TRISHULA 「We All Fall Down」'22 英国のローカル・ロックバンドBROADSWORDの元ギタリストで、TENの『Stormwarning』'11 への参加や、元TENのキーボーディスト Ged Rylands率いるRAGE OF ANGELSへの参加、ポルトガルのHRバンドSCAR FOR LIFEへのゲスト参加、そして Tony Millsを始め他ソロ・アーティスト作への参加やソロ・ギターアルバムなど多岐に渡って活動しているイギリス人ギタリスト Neil Fraserが率いるキーボード入り5人組ブリティッシュ・メロディアスHMバンドTRISHULA(トリシュラ)の3rdが2年ぶりに自主盤でリリースされたのを即GET! 残念ながらAOR HEAVENとの契約は途切れて自主制作な環境になってしまったが、以前ご紹介した際にもお伝えしましたが若干AOR HEAVENに所属する他バンドとの音楽性の差異が1stの頃から感じられたTRISHULAなので、パンデミックの影響も少なからず有るのでしょうがこの流れはある程度予測可能でもありました。 その影響からかメンツに変更があり、シンガーはデヴュー作から安定なウェールズ出身の Jason Morgan (ORANGEFALL、RAGE OF ANGELS、etc...)と、当然ボスの Neil Fraserはそのままに、ベースの Dan Clark (UXL、Tim Jenks Band、REBECCA DOWNES、etc...)と、キーボードの Rick Benton (THE EAGLES、STATUS QUO、John Mayer、Paul Young、SPYRO GYRA、Shaggy、Kim Wide、SKINDRED、MAGNUM、etc...)という錚々たるメンバーは継続して在籍しているが、本作からドラムスのみ Neil Ogden (DEMON、USI、LAWLESS、DIRTY WHITE BOYZ、FM、CHANGE OF HEART、Steve Overland、PERSESIAN RISK、etc...)からセッション・ドラマーの Lloyd Dakerへチェンジしている。 前作紹介の時にも述べましたが、各自セッション主体なミュージシャンか他バンドとの掛け持ちメンバーばかりなので今回のメンバーチェンジも特に驚くような事はありませんが、強力なキャリアを誇る猛者達をバックに従えてバンド体裁を整えてはいるものの実質的には Neil Fraserのソロ・プロジェクトな体制なのは残念ながら未だに変わっていないのでしょう。 特にパンデミックでここ数年活動もままならない、さらにヒット曲も無いデビュー間もないインディHMバンドで、しかも今回はインディとは言えレーベルとの契約さえも切れた自主制作環境とあっては、なかなかに引く手数多の優秀なベテラン・ミュージシャンを引き止め続けるのは困難と予想つきましたしネ… ただ、自主制作環境が悪い事ばかりでもなく、レーベルの思惑やプレッシャーから解放された影響からか、前作で感じられたノスタルジックな80年代風味あるキャッチーなメロハー要素が薄れ、モダンなタッチはそのままに Ged Rylandsが在籍していたTENの中期サウンドに近づいたかのような如何もブリティッシュ・バンドという、湿り気あるウェットな美旋律とエッヂあるギターが大活躍なユーロHMバンドらしいスリリングさと上品でメランコリックなメロディが輝くスタイリッシュでモダンなサウンドへ再び生まれ変わっており、1stのブルーズ・ベースなHRサウンドこそがボスである Ged Rylandsのバックボーンである訳だから本作での気品漂う叙情あるメロディアスHMサウンドへの変化は当然の帰結と言えるだろう。 特筆すべきはボスの Ged Rylandsに負けず劣らず数多くのバンドやプロジェクトに関わる Jason Morganのヴォーカル・スキルが前作より格段に上がっており、ほんのりキャッチーでブライトな歌メロからソウルフルでディープなスタイルと様々な色合いを帯びた伸びやかな歌声を聴かせ、課外活動の成果なのか短期間で歌唱力に磨きがかかったその強靭な喉と多彩な音楽性の楽曲に幅広い表現力で応えられる自信故か、メジャー・バンドのフロントマンばりに実に堂々とした歌いっぷりで驚かされます。 