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ベテランUSシンフォ・バンド GLASS HAMMERが、剣と魔法のダークファンタジー三部作の最終章をリリース!

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GLASS HAMMER 「At The Gate」'22

YESのフロントマン Jon Davisonが在籍していたインディ・バンドとして一躍メジャーシーンにその名を知らしめた米国産シンフォニック・ロック・バンドの『Dreaming City』'20、『Skallagrim - Into The Breach』'21 に続く『叫ぶ剣を持つ盗賊スカラグリム』の千年に及ぶ放浪物語を完結に導く『Skallagrim』三部作の最終章がリリースされたので即GET!

『Dreaming City』の紹介の時にもお伝えした通り、以前は男女三声ヴォーカルをメインにしたファンタジックでシンフォニックな作風であったが、剣と魔法にインスパイアされた、恋人と記憶を失った『絶望的な男』であり『叫ぶ剣を持つ盗賊スカラグリム』の物語『Skallagrim』三部作の第一弾から一転してアグレッシヴでメタリックなギター・サウンドを大きく全面に押し出したダークでパワフルなHM風サウンドを軸に、重厚で荘厳なキーボード・サウンドと可憐で儚げなフィメール・ヴォーカルを組み合わせたダークファンタジー物語のサントラを思わせるスケールの大きいシンフォ・サウンドへ音楽性を大きく変化させたが、本作でもそれは変っていない。

メンツの方も第一弾作『Dreaming City』に参加したメンバーが全員顔を揃えているだけでなく、元GLASS HAMMERフロントマンで現YES在籍の Jon Davisonがゲスト参加して久しぶりにその歌声を披露し、リーダーの Steve Babbが執筆し今年3月に発売されたトールキン風のダーク・ファンタジー小説『Skallagrim - In the Vales Of Pagarna』に基づくプログレッシヴ・ロック・ファンタジー・コンセプト作の最終章に花を添えている。

前作からフロントマンに迎えられた Hannah Pryor嬢もしっかり現在も在籍しており、プログレ畑のミュージシャンではないが急速にプログレッシヴ&シンフォ界で注目されるヴォーカリストとして高い評価を受けている彼女の、その伸びやかで可憐、それでいてパワフルな美声が物語に厚みと華やな彩りを加え、素晴らしい音楽的満足感を与えてくれる大きな一因となっているのはこのアルバムが物語る通りだ。

本作のストーリー構成やサウンドについて原作者でありバンマスでもある Steve Babbが語る所によると、

『2020年の3部作の開始以来、この剣と魔法にインスパイアされた物語を適切な音楽で伝える事が私の意図だった』
『その為には、3枚目のアルバムの終わりには、サウンドを壮大なものへと進化させる必要があったんだ』
『スカラグリムの物語は、失われた喜び、悲しみ、憧れ、そして最終的には消耗した剣士が、世界が自分に提供出来るもの、出来ないものを理解する為の物語なんだ』
『音楽を通して語られる物語の中で、恐らく最も重要なものであり、私にとっては、小説を執筆する切っ掛けとなった程に重要なものなんだ』

『だから、我々の新しいエッジの効いたサウンドが好きな人にとっては失望する事は無いだろう。でも初期のアルバムのサウンドを懐かしむ人の為に、パイプオルガンや聖歌隊、そしてバラードの名曲を復活させたんだ。上手くいったと思うけど、決めるのはファンの皆だよ!』

『この3部作の音楽は常に弧を描くように意図されていたんだ。アルバムにはHMがふんだんに盛り込まれているが、我々のシンフォニックな側面が再び現れているのも聴いてもらえるだろう。これはずっと計画の一部だったんだ。そして、僕らのファンは僕らが3部作をどう締めくくったかを気に入ってくれると思うよ』

期待された70年代HRや攻撃的なHMサウンドに影響を受けた新たなシネマティック・サウンドや、バンドが最も良く知られているシンフォニックなプログレ・サウンドへの回帰も上手くこなせただろうと、新作の仕上がりに自信満々なご様子だ。

前二作では少々影を潜めていた荘厳なパイプ・オルガンが響き渡るイントロや、以前のようにYES色全開(YESフォロワーなサウンドにドハマリしてた時期もありましたねぇ…)でドラマチックにスタートする楽曲を聴くと、最初は意図的に以前のシンフォ・サウンドから遠ざかって従来のファンを驚かせ、最終作である本作で三部作開始前のYES風味あるシンフォ・サウンドを再び披露して喜ばせる計画は上手くいった様に思えます。

『この作品は、傷だらけでボロボロの盗賊スカラグリムが、愛する人と共に記憶を盗まれた話だ』
『彼は想像を絶する恐怖と戦い、醜い生き物や悪い魔術師を倒さなければ、どちらも取り戻す事が出来ないんだ』
『そして、最終章で遂に彼の記憶は戻るが、彼は失われた愛を見つけるチャンスを千年待つ呪いをかけられている事に気づく。彼は恋人を見つけるまで千年も待たなければならないんだ』
『アルバムは彼の物語の最後を飾るもので、放浪の末に再び呪われた領域アンドラスに戻ってくる。スカラグリムは恋人を救い出し、彼女を監禁している悪の存在を倒すという人生最大の難題に立ち向かうが、その行く手に待つものは…』

