FOR ABSENT FRIENDS 「Disappear」'22 以前ここでもご紹介した、1986年にオランダのロッテルダムで結成され、GENESISの『Nursery Cryme』'71 収録のアコースティック・バラードからバンド名を拝借しMARILLIONファンクラブの集いでカヴァー・バンドとして演奏を披露した後、90年リリースの自主EP『Illusions』が好評で91年にSI-MUSICから本格的にポンプバンドとしてデヴュー作をリリースしたのを皮切りに、1990年から2006年にかけて6枚のスタジオ・アルバムを遺した、徐々に音楽性を変化させながら06年に最終作であるグランジー風味なポンプ作『Square One』をリリースし同年に解散した彼等がまさかの復活作をリリースしたので即GET!! いやー、新作インフォを見てしばし我が目を疑いました(w 当時、何故かフランスで熱狂的な支持を得ていた以外、その所謂定番のポンプらしくないポップで今一つ煮え切らぬキャッチーなメロディアスサウンドは本国はおろか英国や他のユーロ圏での人気もイマサンで、さらにアルバムリリースを重ねる毎に恐れを知らぬ音楽性の変化を見せ、スタート時のポンプサウンドから離れていった為にコアなファンも得にくかっただろう、そんなマイナーB級ポンプ・バンドである彼等がまさか16年ぶりに再結成するとは! 折角の再始動ですが、オリジナル・メンバー揃ってのリユニオンという訳では無く、二代目フロントマン Hans van Lintが再びヴォーカルを担当し、オリジナル・メンバーは中心人物のギタリスト Edwin Roesとドラマー Ed Wernkeの二人のみで、他の二人は新たに本作から迎えられたミュージシャンとなっており、初期のポンプ風味あるメロディアスサウンドを再現するリユニオンを期待した向きには残念な知らせであろう。 ただ、今回の再結成ですが厳密に言うと少々状況が違っており、そもそも06年にバンドが解散した後、フロントマンの Hans Van Lint、ギタリストの Edwin Roes、ドラマーの Ed WernkeのFOR ABSENT FRIENDSの三人の元メンバーに加え、キーボーディストに Clemens Steenweg、ベーシストに Jan Nieuwenhuisの五人でGENESISトリビュートバンドSQUONKを結成し、近年にはシングルもリリースするなど地道で自由な活動を続けていましたが、FOR ABSENT FRIENDSのオリジナル・ベーシスト Rene Bacchusが2017年に長患いの末に他界し、これを機に1回限りのFOR ABSENT FRIENDSとしてLIVEを行った、からの普通ならここで気を良くして昔のメンバーを集めて再結成になる流れが彼等には起きず(笑)、そのままSQUONKでの活動を継続しようとしていたが全世界をパンデミックが襲い、思うように活動出来ぬ状況に陥った事でバンマスであった Edwin Roesに心境の変化が起きたのか、そのままトリビュートバンドのメンバーをスライドさせる形でFOR ABSENT FRIENDSを再び始動させる事にした、という流れらしい。 MARILLIONのカヴァー・バンドからスタートしてFOR ABSENT FRIENDSを結成した彼等が、解散を経て今度はGENESISトリビュートバンドからFOR ABSENT FRIENDSを再結成するとは、なんとも奇妙で面白い流れであります。 ですので本作から参加した二人、キーボーディストの Clemens Steenwegとベーシストの Jan NieuwenhuisはFOR ABSENT FRIENDSの元メンバー達と既に16年も音楽活動を共にして来た旧知の間柄で、SQUONKを知る人からすればバンド名をFOR ABSENT FRIENDSに変更しただけ、というなんともややこしい状況なのでした(汗 個人的には初期のポンプサウンドからグランジー化する前のニューウェーブに片足突っ込んだ90年代初期ブリティッシュ・テイストを強烈に発散するスタイリッシュなモダン・メロディアス・サウンドを鳴らしていた当時に、ギタリスト Edwin Roesと共に創作面の両輪としてバンドのサウンド・カラーを決定付けていた02年に脱退したオリジナル・キーボーディスト Peter de Jongの復帰が叶わなかったのが残念で仕方がありません…orz さて、注目の復活作の内容ですが、フロントマンが所謂ガブリエル系の Hans Van Lintな事もあって後期FOR ABSENT FRIENDS風な印象の強いサウンドに感じられるものの、GENESISトリビュートバンドでの活動を経た事や、新加入の二人が初めてFOR ABSENT FRIENDSメンバーとして創作に参加している点や、既に解散前と音楽市場を取り巻く状況も大きく異なっているのも関係してか、以前よりかなりリラックスした穏やかなメロディを主軸に展開する、枯れた深い味わいの増した音使いがメインなサウンドを新たに提示しており、スピードやヘヴィネスは皆無の、テクニックやキャッチーさよりもヴォーカルの伝える情感や思い描く物語、そしてシンプルなメロディの美しさ、さらにアレンジの妙で聴かせるモダンな音楽性の方向へ進化した本作のサウンドは、ベテランらしい落ち着いたメロディと巧妙なアレンジを楽しめるスタイリッシュな一作に仕上がっている。 