴォイスと図太くエモーショナルな熱唱を主軸に据え、ハードでフラッシーなツイン・ギターが活躍しスピィーディにキャッチーに展開するブライトでフックある楽曲が目一杯詰め込まれた、正に80年代黄金期の残光が感じられるお洒落で煌びやかなシンセ・アレンジとお約束のフィメール・バックシンガー達の華やかなコーラスとメンバーが一丸となっての分厚いハーモニー・コーラスに包まれたバブリーでゴージャスな王道の80年代アリーナ・ロックスタイルに倣ったUSメロディアス・ロック作だ。

折角のリマスターでの初CD化ではありますが、マスターテープの保存状態が宜しくなかったのか冒頭から音ヨレやノイズ等が聴き取れ、幻の蔵出しアルバム音源というインフォではあるものの、実際の所はデモ音源かアルバムを正式に制作する前の準備段階のプリプロダクション音源というレベルのサウンドで、しっかりプロデュースされ完成したアルバムの音を期待しているとちょっとガッカリするかもしれませんが、彼等の遺した素晴らしい音楽を楽しむには全くそういった諸々の問題がサウンドの輝きをスポイルするような事は一切無いのでご安心下さい。

LAメタルのような猥雑さや頽廃的でダーティなイメージ、そして売れ線狙いの産業ロック的な人工的で無機質なイメージも一切感じられない、むしろリーダーの Deryle Hughesのバックボーンである伝統的なサザン・ロックの豪快でストレートな要素が随所で感じられる男臭さの方が強いアメリカン・ロックルがベースになったサウンドなのが分かり、西海岸で80年代に盛んだったゴージャスでバブリーな人工甘味料的サウンドと毛色が幾分違う、けれど同一方向性のキャッチーでラジオフレンドリーなハードポップやコンテンポラリー風味もあるUSメロディアス・ロックな本作は、もし80年代末期にリリースされてたならば意外に幅広い聴衆から支持を得られチャートを駆け上がったかもしれない、そんな惜しい可能性を感じさせる一枚に思え残念で仕方がありません。

特にこの手の未発インディHMバンド音源でいつも問題になるヘッポコなヴォーカリストがフロントに居ない、堂々とした歌いっぷりを聴かせる Deryle Hughesのヴォーカル・スキルはかなりのもので、これだけ歌えるフロントマンが居るバンドながらも成功と縁が無かったなんて、本当に暗黒の90年代だったんだなぁ、と再確認させられます。

一般的には無名なまま終った本バンドで見事な歌いっぷりを聴かせた Deryle Hughesだが、しばしの後の04年にLIVE演奏を主体に活動するスワンプ・ロック・バンドSIMPLE SOUTHERN BOYSを結成しCBSやSony等など4つのメジャー契約を結んでの活動が好評を博し、今では、シンガー、ギタリスト、ブルース・ハープ奏者、プロデューサー、作曲家としての地位を確立し、Eddie Money、FOGHAT、VAN HALEN、Sammy Haggerをはじめ、数え切れないアーティスト達のオープニング・アクトを務め、SIMPLE SOUTHERN BOYSのリリースするアルバムも米国を除く全ての国でプラチナ・ディスクに認定される活躍を今も活発に続けアルバムもリリースし続けている。

因みに Deryle HughesのSIMPLE SOUTHERN BOYSが所属しているレーベル名がBig Shot Music(!)っていうのがまた泣かせますよね。若かりし頃に成功出来なかったバンドを今でもしっかり胸に秘めて活動しているなんて、実に情熱的で誠実なミュージシャンらしくて(涙

Deryle Hughesだけでなく他のメンバー達も今もミュージシャン活動を続けているとの事なので、本作の評判が上々だったならば勢いに乗って再結成なんて事になるかもしれない、と密かに期待したりしているのは私だけではないだろう(w

華やかだった80年代の米国メインストリーム・ロックがお好きな方や、USメロハー・ファンな方なんかにもお薦めしたい、メロディアスHRファン歓喜の掘り出し物アイテムなのは間違いない一枚ですので、ご興味あるようでしたら一度ご自身の耳でチェックしてみて下さい。

Track List:
01. Out Of Control
02. Stand Up And Fight
03. Jealousy
04. Step Into My World
05. Wherever You Are
06. Fight Fire With Fire
07. Rollercoaster
08. Rock This Place
09. Stay With You
10. City Limit
11. Love On The Line
12. On The Edge
13. Don't Destroy Our Future

BIG SHOT Line-up:
Deryle Hughe   (Lead Vocals ex:SONS OF DOCTORS)
Paul Drennan   (Bass & Backing Vocals)
Angelo Janotti    (Guitars & Backing Vocals)
David Mikeal    (Keyboard、Guitars & Backing Vocals)
Sean Shannon   (Drums)

Randy Nichols   (Drums)




by malilion | 2022-11-26 19:02 | 音楽 | Trackback
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