『勿論、これまでのコンセプトアルバムと同様に、単純な筋書き以上のものがあるんだ。表面的には剣と魔法が支配する世界で、何世紀にも渡って呪われた土地アンドラスで失われた愛を探し続ける男についての複雑な物語に見えるが、実は悪に立ち向かい、如何に生き延びるか、そして絶望と心痛に如何に立ち向かうかについての、現実問題にも通じる寓話的な物語なんだ』

『最も重要な事は、喜びの無い世界で深く永続的な喜びを追求する事が何故価値が有るのか、例えあらゆる条件がソレは不可能と示唆していても、ね』

これまで彼等が披露してきた音楽要素の集大成的サウンドで構築されており、ある時は非常にメタリックでヘヴィ、またある時はキャッチーでポップだが、専任ギタリストがバンドに在籍して居ないにも関わらずギター主導で作曲されたかのようにエッヂあるダーク・サウンドに満ちていて、アルバムが展開するにつれ、QUEEN、LED ZEPPELIN、EL&P、YES、KING X、RUSH、KING CRIMSON、PINK FLOYD、TANGERINE DREAM、RENAISSANCE等々の新旧様々なバンドを彷彿とさせるサウンドの断片や特徴的な音使いが意図的に散りばめられており、従来のイメージ通りにシネマティックでメロディック、最先端のデジタリー・テクスチャーを駆使しているのにアナログ的な暖かさも有り、シンフォニックでありながらヘヴィでハードエッヂな不協和音さえも刻むなど決してレトロなリヴァイバル・サウンドなどではなく一貫してプロダクションはモダンな仕上がりで、自主制作盤ながら高度にプロフェッショナルなプロデュースが成された、流石ベテラン・バンドと納得しきりな見事にバランスの取れたアルバムだと言えましょう。

シンフォニックなプログレ・サウンドへの回帰を意図した事から、第一弾、二弾で控え目だったシンフォ要素の比重が本作では目に見えて増え、Fred Schendelの操るテクニカルでありながらセンス良いキーボード・オーケストレーションと Hannah Pryor嬢のメランコリックな歌声が合わさって高揚感あるメロディと荘厳で美しいサウンドにますます磨きが掛かって輝きを増し、Chris Squireを彷彿とさせる Steve Babbのワイルドでメロディアスな良く動くベースと、中心メンバーのSteve Babbと Fred Schendelを除いて最も長く在籍しバンドの屋台骨を支え続ける Aaron Raulstonのドラムが叩き出すソリッドなビートが揺るぎない推進力となって楽曲をキックする様は、まるで後期RUSHがフィメール・ヴォーカリストを迎えてモダンなシンフォニック作をゆったりと披露しているかのような、攻撃的で幻想的、ダークなのに眩い、ユニークで壮大な感動的サウンドトラックのようだ。

シンフォ・サウンドやクラシック・ロックの雰囲気を漂わせながら、生々しくメタリックなギター・サウンドでHM的な攻撃性と疾走感を叩きつけ、これまで培ってきたデジタリーなプログラミングサウンドやドリーミーさ漂うアンビエントなサウンドも交えつつ、プログレっぽい緻密なアンサンブルやスリリングなテクニカル・パートもフィーチャーし、涼やかなシンセワークや可憐なフィメール・ヴォーカル等だけでなく繊細なメロディを紡ぐアコギや甘美なストリングス、そして美しくリリカルなピアノが織り成すドラマチックでシネマティックな調べの数々は、月並みだが間違いなくGLASS HAMMERの代表作の一枚と呼ばれる事になるだろう完成度を誇るアメリカン・シンフォニック・ロックの会心作だ(*´ω` *)

本作に興味を持たれた方が居ましたならば、前作同様にデジパックのインサートはヴィンテージなファンタジー小説のような見た目で物語の抜粋と素晴らしいアートワークが掲載されておりますので、物語を十分に味わう為にも是非に物理的に本アルバムを入手して、各曲に対応するイラストを味わいつつ彼等の描くファンタジックな剣と魔法の物語を非楽しんで欲しいものです。

Tracklisting
01. The Years Roll By
02. Savage
03. North of North
04. All Alone
05. All For Love
06. Snowblind Girl
07. Standing at the Gate (Of Zagzagel)
08. In the Shadows
09. It’s Love

GLASS HAMMER Line-up:
Steve Babb    (Bass、Keyboards、Guitars、Lead & Backing Vocals)
Fred Schendel  (Keyboards、Guitars、Backing Vocals)
Aaron Raulston  (Drums)
Hannah Pryor   (Lead Vocals)

With:
Jon Davison    (Vocals on Tracks 01、09:YES)
John Beagley  (Vocals on Tracks 07:LIFE IN DEGITAL)
Reece Boyd    (Lead Guitar on Tracks 05、06)


by malilion | 2022-10-08 16:46 | 音楽 | Trackback
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