また、解散前の鍵盤奏者 Ron Mozerが持ち込んだプレイスタイルが、所謂ポンプらしい柔和なキーボードサウンドとキラキラするシンセシンセしたサウンドがメインのキーボードワークだったのですが、ミュージック・カフェで70年代から近年のキーボーディストが活躍する、CAMEL、IQ、GENESIS、EL&P、KAYAK、YES、MARILLION、PINK FLOYD、Vangelis、Patrick Moraz、喜多朗、Derek Sherinian等々のバンドやアーティストの楽曲をカヴァー・プレイしたりする活動もしている Clemens Steenwegの本作でのキーボードワークは、音圧で畳みかけるような激しいパッションやシンフォ系お約束のテクニカルな高速プレイなど皆無ながら、より幅広い音楽性と軽やかでモダンな美しい響きのキーボード・サウンドが中心となっており、GENESISトリビュートバンドを経たプレイヤーなのでガンガンの弾き倒しやキーボードで音の壁を構築するかと思いきや、意外にも一歩引いたギターの味わいあるプレイの隙間を補完したり、涼やかなバッキングに徹する楽曲第一の控えめな演奏に主軸を置いており、そのバンド全体のアンサンブルや楽曲を重視した心地よいプレイが非常に好印象であります(´ω`) 時々、思い出したように高速プレイや小気味よく軽やかで如何にもプログレ&シンフォ系と言う派手なシンセワークなんかも垣間見せるのを聴くに、その腕前はかなりのモノなのでしょうが、そんな華麗な腕前もテクニカルなキーボードワークも本作では余り聴かせてくれないんだよなぁ~、勿体ない(´A`) それは同じくオランダのブラス入りバンドLETにも参加している他セッション活動も行っているベーシスト Jan Nieuwenhuisも目立たないけれども、バンドに新風を持ち込む多彩な才能を見せているのだが、如何せん彼の演奏も出しゃばる事もソツも無く控えめで悪目立ちするような大人げない事をせぬ渋く堅実なスタイルなんですよねー( ´_ゝ`) ウーン…正直言って本作の方向性とサウンドは初期からのユーロ・ポンプ・ファンも、モダン化したメロディアス・ロックな後期サウンドのファンも、最終作であるグランジー化した当時のサウンドのファンも、その皆が思い描いている再結成サウンドではないと容易く予想されて、このモダンな枯れたリラックス・サウンドであるならば別にFOR ABSENT FRIENDSを名乗らず新バンドを名乗って活動した方が妙に過去に囚われず自由に活動出来て良かったんじゃないの? と、いうのが偽らざる本作への感想だ… 後半のちょっとフュージョンっポイ感じのモダンなサウンドアプローチなんかは彼等にしては今まで余り聴けなかった新しい要素で面白く思えるだけに、余計にそんな風に感じてしまうのです。 商業的に考えれば既にアルバムを何枚もリリースして来たある程度知名度のあるバンド名を名乗る方が安牌なのは重々承知しているし、私のように彼等の過去作を所有する旧来のユーザーはこの新譜に注目するだろうから戦略は間違ってはいないのだけど、ウーン…以前の真にプログレスしていた恐れを知らぬ攻めまくりな姿勢を知っていると余計に、ね… キャッチーさもイマイチで、派手さも無く地味、過去の名声もそう頼りにならない現状、FOR ABSENT FRIENDSの先行きはなかなかに不穏ではありますが、折角再始動した事ですし、どうか今度こそ音楽性をコロコロ変えず、メンバー・チェンジも無く、出来れば次作でもっとGENESISやMARILLIONに通じる、プレイヤー・スキルの発露である派手で華やかなインタープレイなんぞも聴かせて、安定した活動をして欲しいものです。 バンドは9月29日にフィンランド産ハード・プログレッシヴ・ロックバンドVON HERTZEN BROTHERSをサポートする予定との事で、本格的にLIVE活動を始動させる模様だ。 Tracks Listing: 01. Magic 02. Random Draw 03. The Poet 04. Between the Lines 05. Keytar 06. Disappear 07. Conversation 08. 58 People 09. Dreamer FOR ABSENT FRIENDS Line-up: Hans Van Lint (Lead & Backing Vocals、Piano、Samples) Edwin Roes (Electric & Acoustic Guitars、Samples & Loops) Clemens Steenweg (Keyboards、Piano、Organ、Backing Vocals) Jan Nieuwenhuis (Bass、Fretless Bass、Bass Pedals、12-string Guitas、Backing vocals) Edwin Wernke (Drums & Percussion)
by malilion
| 2022-10-07 17:43
| 音楽
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