THRESHOLD 「Dividing Lines」'22 UK古参プログレッシヴHMバンドの5年ぶりとなる12枚の最新スタジオアルバムが発売されたので即GET! 相変わらずバンマスの Karl Groomはサイドプロジェクトやプロデュース業に忙しく、その名をしょっちゅう多彩なジャンルのアルバムにクレジットされているのを見かけるけれど、久しく本体バンドの活動の便りを聞かないなぁ、なんて思っていた所に久々の新譜到着であります。 前作『Legends Of The Shires』'17 は二代目フロントマンの Glynn Morganが二十数年ぶりに復帰し、2枚組コンセプト・アルバムを久々にシングルギター編成のキーボード入り5人組バンドとして届けてくれましたが、初期からメンツの入れ替わりが激しい彼等にしては珍しくインターバルを挟んだものの何事も無く前作と同一メンツで制作(セカンド・ギタリストはもう補充されない?)されており旧来からのファン程に嬉しいニュースでしょう (゚∀゚) 前作はここ数作のマンネリズムや閉塞感を打ち破る Glynn Morganの若々しく情感たっぷりな力強い歌声が新鮮な息吹を楽曲に呼び込み、初期のような瑞々しい艶やかさや煌めきがサウンドのそこかしこで感じられ、ベテランらしい構築美に満ちたアルバムの完成度もさることながらいつになくフレッシュでエモーショナル、そしてポップな感触が楽曲に満ちていて、間違いなくバンド史上屈指の傑作アルバムでありました。 そんな『Legends Of The Shires』に続く本作ですが、ダークでヘヴィなリフで押しまくるドライヴ感あるメタリックなギター・サウンドと美意識溢れる繊細なアレンジを随所で効かせる優美でテクニカルな鍵盤サウンドを軸に、英国叙情薫るウェットで重厚な調べと清涼感あるコーラスが印象的な定番のTHRESHOLD節をキープしつつ、お馴染みのソリッドな変則ビート&テクニカルなリズム・セクションで複雑に立体的に構築された躍動感あるドラマティック・サウンドでスリリングに攻め立て、随所で哀愁のメロディと濃密なロマンティックさも絡ませながら、さらに前作を上回るキャッチーでカラフルな歌メロと開放感ある美旋律をハードにソフトに楽曲毎にその表情を様々に変えながら多彩なシンフォ・サウンドを鳴り響かせる、一糸乱れぬアンサンブルでパワフルに駆け抜けていくその様はベテランらしい抜群の安定感に満ちており、前作と同一方向性ながらより知的で思慮深く、メロディアスでワイルド、さらにダークでミステリアス、そしてデジタリーでグルーヴィという新たな領域を開拓したモダン・プログHMサウンドを提示している。 殆どデス・ヴォイスかと思う荒々しい歌声や滑らかでスムースなデイープ・ヴォイスまで、前作以上に多彩なヴォーカル・アプローチに挑み、予想以上に過激なヴォーカル・スタイルも取り入れた歌唱を随所で聴かせる Glynn Morganの大活躍が本作の素晴らしい仕上がり具合を一層に際立たせているのは間違いない。 一聴した時の印象は、いつになくバランスを重視し、爽快な歌メロと耳を惹くアレンジの切れに注力した作風のアルバムだな、という感想で、一時より確実にヘヴィさはマイルドな仕上がりになっているが、鈍色なダークさとカラフルなメロディ、そしてハード・サウンドとテクニカルでグルーヴィな美旋律の乱舞、それら相反する要素全てが緻密に考え抜かれ絶妙に構築され交差しタイトでパワフルなビートにキックされ続けた結果、最終的に仄暗いイメージがチラつくミステリアスなモダン・シンフォ・サウンドに聴こえる、ダークなヘヴィさの減退を感じさせず、妙に軽薄なポップさの印象も与えない、伊達にキャリアを30年重ねていないベテランらしい実に巧妙で手の込んだ作品と言えよう。 殆ど5分超えの楽曲ばかりか、10分超え、11分越えの大曲もプログHMバンド作らしく収録しているが、巧妙なアレンジと爽快でフック満載なエモーショナルな歌メロ、そして美しくメロディアスな楽曲の完成度とコンパクトなまとめ具合が高いお陰もあってか少しもダレる事なくアルバムを一気に聴き終える事ができ、前作が2枚組大ヴォリュームで少々途中でダレた記憶もあるからか実に好印象であります。 メンバー自身は前作がユーロ圏のチャートで好リアクションを得た結果、かなりの完成度とヴォリュームであった事もあって本作で前作を超えるアルバムを創れるのか不安に思っていた模様だが、従来のイメージをキープしつつ新たな可能性も感じさせるバラエティ豊かなシンフォ・サウンドが楽しめる本作のモダン・プログHMサウンドの数々をお聴きになった諸兄なら彼等が自らに課した高いハードルを見事に超えたと容易く理解してもらえる事だろう。 しかし、アルバムタイトルが『分水嶺』って、そんなに大きなサウンド変化を感じないし、そんな大それた冒険作でも実験作とも思えないんだけど…彼等的にさらにバンドサウンドの限界を押し広げられるかどうかの正念場だったから、って事なんでしょうかね? タイトルにビビッてしまって本作の購入を躊躇っている方に一応のご報告をば。 最早、本職のバンド活動以上にスタジオ作業で多忙な Karl Groomですが、日々の経験で得たエンジニアリング能力と洗練されたプロデュース作業が成された、隅々まで手が行き届いた音の良いアルバムな点もファンならずとも嬉しいポイントなのは間違いありませんね(*´ω` *) 逆にちょっとクリーンでカッチリし過ぎて、音の奥行とか楽器のナチュラルな鳴りは余りに感じないサウンドで、70年~80年代のウォームなサウンドの感触が好きな方には少々冷たく無機質に感じてしまうかもしれない…良い音なのに文句つけるものどうかと思いますけどHM系のアルバムって大抵荒い音の粒子が感じられるサウンドだから…(汗 従来からの古参THRESHOLDファンは勿論、前作からのTHRESHOLDファン復帰組な方、そしてUKモダン・プログHM好きな方や洗練されたユーロ・シンフォ作ファンな方にもお薦め出来るバランスの取れたハイクオリティな一枚ですので、ご興味あるようでしたら是非一度チェックしてみて下さい。 Tracks Listing 01. Haunted 02. Hall Of Echoes 03. Let It Burn 04. Silenced 05. The Domino Effect 06. Complex 07. King Of Nothing 08. Lost Along The Way 09. Run 10. Defence Condition THRESHOLD Line-up: Glynn Morgan (Vocals) Karl Groom (Guitars) Richard West (Keyboards) Steve Anderson (Bass) Johanne James (Drums) P.S. 国内盤と外盤は収録曲数に違いなく、国内限定ボートラなども追加収録されていないのに千円近くボッタくっている(涙)ので、対訳歌詞に興味ない方は円安の影響があったとしても、まだお求め易い価格な輸入外盤等を優先的に購入する事をお薦めします。
by malilion
| 2022-11-24 19:54
| 音楽
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