また前作のメロハー的アプローチではない英国バンドらしいメランコリックなメロディを際立たせるエレガントで柔和なコーラスが実に効果的に随所でフィーチャーされており、耳を惹く強力なフックライン、解き放たれたように伸びやかなエッヂあるエモーショナルでメタリックなギター・ワーク、そして Rick Bentonの操るキーボードがサウンドに深みとドラマチックな色彩を与え、バッキングや美しいピアノの旋律で適切に楽曲を盛り上げつつも決して出しゃばらずヴォーカルとギターにリスナーがフォーカスする様なバランスを心掛け、ソリッドでタイトなリズムセクションはシンプルでありながら立体的で繊細なバックビートをパワフルに刻むその役割を完璧に果たし、ベテランらしいアンサンブルと各パートのコンビネーションが完全に同期した熱いオーガニックな共振がメロディを一層に輝かせる新基軸サウンドは確実に前二作を上回るスケールと完成度と言え、程なく22年も終わりを告げる中で自主盤ながら適切なプロダクションが施された、世が世ならば間違いなくモンスターヒットになっただろう、高品質な英国ロック・アルバムの傑作に数えられるのは間違いない一枚だ。 幾分か1stで聴けたブルーズベースなタッチが戻りながらも、しっかり今の時代にアジャストしたモダンさとヘヴィさも忘れぬハードエッヂなギター・サウンドをメインに据えつつ、オーセンティックな英国らしいウェットでメランコリックなメロディとリリカルなアレンジが効いたクラシック・ブリティッシュHRベースな楽曲には奇をてらうトリッキーなプレイや意外な展開、無鉄砲な勢いは無く新鮮な驚きは少ないものの、反面ベテランらしい緩急のつけ方や、堅実でコンパクトな曲の出来の良さ、ツボを心得たキーボード・アレンジと控えめな鍵盤さばき、そして前作以上に大きく活躍しているストリングス・アレンジが随所で楽曲のエレガントさとスケールアップに大きく役立っており、モダンなタッチが加わった洗練された楽曲は幅広い音楽要素の断片を垣間見せつつもスタイリッシュに纏め上げられ、古き良き英国バンド達を思わせる憂いある美旋律が心くすぐるブリティッシュ・メロディアスHMサウンドが詰まった会心の出来栄えだ! ('(゚∀゚∩ ここまで素晴らしい本作のサウンドに耳を傾けていて胸に去来した想いは、無駄に壮大にならず、コンパクトでキャッチーでありながら、HMらしいスリリングさと攻撃性も保ちつつエモーショナルな歌メロやエレガントで艶やかな美旋律、そして控えめな爽快コーラスもフィーチャーした、英国らしい叙情感や気品溢れる楽曲とモダンでスタイリッシュなサウンドは、本来TENに望んでいた輝かしきブリティッシュHMサウンドだったんだよなぁ、という… どうしてTRISHULAが自主盤で未だに国内盤リリースも叶わぬ状況なのに長年に渡ってイマサンなアルバムばかり量産するTENが何故か国内盤リリースされ続けているのか謎でしかありません…TENのファンには悪いけど、ホントそう思っちゃう、本作の素晴らしい出来栄えと研ぎ澄まされた美旋律の数々を耳にすると…(´д⊂)ドウシテ… TENやHEARTLAND、それから数々のブルーズベースな古典英国HRバンドが好きな方にも是非チェックして欲しい、モダンなタッチの加わった新世代ブリティッシュ・メロディアスHMバンドが放つ期待に違わぬ新作であります。 Track listing: 01.I'm Not Falling 02.Cuaght In The Middle 03.Nice And Dirty 04.Why Should I Apologise 05.Watch That Giant Fall 06.God Bless America 07.Don't Stop This Roundabout 08.Purity 09.Two Umbrellas 10.It Doesn't Matter 11.Don't Walk Away 12.Never Gonna Stop TRISHULA Line-up: Neil Fraser (Guitars) Jason Morgan (Lead Vocals) Rick Benton (Keyboards) Dan Clark (Bass) Lloyd Daker (Drums) with: Georgia Morgan on Backing Vocals
by malilion
| 2022-10-18 11:13
| 音楽
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